洒落怖・怖い話

【2chの怖い話】教会の神父の息子が語る「怖い話」5選

※教会の神父の息子さんが父親とともに体験した怖い体験談を語るスレです。エピソードは5つです。

はじめに

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?180

941 :本当にあった怖い名無し:2007/11/05(月) 22:26:21 ID:hsrpxV6l0
親父が死んでからちょうど今日で一年たった。キリシタンだから一周忌とかないんだけど。
親父はキリスト教の神父だったけど、幽霊の存在も認めていた。
同じ体質の俺も、キリスト教に入るかどうか未だ迷っている。
ほかの神父や教会の人たちからは、異端というか悪魔憑き扱いされていた親父だったが、
不可解な存在に悩む人たちを、無償で助け続けた人生だった。
我が家と親父を襲ったさまざまな悲劇を、ここに書いてもいいだろか?
誰にも言うなと言われたが、親父の生き様を自慢させていただいてもいいだろうか?
みなの返答を待つ。

955 :941:2007/11/05(月) 22:47:19 ID:hsrpxV6l0
賛否両論って感じですね。
黙っとけと言われたのは、この世に幽霊や霊魂が存在しているということなので、このスレで黙っとく意味はないのだけれど、
どうせ書くなら、思い出せる話を全部書いてみたいくらいの感情があるんだよね。
>>960に判断任せた

960 :本当にあった怖い名無し:2007/11/05(月) 22:54:26 ID:r9DsLiKy0
書いちゃえ

962 :941:2007/11/05(月) 22:54:58 ID:hsrpxV6l0
>>960
わかった。

964 :本当にあった怖い名無し:2007/11/05(月) 22:55:50 ID:EkSHCMsq0
ハナから書く気満々の件

966 :941神父の子:2007/11/05(月) 22:56:56 ID:hsrpxV6l0
はじめに。
キリスト教にもたくさんの種類があるので、よそのことはよくは知らないが、
キリスト教の考え方は基本的に、死んだ人間がこの世に化けてでることはないとされている。
つまり、幽霊というものはいない。という考え方だ。
幽霊が見えたなら、それは悪魔が幻覚を見せていると考える。

親父は小さな頃から、幽霊というものがよく見えたらしい。
気が狂いそうになる中で救いを求めたのが、キリスト教だったと聞いている。
だがそれでも幽霊は見え続け、いつしかそれ(霊)を救えるようになったのだという。
「それは神様のお力添えがあったからで、自分は幸せなのだ」と常に言っていた。

教会には、2週間に一度はこの手の悩みを持った人が現れていた。
親父は一人一人の話を親身に聞いて、悩みが解決するように頑張っていた。
でもやっぱり狂ってしまって、1年前に首を吊って死んだ。
神でも救えないほどいろんな出来事があった。
自慢話に聞こえるかも知れないが、自慢の父の話を書かせて欲しい。
とりあえずメモ帳にまとめる。次スレになると思う。

>>964
誰かに背中押して欲しかったんだよ。

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親に呪われている

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?181

12 :神父の子:2007/11/05(月) 23:45:06 ID:hsrpxV6l0
ある日のこと。
学校から帰ってくると、ウチの小さい貧乏教会にパトカーが止まっていて、中に警官が2人いた。
何事かと母に聞くと、なんでも「秋山さん(仮名)が暴れて倒れた」との事。
近所の人が大声にびっくりして、勝手に気を回して警察を呼んだらしい。
(そのくらいいろいろあることで有名だった)
そのまま秋山さんは、警察に抑えられるようにパトカーに乗せられた。
親父もあとで警察に来るように言われていた。

15 :神父の子:2007/11/05(月) 23:46:29 ID:hsrpxV6l0
秋山さんは45才くらいの独身のおばさんで、最近教会に通うようになった人だ。
こんなことを書くと語弊があるのだが、日本で宗教に入る方は心に病気を持っていたり社交性が低いことが多い。
無宗教の人から見るとみんなでわいわいやっているように見えるが、決してそんなことはない。
人知を超えた神という存在があるからこそまとまれる人たちであって、
通常のルールやマナーでは浮いてしまうような人が、集まってしまうこともある。
決してその人達が変人な訳ではなく、
ウチの教会で言えば『見えてしまう人』や、『憑かれてしまっている人』だと言っても過言ではない。
もちろん、基本的にはいい人達なのは言うまでもないが・・・

