やる夫はアフリカで奇跡を起こすようです その16 「遠い夜明け」
53 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 19:32:49 ID:TLURGRHU0

1960年代、南アフリカの黒人解放運動はほぼ沈静化していた。
シャープビルの虐殺と、それに続く大弾圧によって、
ほとんどの運動家が投獄されるか追放され、
無力化されてしまったのである。
54 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 19:32:49 ID:TLURGRHU0

しかし70年代に入ると、
黒人運動はひとりの天才指導者の手によって
劇的な復活を遂げる。
その指導者の名を、スティーヴ・ビコという。
55 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 19:34:46 ID:TLURGRHU0

アフリカ人であろうと、誇りを持たず生きているものは「黒人」ではない!
それは白人ではないもの、「非白人」にすぎないのだ。
自らの主体を持っていないのだ!
ビコが唱えた思想は、「黒人意識」と呼ばれる。
彼は現在の南アフリカにおける問題は、
黒人が差別されていることではなく、
その差別によって黒人が「劣ったものだと思い込まされている」ことこそが、
一番の問題だと指摘した。
57 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 19:36:58 ID:TLURGRHU0

まずは、俺たちはここにいていいんだということを理解しろ…
俺たちは劣っていないということを、理解しろ…
闘うんだっ…!
そしてそれを打開するために、
まずは自分たちが誇りを持つこと、
そしてアフリカ人に限らず、インド人でもカラードでも、
誇りを持つ者はすべて「黒人」であると主張したのだ。
これにより、黒人意識運動はアフリカ人に限らず、
多人種へのひろがりを持つことに成功した。
64 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 19:59:55 ID:TLURGRHU0

オーッホッホッホッホ!
わかりました、
診療所にはきちんと出資させていただきましょう!
これを警戒した南アフリカ政府に、1973年に自宅軟禁下に置かれるものの、
その後もビコは、ケープ州東部・キングウィリアムズタウンの自宅で
活動を続ける。
前に触れたオッペンハイマーとの接触も、この時期のことである。
65 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:00:45 ID:DUuBFrqU0
あんたが突然アップで出てくるとビビるだろwwww
66 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:02:41 ID:TLURGRHU0

あいつらは、
おかわいそうな黒人たちに
施しを与えるつもりでいやがる。
ためしに、
「そんなに人種平等というなら、
黒人用の施設で生活してみたらどうですか」
って言ってみろよ。
なんのかんの理屈を並べたてて、
絶対に拒否するだろうさ…
そして、ビコが最も強烈に攻撃を加えたのは、
白人内のリベラル派…人種平等派だった。
現在白人として利益を受けている以上、
どうしてもアパルトヘイト体制に加担していることになる。
それを自覚しているのか、と問いかけたのである。
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67 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:05:56 ID:TLURGRHU0

白人リベラル派
なに、このビコとかいう人の主張!
私たちこそが差別主義者ですって!?
このビコの思想に、
大部分の白人リベラルは激怒した。
彼らにすれば、
自分たちが黒人の地位向上のために「戦ってやっている」のに、
それを批判するのはなにごとか、というわけである。
68 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:07:34 ID:TLURGRHU0

だって、
そんな人種差別主義者と会って、
噂になったら恥ずかしいし…
しかし、彼の発言を直接問いただす者は、
誰もいなかった。
そんな黒人至上主義者の話を聞く必要などない、と考えたのである。
73 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:09:59 ID:Et53DxNU0
リベラル派なら、むしろ積極的に話し合いに赴こうとすると思うけど、なんでだろうね?
70 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:08:12 ID:2k4rFzQ.0
自称リベラルへの痛烈な指摘ではあるが、余計な敵を増やすだけな気もするな
76 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:12:09 ID:DUuBFrqU0
自分が今ある立場を相対化しろってことなんだろうなぁ
黒人には「白人に比べて自分たちが弱い立場にいるのは『黒人だから』ではない」
白人には「自分たちが無意識に既得権益に乗っていることを自覚しろ」
自分の立っている土台が何によるものなのか見極めろ、みたいな。
まさに、そういうことだと思います。
72 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:09:58 ID:TLURGRHU0
そしてここにも、ビコの思想に憤激した白人リベラルがいた。

