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広間に着くと女将さんと旦那さん、そして悲しそうな顔をした美咲ちゃんが座っていた。
俺達は3人並んで正座し、
俺「短い間ですが、お世話になりました。勝手言ってすみません」
俺AB「ありがとうございました」と言って頭を下げた。
すると女将さんが腰を上げて、俺達に近寄りこう言った。
「こっちこそ、短い間だったけどありがとうね。これ、少ないけど・・・」
そう言って茶封筒を3つ、そして小さな巾着袋を3つ手渡してきた。
茶封筒は思ったよりズッシリしてて、巾着袋はすごく軽かった。
そして後ろから美咲ちゃんが「元気でね」と、ちょっと泣きそうな顔しながら言うんだ。
そして、「みんなの分も作ったから」って、3人分のおにぎりを渡してくれた。
おいおい止めてくれ。泣いちゃうよ俺!
そう思ってあんまり美咲ちゃんの顔を見れなかった。
前日で死にそうな思いしたのにまさかのセンチって思うだろ?
だけど、実際すげー世話になった人との別れって、その時はそういうの無しになるものなんだわ。
挨拶も済んで、俺達は帰ることになった。
行きは近くのバス停までバスを使って来たんだが、帰りはタクシーにした。
旦那さんが車で駅まで送ってくれるって話も出たんだが、Bが断った。
そして美咲ちゃんに頼んでタクシーを呼んでもらった。
タクシーが到着すると、女将さんたちは車まで見送りに来てくれた。
周りから見ればなんとなく感動的な別れに見えただろうが、実際俺達は逃げ出す真っ最中だったんだよな。
タクシーに乗り込む前に、俺は振り返った。
かろうじて見えた2階への階段のドア。目を凝らすと、ほんの少し開いてるような気がして思わず顔を背けた。
そして3人とも乗り込み、行き先を告げた後すぐ車が動き出した。
旅館から少し離れると、急にBが運転手に行き先を変更するよう言ったんだ。
運転手になにかメモみたいなものを渡して、「ここに行ってくれ」と。
運転手はメモを見て怪訝な顔をして聞いてきた。
「大丈夫?結構かかるよ?」
B「大丈夫です」
Bはそう答えると、後部座席でキョトンとしているAと俺に向かって、
B「行かなきゃいけないとこがある。お前らも一緒に」と言った。
俺とAは顔を見合わせた。考えてることは一緒だったと思う。
どこへ行くんだ・・?
だが、朝のBの様子を見た後だったんで、正直気が引けて何も聞けなかった。
またキレ出すんじゃないかとびびってたんだ。
しばらく走っていると、運転手さんが聞いてきた。
「後ろ走ってる車、お客さんたちの知り合いじゃない?」
え?と思って振り返ると、軽トラックが一台後ろにぴったりくっついて走っていた。
そして中から手を振っていたのは旦那さんだった。
俺達は何か忘れ物でもしたのかと思い、車を止めてもらえるよう頼んだ。
道の端に車が止まると、旦那さんもそのまますぐ後ろに軽トラを止めた。
そして出てくると俺達のところに来て、「そのまま帰ったら駄目だ」と言った。
B「帰りませんよ。こんな状態で帰れるはずないですから」
Bと旦那さんはやけに話が通じあっていて、Aと俺は完全に置いてけぼりを食らった。
俺「え、どういうこと?」
なにがなにやらわからんかったので、素直に質問した。
すると旦那さんは俺のほうを向き、まっすぐ目を見つめて言った。
旦「おめぇ、あそこ行ったな?」
心臓がドクンって鳴った。
なんで知ってんの?
この時は本気で怖かった。
霊的なものじゃなくて、なんていうか、大変なことをしてしまったっていう思いがすごくて。
俺は「はい」と答えるだけで精一杯だった。
すると旦那さんは、ため息をひとつ吐くと言った。
旦「このまま帰ったら完全に持ってかれちまう。なぁんであんなとこ行ったんだかな。
まあ、元はと言えば、俺がちゃんと言わんかったのが悪いんだけどよ」
おい、『持ってかれる』ってなんだ。勘弁してくれよ。
ここから帰ったら楽しい夏休みが待ってるはずだろ?
不安になってAを見た。Aは驚くような目で俺を見ていた。
さらに不安になってBを見た。
するとBは言うんだ。
B「大丈夫。これから御祓いに行こう。そのためにもう向こうに話してあるから」
信じられなかった。
憑かれていたってことか?
何だよ俺死ぬのか?この流れは死ぬんだよな?
