181: 本当にあった怖い名無し:2007/11/17(土) 00:38:56 ID:7iYpLyo/O
自分のじゃなくて叔父の体験談だけど…
当時独身で一人暮らしだった叔父さんが、ある晩に寝室で寝ていると、
胸を締め付けられるような苦しさで目を覚ました。
叔父さんは何と無く違和感を覚えて、室内を見渡したそうだ。
すると、叔父さんの寝室の扉には、擦りガラスの小さな窓みたいのが付いてるんだが、
そこにうっすらと人影のようなものが映っていた。
泥棒だ。とっさに叔父さんはそう思った。
叔父さんは、仕事中はずっとタバコ吸ってるかコーヒー飲んでるかの生活で、
体重は100キロ近くという不健康ボディだったが、柔道だったか空手だったかの有段者。
包丁やナイフを持ったぐらいの素人の泥棒なら、ボコボコにする自信はあったらしい。
「誰じゃいゴラァァア!!」と叫びながら寝室の扉を開けた叔父さん。
だが、そこには泥棒なんかいなかった。
代わりに、白い人の形をした靄のようなものがいた。
そして、それは叔父さんの前で消えていった。
ここが叔父さんの凄いとこで、
ンだよ、泥棒じゃねぇのかよ!なら俺を起こすンじゃねぇ!!とか思いながら、寝直したそうだ。
しかし次の日も、また胸の苦しさで目を覚まし、
擦りガラスに人影が映っていたので扉を開けると、叔父さんの目の前で消えていく。
これが毎晩の様に続いた。
2週間も続いた頃、精神的に参るのが普通だが、叔父さんは参ってはいなかった。
もっとも、睡眠不足気味で、肉体的には若干参ったらしいが。
「次に現れた時は扉開けずに無視してやる!絶対負けねぇ!!」と奮い立った。
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182: 本当にあった怖い名無し:2007/11/17(土) 00:41:54 ID:7iYpLyo/O
ある晩、またいつもの様に、叔父さんは胸の苦しさで目を覚ました。
案の定、擦りガラスの向こうには奴がいる。
オレは人を半殺しにしたことならあるが、殺したことはねぇ。なんで幽霊に怨まれなきゃならん!
と、寝不足の怒りをパワーに変えると、扉を開けたい衝動をグッと堪えた。
その間にも胸の苦しさは強くなっていく。
そしてそれに比例するように、擦りガラス越しの人影は濃くなった。
まるでピンボケの白黒写真が、徐々にピントの合ったカラー写真になっていくように。
さらにそいつは、ドアノブをガチャガチャ回し始めた。
胸の激しい苦しさと正体不明の相手との睨み合いに、全身からは嫌な汗が滝のように噴き出す。
人影が、肌色は悪いがガッシリとした体格で、水色の服を着ていて、
左手でドアノブを回しているのが分かるくらい濃くなった時に、
叔父さんの胸の苦しさは限界に達した。
我慢できなくなった叔父さんは、ベッドの上から這うようにして進んで寝室の扉を開けた。
連日の経験から、扉を開ければ苦しみから解放されると思ったのだ。
184: 本当にあった怖い名無し:2007/11/17(土) 00:43:01 ID:7iYpLyo/O
果たして扉の向こうに立っていたのは、叔父さん自身だった。
叔父さんと全く同じ姿形、水色のパジャマを着ているのまで一緒だった。
自分と違う点と言えば、酷く体調が悪そうで、肌色も悪く、目には生気が無く、苦痛に歪み、
助けを求めるような表情をしていた。
いや、これこそが今の自分自身の姿なのかもな。
そんなことを考えていると、扉の向こうの叔父さんは、いつもの人影と同じく溶けるように消えていった。
そしていつの間にか、胸の苦しさも消えていた。
その晩は結局、そのまま朝まで起きていた。
朝一で職場に欠勤する旨を伝えると、仕事が忙しくない時期だったこともあってすんなり許可された。
叔父さんはそのまま病院に向かった。
何故そうしたのか、それは叔父さんにも分からなかった。
ただ本能的に、としか言えないという。
叔父さんは丸一日かけて入念な検査をしてもらった。
検査の結果、叔父さんは極度の狭心症を患っていて、心筋梗塞の手前だと診断された。
「お宅のように一人暮らしだと、寝てる時に心筋梗塞を起こして、
誰にも気付かれずにそのままポックリってパターンも有り得たよ」
と医者に言われてゾッとしたそうだ。
その時に叔父さんは全てを悟ったそうだ。
オレは毎晩発作を起こして死にかけてたんだ。
そしてオレの体から魂がどんどん抜けていってた。
だが、そこはオレの魂。
死んでたまるかとばかりにドアノブにつかまり、寝室の扉の前にとまり続けてた。
オレが扉を開ければ魂は体に戻り、オレは生き返る。
そりゃ扉を中々開けなければ魂はどんどん抜けていくから、胸の苦しさも強くなるわな。
その後、叔父さんは食事療法と投薬治療で完治。
今ではその頃からするとかなり痩せてるし、心臓も元気。
何より、叔父さんの体を気にかけてくれる奥さんもできた。
最後に叔父さんの一言。
「人間ドックとかは、絶対に定期的に受けた方がいい」