イーストロンドン市
「デイリー・ディスパッチ」紙編集長
ドナルド・ウッズ
75 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:12:07 ID:TLURGRHU0

白人に差別をうんぬんする資格がないとは
なにごとだ!
さてはお前、
黒人至上守護者のテロリストだな!?
ちょっと表へ出ろ!
しかし、ウッズはここでほかのリベラル派とは違う決断をする。
ビコの政治姿勢を問いただすため、直接インタビューを行ったのだ。
もっとも、彼にも目算はある。
彼から過激な意見を引き出し、紙面にて彼を叩くつもりだった。
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80 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:14:50 ID:TLURGRHU0

むろん、全人種は平等であるべきさ。それは大前提だ。
だが現状、白人という1部族が
ほかの多数派を支配しているのが現実なわけだ。
そして、彼らは黒人を弱い立場に追いやることで、
自分たちが優れた民族だと無理に認めさせている。
だとしたら、まず黒人に自らの誇りを取り戻させる。
それが、そんなに間違ったことかい…

なるほどなるほど・・・
しかし予想に反してビコの口からは道理にかなった意見しか出てこず、
ウッズは熱心に耳を傾けるようになった。
会談は激しいものだったが、友好的に終了した。
83 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:16:57 ID:TLURGRHU0
会談後…

記者A
編集長!
ご無事でしたか!?

記者B
テロリストの親玉ですよね?
もう私、心配で心配で…
85 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:19:12 ID:TLURGRHU0

いや、そんなことはない。
すくなくとも、あいつはテロリストではないよ。
会いもせずに決めつけるもんじゃないなあ。
ジャーナリストの基本を思い出したよ。
食いもしないハンバーガーの味を、
どうこう言うもんじゃないよな…
87 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:21:00 ID:TLURGRHU0

あいつは悪い奴じゃねえな。
少なくとも白人で、
ここまで出向いて直接意見を聞いていったやつは初めてだ。
こちらの意見にも素直に耳を傾けるし、
納得できないところはきちんと説明を求める。
たいしたやつだよ。
この会見でお互いに好意を持った彼らは、
以後頻繁に接触するようになる。
90 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:23:29 ID:TLURGRHU0

そうだよなぁ…
黒人だろうが白人だろうが、ハンバーガーを食べたいのは変わらないんだもんな…
一日の終わりの、ささやかなハッピーセット…
ご一緒にいかがですかで断れなかったポテト…
そんな幸せは、どの人種にも保障されるべきだよな…
やがてウッズとビコは親友となり、
ウッズの信条もビコに近いものへと変化していった。
92 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:25:41 ID:DUuBFrqU0
全体的になんかがおかしい…アッハイ
93 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:26:02 ID:YLGJuMBQ0
まあ、今となってはマックは食わずともわかるハンバーガーだがw
96 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:27:39 ID:TLURGRHU0
1976年…

よーう、スティーブ!
シケた顔してんなあ!
このドナルド様が遊びに来てやったぜ!

なんだ、ドナルドじゃねえか!
久しぶりだな!
98 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:28:38 ID:DUuBFrqU0
守りたい、この笑顔
97 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:28:30 ID:TLURGRHU0

まあ、みやげのポテトでも食えよ。
思いっきり冷めちまってるけどな!

