スポンサーリンク
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?3
417 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/02/20(火) 20:09
俺が19歳の頃の話です。
高校は卒業していましたが、これといって定職にもつかず、
気が向いたら日雇いのバイトなどをして、ブラブラしていました。
その頃の遊び仲間は、高校の時の友人グループがいくつかあり、
その日も、その内のひとつのグループの奴の家に集まり、だらだらと遊んでいました。
そのグループの連中は、地元では結構有名な悪い奴らの集まりでした。
俺はケンカも弱いし、バイクも持っていなかったけど、
そのグループのリーダーが幼馴染で、家も超近かったため、たまに遊んでいました。
夜もふけてきたので、俺達は肝試しに行くことにしました。
皆幽霊なんて信じていなかったし、怖がってもいませんでしたが、
行く途中、女の子でもナンパできたら連れて行こう、ぐらいの軽いノリでした。
一人がバンで来ていたので、それに6人全員で乗り込み出発です。
幾つかある肝試しスポットのうち、一番近い所に向かいました。
そこは山の中にある墓場で、頂上に向かって墓場が広がっています。
入り口に降り立ったとき、その墓場の一番上に何か白い影が見えました。
よく見るとそれは2人の人間で、近付いてみると、まだ中学生ほどの少女でした。
髪は長くパサパサで手入れをしている様子はなく、まるで人形の髪のようだと思ったのを今でも覚えています。
顔にも髪がかかり、表情は読めません。
顔のつくりは違いましたが、2人ともそっくりに見えました。
白く見えたのは、夏服のセーラー服姿だったからです。
いったいどこから来たのでしょう。
あの場所から出てくるには、車でもっと山の上まで登らなくてはならないはずです。
なのに2人には、連れがいる様子もありません。
どんどん近付いてきます。
419 :417:2001/02/20(火) 20:14
よく考えたら、ふつうこんな人気のない墓場で、不良グループに遭遇したら向こうも怖いはずです。
しかし彼女達は無表情のまま、俺達の目の前に来て止まりました。
いいようのない恐怖が襲いました。
理屈ではありません。ただ、ぞっとするというのは、このことだと思います。
それは他のメンバーも同じようでした。
「おまえらどっから来たん?」
リーダーのMが聞きました。
2人は無表情のまま、ゆっくりと同時に山の頂上を指差しました。
どっと嫌な汗が吹き出ました。
するとそこに、どこからともなく犬が走ってきました。
しかもその犬、白内障なのか目が白く濁っているのです。
あまりにもタイミングよく現れたので、危うく叫びそうになりましたが、すぐ後ろから飼い主らしきおじいさんがやってきました。
そのおじいさんはこの近くに住んでるらしく、いつもこの道を散歩コースにしているそうです。
おじいさんの散歩に付き合うように、自然に俺達6人と少女達は歩き始めました。
おじいさんと少女達が前を歩き、何か話しをしています。
おじいさんは、土の盛り上がったところをガシガシ蹴飛ばしながら、
「ここ、無縁仏の墓や。そこに卒塔婆がたおれとるやろ」と言いました。
そして又、少女達と言葉を交わすと、俺達のほうを振り向きもせずに去って行きました。
唖然とする俺達の所に少女達がやってきて、初めて口を利きました。
「いまおじいさんに聞いたんやけど、この先にもっと怖い場所があんねんて。
のろいのわら人形がぎょうさん見つかる所。行ってみいへん?」
正直俺は行きたくなかったけど、中学生の女の子が行くというのに、『いや、おっかねえからやめとく』とはいえません。
結局、女の子達をバンに乗せ、行ってみることにしました。
420 :417:2001/02/20(火) 20:16
その間、俺達は色々話し掛けました。なぜあんな所から出てきたのか。
