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508:本当にあった怖い名無し:2007/03/10(土) 09:39:14 ID:rj+4XX240
星新一の「月の光」
ある金持ちは変わったペットを持っていた。
そのペットとは混血の15歳の少女のことだった。
金持ちは少女を赤ん坊のときに引き取り、
大理石の床とプール付きの空間に閉じ込めて育ててきたのだ。
その際、言葉は一切教えなかった。
人間は言葉を得ることで多くの情愛を失ったというのが金持ちの持論だったからだ。
餌を与えるのも自分だけ、召使も含め他の人間をペットに一切接触させなかった。
ペットは金持ちによく懐いていた。金持ちはこのためだけに
15年も歳月をかけたのだった。金持ちは満足していた。
ある日、金持ちの召使のもとに一通の電話が入った。
旦那様が交通事故に逢われて重態とのこと。
召使は困ってしまったが、とりあえず非常事態なので自分がペットに餌を与えることにした。
しかしペットは召使の姿を見た途端、怯えてしまってプールに入ったまま出てこない。
自分がいるとダメなのかもしれないと思い、餌だけを置いてその場を去る召使。
いつもご主人様から手渡しで餌をもらっていたペットはそれでも召使の餌を食べようとしない。
日に日に痩せ衰えていくペット。ペットを死なせてしまったら大変と焦る召使。
いっそのこと医者に診せようかとも思ったが、それはイコール自分が職を失うことなのでできない。
「お前のご主人様は今病院に入院していて意識不明なんだ。お願いだから食べておくれ」
涙ながらに訴える召使。それでもペットは怯えたまま餌に近づこうとはしなかった。
ある日、召使のもとにまた一通の電話が入った。
旦那様lは治療の甲斐なくお亡くなりになってしまったとのこと。
ペットはとても悲しむだろう、しかし伝えなくてはいけない。
重い足取りでペットのもとへ行く召使。ペットは大理石の床に静かに横たわっていた。
ペットの肩に手をかける召使。しかしペットはすでに大理石と同じように冷たくなっていた。
転載元:http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1172561642/