後味の悪い話

【後味の悪い話】星新一『おーい でてこーい』

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157 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/05(水) 14:12:32
星新一の最高傑作(俺の中の)「おーい、でてこーい」

ある田舎の山村に台風が直撃する。日があけると台風は過ぎており、天気は快晴だった。
村人達は台風の影響が出ていないかどうか村を見回ると、村の近くにあった小さな社が無くなっていた。
その代わりに直径1mほどの大きな穴が開いていた。

村人達は狐の巣か何かだと思い「おーい、でてこーい」と声をかける。
だが、何も出てこず声が響くだけ。今度は小石を穴の中に落とす。が、底にあたる音すらもしない。

村人たちがどうしようかと相談していると、都会の利権屋がやってきて
「この穴を売ってくれ」と交渉し、その穴を手に入れる。

利権屋は、仲間を都会で猛運動させた。
すばらしく深い穴がありますよ。学者たちも、少なくとも五千メートルはあると言っています。
原子炉のカスなんか捨てるのに、絶好でしょう。

官庁は、許可を与えた。
原子力発電会社は、争って契約した。

村人たちはちょっと心配したが、数千年は絶対に地上に害は出ないと説明され、
また、利益の配分をもらうことで、なっとくした。
しかも、まもなく都会から村まで、立派な道路が作られたのだ。

トラックは道路を走り、鉛の箱を運んできた。
穴の上でふたはあけられ、原子炉のカスは穴のなかに落ちていった。
外務省や防衛庁から、不要になった機密書類箱を捨てにきた。

大学で伝染病の実験に使われた動物の死体も運ばれてきたし、
引き取り手のない浮浪者の死体もくわわった。
海に捨てるよりいいと、都会の汚物を長いパイプで穴まで導く計画も立った。

穴は、いっぱいになるけはいを示さなかった。
よっぽど深いのか、それとも、底の方でひろがっているのかもしれないと思われた。
穴埋め会社は、少しずつ事業を拡張した。

そのおかげで発展した日本。
穴は、捨てたいものは、なんでも引き受けてくれた。
穴は、都会の汚れを洗い流してくれ、海や空が以前にくらべて、
いくらか澄んできたように見えた。

その空をめざして、新しいビルが、つぎつぎと作られていった。

ある日、建築中のビルの高い鉄骨の上でひと仕事を終えた作業員が、
ひと休みしていた。
彼は頭の上で、「おーい、でてこーい」と叫ぶ声を聞いた。

しかし、見上げた空には、なにもなかった。
青空がひろがっているだけだった。
彼は、気のせいかな、と思った。

そして、もとの姿勢にもどった時、声のした方角から、
小さな石ころが彼をかすめて落ちていった。

しかし彼は、ますます美しくなってゆく都会のスカイラインをぽんやり眺めていたので、
それには気がつかなかった。

159 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/05(水) 14:30:55
>>157 の解説してくれ

160 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/05(水) 14:34:02
>>157
うわー好きな作品がこんな所で読めるとはw
つまり穴は未来の世界に続いていた時空のひずみだった、ってオチ。
SFショートだからわけのわからなさを楽しむと良い。

163 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/05(水) 14:46:15
『世にも奇妙な物語』でもやってたね。
いかりや長介主演で、「穴」ってタイトルになってたかな。

165 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/05(水) 14:48:52
昔進研ゼミの文章問題に載ってたな
>>159
説明下手だから分かりにくかったらごめん。
時空の歪みかなんかで、どういうわけか穴の底と空が繋がってた、ってこと。
だから、穴にいくらものを落としても穴が満杯になることはなかった。
そしてそれをいいことに人間達は、
見られてはまずいものや地上にいらなくなったものを穴に捨てていたけど、
いつしかそれらは再び空から降ってくる。人間達はそのことは知らない。
最後に青年が聞いた声や、降ってきた小石は、
一番最初に穴に向かって投げ掛けられた(捨てられた)ものだから、
それが今空から降ってきたということは、
これから降ってくるものは・・・・

という後味の悪さ

170 名前:タケオ ◆Ikio5Ugk7U 投稿日:2006/07/05(水) 15:39:49
>>165「ボッコちゃん」に記載されてる「おーい出てこい」じゃなかったっけ?
最初穴におーい出てこいって言って、最後空から石が落ちた後おーい出てこいって聞こえるやつ。
しかし後味悪くは無いんじゃないか?落ちて来る過去からのゴミをまた穴に落とせば∞ループ!と思ったのは漏れだけ?

確かに星新一の小説は後味悪いのはたくさんあるね。人の病気治せる力手に入れた椰子の話とか。

176 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/05(水) 17:32:53
>>170
使用済み核燃料なんかも捨ててるからそんなもんが空から降ってきたらただじゃすまないわん
それにあくまで未来の一時点に繋がってる穴だからだんだん使えなくなるかも
人類へのしっぺ返しを風刺した作品として白眉だよね
星新一あまり好きじゃないけど、ボッコちゃん辺りのリリカルな作品は大好き

 

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