320:1/3:2013/11/27(水) 21:46:33.12 ID:bc0h7dQeO
リチャード・マシスン「ノアの子孫」
午前3時、車で旅行中のA氏は海岸部の陰気な町を通り掛かった。
【B…/67】と、町名と人口を示す標識がある。
制限速度の標識を無視してスピードを上げた途端、パトカーが追い掛けてきて停止を命じた。
内心舌打ちしながら警官に免許証を渡し、尋問に答える。
(標識が見えなかったのかね、出張なのかね、ああ旅行か云々)
早いとこ罰金を請求しやがれ、と思うが、警官は警察署まで同行を求めた。
勿体振りやがってそんなに都会人が憎いのか、と思いながらA氏は署長と向かい合う。
壁には船乗りを描いた油彩画がある。
町を拓いたノア・B…氏の肖像画だ。
321:2/3:2013/11/27(水) 21:50:54.33 ID:bc0h7dQeO
ノア・B…氏が町に自分の名前を付けたそうだ。
今では住民の姓は全部B…で、他の一族はどこかに行ってしまったとか。
署長は警官と似たような尋問を繰り返し、A氏がフリーのセールスマンで休暇を取って気ままな旅行中、独身で家族は結婚した妹が一人だけ、
それも遠くに住んでいる事を何度も確認した。
A氏が罰金の額を訊ねると、明日判事の前で払っていただく、と留置所に入れられた。
余所者いじめもいい加減にしろ、と思いながら目を覚ますと、豪華な朝食が運ばれた。
バターで焼いた目玉焼きが3つ、分厚く長いベーコン、
本並みに分厚いトーストが4切れとジャムがたっぷり、絞りたてのオレンジジュース。
322:3/3:2013/11/27(水) 21:53:52.43 ID:bc0h7dQeO
コーヒーをおかわりした所に署長が現れ、
判事は病気で外出できないから、と判事の家にA氏を連れて行った。
高台の古い屋敷で、警官や署長と同じ浅黒い肌の女が出迎えた。
A氏は、ノア・B…氏夫妻の大きな肖像画を見て驚いた。
ここで待てと言われて入った部屋は空っぽ。
悪ふざけもいい加減にしろ、と思いドアを叩くと触れない程熱くなっている。
床も壁もオーブン並みに熱い。
…あの肖像画、ノア・B…氏はともかく隣のB…
夫人、歯をヤスリで尖らせた、色の黒い、まるで人喰い人種のような…
そう言えば、途中で『本日バーベキューパーティー』ってポスターを見たな、助けてくれ!俺を食うな!