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【FGO】第一特異点 邪竜百年戦争 オルレアン「救国の聖処女」【たらればさん感想】

ツイッターで有名なたらればさんが、Fate/Grand Order Lostbelt 第一特異点 邪竜百年戦争 オルレアン 「救国の聖処女」の考察・感想を呟いてらっしゃいました。

たらればさんのFGO感想としてはこれが初となります。とても勉強になる内容です。


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たらればさんがFGOを始めた経緯

紫式部が実装されたときいて興味をもつたらればさん

ところでこれは特に深い意味はなく一般論として知っておきたいなということで伺いたいのですが、FGOってどうやって始めればいいんですかね。

FGOを始めたたらればさん

ただいま勉強しながらフランスを救っております。マリー・アントワネットの造形すげえな。。。

・FGO、わたくしなぞまだ序盤中の序盤でチュートリアルみたいなもんだとおもうんですが、世界観が広大&深すぎて、時間が無限に吸い取られてゆく感覚があるんですけど…皆さんこの感覚を味わいながら進めてるのでしょうか??(ただいまオルレアン攻略中)

・「この感覚……いつかどこかで味わった気が…」と記憶を探って思い当たった。初めて国会図書館を訪れた時だ。。。。。(寝不足になりますねこれ…。。。)

・皆さまの貴重なアドバイスに従ってイベントを周回しているんですが、サポートで入ってくれるイスカンダル王が偉大すぎて、一言でいうと仕えたい。

たらればさん・オルレアン感想

オルレアンを進めるたらればさん

●FGO、限定イベントの合間に少しずつ本シナリオを進めてるんですが、セリフ回しとか史実の織り交ぜ具合とか、すごくしっかり作ってあってスキップできずにじっくり読んで、そのうえたまに読み返したりなんかしちゃったりして、この沼は深いばかりでなく粘度が半端ないですね…。。。

●オルレアンの9節「小休止」とか、ちょっと油断してたらマリー・アントワネットとモーツァルトのプロポーズ話に触れて「君がフランスに恋したんじゃない、フランスが君に恋したんだ(→そしてだからこそ憎んだ)」とか、「人間は汚いし、音楽は美しい(→そしてどちらも愛することはできる)」とか、物語としてぐいぐい来る…。。。

●これたぶん、セリフを中心に物語を構成する「ゲーム」ならではの面白さなんだろうなあ…(演出技法としては「戯曲」の書き方なんだとおもいます)。

●第11節のモーツァルト、「何かを愛することは(権利や資格ではなく)義務である」、「君が世界を作るのではなく、世界が君を作るんだ(そしてそれを拡張する)」

●これ、どちらも深い言い回しだなー、と思って、はたと気づきました。これ、キャラ設定に「シニカルで反語が好きなキャラ」の設定なのか。

●ええと、分かりづらいか。最初は単純に「いいセリフだなー」と思って読んでいたんですけど、そうではなくもう一段深くて、ああいうセリフはあくまでモーツァルトのキャラ造形であって、この作品のテーマでも作者の言いたいことでもない、というところが、さらに作品に深みを出してるんですねー。

オルレアンの構成について

●この作品、構成が天才的ですよね。先ほどの「君がフランスを愛したのではない、フランスが君を愛したのだ(だからこそフランスはマリー・アントワネットを憎み、殺した)」というモーツァルトの史実解説は、この後に「フランスそのもの」であったジャンヌ・ダルクにマリーが殺される伏線なんですよね。

●「世界を許すマリー・アントワネット」と「自分だけを許さないモーツァルト」というキャラ造形に、ジャンヌ・ダルクの闇堕ちを振りかけようと考えた作者、すごすぎる。

●しかもこれ、プレイヤーは見ていることしかできないという立場であって、まさに別世界の聖杯戦争なんですよねー。すごいなーー…。。

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オルレアンのテーマは「赦し」

●終わった…。。。オルレアン終えました。そうかー。。全編通して、この章のテーマは「赦し」だったんですね。。それぞれが心に抱えている何かを赦す(または許される)姿を描いているパートだったんだなー。。。

