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184:本当にあった怖い名無し:2005/10/25(火) 19:51:54 ID:IYzpET/70
仕事がえりに近所のスーパー寄ったら、棚の入れ替えのためいろいろな酒が見切り品になっていたのでこれ幸いと買い込み、帰宅。
すると、アパートの俺の部屋の前で弟が待っていた。
数年振りの懐かしさに話も弾み、買い込んだ酒もつまみもどんどん減って行く。
そのとき、あることに気づく。
弟のあまりの自然さに忘れていたが、こいつはある問題を背負っていたはずだ。
昔から、こいつはそうだった。問題が重ければ重いほど、周りを巻き込むまいと無理をして自分一人で背負い込み、自然に振舞う。
幸いにしてその無理でつぶれてしまうことはなく、むしろ苦境をはねのける強さを身につけていた。俺なんか太刀打ちできないほどに。
だが、さすがに今回ばかりはそうも言ってられないはずだ。
お互いかなり酒が入った今なら、話せるだろう。
「なぁ、お前……」
俺の神妙な声に弟もまじめな顔になる」
「……この前死んだんだって?」
「……ああ。仕事がえり、携帯持ったまま運転してたダンプに突っ込まれてな。急な話だから参るよ、まったく」
「そりゃ、このご時世だもんな」
「仕事の引継ぎやら、娘の学校のこととか、全然準備できてなかったからなー」
苦笑する。やっぱりだ、自分自身のことはそっちのけで残された家族や同僚のことばかり気遣ってる。
「ま、あんまり気負うな。少しは残ってる奴のこと信頼して任せろ」
あいつは苦笑して20%引きのラベルがついたままの発泡酒をあおってから、帰った。
今度の休日にはあいつの家に行ってみよう。姪っ子も大きくなってることだろう、小遣いを奮発してやるか。