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師匠シリーズと同じ作者。
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?5
592 :ウニ:2001/06/19(火) 22:36
かなり昔の話ですが、記憶が確かな限り実話です。
小学校のころ、カブスカウト(ボーイスカウトのひとつ下)の合宿で、
お寺がやってる山の中の民宿(?)に、夏休みに泊まりに行ったときのこと。
そのお寺には珍しい『笑い地蔵』というやつが沢山あって、その笑い顔だけで結構怖かったんだけど、
そこの住職が夜に本堂で怪談をし始めて、ビビリの僕は思わず耳を塞いでいた。
怪談話がやっと終わって、就寝の時間になった。
僕たちの班は四人部屋で、2段ベットが2つあるだけだった。
さて寝よう、という段になって、部屋の前を別の班の奴らがヒソヒソ話をしながら通りすぎた。
「・・・この部屋よなあ・・」とか言っていたので、気になって問い詰めると、
さっきの住職の怪談は、この部屋の窓の真下にある寺の蔵(だったと思う)にまつわる話だったそうで、
この部屋にも、夜中変なことが起こるとか言っていたそうである。
怖くなって、具体的な話を聞かずに部屋に帰ったら、
よりにもよって同じ部屋の3人も、住職の話に耳を塞いでいたという。
そうして、怖がり男ばかりの部屋にも引率のリーダーがやってきて、「消灯して寝ろ」と言うのである。
四人とも中途半端に知ってしまってかなり怯えていたが、
同じベットで寝るというのも情けない話だったので、仕方なくそれぞれのベットで眠りに入った。
僕は寝相が悪かったので下のベットを使っていたのだが、怖くて眠れたもんじゃなかった。
しかし昼間さんざん遊びまわっていたので、疲れがドッと出てきて、いつの間にか眠っていた。
で、夜中体に衝撃が走って目が覚めた。
ああ、ベットから落ちたんだと気付いてから、のろのろとベットに這い上がろうと手探りしていたら、ない。
ベットがない。
593 :ウニ:2001/06/19(火) 22:40
視力が悪い上に暗やみだったので、事態を把握するのに時間がかかった。
僕は部屋の両端にある2段ベットのちょうど真ん中、つまり部屋の真ん中の板張りの上にいたのだ。
なんでこんなところに?あの衝撃は確かに落下した時の衝撃だったのに。
ぼおっとした頭のまま自分のベットにもどると、ジワジワと怖さが湧きあがってきて、
「おい」という声に心臓が縮み上がった。
「おい、K(僕の名)、起きとるんか・・・」
隣のベットのSの、ぼそぼそとした小声だった。
内心どきどきしながらも、「どうした」と2段ベットの上に小声で呼びかける。
「ちょう、来て。頼む」
Sが変に押し殺した声でベットの上から言っていたけれど、
こちらは起きてる仲間がいたという安堵感も少しあり、「なんや」と隣のベットに上がっていった。
その立て梯子をのぼる途中でSが言ったのである。
「俺の頭の上のガラス(ガラス窓)、ずうっと叩きよるヤツがおる」
思わず足が止まった。僕の顔がSのベットに半分ぐらい出たところだった。
Sは窓の反対側で、頭からふとんをかぶって震えていた。
そして僕にも聞こえたのである。
コン、コンと。
594 :ウニ:2001/06/19(火) 22:42
そっちを向こうにも、顔が金縛りのようになって向けなかった。向いていれば何が見えたのだろうか。
ともかく僕はその時、梯子をそのままの姿勢で飛び降りてしまい、うまく着地できずに体をしたたかに打った。
そして気を失った、らしい。
朝気がつくと、リーダーとお寺の人が僕を介抱していた。
落ちたときの音では大人たちは気がつかなかったらしく、朝の見回りで床に倒れている僕を発見したらしい。
ちょうど部屋の真ん中だったそうだ。
幸い大した怪我もなく、すぐに普通に歩けるようになったが、リーダーが凄い剣幕で住職に食って掛かっていた。
子どもはそういう話に影響を受けやすいから・・ウンたらカンたら。
昨日の怪談話がやりすぎだったと怒っているらしい。
子どもながらに責任転嫁だと思ったが、住職は平謝りだった。
あとでSに夜の事を聞いてみたら、Sは青い顔をして「覚えてない」と言う。
食い下がったが、結局Sがひどく怯えていることしか分からなかった。
あるいは、僕が落ちたのにすぐ助けなかったから、気まずいのかもしれないと思った。
かわりに同じ部屋のあとの二人から、意外な話を聞いた。
ひとりは、「夜中目が覚めて、窓の外に黄色い煙みたいなのを見た」と言い、
もうひとりは、「夜中、窓をドンドンと凄い音で叩く音を聞いた」と言う。
全員が何らかの異変にあっていたのだった。
この話をしていると大人たちが怒るので、ほとんど話せずじまいだったが、ひとつ分かったことは、
昨晩の住職の怪談は、『夜中この部屋の下の蔵から女のすすり泣きが聞こえる』という内容だったこと。
それとはあまり関係なかったが、とにかく洒落にならない怖い記憶として、僕の脳裏にこびりついている体験だった。