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5:本当にあった怖い名無し2020/11/21(土) 08:52:46.47ID:h3vi6J1W0
保守がてらブラックユーモアの強い短編作家サキからいくつか
「闇に撃った一発」
ある有力者の貴婦人の屋敷に招待された主人公。
最終列車に乗っていると、同じ車両に乗っていた身なりのいい若い男が話しかけてきた。
「乗り込むときにご友人に「◯◯夫人に会ってくるよ」とおっしゃいましたね。
実は私はその夫人の息子なのですが、財布をすられてしまいました。お金を拝借できませんでしょうか?」
丁寧な言葉遣いとはいえ怪しんだ主人公。
「ところでおたくの紋章は?」
「前足で十字を切ってる獅子の上半身です」
「お母様からお手紙が来たとき、便箋にはグレーハウンドの紋章が入っていましたが」
「あれは母の家の紋章で、父の方が獅子の紋章です」
「実はまだ私は夫人には直接お会いしたことがないのですが、あなたに似ていますかな?」
「ぼくと同じように茶髪ですからすぐわかると思いますよ。
ぼくは一つ前の駅ですからここで降ります。ところでお金ですが…」
乗車口で主人公は駅に降りた若者に言った。
「ははは騙そうとしたってうまくいくもんか。
先週夫人に会ったけどあざやかなブロンドだったぞ。家紋も間違えてるし偽物ならちゃんと調べておくんだな」
列車は動き出し、駅でどなりちらしている若者の声を後にしながら主人公は愉快な気持ちで車両に戻った。
その後、主人公が目的の駅に到着すると、夫人からの馬車が待っていた。
馬車には前足で十字を切っている獅子の紋章がついていた。
主人公が呆然としていると、ほかの車両から降りてきたらしい主人公の親友が声をかけてきた。
「やあ、君も夫人に招待されたんだな。
とても親切なご婦人だよ。
1ヶ月前に茶髪をヘンテコなブロンドに染めちゃったのはどうかと思うけどね。
あれ、どうしたんだ?顔色が悪いぞ。」