なんであんなとこ行ったんだって?行くなと思うなら始めから言ってくれ。
あまりの恐怖で、自分の責任を誰か他の人に転嫁しようとしていた。
呆然としている俺を横目に、旦那さんは話を進めた。
旦「御祓いだって?」
B「はい」
旦「おめぇ、見えてんのか」
B「・・・」
A「おい、見えてるって・・・」
B「ごめん。今はまだ聞かないでくれ」
俺は思わずBに掴みかかった。
俺「いい加減にしろよ。さっきから何なんだよ!」
旦那さんが割って入る。
旦「おいおい止めとけ。おめぇら、逆にBに感謝しなきゃならねぇぞ」
A「でも、言えないってことないんじゃないすか?」
旦「おめぇらはまだ見えてないんだ。一番危ないのはBなんだよ」
俺とAは揃ってBを見た。
Bは困ったような顔をしてそこにいた。
俺「どうしてBなんですか?実際にあそこに行ったのは俺です」
旦「わかってるさ。でもおめぇは見えてないんだろ?」
俺「さっきから見えてるとか見えてないとか、なんなんですか?」
旦「知らん」
俺「はぁ!?」
トンチンカンなことを言う旦那さんに対して俺はイラっとした。
旦「真っ黒だってことだけだな、俺の知ってる情報は。だがなぁ・・」
そう言って旦那さんはBを見る。
旦「御祓いに行ったところで、なんもなりゃせんと思うぞ」
Bは疑いの目を旦那さんに向けて聞いた。
B「どうしてですか?」
旦「前にもそういうことがあったからだな。でも、詳しくは言えん」
B「行ってみなくちゃわからないですよね?」
旦「それは、そうだな」
B「だったら」
旦「それで駄目だったら、どうするつもりなんだ?」
B「・・・」
旦「見えてからは、とんでもなく早いぞ」
『早い』という言葉が何のことを言っているのか、俺にはさっぱりわからなかった。
だが、旦那さんがそういった後、Bは崩れ落ちるようにして泣き出したんだ。
声にならない泣き声だった。
俺とAは傍で立ち尽くすだけで何もできなかった。
俺達の異様な雰囲気を感じ取ったのか、タクシーの窓を開けて中から運転手が話しかけてきた。
「お客さんたち大丈夫ですか?」
俺達3人は何も答えられない。Bに限っては道路に伏せて泣いてる始末だ。
すると旦那さんが、運転手に向かってこう言った。
旦「あぁ、すまんね。呼び出しておいて申し訳ないんだが、こいつらはここで降ろしてもらえるか?」
運転手は「え?でも・・」と言って、俺達を交互に見た。
その場を無視して旦那さんはBに話しかける。
旦「俺がなんでおめぇらを追いかけてきたかわかるか?
事の発端を知る人がいる。その人のとこに連れてってやる。
もう話はしてある。すぐ来いとのことだ」
時間がねぇ。俺を信じろ」
肩を震わせ泣いていたBは精一杯だったんだろうな、顔をしわくちゃにして声を詰まらせながら言った。
B「おねが・・っ・・します・・・」
呼吸ができていなかった。
男泣きでもなんでもない、泣きじゃくる赤ん坊を見ているようだった。
昨日の今日だが、Bは一人で何かものすごい大きなものを抱え込んでいたんだと思った。
あんなに泣いたBを見たのは、後にも先にもこの時だけだ。
Bのその声を聞いた俺は、運転手に言った。
俺「すいません。ここで降ります。いくらですか?」
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その後、俺達は旦那さんの軽トラに乗り込んだ。
といっても、俺とAは後の荷台なわけで。乗り心地は史上最悪だった。
旦那さんは俺達が荷台に乗っているにも関わらず、有り得んほどにスピードを出した。
Aから軽く女々しい悲鳴を聞いたがスルーした。
どれくらい走ったのか分からない。あんまり長くなかったんじゃないかな。
まあ正直、それどころじゃないほど尾てい骨が痛くて覚えていないだけなんだが。
着いた場所は普通の一軒家だった。
横に小さな鳥居が立っていて、石段が奥の方に続いていた。
俺達の通されたのはその家の方で、
旦那さんは呼び鈴を鳴らして待っている間、俺達に「聞かれたことにだけ答えろ」と言った。
旦「おめぇら、口が悪いからな。変なこと言うんじゃねぇぞ」
俺は思った。この人にだけは言われる筋合いがないと。
少し待つと、家から一人の女の人が出てきた。
年は20代くらいの普通の人なんだけど、額の真ん中にでっかいホクロがあったのがすごく印象的だった。
その女の人に案内されて通されたのは、家の一角にある座敷だった。
