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ほんのりと怖い話スレ その80
308 :本当にあった怖い名無し:2011/12/07(水) 12:57:02.01 ID:SQHVYLqk0
高校1年生の時だから、もう10年くらい前の話です。
ある土曜日、部活終わって学校から帰ってきた。
時間にして夕方6時半。季節は丁度今頃で、もう全然薄暗かった。
ドアを閉めると家の中は真っ暗で。
台所の電気点けて洗濯物を放って、カバン持って自分の部屋へ行こうと階段上がろうとした。
階段横の仏間を通ると、襖が開け放ってある。
いつもとは違う様子につい中をのぞいた俺。
真っ暗な部屋の中、机に何かが乗っている。
何だろう?と思いながら仏間に入って蛍光灯の紐を引く。
パッパッと蛍光灯が2回閃いて灯りがついた。
見下ろすと机の上に、お客様用の朱塗りの茶菓子の皿に饅頭が乗っていた。
昼間お客でもあったのかな?腹減ってるし食ってもええんかな?と饅頭に見入る。
黄みがかったつやのある酒蒸し饅頭。蒸かしたてのように湯気を噴いている。
湯気?えっ?人差し指で触るとまだ暖かい。
「母ちゃん?」
思わず台所を呼んでみる。
スーパーにパートに出てる母ちゃんの帰宅は通常夜の8時過ぎ。
昼間帰ってお客さんあって饅頭出しっぱなしなのかな?
それにしちゃ饅頭だけってのも妙だ。
母子家庭のうちは兄貴も大学入るとともに家をおん出て、俺と母ちゃん以外に特に出入りする人もない。
309 :本当にあった怖い名無し:2011/12/07(水) 12:58:58.09 ID:SQHVYLqk0
そもそも饅頭は湯気ふくほど暖かい。ついさっき蒸かしたてを買ってきたくらいの勢い。
一体誰が饅頭暖めて食うんだって?一人家の中饅頭を前に問答する俺。
だがどうやっても答えは出ない。
一先ず部屋に上がって荷物を下ろし着替え、母ちゃんの帰宅を待つ。
突然はっ!とする俺。
丁度その前年だかに世田谷一家殺人事件があって、犯人が家の中でアイスを食ったとか言う噂を聞いた事があった。
その話を思い出して急に心細さが増幅。
暫くまんじりともせず漫画などを読んでたけど、意を決して修学旅行土産の木刀握りしめそうっと階段を下りた。
1階の戸締まりを窓ドア一つ残らず確認。完璧に施錠されていて進入の形跡は見当たらない。おかしいな?
取りあえず家を出て、母ちゃんの携帯に着信残し、コンビニで立ち読みしてた。
1時間ほどして母ちゃんから電話。
「今駅前のコンビニいるから」って言うとやってきた。
「何か食べて帰る?」って言うから、それよりお母様聞いておくんなまし、と。
「仏さんの部屋にさ、酒饅頭があってさ、蒸かしたてで湯気出てたんだよ。昼間誰か来た?母ちゃん家帰った?」
「え?それ泥棒とかじゃないの?ちょっと急いで帰ろうっか」って、二人で早足で帰宅。
仏間へ行くと饅頭は無くなっていた。
あれ?確かに饅頭あったんだけど・・・。
家の戸棚とかを急いで確認した母ちゃん、紛失物は特に無いと言う。
310 :本当にあった怖い名無し:2011/12/07(水) 13:00:03.13 ID:SQHVYLqk0
「何だったんだろう。空き巣じゃないっぽいね」
「マジで饅頭あったんだって!嘘じゃないよ!」と俺力説。
「どんな饅頭よ?」
「ちょっと黄色がかって小ぶりでつやつやしてて・・・」
俺の饅頭の説明を首かしげて聞いていた母ちゃん、はっとして「今日何日?」。
「あ、婆ちゃんの命日じゃん!」と。
黄色い酒饅頭は神戸出身の婆ちゃんの大好物で、ことある毎に取り寄せては食べていたらしい。
「ご所望かよ!」
「あーもうこの時間じゃヨーカ堂かコンビニくらいしか開いてないわね。取りあえず饅頭買いにいこっか」と家を出た。
で、ヨーカ堂で一番美味そうな饅頭買って、ラーメン食って帰って、饅頭と線香をお供えしました。
いや、文章にすると全然怖くないですね。
でも、世田谷事件のせいもあって、それがあんまり遠くないこともあって、
もしかして犯人が暖めた-!?と思いついた時は、身震い出てくるほど怖かったのです・・・。
すぐそばにいるだろ!?って。
帰ったら無人の家に熱々の饅頭って・・・。
婆ちゃん食い意地張りすぎだろって、ほんのり怖い?お話でした。