話題・雑談

映画『千と千尋の神隠し』の謎について解説&考察!裏設定と公式からの解釈まとめ

『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)は2001年公開。興行収入316億8,000万円を記録した大ヒット作品です。そのほか第52回ベルリン国際映画祭で金熊賞、第75回アカデミー賞でアカデミー長編アニメ映画賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を受けました。

今回はその千と千尋の神隠しの考察と意味を徹底解説します。


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千と千尋の神隠し あらすじ

物語は10歳の少女・荻野千尋が、引っ越しの途中で怪しい町へと迷い込んでしまうところから始まります。そこにあったのは神々が通う湯屋“油屋”。両親が豚になってしまった千尋は、湯屋の主である湯婆婆に名前を奪われ、千(せん)として湯屋で働くことに

そこで千は、湯屋で働く謎の少年ハク、お客のカオナシと出会い、さまざまな出来事に巻き込まれます。
宮崎監督によれば、本作の発想の原点は知人の10歳の娘のために考えたもので、同時に『雀のお宿』や『鼠の御殿』といった昔話の直系の子孫、である作品とのこと。

宮崎監督が語る「千と千尋の神隠し」

行ったことがないのになんだか懐かしい印象をうけるこの作品。さまざまなインスピレーションを想起させる映画ですが、いったいその意味は何なのでしょうか?

きれいごとではすまない世界に10代の少女が放り込まれた物語

一言でいうと、「千と千尋の神隠し」とはきれいごとではすまない世界に10代の少女が放り込まれた物語です。そしてそのきれいごとではすまない世界とは「風俗業界」です。

千尋が迷い込んだのはあの世とこの世の境目にある不思議な世界。そして、そこにある街とは「歓楽街」なのです。そのことについて詳しく解説していきます。

宮崎監督が語る死後の世界とは

1996年6月6日、『もののけ姫』制作中のスタジオジブリで行われた企画検討会でのこと。そこで、死神が登場するある少女漫画が映画になるか、というテーマでディスカッションが行われました。死後の世界の様子をアレコレ話すうちに、宮崎監督が次のようなことを語っています。

死後の世界はつまんない木賃アパート

「(死後の世界の住人が住むのは)つまんない木賃アパートなんです。これが。窓の外はね、ネオンがきらきら光ってるから、寝てってもうるさいんです。(略)ヴァルハラってのはさ、そこに酒が流れていて、美女がいっぱいいて。おっさんたちが遊んでるんでしょ。要するにこれは歓楽街でしょ

あの世はこの世とまったく同じっていう…。『まあうっとうしい』って言いながら、『今日も行かなきゃいけないわ』っていうんで、この子は出勤していくと。そうすると、タイムカードがあってですね」(『「もののけ姫」はこうして生まれた。』徳間書店、浦谷年良著)

宮崎監督が語っているのは「死後の世界」について膨らませたイメージですが、「人間でないものが通う歓楽街」「そこには人間世界と同じように労働者が働いている」という点では千と千尋の世界と共通しています。

湯屋は風俗業界!?

千と千尋に出てくる「湯屋」とは、遊女の別名の一つである湯女(ゆな)の働く一種の娼館です。千と千尋のなかには、タイムカードではないものの、湯屋の従業員が出勤すると名札をひっくり返す描写も出ててきます。

宮崎監督「今の世界として描くには何がいちばんふさわしいかと言えば、それは風俗産業だと思うんです」

公開当時、宮崎監督は湯屋について次のように語っています。

「今の世界として描くには何がいちばんふさわしいかと言えば、それは風俗産業だと思うんですよ。日本はすべて風俗産業みたいな社会になってるじゃないですか」(「PREMIERE日本版」2001年9月号)
「僕は今回『これが僕の知っている世の中だ』『君たちが出ていく世の中だ』と思ってこの映画を作ったんです。僕はウソをついて、きれい事を言って、今ここにある世界をその友人の娘たちに見せたいとは思わなかったんです。たとえば、スタッフに舞台になる湯屋はジブリと同じだって説明したんですよ」(『千尋と不思議の町 千と千尋の神隠し徹底攻略ガイド』角川書店)
「現実を皮肉るためとか、風刺するためにこの作品を作ったわけじゃないですよ。例えばスタジオジブリで10歳の少女が働かなければならなくなったとします。それは親切な人もいじわるな人も含めて、カエルの大群の中に入ったようなものなのです。これはそういう映画なんです」(『ロマンアルバム 千と千尋の神隠し』徳間書店)

