893: 1/2:2012/10/31(水) 00:46:08.52 ID:NQzuTqJcO
ロアルト・ダールの短編「皮膚」
1946年の冬のパリ、みすぼらしい老人が飾り窓の絵に惹かれて、フラフラと画廊に入って行った。
当然、病気の野良犬なみの扱いを受ける。
老人は啖呵を切り、シャツを脱いで背中の刺青を見せる。
刺青は画廊の目玉である、すでに物故した有名な画家の初期のタッチで、サインまで彫り込まれていた。
1913年、画家はまだ画家志望の少年で全然芽が出ずにいた。
老人はまだ男盛りの彫り師で、同郷の少年を可愛がっていて、美しい妻は少年に懇願されてモデルをつとめていた。
酔った勢いで、老人は背中に妻の肖像画を彫らせることにした。
渋る少年に刺青の彫り方を教え、「お前さんの芸術が欲しい」と頼み込んだのだ。
画廊の客は有名な画家の初期作品を見て色めき立つ。
カンヌのホテル・ブリストルのオーナーだという男が、老人に商談を持ち掛ける。
ムッシュー、日光浴はお好きですか?美食は、ワインは?美女は?
うちのプライベートビーチで、うちのお客様に背中の素晴らしい絵を見せていただきたい。
栗のスフレと鴨でも食べながらご相談しましょう。
老人はいそいそとついて行った。
894: 2/2:2012/10/31(水) 00:47:16.29 ID:NQzuTqJcO
数週間後、変わった素材に変わった技法で描かれた有名な画家の初期作品が、
分厚くワニスをかけられてブエノスアイレスで売りに出された。
どこの誰ともわからぬ若い女性の肖像画である。
カンヌにはブリストルという名前のホテルがないのだ。
老人に幸あれ!
どこに暮らしていようと、美食と美酒を楽しみ、美女にかしづかれていることを願わずにはいられない。
895: 本当にあった怖い名無し:2012/10/31(水) 01:11:21.07 ID:upUdrM2M0
老人だったらしわしわになってないかな?
896: 本当にあった怖い名無し:2012/10/31(水) 01:13:37.68 ID:fuzpL4UB0
いやああああああああ
>>895
老人の背中って意外につるっとしてるよ
前面はシワシワだけど…