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623:1/2:2006/01/17(火) 20:54:10 ID:HvdE0yZn0
じゃ俺の友人の話を。
ある日友人が「泊めてくれ」と言ってきた。
一人暮らしなので奴を泊めてやることは時々あったが、
この時は明らかに様子がおかしかった。妙にびくついてるし、
顔色もえらく悪い。
風呂上り、ビール片手に話を聞いてみた。
奴曰く、家にいると『目』に見られるのだという。
目って何じゃい?と聞き返す俺に、奴は説明してくれた。
とにかく『目』としか言いようがない。
それはありとあらゆる隙間から自分を見てくる。
本棚の隙間、
カーテンの合わせ目、
エアコンの吹き出し口、
開いたカバンの中、
挙句の果てには布団の奥から、など。
人の顔というよりも、暗がりの中に『目』だけがあって
まばたきもせずにただじっと、見つめてくる。
どう聞いても幻覚症状です、ありがとうございました。
…こりゃヤバい、と思った。確かにしばらく前、隣の住人が
うるせーと愚痴ってたような気はしたが…そこまで参ってたのか。
「疲れてんだ神経科行ってこいゴルァ!」と友人を励ましつつ、
その日は寝た。奴もなかなか寝付けなかったようだったけど、
最終的には良く眠れたみたいだ。
625:2/2:2006/01/17(火) 20:55:03 ID:HvdE0yZn0
その後、1週間かそこら奴は外泊を続けたらしい。流石に俺んちに
連泊するのははばかられたのか、他の友達の所とか漫喫とかで
過ごしていたようだ。しかし更にその後、奴は入院することになった。
いわゆる精神系の病院に。
見舞いに行ったが面会も出来ないような状態らしかった。
奴のオカンが泣きながら、それでも「来てくれてありがとう」と
お礼を言ってきた。
心が痛むけど奴のことも気になったので、オカンに詳しいことを聞く。
そうなったきっかけこそ判らないが、今息子はノイローゼ状態にある。
手で固く両目を覆って、何も見ようとしない。
一度指の隙間からこっちを見たとき、搾り出すような叫びをあげて
「見てる!!見てる!!暗くないのにいるよお!!」
と泣き出してしまった…
んでこういう話にありがちな陳腐なオチと言われそうだけど、その
少し後になって、奴のアパートの隣室から死体が見つかったそうだ。
聞いたところによると、心筋梗塞の発作を起こして突然死。
一人暮らしのおっさんで身よりもないし、また冬だったので発見が
遅くなったらしかった。
死の直前の苦痛は相当のものだったようで、部屋のものは激しく散乱、
押入れのふすまなんかもバタバタ倒れたりしてたらしい。
苦しんだ末か、押入れの奥、隣室側の壁に顔面からのめりこむような
変な姿勢で倒れていたということだった。
かっと、両目を見開いたままで。