発言をまとめると、宮崎監督は、きれいごとだけでは済まないこの世界を端的に描く場所として歓楽街=娼館を選んだことがうかがえます。さらに湯屋は“苦界”という側面より、ワンマンオーナー率いる中小企業という側面が強調されています。

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湯婆婆は「ジブリで言うと、プロデューサーの鈴木さん」

また宮崎駿監督は湯婆婆についてこう語っています。

「(湯婆婆は)本当は悪役という訳じゃなくて、経営は大変だし、子育ての悩みも抱えているし、自分の欲望もあって、そういうものに苦しめられる、そういうお婆ちゃんなんです。まあジブリで言うと、プロデューサーの鈴木さんがぴったりかどうかね。僕のほうが顔がでかいですから『おまえに似ている』という話もあるんですけど、そういうことで世界を組み立てたんで」(『千と千尋の神隠し 千尋の大冒険』ふゅーじょんぷろだくと)

僕らの日常ってカエルやナメクジみたいなもんじゃないかと思っているんです。自分も含めて難しいことを言ってるカエルのようなものだと思っていますから」(『ロマンアルバム 千と千尋の神隠し』)

つまり湯屋とは、世の中にある様々な「欲望」と「労働」を象徴する結節点。そして千尋は、千としてそこに放り込まれてしまった少女です。

彼女はなんとかその世界に取り込まれることなく、ハクとカオナシを救い出し、かけがえのない体験をすることになりました。そしてここで問題になるのは千尋はその体験を通じて成長したのかどうかです。

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成長とはなにか?

『千と千尋』のような異世界の往還の物語は、「行きて帰りし物語」と呼ばれます。旅に出た主人公が、試練を通じて自分の欠けていたものを見つけ、帰還する。そういう成長物語を語る時の基本構造です。

しかし一方で、宮崎監督は「成長」について疑問を差し挟む発言をしています。例えば先述の1996年の企画検討会の時の発言。題材となった「死神の成長」を描くことについて次のように語っています。

「死に神の成長とか何かとかね。そうすると成長って何だろうってことがもう一回問われる。本当に人は成長するのかというテーマもありますからね。それはある時期の幻影なんじゃないか。年を取ることは出来るけど、成長できないとか」(『「もののけ姫」はこうして生まれた。』)

子供が成長するというのはどんどん自分の可能性を失っていくこと

千尋「あの、ハクという人に言われて来ました。ここで働かせてください」

また当時のインタビューでは次のように語っています。

「子供の成長をすべてとするのはおかしいんですよ。子供にはいろいろな可能性があるけれど、成長したらつまらない大人になる子供が成長するというのはどんどん自分の可能性を失っていくことです。随分悲観的な見方のようですけれど、ある種のものになっていく、ということは殆のものをなくすことですよ。何にでもなれた筈なのだから」(『千と千尋の神隠し 千尋の大冒険』)

千尋は湯屋のある世界に行き、そこで世界の実相に触れ、幸運にもその世界に食い尽くされてしまうことなく、ハクと自分にまつわる、いちばん大事な記憶を思い出します。

ハツラツと変化した千尋だが、この「思い出す」という行為は、明らかに「成長」の産物ではありません。

千尋は千であった時のことを忘れてしまったのか?

実は、千尋が本来の世界に変える終わりのトンネルのシーン。あれは序盤の場面とまったく同じものを構成を変えて使っています。千尋は湯屋での出来事を忘れ、また序盤のシーンを踏襲しつつ元の世界へと戻っていきます

では、千尋は千であった時のことを忘れてしまったのでしょうか決してそうではありません。ここで物語の重要人物である銭婆の台詞が意味を持ってきます。

記憶は必ず体の中に残っている

「一度あったことは忘れないものさ。思い出せないだけで」。

思い出せなくなっても、その時の記憶は必ず体の中に残っている。現に千の時の彼女は、自分の体の中に眠る記憶を突然思い出し、ハクを救いました。

あの時と同じで、千としての経験は千尋の体の中に残っています。ただ彼女は、凡庸な人間として成長する過程で、その記憶を思い出せなくなっていきます。しかし、あの10歳の時の宝石のような経験は決してなくなることはありません。