17 :神父の子:2007/11/05(月) 23:47:48 ID:hsrpxV6l0
秋山さんは「自分の親に呪われている」と言って教会に来た。
親父は「子を呪うような親はいない」と言って慰めたが、秋山さんは呪われていると自己暗示にかかっていた。
「なぜ呪われていると思うのか」という親父の問いに、「長い間、顔を見に行っていないから」と答えた。
驚いたことに、秋山さんの親は生きているのだ!
呪われているなどと言うから、てっきり亡くなっているのだと思っていた。
そうとなれば話は早いので、秋山さんと親父と母で親御さんに会いに行くことにした。
無論、学生で信者ではない俺はお留守番だ。

20 :神父の子:2007/11/05(月) 23:49:14 ID:hsrpxV6l0
数時間後、母から車で迎えに来るように言われて、電話で聞いた住所をカーナビに入力してむかった。
ついた先はゴミ屋敷と呼ぶに相応しいオンボロの家で、なんとも言えない匂いを放っていた。
すでにパトカーと救急車が数台来ていて、夜のゴミ屋敷を赤く照らしていた。
家の外でオロオロした母を見つけ、「いったいどうしたんだ?」と聞いている最中、
家の中からこの世のものと思えない異臭とともに、頭蓋骨を抱いた秋山さんが警察に両肩を支えられて出て来た。
その匂いと異様さに、俺と母は胃の中のものを道端に戻した。野次馬たちも数人戻していた。
その後を追うように親父が出てきた。
真っ青になりながら、「残念ながら亡くなっていたよ」と言った。
服は泥?だらけになっており、チーズのようななんとも言えない匂いが染み付いていた。
俺は服を捨てるように頼んで、パンツ一枚の親父を警察まで送っていった。

22 :神父の子:2007/11/05(月) 23:50:58 ID:hsrpxV6l0
後日。
母親を孤独死させてしまった秋山さんを、教会のみんなで慰めた。
ただ、あのゴミ屋敷を見た俺としては、たとえ親とはいえ見捨ててしまうだけの事情があったのだろうと察した。
それでも秋山さんの中で罪悪感があったのだろう。だから『呪われた』なんて思ってしまったのだと思っていた。

落胆する秋山さんは、毎日のようにお祈りに参加した。
俺の目から見ても、少しづつ元気を取り戻しているように見えた。

元気になった秋山さんは、逆に亡くなった母親の悪口を言うようになった。
はじめは教会のみんなも黙って聞いていたのだが、だんだん耳に耐えられなくなって秋山さんを避けた。
それでも親父は黙ってうなずいて、秋山さんの暴言を聞いていた。

25 :神父の子:2007/11/05(月) 23:52:03 ID:hsrpxV6l0
ここからは母に聞いた話。
冒頭の秋山さんが暴れて倒れて、教会に警察が来た日の話だ。
いつものように暴言を吐き続ける秋山さんに、ついに親父が言った。
「あなたのお母さんは、首を絞められてもあなたを恨んだりはしていませんよ」
その言葉を聞いた秋山さんは、泣き暴れながら「殺してヤルー」と何度も叫んで気を失ったという。
母は「お父さん、はじめから知っていたんだよ」と言っていた。

秋山さんが自首をしたという話は聞いていない。
親父に「これでよかったのか?」と尋ねると、「誰にも言うなよ・・・」とだけ言った

教会のドアをキンキンと叩く音

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?181

62 :神父の子:2007/11/06(火) 01:09:19 ID:cX30Hz2o0
ある日のこと。
親父が早朝から神様に祈っていた。
これは決まって、昨日の夜に怖いことがあった時のお決まりのパターン。
幽霊を見える人が慣れるとか普通に見えると言うが、親父は「その気持ちはよくわからん」と言っていた。
「気分は悪くなるし、突然でてくるとやっぱり怖い」と言っていた。親父は怖がりだったのかもしれない。

親父の早朝お祈りも3日目に突入すると、母も俺も流石に心配になってくる。
おそらく親父は一睡もできていないと思うし、俺たちにも聞こえるほどの強烈なラップ音が鳴り響く。
その日は土曜で休みだったので、親父に「どんな霊が来ているのか?」と聞いてみた。
俺にできることなど何一つないが、なんとか親父を楽にしてあげたいという気持ちだけはあった。

63 :神父の子:2007/11/06(火) 01:10:26 ID:cX30Hz2o0
親父いわく、「ドア一枚分くらいの大きさの顔をした女の霊が、部屋の前のドアまで毎日来ている」とのこと。
「おそらく最近死んだ人間だと思う」と言っていた。
それはドアの前まで顔だけで現れ、日が昇るまで母を侮辱する言葉を吐き続けるらしいのだ。
親父は、狙われているのが母かもしれないので無視して寝るわけにもいかず、部屋に入らぬように見ているのだという。