…ククク…遠慮しておく…

99 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:29:45 ID:GOO3hBiE0
スティーブ「俺はモス派なんだ」
100 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:30:12 ID:TLURGRHU0

ところで、プレトリアの様子はどうだ…
101 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:32:30 ID:TLURGRHU0

あんまり良かぁねえな。
特に新任のバンツー教育相代理、あいつがヤバい。
アフリカーナー超保守派の切り札だからなぁ。
なにかとんでもないことをやらかしそうな気がするんだ。
ハンバーガー1個1000円とか。
※バンツー教育相…黒人(バンツー)専門の教育大臣
103 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:34:59 ID:TLURGRHU0

…そうか…
だが、こっちも軟禁中の身だ。
表だって動くことはできん。
なにかあった時には、
できる限り政府と戦ってくれるとありがたい。
105 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:36:09 ID:TLURGRHU0

まかせとけ!
ハッピーセットを頼んだ気分でいてくれよ!
なにごともなくすんだら、一緒に朝マックでも食いに行こうぜ!
しかし、ウッズの不安は不幸にも的中する。
108 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:38:04 ID:TLURGRHU0

アパルトヘイトの原因である白人同士の勢力争いは、
この時期もいまだ継続中だった。
政府を握ったアフリカーナーは、公用語を英語とアフリカーンス語の2言語制にし、
アフリカーンスのできない英国系を政府から排除しやすくするなど、
さまざまな方法でアフリカーナーの勢力拡大につとめていた。
前に「言語と教育」章でふれたように、
1つの民族が公用語を握ることは政府を握ることになる。
そのことをもっとも自覚し、それを駆使して勢力を拡大したのが
アフリカーナーという民族だったのだ。
111 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:40:20 ID:TLURGRHU0

この言語政策は、黒人教育にも影響を与える。
実は南アフリカの制度においては、
9つの黒人主要民族すべてで、初等教育は各民族語で行われていたのである。
他のブラックアフリカ諸国では大失敗に終わった政策だが、
南アフリカにはこれができるだけの財力はあった。
ここまでのことができるのはアフリカでは南アフリカただ1国であり、
政府はこれを偉大な成果と喧伝した。
各民族の識字率を向上させる、素晴らしい政策というわけである。
113 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:41:45 ID:3IwCc5wY0
最下位脱出できたじゃん、FC岐阜
114 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:41:46 ID:kofKb1CI0
なんでやFC岐阜関係ないやろw
115 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:42:16 ID:DUuBFrqU0
③残留できない。現実は非情である
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117 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:42:34 ID:TLURGRHU0

しかし、この政策にももちろん裏があった。
各民族に提供されている教育は、
英語やアフリカーンス語での教育に比べて明らかに質が低かった。
そのうえ、教育用の語法整備がなされなかったため、
用語上の問題で教育程度の向上が難しかったのだ。
配分される教育予算も白人に比べ非常に低い。
白人学生一人あたりに比べ、
黒人学生一人当たりに配分される教育予算は、
白人のわずか6.5%にすぎなかったのだ。
当然この状況で、満足な教育ができるはずはない。
120 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:44:30 ID:TLURGRHU0

さらに、各民族語で教育を行うことにより、
黒人各民族間の分断を狙う、という狙いもあった。
各民族ごとに帰属意識を植え付け、
「南アフリカの黒人」としての意識を目覚めさせない、ということである。
結局、南アフリカの教育は、
白人たちのために都合のいい、字くらいは読める労働者を育成する、
それ以上のものではなかったのだ。
121 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:46:13 ID:2k4rFzQ.0
建て前は綺麗だけど内実は黒人差別、という裏表の使い分け具合が実にあくどいな
123 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:47:43 ID:DUuBFrqU0
ここらへんはアフリカーナー官僚のある意味の辣腕ぶりが垣間見える
122 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:46:52 ID:TLURGRHU0

では、頼んだぞ。
君には期待しているのだよ…
さて、この教育政策の一環として、
1976年、英語とアフリカーンス語の授業時間を平等にする法案が成立した。
すべての学校で、両言語の授業時間を等しくしなければならないと定められたのだ。
そんな時期に、フォルスターは保守派のホープである議員を、
バンツー教育相代理の地位につけた。
124 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:48:42 ID:TLURGRHU0