そこには一人の坊さん(僧って言うのか?)と、一人のおっさん、一人のじいさんが座っていた。
俺達が部屋に入るなり、おっさんが「禍々しい」と呟いたのが聞こえた。
旦「座れ」
旦那さんの掛け声で俺達は、坊さんたちが並んで座っている丁度向かい側に3人並んで座った。
そして旦那さんがその隣に座った。
するとじいさんは口を開いた。
「○○(旅館の名前)の旦那、この子ら全部で3人かね?」
旦「えぇ、そうなんですわ。このBって奴は、もう見えてしまってるんですわ」
旦那さんがそう言った瞬間、おっさんとじいさんは顔を見合わせた。
すると坊さんが口を開いた。
坊「旦那さん、堂に行ったというのは彼ですか?」
旦「いえ。実際行ったのはこの○○(俺の名前)って奴で」
坊「ふむ」
旦「Bは下から覗いていただけらしいんです」
坊「そうですか」
そして少し黙ったあと、坊さんはBに聞いたんだ。
坊「あなたは、この様な経験は初めてですか?」
Bが聞き返す。
B「この様な経験?」
坊「そうです。この様に、霊を見たりする体験です」
B「え・・ないです」
坊「そうですか。不思議なこともあるものです」
B「・・俺」
Bが何か喋ろうとしていた。
そこにいた全員がBを見た。
坊「はい」
B「俺・・・死ぬんでしょうか?」
そう言ったBの腕は、正座した膝の上で突っ張っているのにガクガクと震えていた。
すると坊さんは静かに答えた。
坊「そうですね。このままいけば、確実に」
Bは言葉を失った様子だった。震えが急に止まって、畳を一点食い入るように見つめだした。
それを見たAが口を挟んだ。
A「死ぬって」
坊「持って行かれるという意味です」
意味を説明されたところで俺達はわからない。何に何を持って行かれるのか。
更に坊さんは続けた。
坊「話がわからないのは当然です。○○くんは、堂へ行った時に何か違和感を感じませんでしたか?」
坊さんが堂といっているのは、どうやらあの旅館の2階の場所らしかった。
それで俺は答えた。
俺「音が聞こえました。あと、変な呼吸音が。2階のドアには、お札の様なものが沢山貼ってありました」
坊「そうですか。気づいているかも知れませんが、あそこには人ではないものがおります」
あまり驚かなかった。事実、俺もそう思っていたからだ。
坊「恐らくあなたは、その人ではないものの存在を耳で感じた。
本来ならば、人には感じられないものなのです。誰にも気づかれず、ひっそりとそこにいるものなのです」
そう言うと、坊さんはゆっくりと立ち上がった。
坊「Bくん、今は見えていますか?」
B「いえ。ただ音が、さっきから壁を引っかく音がすごくて」
坊「ここには入れないということです。幾重にも結界を張っておきました。その結界を必死に破ろうとしているのですね」
しかし、皆がいつまでもここに留まることは出来ないのです。
今からここを出て、おんどう(ごめん音でしかわからない)へ行きます。
Bくん、ここから出れば、またあのものたちが現れます」
また苦しい思いをすると思います。
でも必ず助けますから、気をしっかり持って付いて来てくださいね」
Bはカクカクと首を縦に振っていた。
そうして坊さんに連れられて俺達は、その家を出てすぐ隣の鳥居をくぐり、石段を登った。
旦那さんは家を出るまで一緒だったが、おっさんたちと何やら話をした後、坊さんに頭を下げて行ってしまった。
知ってる人がいなくなって一気に心細くなった俺達は、3人で寄り添うように歩いた。
特にBは目を左右に動かしながら背中を丸めて歩いていて、明らかに憔悴しきっていた。
だから俺達は、できる限りBを真ん中にして二人で守るように歩いた。
石段を上り終わる頃、大きな寺が見えてきた。
だが坊さんはそこには向かわず、俺達を連れて寺を右に回り奥へと進んだ。
そこにはもう一つ鳥居があり、更に石段が続いていた。
鳥居をくぐる前に坊さんがBに聞いた。
坊「Bくん、今はどんな感じですか?」
B「二本足で立っています。ずっとこっちを見ながら、付いてきてます」
坊「そうか、もう立ちましたか。よっぽどBくんに見つけてもらえたのが嬉しかったんですね。
ではもう時間がない。急がなくてはなりませんね」
そして石段を上り終えると、さっきの寺とは比べ物にならない位小さな小屋がそこにあり、
坊さんはその小屋の裏へ回ると、俺達を呼んだ。
俺達も裏へ回ると坊さんは、ここに一晩入り憑きモノを祓うのだと言った。
そして、中には明りが一切ないこと、夜が明けるまでは言葉を発っしてはならないことを伝えてきた。