●うむむ、、しかしこのペースであと6章、、大丈夫かな。。とりあえず素材集めます。。

ジャンヌ・ダルクについて

●半年前にFGO第1部1章「オルレアン」を踏破した頃は、わたくしまだシナリオに編み込まれている史実理解の一助になる参考文献を挙げる…という意識がありませんでした(すばらしいシナリオだった)。

●とはいえつい先日ジャンヌ・ダルク(ルーラー)の幕間の物語に感動しまして、何冊か読んだなかで『ジャンヌ・ダルク 超異端の聖女』が特に史実ジャンヌ初心者向けにすばらしい参考書だったこともあり(わくわくする筆致で一気読みしました。超お薦め)、この本の内容とともにFGO内で(アーサー王と並び)特権的な地位で扱われるジャンヌについて、ざっくり紹介してみます。いざ。

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まずは上掲書の冒頭を紹介します。

「フランスの一都市オルレアンでは、五八〇年も前から、町を包囲していたイギリス軍が撤退して町の城門 (中世の都市はみな要塞都市だった)を開けた日を毎年記念している。宗教戦争があっても、革命があっても、それは欠かされることがなかった。」

「記念の行列の先頭に立って歓呼を受けるのは、颯爽と白馬に乗って甲冑をまとい、王の旗をもった若い女性である。この女性は、フランスの最初の救国のヒロインであるジャンヌ・ダルクを表しているのだ。」

「フランスの歴史の中で、人々は、このジャンヌ・ダルクの出現によって初めてフランスという国を意識した。ジャンヌの「救国」が 「国」を生んだのだ。」
『ジャンヌ・ダルク 超異端の聖女』講談社学術文庫刊・竹下節子著

(これが冒頭ですよ。わくわくするでしょう?)

ジャンヌ・ダルクの歴史

●ジャンヌ・ダルクは、ご承知のとおり、ある日「パリを追われた王太子を戴冠させ、フランスを救え」という神の声を聴き、当時分断されていたフランスをひとり横断し、王太子(のちのシャルル7世)を戴冠させ、オルレアン包囲戦で敵(イングランド軍)を打ち破った乙女(自分でそう名乗った)です。

●ジャンヌが闘った「百年戦争」とは、フランスが分断され、イングランド勢力に塗りつぶされる間際の傾国の危機でした。

●ジャンヌはそんな状況下に突如現れ、目覚ましい戦果をあげて王と国を救い、わずか2年後には王から疎まれてイングランド軍に売られ、異端審問にかけられて火あぶりにされるわけです。

●そのいっぽうで、ジャンヌは死後25年たって復権裁判で名誉が回復され、さらに500年後には「聖女」としてバチカンから列聖されます(この措置は、第二次大戦で枢軸国側に理解を示したことで関係が悪くなったバチカンとフランスの関係改善の外交手段としての「聖女認定」であったと言われています)。

●(いきなりかなり話がずれますが、この「大戦後の政治的配慮によるジャンヌ列聖」について、上掲書では、「神を人にした日本(天皇の人間宣言のこと)と、人を神にしたフランス」という対比で少しだけ語られており、おおお、なるほど興味深いなーと感銘を受けました。閑話休題)

フランスの象徴としてのジャンヌ・ダルク

●のちにナポレオンが自らをジャンヌ・ダルクになぞらえ、シラク元大統領が極右政党の批判に引き合いに出すなど、ジャンヌは時代ごとに「フランス」のアイコンであり続け、歴史的、文学的、宗教的だけでなく、政治的な「物語」でもあるわけです(ちょうどイングランドにとってのアーサー王のように)。