バンツー教育相代理 アンドリース・トリューニヒト
はっ!
お任せください!
トランスヴァール選出の超保守派、アンドリース・トリューニヒトである。
125 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:50:07 ID:mvCnuDUQ0
(アカン)
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127 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:51:41 ID:TLURGRHU0

トリューニヒトは白人の右翼団体、アフリカーナー兄弟団(ブルーダーボンド)の幹部であり、
団体内でもさらに保守派を代表する人物であった。
そしてその勢力をバックに、国会内でも勢力を拡大しつつあったのである。
128 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:53:22 ID:5qf64bSQ0
またうまいこと要素がつながってんなあw
むしろ田中芳樹はこれ見てアレ作ったんじゃないかと思うくらいだw
というより、シトレもそうですけど、
この辺から名前だけ取ってきてるとは思いますよ、銀英伝。
すくなくともシトレとかトリューニヒトとかいう名前、
そうそう他にあるとは思えんw
134 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 20:57:59 ID:mSq/zjcI0
ガチでトリューニヒトかよw
ただ、ヨブさんの人物造形は
史実トリューニヒトとは関係ないと思っています。
あの辺の同盟政界、
当時の日本の政界から取ってきてると思うんですよね。
サンフォードが善幸で。
130 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 20:54:22 ID:TLURGRHU0

黒人の諸君。
今年度より黒人中等学校では
英語に加え、
アフリカーンス語で半分は授業を行うこととなった。
喜びたまえ。
トリューニヒトはこのアフリカーンス語拡大の動きをさらに力強いものとするため、
黒人の中等教育言語をアフリカーンス語と英語で半分ずつ行うことを決定してしまった。
とくに、数学と社会科についてはアフリカーンス語で行うことが要請された。
136 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:00:04 ID:TLURGRHU0

しかし、いくら公用語とは言っても、
経済力や外国との関係から英語のほうが勢力が強く、
これまで中等黒人教育はほとんど英語によって行われていた。
アフリカーンス語で教育ができる教師など、
もともとアフリカーンス語圏であるケープ州西部や首都圏を除き、
ほとんどいなかったのである。
139 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:02:23 ID:Et53DxNU0
おいばかやめろ
140 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:02:36 ID:kofKb1CI0
赤いダイヤ失敗w
142 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:02:47 ID:TLURGRHU0

……さんが……を3個持って…
……さんは……個…
ぜんぶで……
…この教科書、
なんて読むのかしら?

せんせい!
せんせいー!
結果、教育現場は大混乱に陥った。
なにしろ、教師が教科書を読めないのである。
生徒が教科書を読めないどころの話ではない。
生徒の学力が、この規定の施行以降、全く伸びなくなってしまったのだ。
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143 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:03:47 ID:1lYbRZ/60
誰得政策だったんじゃろう…
145 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:04:14 ID:mr4DlzAU0
教育のハードルが大気圏突破
146 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:04:29 ID:2k4rFzQ.0
アティ先生がー!?
147 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:04:45 ID:Rw02D/HE0
教師が教科書を読めないって……(震え声)
149 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:05:19 ID:TLURGRHU0

いくらなんでも、これは困ります!
せめて教育言語は英語にしていただかないと、
教育にも何もなりゃしません!
たまりかねた黒人教師代表団がトリューニヒトに抗議を行ったものの…
150 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:06:40 ID:TLURGRHU0

ほう…つまり君は政府の決定に逆らうというのかね。
国民すべてが難局に向かい団結せねばならんこの時に、
国民統合の大義に逆らうと。
君たちの意見はよくわかったよ、
非常に残念だ。
追って沙汰する。
彼はこれを黙殺し、政策を続行した。
153 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:08:29 ID:GOO3hBiE0
むしろこれって国民になるはずの黒人たちから、南アフリカ人としての国民意識を形成するチャンスを
奪っているような気がする
国民にする気はないんですよ、黒人を。
ただ、アフリカーナーの影響力を拡大するためだけの政策です。
152 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:08:28 ID:TLURGRHU0