坊「もちろん、携帯電話も駄目です。明りを発するものは全て。食ったり寝たりすることもなりません」
どうしても用を足したくなった場合はこの袋を使用するようにと、変な布の袋を渡された。
俺は目を疑った。布って・・・
だが坊さん曰く、中から液体が漏れないようになっているらしい。
信じ難かったが、そこに食いついてもしょうがないので大人しくしといた。
その後、俺達に竹の筒みたいなものに入った水を一口ずつ飲ませ、自分も口に含むと俺達に吹きかけてきた。
そして、小さな小屋の中に入るように言った。
俺達は順番に入ろうとしたんだが、Bが入る瞬間、口元を押さえて外に飛び出して吐いたんだ。
突然のことで驚いた俺達だったが、坊さんが慌てた様子で聞いてきた。
坊「あなたたち、堂に行ったのは今日ではないですよね?」
俺「え?昨日ですけど」
坊「おかしい、一時的ではあるが身を清めたはずなのに、おんどうに入れないとは」
言ってる意味がよく分からなかった。
すると坊さんはBのヒップバッグに目をつけ、
坊「こちらに滞在する間、誰かから何かを受け取りましたか?」と聞いてきた。
俺は特に思い浮かばず、だがAが言ったんだ。
A「今日給料もらいましたけど」
当たり前すぎて忘れてた。
そういえば給料も貰いものだなって妙に感心したりして。
俺「あ、あと巾着袋も」
A「おにぎりも。もらい物に入るなら」
給料を貰った時に、女将さんにもらった小さな袋を思い出した。
そして美咲ちゃんには、朝おにぎりを作って貰ったんだった。
坊さんはそれを聞くと、Bに話しかけた。
坊「Bくん、それのどれか一つを今、持っていますか?」
B「おにぎりはデカイ鞄の方に入れてありますけど、給料と袋は今持ってます」
Bはそう言って、バッグからその二つを取り出した。
坊さんはまず巾着袋を開けた。
すると「これは・・」と言って、俺達に見えるように袋の口を広げた。
中を覗き込んで俺達は息を呑んだ。
そこには、大量の爪の欠片が詰まっていたんだ。
俺の足に張り付いていたものと一緒だった。見覚えのある、赤と黒ずんだものだった。
Bはその場ですぐまた吐いた。俺もそれに釣られて吐いた。
周辺が汚物の匂いでいっぱいになり、坊さんも顔を歪めていた。
坊さんはBの持ち物を全て預かると言い、俺達2人も持ち物を全て出すように言った。
俺は携帯と財布を坊さんに手渡し、旅行鞄の方に入っている巾着袋を処分してもらえるよう頼んだ。
坊さんは頷き、再度Bに竹筒の水を飲ませ、吹きかけた。
そして俺達3人がおんどうの中に入ると、
坊「この扉を開けてはなりません。皆、本堂のほうにおります。明日の朝まで、誰もここに来ることはありません。
そして、壁の向こうのものと会話をしてはなりません。このおんどうの中でも言葉を発してはなりません。
居場所を教えてはなりません。
これらをくれぐれもお守りいただけますよう、お願いします」
そう言って俺達の顔を見渡した。
俺達は頷くしかなかった。
この時既に言葉を発してはならない気がして、怖くて何も言えなかったんだ。
坊さんは俺達の様子を確認すると、扉を閉め、そのまま何も言わず行ってしまった。
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おんどうの中はひんやりしていた。
実際ここで飲まず食わずでやっていけるのかと不安だったが、これなら一晩くらいは持ちそうだと思った。
建物自体はかなり古く、壁には所々に隙間があった。といっても結構小さいものだけど。
まだ昼時ということもあり、外の光がその隙間から入り、AとBの顔もしっかり確認できた。
顔を見合わせても何も喋ることができないという状況は、生まれて初めてだった。
『大丈夫だ』という意味を込めて俺が頷くと、AもBも頷き返してくれた。
しばらくすると顔を見合わせる回数も少なくなり、終いにはお互い別々の方向を向いていた。
喋りたくても喋れないもどかしさの中、後どれくらいの時間が残っているのか見当も付かない俺達は、
ただただ呆然とその場にいることしかできなかったんだ。
途方もない時間が過ぎていると感じているのに、まだ外は明るかった。
するとAがゴソゴソと音を立て出した。
何をしているのかと思い、あまり大きな音を出す前に止めさせようと思ってAの方に向き直ると、
Aは手に持った紙とペンを俺達に見せた。
こいつは坊さんの言うことを聞かずに、密かにペンを隠し持っていたのだ。
