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21: 本当にあった怖い名無し 2021/12/02(木) 00:05:19.77ID:1xRMK1SJ0
『神々の山嶺』という映画が切ない。原作は夢枕獏の小説。漫画版は谷口ジロー。
カメラマンの深町は、ネパールで取材をしていた際に、50年以上昔の旧式カメラを骨董品店で発見する。
そのカメラは「なぜ山に登るのか?」という質問に対して「そこに山が有るから」と答えた伝説の登山家「ジョージ・マロリー」の遺品だった。
マロリーは、当時は前人未踏だったエヴェレストの山頂を目指し、帰らぬ人となっていた。
しかし、「マロリーは遭難して帰らぬ人となる前にエヴェレストの山頂に辿り着いていたのではないか?」とする説も有る。
もし、マロリーのカメラの中に「エヴェレスト頂上の写真」が有るのならば、「人類初のエヴェレスト登頂者はマロリーだった」という事になるこだ。
深町はカメラの中身を確認するが、残念ながらフィルムは入って無かった。
そこで深町はカメラの発見者である人物に会い、フィルムの所在を訊ねる。
発見者はカメラを見付けはしていたが、フィルムの在処は知らなかった。つまり、フィルムは今もまだエヴェレストの何処かに眠っているのだろう。
その時、深町は発見者の正体に気付く。
発見者はネパール人ではなく「羽生」という日本人の有名な登山家であった。
22: 本当にあった怖い名無し 2021/12/02(木) 00:05:56.31ID:1xRMK1SJ0
羽生は人間離れした登山センスと超人的な精神力を持っているが、野心家であるため人格に難が有り、普段から「登山中の同行者は荷物持ちに過ぎない」「もし同行者が死にかけても見捨てる」等と公言していた。
それ故に、実際に登山中に相棒を亡くした際には「相棒を見殺しにした」と噂され、業界では名声と共に悪評が知られている曰く付きの男であった。
数年前、羽生はエヴェレストに挑んだが遭難して行方不明となっており、死んだものとされていた。
しかし、羽生は奇跡的に現地人に救助されており、そのまま日本に帰らず、日本国籍を捨てるような形で現地に帰化してしまっていたのだ。
羽生の目的とは、エヴェレストに挑み続けること。
しかも、「単独」「無酸素(限り無く軽装)」「最短距離」での登頂という前人「未到」の偉業を達成するために。
「エヴェレスト初登頂者の真相」、そして「前人未到の挑戦」、この二つは大スクープに成りえる。
深町はマロリーのフィルム探しわ兼ねて羽生に密着取材することにし、羽生の後を追ってエヴェレストを登っていく。
だが、深町は頭部に落石を食らって負傷してしまい、危うく死にかけるが、そこを羽生に救われる。
その日の夜、テントの中で二人は語らい、羽生の秘めていた悲しい過去(相棒を亡くした事故の真相)が明かされた。
しかし、羽生の挑むルートが前人未踏の断崖絶壁であったことと、頭部の負傷から、深町は同行を断念して途中で下山することとなった。
23: 本当にあった怖い名無し 2021/12/02(木) 00:07:42.56ID:1xRMK1SJ0
下山しながら振り向いた深町は、断崖絶壁をハーケンもザイルも無しにピッケルのみで登っていく羽生の勇姿を、そしてブリザードへと急変していく山の天候を見た。
結局、羽生はそのまま帰って来ず、今度こそ帰らぬ人となったのだろうと思われた。
深町は帰国して暫くは鬱屈とした日々を送っていたが、やがて再びネパールへと渡ると、羽生と同じようにエヴェレストに挑んだ。
過酷な道であったが、頂上付近にまで差し掛かる。
そこで深町は、冷たくなった羽生を発見した。
羽生の手元には手記が有り、彼の最後の言葉が記されていた。
“足が動かなくなったら、手で進め”
“手が動かなくなったら、歯で雪を噛んで進め”
“歯がダメになったら、目で進め。目で、睨みながら進め”
“目もダメになって、本当に動けなくなったら、思え”
“想え”
そして、手記には羽生がエヴェレスト登頂を果たした事も記されていた。
「そうか、あんた、達成したんだな」と羽生の亡骸に語りかける深町。
すると、幻聴なのか、それとも羽生の幽霊なのか、羽生の声が『そうだ』と深町に語りかけてきた。
『そして、ここにはお前が求めていた物も有る』
羽生の示した方向に深町が目を向けると、そこにはジョージ・マロリーの遺体が有った。
『フィルムは、そこだ』
しかし、深町は「そんな物は、もうどうでもいい」と言う。
「あんたを連れて帰る。一緒に帰ろう、羽生」
岡町は羽生を連れて下山しながら、ただ一心に羽生の手記の詩を思い返し続けた。
“思え。想え”