ホラー

【洒落怖】渦人形

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?265

268 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:00:48.42 ID:x83Y3WRH0
E介が帰ってきた日の夜、俺が自分の部屋で寝転がってメールしていると、一瞬、
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、あの声が聞こえた気がした。
びっくりして起き上がり、カーテンを開けて外を見たりしたが、いつもの景色で何も無い。
俺は「気のせいかな?」と、起き上がったついでに1階に飲み物を取りに行くことにした。

俺の家はL字型になっていて、自室は車庫の上に乗っかるような形になっている。
冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し2階へ上がると、
丁度階段を上がったところの窓のカーテンの隙間から、僅かに自室の屋根の部分が少し見えた。
すると、屋根の上に何かがいる…
この前あんな事があったばかりなだけに、ビビりまくった俺が窓からカーテンを少し開けて外の様子をのぞくと、
屋根の上に和服を着た子供が、両手を膝の上にそろえて正座しているのが見えた。
それだけでもかなり異様な光景なのだが、それだけではなかった。
子供は体を少し前かがみにして、下を覗きこむような姿勢なのだが、
首のあるはずの部分から、細長い真っ直ぐの棒のようなものが1mほどのびていて、
その先にある頭が、俺の部屋の窓を覗き込んでいた。

269 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:01:37.39 ID:x83Y3WRH0
即席aaで解り難いけど、こんな感じだった。
覗く子供
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声も、窓越しにわずかに聞こえてくる。
俺はあまりの出来事に声も出せず、そのまま後ずさりすると1階へ下りた。

寝ている親を起そうかとも思ったが、これで起してあれがもういなかったらそれこそ恥ずかしい…
その時なぜかそう思った俺は、そのまま1階のリビングで徹夜した。
たしか朝4時過ぎまで、「ホホホ…」という声は聞こえていたと思う。

翌朝、恐る恐る部屋に戻ってみたが、あれはいなくなっており、室内にも特に変わった部分は無かった。

その日の昼頃、自宅の電話に顧問の先生から電話があった。
この前の件で話があるからすぐに来いという。
昨晩のこともあった俺は、嫌な予感がして大急ぎで学校へと向かう事にした。

270 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:02:19.49 ID:x83Y3WRH0
学校へ到着すると、生徒会などで使っている会議室に呼ばれた。
会議室に入ると、A也、B太、それにC広とD幸までいる。
更に、うちの学校とC広たちの学校の顧問の先生たち、それと見た事の無いおじさんたちも数人いた。

まず、顧問の先生のうち1人が話し始めた。
要約すると、E介にまた同じ症状だでたらしく、とある場所に運ばれたらしい。
そして、俺達に「昨夜おかしな事はなかったか?」と聞いてきた。
俺はすぐさま昨夜のあれを思い出し、
「あのー、深夜になんか変なのが俺の部屋を覗き込んでるのが見えて…」と事情を話した。
A也、B太、C広、D幸には特に異常はなかったらしい。
するとC広が、
「そういやお前(俺)さ、あの家の中で、階段の上眺めながらボーっとしてたよな?
 あれ関係あるんじゃないか?」
と言い出した。

271 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:02:59.21 ID:x83Y3WRH0
そういえば…
俺はあのときの事を思い出し、
皆に「あの時さ、変な笑い声みたいなのと、なんか子供の姿見たよな?」と聞いてみた。
しかしみんなは、声はずっと聞こえていたけど、
子供の姿は最初のドアのところで見ただけで、家の中では見ていないという。

俺達がそんなやり取りをしていると、さっきまで黙っていたおじさんが、事件の詳細を話し始めた。
非常に長い話だったので要約すると。
俺達がであったのは、『ひょうせ』と呼ばれるものらしい。
これはあの土地特有の妖怪のようなもので、滅多に姿を見せないが、
稀に妊婦や不妊の家の屋根に現れて、笑い声をあげるらしい。
そうすると、妊婦は安産し、不妊の夫婦には子供が産まれるという、非常に縁起の良いものだそうな。
ただし、理由は全く分からないが、
数十年に一度、なぜか子供を襲い憑り殺してしまうという、厄介な存在でもあった。

ちなみにあの家は、全くいわくも何もなく、ただ『ひょうせ』が偶然現れただけの場所なのだが、
『ひょうせ』が子供を憑り殺そうとした場合、それに対する対抗策があり、
『ひょうせ』が最初に現れた場所に結界を作り封じ込め、簡易的な祠をつくって奉ることで、
殺されるのを防ぐ事ができるらしい。
合宿所から帰る直前、俺達が見たのは、その封じ込め作業だったわけだ。