次の日は日曜だったので、親父の提案で礼拝堂の隅に布団を敷いて、3人で寝ることになった。
俺も母も、今夜なんらかの決着をつけるつもりなのだ、ということを実感していた。

いきなりこんな天井の高いところで寝ろと言われてもさすがに寝れず、布団の中で目をつぶっていると、
教会のドアをキンキンと叩く音がした。
ドンドンでもカンカンでもなく、キンキンだった。
その音は木琴の高い音のような、金属ではないキンキンという擬音がぴったりくる音だった。
キンキンは少しづつ間隔が狭くなり、キンキンキンキンと連続した音になった。
俺は怖くて布団の中で目を瞑っていた。
隣の布団から母が手を伸ばしてきた。
母も怖かったのか、俺を守ろうとしたのか・・・
俺は年がいもなく、母の手を強く握り返した。 

64 :神父の子:2007/11/06(火) 01:11:11 ID:cX30Hz2o0
その瞬間、握り返した手に温度を感じないと思った瞬間!30メートルくらい引っ張られた感覚に襲われた!
『騙された』という、なんともいえない感情が頭の中を回った。正直、死んだと思った。
その時、親父が吼えた。吠えたとも言える。人の怒号ではなかった。獣のような謎の怒号だった。
俺は布団の中で、片手をあげた状態で金縛りになっていた。
母が頭までかぶっていた俺の布団をはいだ瞬間、
天井に、感覚的に女だと思われる、たたみ2枚分ほど巨大な顔があった。
怒りと憎悪にまみれた嫌な感覚の塊だったと、今でも思い出す。

65 :神父の子:2007/11/06(火) 01:12:03 ID:cX30Hz2o0
夜が明けて、親父に昨日のはなんだったのか聞いてみた。
「最近死んだ女を中心に、100を越えるものが集まるとああなるのだと思う」と言っていた。
「今は目的があるが、そのうち溶け込んで、ただの悪意の塊になってしまう。ああなると神のそばにはいけないな」
と、ぶつぶつ説明してくれた。
俺としては今夜のことが心配だったのだが、親父は「昨日が最後だから心配ない」と言っていた。
根拠は教えてはくれなかった。

次の日、親父は夜まで寝ていた。

夜ご飯時に、外国人の女性が死体で見つかったニュースがやっていた。
その時、やっと起きてきた親父が「これだったのかな?」とつぶやいた。
それで教会に来たわけ?と思ったが、もううんざりだったので口には出さなかった。

105 :神父の子:2007/11/06(火) 08:31:07 ID:cX30Hz2o0
おはようございます。
えーと、いくつか疑問点が出ているようなんでお答えします。

わかりやすく神父と書いてますが、実際には司祭というやつになります。
基本的には未婚ですが、別の宗教から転会したパターン(簡単にいうと移動)なので、妻帯でも問題はありません。
もともと東方典礼なので、妻帯もおkかもしれません。

なぜ親父が神父の立場になれたかですが、これは周りの人間からの支持が大きかったと思います。
ここには書くことはないと思いますが、ハッピーエンドも多かったので・・・

もう1つ、僕は洗礼を受けていません。
ただ、教会に来てくれる人は、受けていると思っていたかもしれません。
なぜ洗礼を受けていないかは、いつか書ければいいなと思います。

子猫の里親

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?181

165 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/06(火) 15:45:34 ID:cX30Hz2o0
ある日のこと。
「拾った子猫を飼ってもらえないか?」と、小学生くらいの女の子とその母親が来た。
商売柄?と言っていいのかわからないが、教会にはこの手の相談がよく来る。
残念ながら、拾ってくる小動物全てを飼っていたら、見事なワンニャンランドが出来上がってしまうので、
貰い手を一緒に探すのを手伝うという形で、一時的に預かる感じにしていた。
命を大切にするのはとても大切なことだから、親父も母も嫌な顔1つせずに里親探しを手伝った。
俺はもっぱらインターネット部隊として、里親探しを頑張った。
猫は去勢や予防接種なども里親がみつかる重要な部分でもあるので、親父は貧乏だったが、自腹を切って払う時もあった。

166 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/06(火) 15:46:19 ID:cX30Hz2o0
俺は早速、インターネットの里親募集に写真を載せた。
親父と母親はいつものペットショップとパン屋さんに、写真を張ってもらえるように頼みにいった。
猫を拾った女の子は、学校の帰りにいつも猫に会いに来ていた。
子猫を中心とした、あたたかい人情の輪のようなものを感じていた。