最後の異世界からもらった髪留めが印象づけているように、湯屋での千の経験は「彼女の欠けた部分を埋める試練」ではなく「一生にその時しかできない大事な経験」だったことを表しています。しかもそれは「夢のように目覚めたら消えてしまうような経験」でした。

子供時代の経験とは

「子供時代の経験とは、大人へと成長するための材料などではない。子供であったその瞬間にとってかけがえのないものなのである」という宮崎駿監督の考えがここに生きています。

だからそのことを伝えるように、現実に戻ってきた後も千尋の髪に銭婆からもらった髪留めが静かに光っているのです。

宮崎監督は映画のインスピレーションを得た、知人の娘である「10歳のガールフレンド」のためにこの物語を描き、それによって世の子供たち、ひいてはかつて子供であった大人たちの人生を描いたのだと思います。

千と千尋の神隠しの裏設定まとめ

ここでは「千と千尋の神隠し」の裏設定をご紹介します。

千尋が握りしめている花束

10歳の少女・千尋が、引っ越しの車の中で握りしめている花束はスイートピーです。花言葉は“門出”“別離”“やさしい思い出”。何かを予感させます。

千尋の声優さん

千尋の声を担当したのは🎙柊瑠美さん。その後のスタジオジブリ作品にも登場しています。「崖の上のポニョ」でポニョと宗介が出会う赤ちゃんを抱いた女性を演じたほか、「コクリコ坂から」で下宿に住む画学生の広小路も担当しました。

トンネルの前にあった不思議な岩

トンネルの前にあった不思議なダルマのような岩。イメージボードには「石人(実は蛙人)」と書いてあります…。

美術監督

今作の美術監督は、「もののけ姫」などもてがけた武重洋二さんが担当しています。武重さんいわく宮崎駿監督は新橋の烏森口や有楽町のガード下の歓楽街を想起しながら不思議の町の飲食店街の造形をしたのだとか。
ちなみに油屋の外装では「屋根の角度が違う」など、詳細な部分にまで宮崎監督のチェックが入ったそうです。指摘を受けた武重さんは改めて調べ、実際に昔の瓦屋根は現代建築と違い屋根の角度が浅いことを知り、宮崎監督のすごさを実感したといいます。

神さまのたべもの

一昨年、金曜ロードショーで募集した「食べてみたいジブリの食べもの」企画でも、多くの声が寄せられたのが、両親が勝手に食べてしまう「神さまのたべもの」。特にお父さんが食べるコレ下向き矢印は、なんだかわからないけど…食べてみたいですよね。

ハクのイメージ

透明感を持ったキャラクターというイメージのハク。普通の人よりも少し遠くを見ていたり、人の内側を見ているような瞳になるように描かれているそうです。設定では“外見は12歳ぐらい”とされていますが、その落ち着いた表情や立ち振る舞いは、ずっと大人であるような印象を与えますよね

油屋

湯婆婆が経営する湯屋(ゆや)の屋号は「油屋」。「あぶらや」と読みます。つまり“湯屋「油屋」”は「ゆや・あぶらや」と読むのです。リズムがあって面白い語感ですね。油を商う店のように聞こえますが、現実の世界でも温泉温泉宿や商店で「油屋」の屋号をもつ店は多いのだそうです。

怯える千尋

自分の体が透けていくことに気づき怯える千尋。全てを拒絶しようとする千尋のこのシーンの原画を担当したのは鉛筆米林宏昌さん。米林さんは後に「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」「メアリと魔女の花」などを監督しています。

ハク「ここでは、仕事を持たないものは 湯婆婆に動物にされてしまう」

釜爺の部屋

この壁一面の引き出しが印象的な釜爺の部屋ですが、実は東京都小金井市にある「江戸東京たてもの園」に保存されている明治初期に創業した文房具屋、武居三省堂がモデルになっています。建築された当初は書道用品の卸をしていた建物なんだそうです。

黒い生きものたち

この小さな黒い生きものたち、『となりのトトロ』でメイとサツキが「マックロクロスケ」と呼んでいた不思議な生き物と同じ仲間です。カンタのおばあちゃんは「ススワタリ」と呼んでいました。本作でもこのように印象的な場面で再登場した「チビ」たちは、宮崎駿監督のお気に入りなのかもしれませんね