●いまもフランス国内のチャペルの多くには、甲冑姿で旗を持った少女のモチーフが数多く飾られており、「神の声を聴く」というフレーズは特別な意味を持っています。

●それは「フランス」という単語が女性名詞であり、パリのノートルダム大聖堂が聖母マリアを祀った教会であることと無関係ではありません。

●「神の声を聴いた少女が王から甲冑と旗を賜り、国を救い、イングランド軍に火あぶりにされたのち、復権して聖女認定された」という物語は、その運命が(磔刑に処され復活した)イエス・キリストになぞらえられ、かつフランスが神と特権的な関係(何しろ直接声を聴いた)にあることを意味します。

●FGO内でのジャンヌが原則として甲冑に身を包み旗を立てて戦うのは、それがともに(史実の中で王から賜った)彼女のアイデンティティに根ざしているからなんですね。

●いっぽうで、こうした史実を踏まえると(ジャンヌの甲冑姿(男装)や旗を立てるモチーフに強い物語的な意味があるからこそ)、(そしておそらく「そういう効果」を狙って)FGOでは「【それ】を脱いで水着やドレス姿になる」という演出が、より劇的になるのだろうなぁとも思います。

●「新宿」も「鳴鳳荘」も「サバフェス」も、よかったですよね…。。ああ、知れば知るほどオルタがほしくなる…。。。(沼)

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運命(死)の受容の物語

●数えきれないほどの演劇、小説、映像でモチーフにされてきたジャンヌ・ダルクは、多くの作品内で、火あぶりにされる直前、運命を受け入れるシーンがあります。

●イエスの名を呼びながらその運命を迎え入れる姿は、終焉というよりも「フランスのアイコン」としてのスタート地点だったといえるでしょう。

●つまり、火刑台に縛られ、生きながら焼かれる救国の戦士は、その「運命(死)の受容」までも含めて、物語なのです。

なればこそ、もし彼女自身にいま話を聞くことができたなら、ジャンヌ・ダルクは何を語るのか。ああ、ジャンヌ(ルーラー)の幕間、全人類に見てほしい。

●また、こうした史実を知ると、FGO第1部第1章「オルレアン」で、フランスを愛し、フランスから糾弾され、断頭台に立ったマリー・アントワネットが、このような背景を持ち火刑台で焼かれたジャンヌ・ダルクの手にかかるというシーンの「重み」が激しく増すのではないでしょうか。

●マリー・アントワネットとジャンヌ・ダルクが並び立つことで、そこに「人の業」や「文明」、王や民衆に対する強烈なアイロニーが生じるわけですね。

●いやー、このシナリオをよりによってゲームの冒頭に置くとは。FGO、つくづく恐ろしい作品だと思います。はい。

ジャンヌ・ダルクまとめ

まとめます。

●フランスにとってのジャンヌ・ダルクは、特別な中でも特別な存在であり、それはやはりどこかイングランドにおけるアーサー王と通じるところがあって、またたとえば日本人にとっての神武天皇と坂本龍馬と源義経を足して混ぜて割ったようなイメージでしょうか。ううむ、全然違う気もする。

●あとこれは蛇足の余談ですけども、今回ジャンヌ・ダルクの本を何冊か読んで、はたと『風の谷のナウシカ』マンガ版・宮崎駿著のクシャナ殿下は、その異名(「トルメキアの魔女」)や王旗を掲げて傷ついた仲間の騎士に肩を貸し戦う姿など、おお、これジャンヌ・ダルクがモチーフなんだなと気づきました。

▼これですね。ドルク攻城戦、もう1000回くらい読んでます。超かっこいい。

●攻城戦で活躍したり、騎兵を率いたり、王に裏切られたり。

●クシャナさま、大好きなキャラクターなのに、どうしていままで気づかなかったのか。不明を恥じますが、ともあれ、今回あれこれ勉強したことでジャンヌ・ダルクにますます思い入れが強くなったし、好きになる気づき満載でした。

(了)

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