誰に言っても信じてもらえない話 第4話
38 :2ー1:2005/06/20(月) 04:27:12 ID:wOcgFxBr0
仕事が早く終わった日は、決まって民家の立ち並ぶ道を通った。
古い家の小窓から、夕食の仕度が漂ってくる。
「お、今晩はカレーですな」と、ひとり微笑んで通り過ぎる。
この変な習慣が身について、かれこれ一年経つ。
遠い昔、子供の頃に夕暮れが色濃くなるまで遊び、母親に
公園まで迎えに来てもらった。家に帰ると、すでに夕飯が
食卓に並べられていた。そんな懐かしい記憶が甦る時
不思議と人は癒され、元気も出る。
魚を焼く匂い、シチューの香り。他人様の夕食だが、なんとも
幸せの匂いに包まれているようで心地よい。
その日も、いつもの道を通ったつもりだった。道半ばまできた時
異質さに気付いた。
これは、昔住んでいた俺の家……。いや、少し違うか。
よく似ているが、造りが同じなのだろう。道を間違えたか?
そんなはずはない。その家以外は、いつもの見なれた民家の風景だ。
家から声が聞こえた。中年の男の笑い声だった。
俺の父もよく冗談を言っては豪快に笑っていた。よく働き、明るい
父親だった。そんな父も、おと年の暮れに癌を患い、仕事への思いも
そのままに、失意のうちに他界した。
笑い声の主は、俺の名を口にした。「明弘のやつ、遅いなあ」
39 :& ◆zmbvi7pbB6 :2005/06/20(月) 04:28:54 ID:wOcgFxBr0
俺は自分が呼ばれた気がして、ここにいるよと答えそうになった。
それほど、父と声が似ていたのだ。
「なにか御用ですか?」
家の前で立ち尽くす俺に話しかけたのは、まだ若い俺の母親だった。
アニメの人形を小脇に抱えた、小さな俺の手を曳いていた。
「いや、別に」
怪訝な顔をして、母は小さな俺を連れて家の中へ入っていった。
驚きと共に、胸がいっぱいになった。おかしなことだが、小さな俺が
今の俺になるまでの出来事が、頭をかけめぐった。
受験に失敗し、喘息を患い、失業し、離婚をした。そして父親を
癌で亡くした。
一言、「がんばれよな」と言いたかった。
もう、ここへは立ち寄らない。そう思い、その場を立ち去ろうとした。
背後で、ドアの開く音がした。ふりかえると、母が立っていた。
母は俺に、少しだけ頭を下げ、うなずくように挨拶をした。
その表情は穏やかで、警戒心を感じさせなかった。
俺もつられて、ゆっくりと頭を下げ、返した。
母はそのまま、無言で家に入っていた。
「これから先、頑張ってください。何があっても気を落とさないで」
そう、心の中でつぶやいた。
同時に、今つぶやいた言葉が、母の声となって、頭の中でリピートした。
夕暮れはいよいよ濃く、空の彼方はまだ美しく焼けていた。
40 :本当にあった怖い名無し:2005/06/20(月) 04:34:44 ID:VBouAcmT0
・゚・(ノД`)・゚・。
41 :本当にあった怖い名無し:2005/06/20(月) 04:44:26 ID:RPQYsxl3O
>>38-39
ん?それ実体験か?
まあコピペぽいがいい話や