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油屋のモデル

独特のデザインと構造が印象的な油屋の建物。宮崎監督は「色々な温泉が入っていて特定のモデルはない」と言っています。ただ、美術監督の武重洋二さんいわく、ジブリの社員旅行で行った四国の道後温泉は油屋の外装を描く際に参考になったとのこと。

その他にも日光東照宮や江戸東京たてもの園にある建築物なども参考にしたそうで、油屋は様々な建築様式やデザインが混在した不思議な建物として描かれています。

神様「おしらさま」

このまっしろな神様は「おしらさま」といいます。東北地方では、古来「おしら様」という同じ名前の神様が信仰されてきました。そのご神体は桑の木で作った棒の先に男女の顔や馬の顔を彫り、衣を重ねて着せたもので、作中に出てくる大根のような姿とは全く違います。

宮崎駿監督は作品に登場する神様について次のように話しています。

もともと日本の神様って形がないんですよ。(中略)百鬼夜行図みたいなものも、全部後から作られたものですからね。だからそういうものを根拠にデザインしたくなかったんです

右向き矢印ちなみに東北地方で信仰されてきた「おしら様」は子供が大好きな神様なのだそうです。おしらさまが初対面の千尋を助けてくれたのは、この同じ名前の神様とも関係があるのかもしれませんね。

夏木さんにとって湯婆婆は

湯婆婆の声を担当したのは夏木マリさんです。夏木さんにとって湯婆婆は“とにかくかわいくて面白い”愛すべき人物なのだとか。時代を一生懸命に生きる中で、そのアグレッシブさから世間的には悪い人だと思われてしまう…そんなイメージで湯婆婆を演じたそうです。

夏木マリさんは3月からの舞台でも、朴璐美さんとWキャストで湯婆婆、銭婆役を担当します。

契約書の名前

荻野千尋…と書いてあると思いきや、荻の字が間違っています。本来「火」と書くべきところが「犬」になっていますね。千尋は書き間違えただけなのか、わざと間違えたのか…気になるところです。

リンの声優さん

リン「お前、うまくやったナァ。お前トロいからさ、心配してたんだ。油断するなよ、判らないことはオレにきけ、な」

リンの声を担当したのは玉井夕海さん。当時から映画監督を志望していた彼女は、宮崎駿監督が主宰する東小金井村塾Ⅱに入門し指導を受けていた縁で、声優を務めることになったそうです。リンを演じるにあたって、バイト先のお弁当屋のおばちゃんをモデルにしていたのだとか

リンは、イタチかテンが変わったキャラクターにしようという話から描かれていったキャラクターだったそうですが、イメージボードの段階では「白狐」という表記もされていました。大人びて見えますが、設定上はまだ14歳くらいの女の子なんです。

ススワタリたち

たくさん登場するススワタリたち。実はとても細かい作業が行われているんです。胴体、目、手足の間に入るススを表現するために何枚もの画像を重ねています。重ねる画像はアルファベットをつけて順番を管理していましたが、ススワタリと特殊効果が多すぎて、アルファベットが足りなくなるほどだったとか

おにぎり

「千尋の元気が出るように、まじないをかけて作ったんだ」とハクが語るこのおにぎり。両親が貪り食う屋台のごちそうとはどこか好対照ですね。油屋で働くことになって以来、ずっと気を張っていた千尋も思わず涙を見せる感動的なシーンです。

出勤ボード

リンと千が札をひっくり返していく出勤ボードと思われるもの。ユニークな名前が並んでいます。リンの横には「コイ」「ふな」「トロ」…魚の姿をしているのでしょうか。
そのほかにも「馬」「へそ」など気になる名前がたくさんあります。

番台蛙は大泉洋さんが声を担当

この番台は、大泉洋さんが声を担当しています。ちなみにこの番台蛙には「声の良さで番台に座ることを許された」という設定があるんですよ。

オクサレ様

自転車に建材からルアーまで、人間が河に投げ捨てた大量のゴミによってこの姿になってしまったオクサレさま。実はこのキャラクターは、宮崎監督が川掃除に参加した時、自転車を引っ張り上げた体験から着想を得たものなのだそうです。

油屋の設定

神様がお湯屋に疲れを癒しに来る、という設定は長野県南部の遠山郷などで、毎年12月に行われるお祭り「霜月祭」が発想のヒントになっています。宮崎駿監督はこの祭りについて「日本中の神様を呼び出してお風呂に入れて元気にするっていう非常に面白いお祭りがあるんです。」と語っています

「日本の神様たちって本当にささやかな人たちだと思うんですよ。(中略)どうしてそういう神様たちを登場させたのかというと、日本の神様たちは、きっとものすごくくたくたになっていると思ったからです。そしたら二泊三日で骨休みにお風呂屋さんに来るに違いないと思ったんです。霜月祭と同じようにね

カオナシとは誰なのか?