当時女の子をナンパして乱暴し、山の中腹で置き去りにするという『六甲おろし』が流行りだした頃でした。
「もしそんな目にあっているなら、協力できることがあるならするぞ」
Mが一生懸命話し掛けても、彼女達は無表情に前を向きながら首を振るだけで、道を案内する以外は口を利きません。
とても乱暴されたようには見えませんでした。
でも、何か理由があってほしかったのです。あんな山中から、こんな子供が出てきた理由を。
しかし彼女達は、お互いも話さず、たんたんと道を案内するだけです。
とうとう目的地の神社に着きました。はじめてくる所です。
さっきの場所より何倍も不気味な所です。
高い杉の林に囲まれた小さな神社でしたが、彼女達はその神社のさらに奥の杉林に入って行きます。早足で。
Kがつぶやきました。
「あの子達って、あのおじいさんに聞いて、今日はじめてくるはずやんな。
なのに、なんであんなにスタスタ進むんや。
2人とも車の中で一言も相談してないのに、迷いもせず同じ方向に進んで行ってるで」
ぞっとしました。しかし、ここで2人を置いて逃げるわけにはいきません。
慌てて後を追いかけますが、その足の速いこと。大人の俺達が小走りになるほどです。
イキナリ2人が立ち止まりました。黙って目上の高さを指さしています。
見ると指差した先の杉の木に、釘をさしたような穴が無数にあいています。
いえ、よく見回すと、そのあたりの木のほとんどに穴があいています。
そして、とうとうわら人形も見つかりました。
絶句する俺達をよそに、彼女達は相変わらず無表情で、何も言いません。
「もう返ろうぜ、つかれただろ、おまえらも送ってやるから」
Mが恐怖を隠すように言いました。
しかし彼女達はこう言ったのです。
「ここじゃダメだね。もっといいところがあるから行こう」
422 :417:2001/02/20(火) 20:36
絶句しました。
「もうやめようや」
とうとう俺は言ってしまいました。
しかし皆、大の男が中学生に言われて、怖がるわけにはいかないようです。
「分かった、行こうや」
その一言で、少女達はきびすを返すように、今来た道を引き返しました。
慌てて俺達は後を追います。
Kだけが俺の意見に賛成らしく、真っ青な顔をしてブツブツつぶやいてます。
「罠や、罠や、これなんかの罠や。俺達連れて行かれてるんや」
Kの真っ青な顔とブツブツ繰り返す言葉に、今度はKのことまで怖くなってきてしまいました。
皆でバンに乗り込みました。Mがカーステレオをつけようとしても、壊れたのかつきません。
嫌な沈黙が続きましたが、皆口を利きませんでした。ただ少女たちの道案内だけが車内に響きます。
着いた場所は、小高い丘の上にある神社でした。
その神社に着くには、その丘を左右対称に包むようについている階段を登るのです。
左右どちらから登っても、多分同じくらいの距離です。
少女達は無言のまま、それぞれ左右に分かれて登り始めました。
車の中でも打合せはしていないし、降りてからも2人は目配せや合図をすることなく、迷わず別の道に向かって行くのです。
もちろん、その神社に続く階段はうっそうとした林に囲まれ、
普通の女性なら、複数でいても行きたがらないような不気味さです。
その階段を、まだ中学生の少女が、迷うことなく、恐れることもなく、スタスタと歩き出すのです。
明らかにおかしいです。
慌てて俺達も3人づつに分かれて、それぞれ少女達の後を追いました。
俺はガマンできず、前の少女に話し掛けます。
「おまえら、ちょっとおかしいぞ。何であんな処にいたんや。
肝試ししてるにしては全然こわがってないし。なんであんな所にいたんや?」
答えない少女にいらいらしながら、しつこく聞きました。
あまりにもしつこく聞いたせいか、彼女はこうつぶやきました。
「私ら・・・死ぬ場所探してんねん・・・」
そのとき初めて彼女は、俺の目を見ました。
しかし、俺の目を見ているというより、俺を透かしてはるか遠くを見ているような眼でした。
そして、うっすらと笑いました。
その少しあがった口の端に、よだれがかすかに光っています。
