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729 :本当にあった怖い名無し:2007/06/23(土) 07:00:49 ID:IH+cjfCMO
少年が中学一年生の時に両親は交通事故で死んでしまった。即死だった。
その後、少年は親戚の老夫婦に引き取られたが、少年の心はひどく荒んでいた。
少年は悪い仲間と一日の大半の時間を過ごすようになり、あまり老夫婦の家にも寄り付かなくなった。
世界に希望は無いように思えた。
少年には六歳年下の弟がいた。少年にとって弟は唯一の肉親であり、守るべき存在であった。
少年は高校に入学後、すぐにバイトを始め、それに精を出した。
老夫婦はとても優しく、少年もいつしか彼らを愛してはいたのだが、
両親の喪失を経験した彼にとって優しさや愛は危険なものだったし、
中学時代の不良経験を経て「他人に迷惑をかけるのは嫌だ」という考えを積み上げた少年は、
どうしても自分の力で生きていきたかったのだ。
一人になりたかった。
金を貯めアパートを借りて、ある程度余裕が出来たら老夫婦に恩返しをするんだ、
弟の誕生日にはグローブとバットを……
そんな事を想いながら必死に働き、もちろん勉学にも励んだ。
日々は早回しのように少年は高校三年生になった。
少年はその日も遅くまで働いていた。
貯金も二百万を越え、少年の心には確かに希望があった。
老夫婦の家の前には人だかりが出来、そこに家は無く、あるのは家の残骸だった。
優しい老夫婦と守るべき弟は、優しかった老夫婦と守りたかった弟に姿を変えた。
通行人のタバコの火が原因だとわかったが、そんな事はどうでも良かった。
犯人などというものにも興味は無かった。
彼は望み通り独りになった。
まぁ彼って俺なんだけどね