カオナシとは一体何者なのでしょうか。宮崎駿監督曰く「カオナシなんて周りにいっぱいいますよ。(中略)ああいう誰かとくっつきたいけど自分がないっていう人、どこにでもいると思いますけどね」とのこと。自分というものを持たず、出会うもの、人によって変化するのがカオナシという存在なのです」

油屋の従業員たち

油屋の従業員たちの大半が、男はカエル、女はナメクジをモデルにして描かれています。このことついて宮崎駿監督は「僕らの日常ってカエルやナメクジみたいなもんじゃないかと思っているんです。自分も含めて難しいことを言ってるカエルのようなものだと思ってますから」と語っています。

宮崎監督から見る人間の日常が表現されたのがこのカエルやナメクジのようなキャラクターたちなんですね。

ヒロインとなった千尋

最初は階段すらも這うようにしてソロリソロリと降りていた千尋が、ハクを救おうと危険もかえりみずに必死に走るこのシーン。作画監督の安藤雅司さんによると、「差し迫った状況に出くわした時に非常に能動的な行動に出るところ」は宮崎駿監督の理想像が反映された姿なのだと言います。

決して類まれな力を持った生まれながらのヒロインではない千尋。このシーンでは見るものを皆くぎづけにするぐらい魅力的なヒロインですよね。

竜の作画

竜という幻想の生物をいかにリアルに動かすか、スタッフたちは当初かなり戸惑ったと言います。実は、ハク竜がニガダンゴを飲んで暴れ苦しむこの動き、絵コンテには「まな板に留められたうなぎ」と描かれていました。確かにうなぎのような動きです。

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釜爺の声優

釜爺「あの子は千尋というのか……いいなぁ、愛の力だな」

数々の印象的なセリフを吐く釜爺の声は、🎙菅原文太さんが担当しています。「愛というセリフをいやみなく言える人はこの人しかいない」という鈴木敏夫プロデューサーの推薦により決まったそうですよ!

釜爺のセリフについて

釜爺「手ェ出すんならしまいまでやれ」

「手を出すならしまいまでやれ」「人の仕事をとっちゃならねえ」という釜爺のセリフは、デジタル化で仕事の領分が合間になった当時、宮﨑さんが感じていたことでした。

髪を結わくシーン

今作の作画監督のひとり、賀川愛さんによると、千尋が髪を結わくこのシーンは宮崎監督がこだわって直していたそうです。賀川さんはこのシーンでの髪を結わく表現について「男じゃないと描けない」と語っています。この世界での千尋の変化を感じるシーンでもありますね。

ちなみにこの紫色の髪留めがこのあとのシーンで重要な役割を持ちますので注目です!

約束の場面

千尋「またどこかで会える?」
ハク「ウン、きっと」
千尋「きっとよ」
ハク「きっと。さあ行きな、振り向かないで」

髪留め

この髪留めだけが、千尋が不思議な世界にいたことの証拠になりました。宮崎駿監督は「あの世界は全部夢だったというふうにしたくなかった」と語り、そのために残したのがこの髪留めだったのだと明らかにしています。

最後に一度だけトンネルを振り返る千尋の眼差しに応えるように輝く“たったひとつの証拠”。この紫色の髪留めだけが千尋の不思議な冒険のことを知っているのです。

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「千と千尋の神隠し」Q&A

2022年。金曜ロードショーで「千と千尋の神隠し」が放送されました。その中で、金曜ロードショー公式Twitter(@kinro_ntv)が視聴者から質問を募集。

その質問にスタジオジブリ公式(@JP_GHIBLI)が答えていました。

公式からの回答が知れるというまたとない機会。知れば100倍千と千尋の神隠しが面白くなる質疑応答をご紹介します。

Q:どういう理由で『千と千尋の神隠し』というタイトルに決まったんですか?
また他にタイトル候補はありましたか?