2週間ほどでインターネットで里親が見つかり、むこうから車で引き取りに来てくれることになった。
おまけに「予防接種や去勢はこちらで致します」と言ってくれて、とても大助かりだった。
正直、我が家はみなさんのお裾分けで食いつないでいるような貧乏な家だからだ。

167 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/06(火) 15:47:26 ID:cX30Hz2o0
子猫の受け渡しの日、親父はたまたま別の教会に出張に行ってしまっていた。
俺と母と女の子で、里親になってくれる山田さん(仮名)に、あまった餌や匂いのついた毛布などを渡した。

子猫がいなくなって、ほっとしたようなさみしいような夕食時に、親父は帰ってきた。
親父も子猫がいなくなったことを、少し寂しいと感じているようだ。
その時、親父がケモノの匂いがするといって、鼻をくんくんしながら部屋を徘徊した。

その夜、親父が「猫がいる」と言って家の中と外を探しはじめたが、もちろんいなかった。

次の朝、親父が山田さん(仮名)に連絡を取ろうとしたが、
置いていった連絡先は、まったく関係のない電話番号だった。
俺は「インターネットで残っている情報から、山田さん(仮名)に連絡が取れないか?」と聞かれて、
あわてて連絡をくれるようにメールをしてみた。

次の日、メールの返事が来ていないことを親父に伝えると、親父は肩を落としながらこう言った。
「あの子猫、ミキサーに入れられて死んだかもしれん。申し訳ないことをした。かわいそうなことをした」

エンジェル様を怒らせてしまった

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?181

630 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/07(水) 22:41:41 ID:a6IF0eir0
ある日のこと。
教会の電話に、面識のない中学生からの電話があったらしい。
どうやら、複数人のグループで電話をかけてきたらしく、電話を受けた親父も内容の把握に困惑していた。
内容を簡潔に言えば、『エンジェル様を怒らせてしまったので、謝り方を教えてほしい』との事。
さすがの親父も、『エンジェル様を怒らせた』の意味がわからなかったが、
俺がこっくりさんの別名だと説明すると、「なるほどなるほど」と電話全体の意味を理解したようで、
次の日曜に、説教もかねて子供達を教会に呼び出した。

多少の興味もあり、日曜に俺も教会で待っていると、おどろいたことに先生と生徒4人の計5人でやってきた。
正直、この手の話に大人が噛んでくるとは思わなかったので、逆に先生に親父が怒られるのかも?と心配したが、
どうやらそうではないらしい。
話を聞くと、先生もエンジェル様の被害者だというのだ。

631 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/07(水) 22:43:02 ID:a6IF0eir0
若い女性の先生と4人の女生徒。
神妙な面持ちの先生を後ろに、女生徒の一人がエンジェル様を怒らせた理由を話し始めた。

放課後、教室でエンジェル様を4人でしていたところ、教室の見回りをしていた先生にみつかった。
急いでエンジェル様にお帰り願って終了しようとしたが、エンジェル様が思うように帰らない。
しびれを切らした先生が、強引に紙を奪って破いてエンジェル様を終了させてしまった。
それが1ヵ月ほど前の話で、それからずーっと、エンジェル様の呪いに4人は悩まされているという。
具体的には、風邪で高熱を出したり、車に轢かれそうになったり、夜に謎の気配を感じたりと、
数え出したらきりがないほどの不幸な目にあっているそうだ。

親父は「エンジェルは神の意思を伝える神の子供だから、教会で心から謝れば怒りは必ず収まる」と話した。
少し聖書を読んで聞かせた後、女生徒たちは神に懺悔してエンジェルの怒りから解放された。
念のため先生の連絡先だけを教えてもらって、2時間ほどで帰っていった。
帰り際に女生徒たちは「体が軽くなった!」と、1ヵ月におよぶ永い呪いからあっという間に開放された。

632 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/07(水) 22:44:50 ID:a6IF0eir0
教会の日曜日は忙しい。今日は異例のお客様もあったことで、かなり遅めの昼食になった。
俺は親父に、今日のエンジェル事件の真相を聞いてみた。答えはわかっていたが、一応確認がしたかった。
答えは予想外のものだった。
「先生はかなりつらい状態だな・・・なんともならないかもしれない」
いったいあの先生になにが憑いているというのか?気になった俺は親父に詳しく聞いてみた。