そして紙は、板ガムの包み紙だった。
まあメモ用紙なんて持っているはずない俺達なので、きっとそれしか思い浮かばなかったんだろう。
こいつ何やってんだよ・・・
一瞬そう思った俺だが、意思の疎通ができないこの状況で極限に心細くなっていた所為もあり、
Aの取った行動に何も言う事が出来なかった。
むしろ、ひとつの光というか、上手く説明できないんだが、とにかくすごく安心したのを覚えてる。
Aはまず自分で紙に文字を書き、俺に渡してきた。
『みんな大丈夫か?』
俺はAからペンを受け取り、なるべく小さく、スペースを空けるようにして書き込んだ。
『俺は今のところ大丈夫、Bは?』
そしてBに紙とペンを一緒に手渡した。
『俺も今は平気。何も見えないし聞こえない。』
そしてAに紙とペンが戻った。
こんな感じで、俺達の筆談が始まったんだ。
A『ガム残り4枚。外紙と銀紙で8枚。小さく文字書こう』
俺『OK。夜になったらできなくなるから今のうちに喋る』
B『わかった』
A『今何時くらい?』
俺『わからん』
B『5時くらい?』
A『ここ来たの1時くらいだった』
俺『なら4時くらいか』
B『まだ3時間か』
A『長いな』
こんな感じで他愛もない話をして、1枚目が終わった。
するとAが書いてきた。
A『○○文字でかい』
俺は謝る仕草を見せた。
するとAは俺にペンを渡してきたので、『腹減った』と書き込みBに渡した。
そしてBが何も書かずにAに紙を渡した。
するとAは『俺も』と書いて俺に渡してきた。
あれだけ心細かったのに、いざ話すとなるとみんな何も出てこなかった。
俺は日が沈む前に言っておかなければならないことを書いた。
俺『何があっても、最後までがんばろうな』
B『うん』
A『俺、叫んだらどうしよう』
俺『なにか口に突っ込んどけ』
B『突っ込むものなんてないよ』
A『服脱いでおくか』
俺『てか、何も起きない、そう信じよう』
Bは俺の書いた言葉にはノーコメントだった。
俺も書いたあと、自分で何を言ってるんだろうと思った。
坊さんは、何も起きないとは一言も言っていなかった。
むしろ、これから何が起こるのかを予想しているような口ぶりで、俺達にいくつも忠告をしたんだ。
そう考えると俺達は、一刻も早く時間が過ぎてくれることを願っている一方で、
本当の本当は、夜を迎えるのがすごく怖かったんだ。
夜だけじゃない、あの時ああしてる時間も、本当は怖くてしょうがなかった。
唯一の救いが、互いの存在を目視できるということだっただけで。
俺の一言で空気が一気に重くなった。
俺はこの空気をどうにかしようと、Bの持っていた紙とペンをもらい、
俺『何か喋れ時間もったいない』と書いてAに渡した。他人任せもいいとこ。
Aは一瞬困惑したが、少し考えて書き出し、俺に渡してきた。
A『じゃあ、帰ったら何するか』
俺『いいね。俺はまずツタヤだな』
B『なんでツタヤ?』
俺『DVD返すの忘れてた』
A『どんだけ延泊!?』
まあ嘘だった。どうにかして気を紛らわせたかったから、なんでもいいやって適当に書いた。
結果、雰囲気はほんの少しだが和み、AもBもそれぞれ帰ったら何をするかを書いた。
少しずつだが、ゆっくりと俺達は静かな時間を過ごした。
そして残りの紙も少なくなった頃、Bはある言葉を紙に書いた。
B『俺は坊さんに言われたことを必ず守る。死にたくない』
俺もAも、最後の言葉を見つめてた。
俺は『死にたくない』なんて言葉、生まれてこの方本気で言ったことなんかない。きっとAもそうだろう。
死ぬなんて考えていなかったからだ。
死を間近に感じたことがないからだ。
それを今目の前で心の底から言うヤツがいる。その事実がすごく衝撃的だった。
俺はBの目をしっかりと見つめ、頷いた。
その後は特に何も話さなかったが、不思議と孤独感はなかった。
お互いの存在を感じながら、俺達は日が暮れるのを感じていた。
何もせずにいると蝉の鳴き声がうるさくて、でも徐々に耳が慣れて気にならなくなった。
でも、なんか違和感なんだ。よく耳を凝らすと、なにか他の音が聞こえるんだ。
さらに耳を凝らすと、段々その音がクリアに聞こえるようになった。
俺は考えるより先に確信した。あの呼吸音だって。
Bを見た。薄暗くて分かりづらかったが、Bに気づいている気配はなかった。
Bには聞こえないのか?
そういえばBって呼吸音について言ってたっけ?
もしかしてあれは聞いたことがないのか?
それとも単に気づいていないだけか?