なぜ、アフリカーナーという1部族のいうままにならなきゃいけないんだ?
政府は黒人のことなんか考えちゃいない。
アフリカーナーの勢力拡大のことしか、
考えていないんだ。
アフリカーンスでアフリカーナーの歴史を学び、
グレート・トレックの偉大さを叩きこまれる。
これが黒人の尊厳を損なうものでなくて、
なんだというんだ!
しかし、ビコの思想に触発されていた教師や生徒たちは、
このままでは収まらなかった。
彼らはこの決定を、
「黒人を白人より劣ったものだとするための文化的な抑圧の一環」とみなしたのである。
こうして、各地でデモが頻発するようになる。
そして…
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155 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:10:35 ID:TLURGRHU0

1976年6月16日。
この日、ヨハネスブルグ南西部のソウェト地区で、
この法案に対する抗議デモが行われた。
参加者は15000人にのぼった。
デモは平和的なものだった。
158 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:12:12 ID:DUuBFrqU0
小学生の授業ボイコットから始まったってんだからすげぇよなぁ
159 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:12:27 ID:TLURGRHU0

しかしこのデモを解散させるために警官隊が出動し、
デモ隊とにらみ合うこととなった。
警官隊は当初催涙ガスで解散をもくろんだが、
頑強に抵抗し続ける黒人たちに業を煮やし…
ついに、発砲が行われた。
163 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:14:32 ID:TLURGRHU0

治安部隊の発砲は、デモ隊の中にいた13歳の中学生、
ヘクター・ピーターソンの頭部を貫いた。
166 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:15:05 ID:2k4rFzQ.0
うわぁ…惨劇への定番ルート一直線
167 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:16:26 ID:TLURGRHU0

この瞬間、デモは大暴動へと発展した。
激怒した群衆が警官へと襲い掛かり、
警官は発砲を繰り返す。
ソウェトの町は、血に染まった。
このときだけで、死者176人、負傷者1139人、逮捕者1298人。
さらにこの騒乱は全国に拡大し、
各地で多数の死者・負傷者を出した。
この事件は、のちにこう呼ばれることになる。
「ソウェト蜂起」と。
168 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:16:39 ID:yTyyD0aI0
うわあ、いろんな意味で最悪な展開
172 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:21:03 ID:mr4DlzAU0
最大のアパルトヘイト国家だしな。押さえつけてた不満の量も他の比じゃないよな
173 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:22:38 ID:TLURGRHU0

進歩連邦党 ヘレン・スズマン
いくらなんでも、
ここまでの反発を受ける政策を
強行すべきではありません!
政令は撤回すべきです!
この事態に、進歩連邦党などの議会内に残存するリベラル派だけでなく、
政府内からも危惧の声が出始めた。
174 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:24:30 ID:TLURGRHU0

…ふん、黒人どもめ。
あのような蛮族に、
偉大なこの国を荒らされるわけにはいかんのだよ…
これを受け、政府は黒人への教育言語をアフリカーンス語とする案の撤回を余儀なくされる。
しかし、政治家としてのトリューニヒトの評価がこれで下がったわけではなかった。
これだけのことをしておきながら、彼は政治家として生き延びる。
むしろ、黒人に対し毅然とした対応が取れるとして、
一部からは高い評価を受けたほどだった。
そしてこの後もトリューニヒトは保守派のリーダーとして鳴らし、
徐々に影響力を拡大させていく。
176 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:26:34 ID:TLURGRHU0

くそっ、
俺が動けさえすれば…
一方ビコはこの事件に対し、
行動を起こすことはできなかった。
すでに何年も前から軟禁状態にあったからである。
もしこの時ビコが自由に動けていればもっと別の展開があったかもしれないが、
現実にはこの後、ビコへの監視はさらに強化されることとなる。
177 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:28:22 ID:TLURGRHU0
そして…

