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707 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/01 21:24
姉は今妊娠中なのですが、結婚前まで勤めていた職場に、とても仲のいい友達がいました。
その人はYさんといって、明るくてきれいで、誰にでも好かれるタイプの女性でした。
ある年の2月。姉とYさんは、一緒にバレンタインのチョコレートを買いに行きました。
姉には当時彼(今のご主人)がいて、その人のための本命チョコと、職場で配るための義理チョコをいくつか買いました。
そして、Yさんの買ったチョコを見ると、義理チョコの中に一つだけ高価なチョコが混ざっていました。
Yさんは普段彼氏がいないと言っていたので、姉は「Yちゃん、それ本命チョコ?」と聞きました。
するとYさんは頷き、まだつきあってはいないけど、好きな人がいる。この機会に告白するつもりだと答えました。
姉は「そうなの!頑張ってね!」と心から応援し、Yさんも嬉しそうでした。
そして2月14日。
姉は彼氏にチョコを渡し、同僚にも義理チョコを配りました。
姉の職場では女の子同士でも、お世話になっている人や仲のいい友達の間でチョコのやりとりがあって、
姉はYさんにもチョコをあげました。
するとYさんも姉にチョコをくれたのですが、そこで大笑い。
一緒にチョコを買いに行ったので、二人とも全く同じチョコを差し出していたのです。
でも、気持ちだからと、二人は同じチョコを交換しました。
708 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/01 21:30
仕事に戻り、しばらくした後。
姉はキャビネットの整理中、Yさんの机にうっかり足をぶつけてしまいました。
それで運悪く、Yさんが机の上に置きっぱなしにしていたチョコの箱が転がって、
その下にあった水の入った掃除用バケツに落ちてしまったのです。
姉は、あ、しまった、と思いましたが、すぐに自分も同じチョコを持っていることを思い出し、
代わりに自分のチョコをYさんの机の上に置きました。
もともと姉は甘いものがあまり好きではないので、
チョコレートに目がないYさんに食べてもらったほうがいい、と思ったのだそうです。
翌日、姉が職場へ行くとYさんが、「あれ、M(姉の名前)ちゃん、チョコ食べなかったの?」と聞いてきたそうです。
姉は、おかしなことを聞くな、と思いました。
自分がチョコを取り替えたことをもしかして知っているのかな、と。
でも、探りを入れてみると、そういうことでもなかったようで。
今さら『実はチョコを落としてしまったから、自分のと取り替えた』と言うのもなんなので、
姉は「うん、昨夜は帰ってすぐ寝たから食べなかった。今日食べることにするよ」と言ったそうです。
709 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/01 21:36
翌日、姉はいつも通りに出勤しました。
姉はそこで、先に出勤してきた同僚に「昨夜、Yさんが亡くなったよ」と聞かされました。
自宅で亡くなっていて、お母さんに発見されたそうです。
最初はとても信じられませんでした。
つい昨日まで全く元気で普通に話していたのにと思うと、 悲しくなるより先に呆然としてしまいました。
でも、それよりも衝撃的だったのは、Yさんはどうやら自殺だったらしいということ。
遺書も何も無かったのですが、服毒死だったそうです。
姉の悲しみようは、妹の私から見ても辛いほどでした。
「自分には何もしてあげられなかった。そこまで思いつめていたのなら、どうして言ってくれなかったのか」
と言って、ひどく落ち込んでいました。
710 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/01 21:42
それから1年後。姉は結婚し、妊娠もし、親友を失った悲しみも和らいでいるようでした。
ところが最近になって姉がまた、あの当時の憂鬱な青ざめた顔つきをしていることが増えたのです。
それどころか、心なしかあの当時以上に陰鬱な雰囲気になっているようで…
私は心配になって、姉を問いただしました。
姉はようやく重い口を開き、語ってくれました。
Yさんが亡くなってから一年後のバレンタイン。
姉がご主人にチョコレートをあげようとすると、彼が辛そうに言ったそうです。
Yさんが亡くなる直前、彼女に告白されたのだと。
『親友の彼だと思ってずっと我慢していたけれど、辛くて、辛くて、もうだめ。
このままじゃ、自殺するかMを殺すか、どちらかしてしまいそう』
彼は驚きましたが、Yさんとつき合うつもりはないし、姉とは結婚するつもりでいることを話し、
Yさんを納得させようとしたそうなのですが……
Yさんの自殺の原因、それは姉とご主人にあったのか。
私もショックを受けましたが、姉はどれほど苦しんだことでしょう。
慰めの言葉もない私に、姉が言いました。
「自殺だったら、まだいいんだけど」と。
どうしてか思い出してしまう。
『チョコ食べなかったの?』と言うYさんの言葉。
自殺にしては遺書も無い、あまりにも突然の死。
あの日、取り替えたチョコレートの箱。
『自殺するか、Mを殺すか、してしまいそう……』
「考え過ぎだよ」と私は姉に言いました。
「もう終わったことなんだし、今は妊娠中で気が昂ぶっているから、色々なことに過敏になっているんだよ」と。
本当のところは私にもわかりません。
ただ、もしこの不安が当たっていたら…と思うと、姉があまりにも可哀想で。