A:1999年11月2日に脱稿した企画書の段階では「千の神隠し」でした。ある段階で、この映画は千尋の話だからと「千と千尋の神隠し」というタイトルになりました。
Q:ジブリパークにあのトンネルを作る予定はありませんか?

A:ジブリパーク絶賛建築中の吾朗さんに聞いてみました。
吾朗さん「『あの作品』の『あのトンネル』は、つくっていますよ〜(笑)」
Q:千尋に対してお母さんがちょっと冷たい感じがします。何か理由があるのか、もともとクールな人なのか、 ずっと気になってます。

A:作画監督の安藤雅司さんは、宮﨑作品に出てくるお父さん、お母さんイメージではなくしたかったと語っており、「クールで家族の和が乱れるところにいない人」を意識して設定したそうです。
Q:主人公はどうして千尋という名前になったのでしょうか?

A:千尋は当時10歳前後だった宮﨑さんの友人たちがモデルです(名前の一部も)。初号試写のあと、宮﨑さんは誰よりも早く、その子たちの感想を聞いていました。
Q:この作品を作るにあたって参考にした物や場所など、詳しく知りたいです。

A:「ここ」と特定された場所はありません。宮﨑さんはかつて訪れた場所を回想し、思い出せないところを想像しながら描きます。
冒頭に登場する不思議な町の飲食店街は、有楽町や新橋の歓楽街をイメージしながら描かれたそうです。
Q:釜爺と働くマックロクロスケは同種ですか?それとも似て非なるものですか?

A:マックロクロスケの正式な名称は「ススワタリ」。絵コンテにもそう書かれていますので、同種といっても間違いではなさそうです。当初はお米やゴマが好物という案がありましたが「金平糖」が大好物ということになりました。

Q:リンのように人間の姿で描かれているキャラクターは人間なのですか?それとも他の生き物なのですか?

A:湯屋の従業員は、男性はみんな蛙男、女性はナメクジ女です。これは、ジブリに入った新入社員にとっては、おじさんたちがみんな同じに見えるということの象徴だそうです。
リンは近しい先輩なので、人間に見えるのかもしれませんね。そういうこと、ありませんか?

Q:お風呂でぎゅうぎゅうになっているひよこ達の詳細を知りたいです!

A:「オオトリさま」というヒヨコの神様です。
ちなみに同じくお湯に浸かっているのは「牛鬼」です。
宮﨑さん曰く、「今の日本の神様は大変だよなぁ」と思い、神様や妖怪が疲れを癒す湯屋が生まれたそうです。20年後の今はもっと湯屋が繁盛しているのかも……。

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Q:おしら様はなぜ上の階までついてきたのですか?

A:千尋に興味をもって一緒にエレベーターに乗りましたが、湯婆婆の部屋が意にそわなかったようで、すぐに降りてしまったようです(ちゃんと絵コンテに書いてあります)。

Q:湯屋の世界は大体今から何年前の設定なんですか?

A:幕末から明治時代初期に流行した「疑洋風」の建物がモデルとなっていますので、それ以降という解釈はできますね。
実際のモデルは、スタジオジブリです。ジブリで働くには最上階にいる鈴木さんのところに行って「働かせてください」と言わなければなりません(笑)

Q:千尋がおむすびを食べる前、花の間をすり抜けていくシーンの、花の洪水のような雰囲気が凄く好きです。
あそこだけ表現の手法を変えていますか?

A:あのシーンは、絵の具で描いた花をコンピューター上で奥行があるようにアニメーションさせています。
Q:ハクが渡したおにぎりはしろむすびな気がしたのですけど中身は入っていたのですか?

A:絵コンテには「おにぎり(のりなし)3つ」と書かれています。
具が入っていたかは想像にお任せします(ワサビが入っていたわけではありません)。

ハク「いつもは千でいて 本当の名前はしっかり隠しておくんだよ」

Q:ハクはだいたい何年くらい生きてるのでしょうか?!見た目は少年ですが…!

A:外見は12歳くらいとなっていますが、実年齢は不明です。湯婆婆が寝ている昼間は優しいのですが、夜は冷たい。宮﨑さん曰く、千尋は管理職に恋したようなもの。
「昨夜のあれはなんだったの?」

ハク「私のことは、ハクさまと呼べ」

Q:カオナシの動きは少し猫っぽい動きなのかな…?と個人的に思ってるのですが、参考にした動物等はありますか?