来たか…
181 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:30:26 ID:TLURGRHU0

警官
警察です。
スティーヴ・ビコ。
反テロリズム法により、あなたを逮捕します。
183 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:33:50 ID:TLURGRHU0

反テロリズム法?
法に触れるどのような活動もした覚えはないんだがな。
法の枠内でやれることをやるのが俺のスタンスだ。
まあいい、出頭してやろう。
法廷内でキッチリと…
186 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:35:23 ID:TLURGRHU0

じゃあ、死んで♪
187 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:35:43 ID:mr4DlzAU0
最悪だあああああああ!?
190 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:36:11 ID:Et53DxNU0
反テロリスト法で連行されたら政府がテロ行為してきたでござる の巻
191 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:36:44 ID:2k4rFzQ.0
相手も最低限ルールを守るだろうと考えてたあたりがビコの甘さだったんだろうか…
189 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:36:01 ID:TLURGRHU0

192 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:37:01 ID:TLURGRHU0


197 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:39:36 ID:TLURGRHU0

アハハハハハハハハ!
白人様に逆らうから、こういうことになるのよ!
大丈夫、治療は受けさしてあげるから。
首都のプレトリアで取調べが済んでからだけど。
そこまではバンで運んであげる。
プレトリアは1100㎞北だけどね!
204 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:41:43 ID:TLURGRHU0

(…ここまでか)
(すまん、ドナルド)
(お前との朝マック、食えそうにない…)
1977年8月、ポート・エリザベスでビコは逮捕され、警官に暴行を受ける。
そこで瀕死の重傷を負ったのだが、そのまま首都プレトリアへ取り調べのため移送される。
救急車でもなんでもなく、普通のバンに転がされたまま、1100㎞の道のりを運ばれたビコは、
9月12日、そこで死去する。
享年30。
死因は暴行による脳挫傷だった。
207 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:43:11 ID:yTyyD0aI0
若いなぁ……
211 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:43:59 ID:TLURGRHU0

去る9月12日、
黒人運動家のスティーヴ・ビコ氏が
プレトリアにて亡くなられました。
死因は逮捕に対する抗議のハンガー・ストライキです。
当初、政府はビコの死因をハンガー・ストライキによるものと説明し、
事態の隠蔽を図った。
だが…
215 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:46:04 ID:TLURGRHU0

220 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:48:52 ID:TLURGRHU0

検死した医師によれば、
ビコの遺体は
体中にひどい傷があったそうよ!
ハンガー・ストライキで死んだ人間が、
どうしてそんなことになってるのかしら?
ツィレは丹念な取材の結果、
ビコの死がハンガー・ストライキではなく警察による暴行死であることを突き止め、
紙面でスクープした。
このスクープはリベラル諸紙を刺激し、
猛烈な政府攻撃が巻き起こった。
222 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:50:42 ID:TLURGRHU0

質問には一切お答え出来ません・・・・!
これに対し、政府は黙殺を決め込むとともに、
政府を攻撃するジャーナリストたちに圧力を強めていく。
225 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:52:09 ID:TLURGRHU0

この政府批判の急先鋒であり、
よって政府のターゲットともなったのはウッズだった。
227 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 21:52:50 ID:3RLBiQDg0
うわあああ逃げてええええええ
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228 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:54:28 ID:TLURGRHU0

これに対し、政府はウッズを危険人物として軟禁状態に置き、
ジャーナリストとして活動できないようにしてしまった。
232 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:56:30 ID:TLURGRHU0

監視下に置かれたウッズ一家にはたびたび警察から迫害が加えられるようになり、
その迫害は激しさを増すばかりだった。
236 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 21:58:21 ID:TLURGRHU0

このままじゃ、俺は殺される。
それはいいが、
家族とビコのことが心配だ。
このまま俺が殺されたら、
ビコの無念を伝える奴が、
誰もいなくなっちまう…
自国で生命の危機を感じたウッズは、
ついに他国への脱出を考えるようになる。
240 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:00:40 ID:TLURGRHU0