頭の中で色々な考えが浮かんだ。
すると硬直する俺の様子に気づいたBが、周りをキョロキョロと見回し始めた。
この状況の中で、神経が過敏にならないはずがなかった。俺の異変にすぐ気づいたんだ。
するとBの視線が一点に止まった。俺の肩越しをまっすぐ見つめていた。
白目が一気にデカくなり、大きく見開いているのがわかった。
AもBの様子に気が付き、Bの見ている方を見ていたが、何も見つけられないようだった。
俺は怖くて振り返れなかった。
それでも、あの呼吸音だけは耳に入ってくる。
ソレがすぐそこにいることがわかった。動かず、ただそこで「ひゅーっひゅーっ」といっていた。
しばらく硬直状態が続くと、今度は俺達のいるおんどうの周りを、ズリズリとなにか引きずるような音が聞こえ始めたんだ。
Aはこの音が聞こえたらしく、急に俺の腕を掴んできた。
その音はおんどうの周りをぐるぐると回り、
次第に呼吸音が「きゅっ・・・・きゅえっ・・」っていう、何か得体の知れない音を挟むようになった。
俺には音だけしか聞こえないが、ソレがゆっくりとおんどうの周りを徘徊していることは分かった。
Aの腕から心臓の音が伝わってくるのを感じた。
Bを確認する余裕がなかったが、固まってたんだと思う。
全員微動だにしなかった。
俺は恐怖から逃れるために、耳を塞いで目を瞑っていた。
頼むから消えてくれと、心の中でずっと願っていた。
どれくらい時間が経ったかわからない。ほんの数分だったかも知れないし、そうでないかも知れない。
目を開けて周りを見回すと、おんどうの中は真っ暗で、ほぼ何も見えない状態だった。
そしてさっきまでのあの音は消えていた。
恐怖の波が去ったのか、それともまだ周りにいるのか、判断がつかず動けなかった。
そして目の前に広がる深い闇が、また別の恐怖を連れて来たんだ。
目を凝らすが何も見えない。
『いるか?』『大丈夫か?』の掛け声さえ出せない。
ただAはずっと俺の腕を握ってたので、そこにいるのが分かった。
俺はこの時猛烈にBが心配になった。Bは明らかに何かを見ていた。
暗がりの中でBを必死に探すが見えない。
俺はAに掴まれた腕を自分の左手に持ち直し、Aを連れてBのいた方へソロソロと歩き出した。
なるべく音を立てないように、そしてAを驚かせないように。
暗すぎて意思の疎通ができないんだ。
誰かがパニックになったら終わりだと思った。
どこにいるか全くわからないので、左手にAの腕を持ったまま、右手を手前に伸ばして左右にゆっくり振りながら進んだ。
すると指先が急に固いものに当たり、心臓がボンっと音を立てた。
手に触れたそれは、手触りから壁だということがわかった。
おかしい、Bのいた方角に歩いてきたのにBがいない。
俺は焦った。さらに壁を折り返してゆっくりと進んだ。だがまた壁に行き着いた。
途方に暮れて泣きそうになった。
『Bどこだ』の一言を何度も飲み込んだ。
どうしていいかわからなくなり、その場に立ち尽くしたままAの腕を強く握った。
すると、今度はAが俺の腕を掴み、ソロソロと歩き出したんだ。
まず、Aは壁際まで行くと、掴んだ俺の腕を壁に触らせた。
そしてそのままゆっくりと壁沿いを移動し、角に着いたら進路を変えてまた壁沿いに歩く。
そうやっていくうちに、前を歩くAがぱたりと止まった。そして俺の腕をぐいっと引っ張ると、何か暖かいものに触れさせた。
それは小刻みに震える人の感触だった。
Bを見つけたと思った。
でもすぐ後に、これは本当にBなのか?という疑問が芽生えた。
よく考えたらAもそうだ。ずっと近くにいたが、実際俺の腕を掴んでいるのはAなのか?
俺は暗闇のせいで、完全に疑心暗鬼に陥っていた。
俺が無言でいると、Aはまた俺の腕を掴み、ソロソロと歩き出した。
俺はゆっくりとついていった。
すると、ほんの僅かだが、視界に光が見えるようになった。
不思議に思っていると、部屋にある隙間から少しだけ月の明かりが入ってきているのが目に入った。
Aはそこへ俺達を連れて行こうとしているのだと思った。
何故気づかなかったのか、今思っても不思議なんだ。
暗闇に目が慣れるというのを聞いたことがあったけど、恐怖に呑まれてそれどころじゃなかった。
ほんとに真っ暗だったんだ。
とにかく、その時俺はその光を見て心の底から救われた気持ちになった。
そしてAに感謝した。
後から聞いたんだが、
A「俺は見えもしなかったし、聞こえもしなかった。なんか引きずってる音は聞こえたんだけどな。
でもそのおかげで、お前達よりは余裕があったのかも」
と言っていた。
大した奴だって思った。
光の下に来ると、Aの反対側の手にBの腕が握られているのが見えた。
月明かりで見えたBの顔は、汗と涙でぐっしょり濡れていた。
何があったのか、何を見たのか、聞くまでもなかった。
夜は昼と違ってすごく静かで、遠くで鈴虫が鳴いていた。
俺達はしばらくそこでじっとしていた。