A:参考にした「動物」はありませんが、当時のスタッフは「誰もが持っている執着心、人の病んだ部分を集約しているような気がした」と語っています。

Q:湯屋のお札の格付けが知りたいです!何種類あって、春日様はどのランクの札だったのか気になります。

A:格付けはありませんが、各々の札でお湯の効能が違います。

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Q:カオナシは神様ですか?湯屋に入れてもらえなかった理由はありますか?

A:カオナシは神様ではありませんが、「みんなの中にカオナシはいる」と、当時宮﨑さんは発言しています。

Q:ジブリスタッフさんたちに千尋には特別な想いを持っている方が多かったりしますか?
20周年の時、スタッフ同士で何かお祝いなどはありましたか?

A:スタジオはいわゆる「周年記念」をやりません。
過去を振り返らず、目の前のことをやっていこうというのが、宮﨑さん、鈴木さんの考えです。
Q:劇中に登場する料理は大抵一度は作られるそうですが、千尋が頬張っていたあの大きなあんまん(肉まん?)も手作りされたのですか?

A:登場する食事をすべて作ることはありません。宮﨑さんは「映画に出てくる食べ物はたいてい昔つくって食べたもの」と語っています。
ちなみにラピュタやハウルに登場する目玉焼きは、学生の頃、長旅から一文なしで帰宅して、お腹ペコペコで作った記憶をもとに描いたそうです。
Q:どうしてカオナシという名前なんですか?

A:当時の作画打ち合わせで、湯婆婆、カオナシ、千尋のすべてが「個人の一面」であると宮﨑さんが語っています。
人はみんないいところも悪いところもある。一面的に描くことが出来ない人間の象徴として、カオナシというキャラクターを生み出したのではないでしょうか(真面目に答えてみました)。
Q:海外での公開時、和の神様・神隠しなど日本ならではの概念が、どの様な反響・感想だったのか気になりました。また、制作時に海外の反応も考えられて作られたのでしょうか?

A:国によって様々です。カオナシの登場で「シーン」となる国もあれば、爆笑に包まれる国もありました。宮﨑さんは海外の反応を意識して映画を作ることはありません。鈴木さんは「日本人が日本人でしかできないものを作れば、それがグローバルな作品になる」と語っています。
Q:坊はなぜあんなに大きく描かれているのですか?

A:子どものまま大きくなってしまった……という象徴です。
湯婆婆は坊にお金がかかってしょうがないそうです。
また坊の声は体の大きさを表現するために、3本のマイクで収録し、スクリーンサイズに対応した作りにチャレンジしているそうです。
Q:『千と千尋の神隠し』は数々のアニメで声優をつとめる神木隆之介さんの声優デビュー作です。オーディションだったため自宅で声を録音してテープを送ったあとジブリのスタジオへ呼ばれたとお聞きしました。神木さんを坊の役にキャスティングした理由をお伺いしたいです。

A:当初坊の声は、身体の大きな方々が候補としてあげられていました。当時8歳の神木さんの声を聞いた瞬間、宮﨑さんの顔がほころび「こっちだよ鈴木さん!」と叫んで決定しました。

Q:ユバーバとゼニーバの見分け方を教えてください。

A:イメージボードの段階では、銭婆と湯婆婆で明確な違いがありました。絵コンテの段階で、そっくりにしたほうが良いと考えたようです。あるスタッフは「湯婆婆は胸元にイボが1つ銭婆は胸元にイボが4つ」と発言しているそうですが……確認できませんよね(笑)

Q:釜爺は銭婆のことを恐ろしいと言っていますが、劇中では優しいおばあさんです。釜爺はなぜ銭婆のことを恐ろしいと言ったのでしょうか?

A:優しく見える人が、怒ると一番怖いのです

Q:「お客様とて許せぬ!」のシーンは、なぜドラゴンボール風にしたのですか?なぜ湯婆婆はあんな弾を打てたのですか?