こうして1978年12月31日、
家族を説得したウッズは、南アフリカ脱出を決行する。
目的地はイーストロンドンから最も近い外国…レソト王国である。
241 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:02:32 ID:TLURGRHU0

待ってクダサーイ!
あなたを逃がすと、
私はドートンボリ・リバーに
沈められてしまいマース!
警察の執拗な追跡をかわしたウッズ一家は、レソトへの入国に成功した。
244 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:04:17 ID:TLURGRHU0

レソト王国首相 レアブア・ジョナサン
よくきたな!
あたいにまかせとけ!
逃げ込んだ先のレソト政府は、
ウッズを歓迎する。
しかしレソトは周囲をぐるりと南アフリカ領に囲まれており、
自由な活動に支障があるうえ、
南アフリカからの引き渡し請求に耐えられるとも思えなかった。
どこか、新しい亡命先が必要だった。
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246 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:06:32 ID:TLURGRHU0

252 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 22:08:51 ID:yTyyD0aI0
ですよねーwwwwwwww
253 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:09:10 ID:TLURGRHU0

256 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:11:39 ID:TLURGRHU0

そんな昔のことは忘れたわ!
細かいこと気にしてたらもてないわよ!

258 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 22:12:29 ID:DUuBFrqU0
ハッ倒してぇwwwww
260 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:13:24 ID:TLURGRHU0

とはいえ、ウッズ氏に含むところなんか何もないしなあ。
それどころか、黒人解放派のためにはぜひとも助けたいところだし。
…まあ、うちを通したってことは、
関係改善の意思がある…ってことなのかな?
結局、ボツワナはこの話を了承する。
262 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:15:35 ID:TLURGRHU0

こうしてウッズ一家はレソトから、ボツワナ経由でイギリスへの亡命に成功した。
以後、ウッズはロンドンを拠点として反アパルトヘイトの論陣を張ることとなる。
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265 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:17:50 ID:TLURGRHU0

ソウェト蜂起は、アパルトヘイト体制の崩壊の序曲だった。
これ以後、ビコの虐殺やウッズの脱出などにより、
反アパルトヘイトの勢いはとどめようのないものになっていく。
また、これを境に、アパルトヘイトは拡大から、
縮小と譲歩の局面に入った。
とはいえ、南アフリカの体制は強力で、
そう簡単には崩壊しなかった。
これから先の南アフリカの歴史は、
アパルトヘイトの崩壊を少しでも先延ばしにしたい白人側と、
一刻も早くアパルトヘイトを撤廃させたい黒人側との、
闘争の歴史となっていくのである…
267 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:18:30 ID:TLURGRHU0
今回ここまで。
今回の参考文献です。
アパルトヘイト教育史 春風社 2004年 ジョナサン・ヘイスロップ
ドナルド・ウッズのアパルトヘイト問題入門 第三書館 1990年 ドナルド・ウッズ
南アフリカの歴史(ケンブリッジ世界各国史) 創土社 2009年 ロバート・ロス
南アフリカの歴史 明石書店 1995年 レナード・トンプソン
南アフリカを知るための60章 明石書店 2010年 峯陽一編
あと、今回は英語版ウィキペディアの
「ドナルド・ウッズ」「スティーブ・ビコ」「ヘレン・ツィレ」あたりも参考にしています。
297 :名無しのやる夫だお 2013/09/22(日) 23:05:57 ID:5PJF7ARI0
あ、ウッズさんの本がある
307 :Opqr ◆XLjdU8ssbY 2013/09/22(日) 22:18:30 ID:TLURGRHU0
>>297
このウッズの本ですけど、
イラストが多めで、どっちかというと多少低い年齢を対象にしてるみたいです。
といっても、内容はしっかりしたものですが。
あと、ちょっと英国系寄りで、
アフリカーナーを悪く書く傾向があります。
