後味の悪い話

【後味の悪い話】幸せ色の空

スポンサーリンク

201:本当にあった怖い名無し:2012/11/12(月) 01:57:40.92 ID:9beG15nE0
講談社文庫「ショートショートの広場1」より
「幸せ色の空」 大懸朋雪

物語はいわゆるディストピアもの(ユートピアの反対)で、
近未来の日本人が完全に政府の管理下の置かれた様子が書かれている。
作中では国民は皆、政府を「神」と崇め、
「神の下僕として働ける毎日」に心から日々感謝し、
自分たちは充実していて幸せだと思い込んでいる。
誰もがこの状態を異常と思わず、
心から下僕であることを喜んでいるのは、
ある手術(脳手術?)が全ての国民に義務づけられているからだ。

202:本当にあった怖い名無し:2012/11/12(月) 01:58:27.83 ID:9beG15nE0
主人公の鈴木は、財産をありったけ注ぎ、その裏金で、
手術済みだということになっており、
彼はまだ自由意志や思想を失っていなかった。
だが街なかには、そういう輩を尋問する役人がいる。
鈴木もそんな役人に声を掛けられる。
表向きは「市民の声が聞きたい」だの
「世間話でもしよう」だのといった名目だが、
手術済みか、まだ手術を受けていない背徳者か、
所々、会話に罠や落とし穴を仕掛けて、ボロを出すのを伺っている。
鈴木はなんとか最後まで、演技を続けた。
尋問も終わったところで、役人が晴れた空を見上げて言った。

203:本当にあった怖い名無し:2012/11/12(月) 01:59:49.98 ID:9beG15nE0
「すがすがしい青空だ」
「まったく」

これが尋問の罠であり、鈴木はまだ手術を受けてないとバレ、
道行く「神の忠実な下僕」たちに押さえつけられ、
最後の自由意志が途絶えていった。

鈴木が目を覚ました時は、すでに手術済みだった。
彼は神の使徒であることの幸福感、充実した生命感を感じ、
これこそが神の御心である手術のおかげだ、感謝する。
もう自由意志を持った以前の鈴木ではなくなっていた。
そうして彼は、晴れわたった空を見上げた。
彼の目には、その空は、血のような赤い色に見えるのだった。

ラスト、鈴木さんのモノローグでの変わりようが鬱。
心まで管理される社会は怖い。 

スポンサーリンク

-後味の悪い話