恥ずかしながら、3人で互いに手を取り合う格好で座った。ちょうど円陣を組む感じで。
あの状態が一番安心できる形だったんだと思う。
そして何より、例え僅かな光でも、相手の姿がそこに確認できるだけで別次元のように感じられたんだ。
しばらくそうしていると、とうとう予想していたことが起きた。Aが催したのだ。
生理現象だから絶対に避けられないと思っていた。
Aは自分のズボンのポケットから坊さんに貰った布の袋をゴソゴソと取り出すと、立ち上がって俺達から少し離れた。
静寂の中、Aの出す音が響き渡る。
なんか、まぬけな音に若干気が抜けて、俺もBも顔を見合わせてニヤっとした。
その瞬間だった。
「Bくん」
AB俺『・・・』
一瞬にして体に緊張が走る。
するとまた聞こえた。
俺達がおんどうに入った扉のすぐ外側からだった。
「Bくん」
俺達は声の主が誰か一瞬で分かった。
今朝も聞いた美咲ちゃんの声だった。
「Bくんおにぎり作ってきたよ」
こちらの様子を伺うように、少し間を空けながら喋りかけてくる。
抑揚が全くなく、機械のようなトーンだった。
Bの手にぐっと力が入るのが分かった。
「Bくん」
「・・・」
しばらくの沈黙の後、突然関を切ったように、
「Bくんおにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ~」
「おにぎり作ってきたよ」
「Bくん」
「いらっしゃいませ~」
「おにぎり作ってきたよ」
と、同じ言葉を何度も何度も繰り返すようになった。
尋常じゃないと思った。
恐かった。美咲ちゃんの声なのに、すげー恐かった。
坊さんは、おんどうには誰も来ないと俺達に言っていた。
そしてこの無機質な喋り方だ。
扉の外にいるのは、絶対に美咲ちゃんじゃないと思った。
気づくとAが俺達の側に戻り、俺とBの腕を掴んだ。
力が入ってたから、こいつにも聞こえてるんだと思った。
俺達は3人で、おんどうの扉の方を見つめたまま動けなかった。
その間もその声は繰り返し続く。
「いらっしゃいませ~」
「Bくん」
「おにぎり作ってきたよ」
そしてとうとう、扉がガタガタと音を出して揺れ始めた。
おい、ちょ、待て。
扉の向こうのヤツは、扉をこじ開けて入ってくるつもりなんだと思った。
俺は扉が開いたらどうするかを咄嗟に考えた。
全速力で逃げる、坊さんたちは本堂にいるって言ってたからそこまで逃げて・・・おい本堂ってどこだ、とか。
もうここからどうやって逃げるかしか考えてなかった。
やがてそいつは、ガンガンと扉に体当たりするような音を立てだした。無機質な声で喋りながら。
そしてそのまま少しずつ、おんどうの壁に沿って左に移動し始めたんだ。
一定時間そうした後にまた左に移動する。その繰り返しだった。
何してるんだ・・?
不思議に思っていると、俺はあることに気づいた。
俺達のいる壁際には隙間が開いている。
そしてそいつは今そこにゆっくりと向かっている。
もし隙間から中が見えたら?
もし中からアイツの姿が見えたら?
そう考えると居ても立ってもいられなくなり、俺は2人を連れて急いで部屋の中央に移動した。
移動している。ゆっくりと、でも確実に。
心臓の音さえ止まれと思った。
ヤツに気づかれたくない。
いや、ここにいることはもう気づかれているのかもしれないけど。
恐怖で歯がガチガチといい始めた俺は、自分の指を思いっきり噛んだ。
そして俺は、隙間のある場所に差し掛かったそいつを見た。
見えたんだ。月の光に照らされたそいつの顔を、今まで音でしか感じられなかったそいつの姿を。
真っ黒い顔に、細長い白目だけが妙に浮き上がっていた。
そして体当たりだと思っていたあの音は、そいつが頭を壁に打ち付けている音だと知った。
そいつの顔が一瞬壁の隙間から消える。外でのけぞっているんだろう。
そしてその後すぐ、ものすごい勢いで壁にぶち当たるんだ。
壁にぶち当たる瞬間も白目をむき出しにしてるそいつから、俺は目が離せなくなった。
金縛りとは違うんだ、体ブルブル動いてたし。
ただ見たことのない光景に、目を奪われていただけなのかも知れないな。
あの勢いで頭を壁にぶつけながら、それでも淡々と喋り続けるそいつは、完全に生きた人間とはかけ離れていた。
結局、そいつは俺達が見えていなかったのか、
隙間の場所でしばらく頭を打ち付けた後、さらにまた左へ左へと移動していった。
俺の頭の中で残像が音とシンクロし、そいつが外で頭を打ち付けている姿が鮮明に想像できた。
正直なところ、そいつがどれくらいそこに居たのかを俺は全く覚えていない。
残像と現実の区別がつけられない状態だったんだ。
後から聞いた話だと、そいつがいなくなって静まりかえった後、3人ともずっと黙っていたらしい。
Aは警戒したから。
Bは恐怖のため動けなかったから。
そして俺は、残像の中で延長戦が繰り広げられていたから。