424 :417:2001/02/20(火) 20:55
全身に水を浴びたような気持ちです。他のメンバーを見回しましたが、皆真っ青です。
しかし聞こえてはいるでしょうが、この少女の目とよだれが見えたのは俺だけです。
逃げ出しそうになったとき、頂上に着きました。
むこうのグループも、ちょうど反対側からあがって来たところです。
真っ青になったMが駆け寄ってきました。
「聞いたか!!お前等聞いたか!!」
どうやらM達も、もう一人の少女から聞いたようです。
とりあえずまだ帰らないと言う少女達を、バンまで連れて帰りました。
そこで、なぜ自殺したいのかをしつこく聞きましたが、答えません。
「アホなことするな。いじめか?俺らがそいつらシメたるから、はやまるな!」
俺達の問いかけにも、彼女達は首を振るばかりです。
「じゃあ原因はなんやねん」
「・・・べつに・・・」
「別にって!!」
「生きてるんも、もうええって感じやねん」
また、あの遠くを見つめるような無表情です。2人とも同じ顔をするので、ますますそっくりに見えます。
「とにかく、もうこっちも眠たいから、お前等送ってくわ。はよ家までの道言え。送ってったる」
降りるという彼女達に強い口調でMは言い、車を発進させました。
彼女達は地元の子達なのか、帰り道をかわるがわる「右」「左」で告げます。
2人同時に「ここ」と言いました。ハモるように同時にです。
止まった場所には家等ありません。
426 :417:2001/02/20(火) 21:09
「おまえらホンマにここか?家の前まで送ってくぞ」
Mが言いましたが、少女達は「ここ」とだけ言って車を降りました。
そこは、ちょうどさっきの丘の上の神社の裏側のようです。
クネクネとしてきたので結構走ったように感じましたが、そんなに走っていないようです。
もう皆十分気味わるく感じていたし、もう義理も果たしたという感じで、車を走らせようとしました。
その直後Kが、「あれ見てみろ!」と叫びました。
2人の少女は、さっきの神社のある丘の、
裏側にある登り口のような、林の中にぽっかりあいた穴に向かって歩き出しています。
「あいつらまた登る気や」
Mがクラクションを鳴らしました。
すると映画のワンシーンのように、ゆっくりと少女達は振り返りました。
首を少しかしげて、左右対称に。
暗くて目はわかりませんが、なぜかうっすら笑っているように見えました。
でも俺には2人の口の端に、同じようによだれが光っているようで、
思わず「逃げろ!!」と叫んでしまいました。
後は一目散に車を走らせました。Kがブツブツ又何か言ってます。
「だから、あの神社じゃだめだったんだ」
「何がダメなんだよ!!」
思わずいらいらして、俺は叫んでしまいました。
「あの子達の身長じゃ、高い杉の木の枝には届かない・・・吊れないよ・・・首・・・」
ぞっとしました。
「アホなこというなっっ!!気味わりい!!」
他の友人の声もうわずっています。
今まで黙っていたDが、気が付いたように言いました。
「なあ、衣替えっていつや?もう11月やで。あの子ら、なんで夏服のセーラー服きてたんや」
427 :417:2001/02/20(火) 21:10
その後どうなったかは知りません。
確かその日は、皆でMの家にとまり、夕方に夕刊を、恐る恐るチェックしたように思います。
たしか、自殺者発見の記事も、行方不明者の記事もなかったと思います。
ただKだけが眠れなかったようで、ずっと部屋の隅でうつろな目をしていました。
その後、そのグループの奴らと遊ぶこともたまにありましたが、その日のことはなぜか誰も口にしませんでした。
そして、あの日以来、俺はKに会っていません。
もともとそのグループの奴じゃなかったので、他の皆もそのようでした。
ただ俺は、Kがブツブツ言ってた「罠や、罠や、これなんかの罠や。俺達連れて行かれてるんや」を思い出し、
連れて行かれてたらどうしようと思い、そう思った自分自身にぞっとしています。
あの呟きを聞いたのは俺だけだったから。