A:絵コンテには「ドラゴンボール風」と書いてありますね(笑)
なぜ弾を打てたかは定かではありませんが、「湯婆婆は空中遊泳できるおばあさんなんです」と宮﨑さんは言っていました。

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Q:電車についての質問です。
昔は行きと戻りがあったのに、行きっぱなしになってしまったのには理由があるのでしょうか? 何か設定があれば教えて頂きたいです。

A:作画打ち合わせの時、宮﨑さんは「湯屋の従業員はみんなお金を貯めて橋の向こうの町に店を出すのが夢なんです。レジャーには行くのかな?でも、電車に乗ったら二度と帰ってこれなくなるしなぁ」と発言しています。
Q:作画に一番時間がかかった場面はどこですか?

A:キャラクターが多ければ、時間がかかりますし、このカットに時間がかかっていたとは一概に言えません。一番かは不明ですが、千尋の細かい仕草を宮﨑さんは直すことが多く、特に千尋が銭婆からヘアゴムをもらって髪の毛をゆわくシーンは懸命に直していたそうです。
Q:一番難しかったアフレコのシーンはどこですか?

A:釜爺演じる菅原文太さんは、ゆっくりたっぷり話されるので、尺に収めて頂くのが大変でした。柊瑠美さんは「一本ね。一本じゃ花束って言えないわ」の「一本ね」に苦労していました。そして、入野さんが何度も挑戦したのが「ニギハヤミコハクヌシ」です!
Q:ハクの本名の「ニギハヤミコハクヌシ」は、漢字でどう書くのでしょうか?「琥珀川」なのか「小白川」なのか、気になっています。
「ニギハヤミ」の意味があったら知りたいです!

A:設定上はカタカナ表記ですが、「ニギハヤミ」という名前は、飛鳥時代に蘇我氏と争って破れた物部氏の祖先といわれる饒速日命(ニギハヤビノミコト)や、川の神で龍の化身でもある速秋津彦(ハヤアキツヒコ)など複数の神を合成したものだそうです。

Q:千尋はどうやって、最後豚の中にお父さんとお母さんはいないと見抜いたのですか?

A:理由は定かではありませんが、ぜひ、宮﨑さんが大きな影響を受けた「クラバート」という児童文学を読んでみてください。

※別のインタビューで宮崎監督は「千尋のような経験を積んだあとでは、お父さんとお母さんを豚の中から見つけることは出来て当然」と話していました。

参考 「Q:千尋はどうやって、最後豚の中にお父さんとお母さんはいないと見抜いたのですか?」 ジブリ「A:理由は…」 https://sanblo.com/2ch_jiburi_tihiro/

Q:最後で千尋の髪飾りがきらりと光るのは何か理由があるのでしょうか?

A:あの髪飾りが湯屋で千尋が働いたという唯一の証です。
それを印象づけるための演出だといえるのではないでしょうか。

Q:千尋が不思議の街に迷い込み、湯屋で働き、トンネルを出るというのは何日くらいの出来事だったのでしょうか?

A:鈴木さんは、三日説を唱えています。
お父さんとお母さんが、何事もなかったように車に乗り込む時、車の中は埃だらけになっていますので、トンネルのあちらとこちらでは、時間の経過が違うのかもしれませんね。
Q:トンネルが行きと帰りで違うのはどうしてですか?

A:美術スタッフの吉田昇さんに聞いてみたところ、「時間の経過によるためです」と答えてくれました。と……いうことは「三日説」は崩れる……?
Q:千尋とハクはその後出会えたのでしょうか?

A:ハクは千尋が元住んでいた家の近くを流れる川の主でした。
千尋がその川を訪れることがあれば……。

※ただしすでに川はマンションで埋め立てられているという・・・。

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ちょっとしたエピソード

オクサレ様

オクサレ様の中から自転車が出てくるエピソードは、実際に宮﨑さんが川掃除をしていたときに起きた出来事だそうです。

こんにゃくクッキー

当時、アフレコはスタジオジブリの試写室で収録していました。演者とスタッフが同じ空間での作業だったので、お腹が鳴らないように、宮﨑さんはコンニャククッキーを食べて、お腹の音をおさえていました。

夏木マリさん

夏木マリさんが、「千!」と叫んだ時に試写室の照明器具が共振して音が出たため、リテークになった事もありました。さすがの声量……!

カオナシの声優

カオナシのアフレコは爆笑の連続。
「もっと悲しい『あっ』を下さい」
「あっ…」
「もっと悲しい『あっ』を」
「あっ……」

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