そんでAが俺を光の場所へ連れていこうと腕を掴んだ時、体の硬直が半端なくて一瞬死んだと思ったらしい。
本気で死後硬直だと思ったんだって。
BはBで、恐怖で歯を食いしばりすぎて歯茎から血を流してた。
Aだけはやっぱり姿を見ていなかった。
あと、そいつはそこから遠ざかって行く時、カラスのように「ア゛ーっア゛ー」と奇声を発していたらしい。
その声はAだけが聞いていたんだけど。
そいつの2度の襲来によって、その後の俺達の緊張の糸が緩むことはなかった。
ただ、神経を張り巡らせている分、体がついていかなかった。
みんな首を項垂れて、目を合わすことは一切無かった。
Bは催したものをそのまま垂れ流していたが、Aと俺はそれを何とも思わなかった。
あんなに夜が長いと思ったのは生まれて初めてだ。
憔悴しきった顔を見たのも、見せたのも、もちろん人でないものの姿を見たのも。
何もかも鮮明に覚えていて、今も忘れられない。
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おんどうの隙間から光が差し込んできて、夜が明けたと分かっても、俺達は顔を上げられずそこに座っていた。
雀の鳴き声も、遠くから聞こえる民家の生活音も、すべてが俺の心臓に突き刺さる。
ここから出て生きていけるのか、本気でそう思ったくらいだ。
本格的に太陽の光が中に入りこんできた頃、遠くからこっちに近づいてくる足音が聞こえた。
俺達は完全に身構え体制に入った。
足音はすぐ近くまで来ると、おんどうの裏へ回り入り口の前で止まった。
息を呑んでいると、ガタガタっと音がし、「キィーッ」と音を立てて扉が開いた。
そこに立っていたのは、坊さんだった。
坊さんは俺達の姿を見つけると、一瞬泣きそうな顔をして、「よく、頑張ってくれました」と言った。
あの時の坊さんの目は、俺一生忘れないと思う。
本当に本当に優しい目だった。
俺は不覚にも腰を抜かしていた。
そして、いい年こいてわんわん泣いた。
坊さんは、俺達の汗と尿まみれのおんどうの中に迷わず入って来て、そして俺達の肩を一人一人抱いた。
その時坊さんの僧衣?から、なんか懐かしい線香の香りがして、ああ、俺達、生きてるって心の底から思った。
そこでまた俺子供のように泣いた。
しばらくしても立ち上がれない俺を見て、坊さんはおっさんを呼んできてくれた。
そして2人に肩を抱えられながら、前日に居た一軒家に向かった。
途中、行く時に見た大きな寺の横を通ったんだが、その時俺達3人は叫び声を聞いた。
低く、そして急に高くなって叫ぶ人の声だった。
家の玄関に着くと耳元でAが囁いた。
A「さっきのあれ、女将さんの声じゃね?」
まさかと思ったが、確かに女将さんの声に聞こえなくもなかった。
だが俺はそれどころじゃないほど疲れていたわけで。
早く家に上げて欲しかったんだが、玄関に出てきた女の人がすげー不快そうに俺達を見下しながら、
「すぐお風呂入って」って言うんだわ。
まーしょうがない。だって俺達有り得んくらい臭かったしね。
そして俺達は3人仲良く風呂に入った。
まあ怖かった。いきなり一人になる勇気はさすがになかった。
風呂を上がると見覚えのある座敷に通され、そこに3枚の布団が敷いてあった。『まず寝ろ』ということらしかった。
ここは安全だという気持ちが自分の中にあったし、極限に疲れていたせいもあった。
というか、理屈よりまず先に体が動いて、俺達は布団に顔を埋めてそのまま泥のように眠った。
俺は眠りに入る中で、まったくもってどうでもいいことを思った。
起きたらあいつらに、俺達が帰るって電話しなきゃな。
旅行の準備満タンでスタンバイする友達2人は、俺達が今こうして死にそうな思いをしていたことを知らない。
もちろん、旅行計画がオジャンになることも。
そういえば、おんどうから出る時俺はBに聞いたんだ。
俺「B、もう、見えないよな?」
するとBは確かな口調で答えた。
B「ああ、見えない。助かったんだ。ありがとう」
おれはその最後の一言を聞いて、Bが小便を垂らしたことは内緒にしておいてやろうと思った。
俺達は助かったんだ。その事実だけで十分だった。
その後目を覚ました俺達は、事の真相を坊さんに聞かされることになる。
そして、人間の本当の怖さと、信念の強さがもたらした怪奇的な現実を知るんだ。
Bの見たもの、俺の見たもの、Aの聞いたもの。
それを全て知って、俺達は再び逃げ出す決心をする。
今まで読んでくれた人たち、本当にありがとう。
自分でもこんな長文になるとは思ってもなかった。
沢山の期待がある分、それに沿えない結果だったかもしれないけど、
話を湾曲させたくなかったからそのまま書かせてもらった。
長すぎるのもなんなんで、一応ここで完結にしておく。
これから先は、事の真相を書くんで、本当に気になる人だけ読んでくれ。
ここまでで十分だって人は、またいつか~
『リゾートバイト(その後)』に続く(次ページ)