272 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:03:29.67 ID:x83Y3WRH0
おじさんは続けて、ただ今回は何かおかしいのだという。
普通、祠をつくって奉ればそれで終るはずなのだが、今回はどういうわけだが逃げられてしまって、
E介がまた被害に会い、しかも俺のところにまで現れている。
それに、そもそも現れるだけでも珍しい『ひょうせ』が、
自分達の村とその周辺以外に現れる、というのも全く前例がないうえに、
『ひょうせ』が前回子供を襲ったのは20年ほど前で、早すぎるのだそうな。

ただ、おかしいおかしいといっても、現実に起きてしまっているのだから仕方が無い。
俺達は学校で、村から来たお坊さんに簡易的な祈祷をしてもらい、お札を貰って、
「君たちはこれで大丈夫だろう」と言われ帰された。
ちなみに、E介に関しては、暫らくお寺で預かって様子を見て、
その間にもう一度祠を建てて、『ひょうせ』を奉ってみるとの事だった。

学校から帰された俺達は、各々迎えに来ていた親に連れられて帰る予定だったのだが、
話し合って、ひとまず学校から一番近い俺の家に全員で泊まることにした。
安全と言われていてもやはり不安だし、全員でいたほうが少しは心細く無いと思ったからだった。

その夜、俺達が部屋でゲームしていると、
コン…コン…コン…コン…と、窓を規則的に叩く音がした。

273 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:04:40.52 ID:x83Y3WRH0
さっき説明した通り、俺の部屋は車庫の上にあり、壁もほぼ垂直なので、よじ登って窓を叩くなどまずできない。
しかも、その窓は昨晩、例の子供が覗き込んでいた窓だ…
状況が状況だけに、全員が顔をこわばらせていると、
B太が強がって「なんだよ、流石に誰かの悪戯か風のせいだろ?」と、カーテンを開けようとした。
俺は大慌てでB太に事情を話し、カーテンをあけるのを踏みとどまらせた。

窓を叩く音はまだ続いている。
D幸が、「やっぱ正体確認したほうがよくね?分からないままのほうが余計こえーよ…」と言ってきた。
たしかに、何かその通りな気がした。
なんだか分からないものが一晩中窓を叩いている状況なんて、とても耐えられそうに無い。
俺達は階段のところまで移動し、カーテンを少し開けて、隙間から俺の部屋を見てみた。
いた…
昨日のあれが、やはり昨日と同じように首をらしき棒を伸ばし、窓から俺の部屋を覗き込んでいる。
そして時々、コン…コン…と頭を窓にぶつけている。

274 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:05:45.22 ID:x83Y3WRH0
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、例の抑揚の無い笑い声のようなものも聞こえてきた。
音の正体はこれだった。
異様な光景だった。
そして、昨日は気付かなかったが、あれは子供と言うより、和服を来た人形のようだった。
頭が窓にぶつかる音も、人間の頭と言うより、中身が空洞の人形のような音だ。
C広が、「ひょうせって、今日もう一度封じ込めたんじゃねーのかよ…」と呟いた。
その時、俺の親父が騒ぎに気付いて、「お前ら何やってるんだ?」と階段を上がってきた。
その声にびっくりしたA也が、思わず腕を窓にぶつけて、ドン!と大きな音を立ててしまった。

278 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:25:44.15 ID:x83Y3WRH0
"それ”の棒の先にある頭だけが、カクンッという感じでこっちを向いた。
俺達は顔をはっきりと見た。
"それ”はおかっぱ頭で、笑顔の人形だった。ただし、ただの人形ではない。
顔は人形特有の真っ白な肌なのだが、笑顔のはずの目は中身が真っ黒で、目玉らしきものが見えない。
口も同じで、唇らしきものもなく、そこにはやはりぽっかりと真っ暗な、三日月状の穴のようなものがある。
それでも、目や口の曲線で、『にっこり』と言う感じの笑顔だと分かるのが余計に不気味だった。
親父が、「だからお前ら何やってるんだ?」と、窓のところに来てカーテンを全開にすると、
それはサッ!と屋根の影に隠れて見えなくなった。
が、親父にも一瞬、何かがそこにいたのは分かったらしい。
親父は大慌てで1階に降りると、携帯でどこかに電話をし始めた。
どうやら、昼間祈祷をしてくれたおぼうさんや、おじさん達の連絡先を聞いていたらしく、
そこと顧問の先生のところに電話しているらしい。

その後、影に隠れたきり、"それ”は二度と姿を現さなかった。

次のページへ >

スポンサーリンク

-ホラー
-