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884: 本当にあった怖い名無し 2019/05/27(月) 13:04:40.93ID:RAcfhjaC0
松本洋子の「闇は集う」。
悩みを抱えて死んだ魂が「闇の中のどこかの部屋」を訪れ、部屋の番人に悩みを打ち明ける。
番人の判定次第で、魂は悩みを解決して成仏したり、魔物に食われたり、生き返ったりする。
その中の一話。
(1/2)
主人公は幼稚園児の香住。
不仲な両親から半ば八つ当たりで冷遇されているため、引っ込み思案で気が弱い。
近所に住む一人暮らしの老女の部屋を訪れたり、花屋に立ち寄ることが心の支えだ。
ある日、両親はついに離婚を決める。
実は両親にはそれぞれ恋人がいた。
父親の恋人は、香住の通う幼稚園の女性教諭。
母親の恋人は、香住がよく行く花屋で働く青年。
女性教諭も花屋も香住を可愛がっており、自分達の行いが香住を苦境に立たせていることに罪悪感を感じている。
だが、実の両親の方は香住をまったく省みず、互いに親権を押し付け合っていた。
結局、話し合いで結論が出なかったため、数日の考慮期間を与えた上で香住自身に決めさせることにする。
両親から露骨に邪魔者扱いされ、思い悩む香住。
そんな彼女に追いうちをかけるように、可愛がってくれた老女が脳溢血で死亡。
この件で打ちのめされた香住は、とうとう一つの決断をする。
両親のどちらについていくか決断する日、テーブルにつく父親と母親に香住は言う。
「答えを言う前に、最後に三人で乾杯したい」
面倒がりながらも応じる両親。
だが、乾杯して飲み物を飲んだ直後、香住が倒れる。
なんと香住は自分のグラスに毒物(確か、花屋から盗んだ薬剤)を入れていた。
自分の存在が両親の重荷になっていると悟った上での悲しい行動だった。
嘆く女性教諭と花屋を後目に、両親は「あの子が自分でやったこと」とけろりとしている。
885:本当にあった怖い名無し 2019/05/27(月) 13:11:11.18ID:RAcfhjaC0
(2/2)
その一部始終を「闇の中のどこかの部屋」で死んだ老女が見ていた。
「なんとか助けてあげたい」と涙ながらに言う老女。
「あなたのように天寿を全うした人の場合、時間を巻き戻して生きていた頃に戻すことはできるが、戻すタイミングは死ぬ間際。香住ちゃんが毒を飲む日まで
生きていることはできませんよ」
そう告げる番人に、老女は「それで十分」とにっこり笑う。
かくして時間は巻き戻り、運命通り再び老女は死亡。
と、ここで流れが変わり、香住の家に弁護士がやって来る。
「亡くなったご婦人から依頼を受けました。依頼人は実は資産家で、身寄りがないため、そのすべてを
香住ちゃんに遺すそうです。ご両親は離婚の話し合い中だとか。では、香住ちゃんの親権者が決まってから相続手続きを開始する
ことにしましょう」
かくして、香住の毎日は一変した。
両親はこぞって香住の機嫌を取り、甘やかし、ご馳走やプレゼントを並べる。
自らを奪い合う両親の態度に戸惑う香住。
そして決断の日がやって来た。
ここでも香住の提案で乾杯をするが、飲み物を飲んだ後、倒れたのは両親だった。
グラスからは毒物が検出され、「離婚問題がこじれた末の心中」と結論づけられる。
警察での事情聴取を終え、香住、女性教諭、花屋、弁護士が歩いている。
この騒動を経て、女性教諭と花屋はくっつき、結婚を決めていた。
なお、花屋と弁護士は以前からの友人らしい。
弁護士「お前たちの式には参加させてもらうよ。今回の依頼料、あのばあさんの全財産三万円はご祝儀にさせてもらおうかな」
作中で明言されていないが、老女は死ぬ間際に遺言状を書き、一芝居うってくれるよう弁護士に依頼したのだ。
両親の飲み物に毒を入れたのは恐らく香住で、動機は「遺産目当てで自分を物のように奪い合う両親が鬱陶しくなったから」。
両親の死後、香住はすっかり明るくなり、花屋と女性教諭に引き取られてハッピーエンド・・・・・
という描き方なんだが、どうもモヤモヤした。
このままだと香住は「嫌な相手は殺していい」と覚えたまま成長する。
花屋と女性教諭は、容姿や台詞は「誠実な美男美女」として描写されているが、相手が子持ちの既婚者と知って不倫するような人間。
子ども心になんだかな~と思った。
886: 本当にあった怖い名無し 2019/05/27(月) 18:04:47.30ID:m8+LzV4K0
後味のお手本のような話
まとめかたもみやすかったです
888: 本当にあった怖い名無し 2019/05/27(月) 20:59:08.29ID:qXzeyU1pO
>>885
ありがとう
久々に良い後味悪さを味わったよ