親父いわく、(キリスト教の考え方とは全く異質の考え方だが)
霊というのは単体で動いていることはほとんどなく、
強い意志を持った霊を中心に、無数の霊で構成されていることが多い。
強い意志=霊長類なので、「動物霊や虫などの霊を、単体で見ることはほとんどないのではないか」と言っていた。
人間同士の霊がくっつく時は、同じ意思を持った霊が合体することが多く、
個人的な恨みを残して霊になったとしても、いくつも合体することで漠然とした恨みの塊になり、
いわゆる成仏への道が完全に絶たれてしまうわけらしい。(個々が原初の恨みを解消できない)
脳を持たない霊魂は、霊になってまで達成したかった目的をいつまでも記憶できないので、
どうしても漠然とした悪霊になってしまう。
神父がいうのも変な話だが、
ほとんどの人間は死んですぐにお経などを聞かせたりすることで、
この世そのものとの未練を断ち、成仏していくことが多いらしい。
生前に、『死んだら無になる』『死んだ人間はなにもできない』『幽霊などいない』という考え方の人も、
幽霊になることは少ないと言っていた。

634 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/07(水) 22:46:32 ID:a6IF0eir0
先生には1つの強力な悪霊がついている。
その霊に吸い付けられる様に、様々な人間や動物や謎なものの霊が集まっているのだという。
「その強力な悪霊は、先生を不幸に貶めるだけの力も十分に持っている」と親父は言っていた。
親父は後日、先生に電話で連絡して、教会に遊びに来るように自然に呼びかけた。

先生はやはりエンジェル様事件から、身近にポルターガイスト現象のようなものが起こり始め、
悩んでいると打ち明けてくれた。
それは前回生徒たち来た後も、変わらず続いているらしい。一番相談したかったのは先生だったのだ。
親父は先生に、「この世に幽霊など存在しない」と説教をはじめ、まさしくキリスト教の司祭としての説教を始めた。
これには正直驚いた。親父の口から『幽霊が存在しない』などという言葉は、聞いたことがなかったからだ。

その後も先生は仕事終わりに何度も教会に顔を出すようになり、親父の説教を熱心に聞いていた。
だが、「ポルターガイスト現象は一向に収まらない」と、悲痛な面持ちで泣きながら話していた。

635 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/07(水) 22:47:48 ID:a6IF0eir0
先生が通い始めて1ヵ月。シビれを切らした俺は、親父になぜ先生を除霊してやらないのか聞いてみた。
(わかりやすく伝えるために、除霊と書きます)
親父はやれやれといった顔をしながら、「先生に憑いているのは、自分本人の生霊だ」と答えた。
親父いわく、「生霊はもっともタチが悪く、払うことはほぼ不可能」。
しかも、自分自身の生霊をまとってしまうと、最悪自殺してしまうことが多いらしい。
生霊も霊なので、ほかの霊を吸収する。
しかし、原初の意思をいつまでも持ち続けることが多いので、(意思の発信源が生存しているため)
その霊の大きさ(物理的ではない)は、死者の霊とは比べ物にならない。
先生は、極度のマイナス思考、自虐体質、
もしくは、人に言えない悩みを抱えている、自分に嫌悪を抱いている、可能性があるらしい。
それが『エンジェル様の呪い』という暗示をきっかけに、自らの力でポルターガイスト現象を引き起こしてしまっている。
若い子供などに多い現象だが、(自分の顔が嫌いだとかが原因)
恋をしたりすることで改善する、よくある現象だと教えられた。
「霊の存在は真実だが、それを誰もが認識する必要はない」と言っていた。
神父が説く、『知らぬが仏』というやつである。

637 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/07(水) 22:49:47 ID:a6IF0eir0
最後に親父は、「正直、先生を救うのは難しいかもしれない」と言った。
それから先生は何度も教会に足を運んでくれたが、ポルターガイストは収まることはなかった。
先生は病院で重度の鬱病と診断され、「学校を辞めて実家の田舎で養生する」と言って、それきり来なくなった。
何度か手紙が来たが、『ポルターガイスト現象は実家でも起こる』と書いてあった。

その後、音信不通になってわずか半年で、先生は自殺してしまった。
自殺した場所は、勤務していた中学校。
都会で教師になることに憧れて夢が叶ったのに、田舎に帰ったのがさらに追い詰めてしまったのだろうか?
と、俺は想像したが時すでに遅し。
自殺の一報を聞いた親父は、自分の無力さに朝の懺悔を昼までしていた。

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殺してくれないか

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?181

937 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/08(木) 16:29:00 ID:6d6EaP690
ある日のこと。
教会に来る信者さんで、ホームヘルパーの仕事をしている田中さん(男・仮名)に、
「一緒に行ってほしい家がある」と頼まれた。
老人の一人暮らしなのだがどうにも薄気味悪く、一人だと神経がまいってしまうらしい。
親父に一応相談すると、「行ってあげなさい」と言われたので、お礼のガストでステーキに釣られて手伝いに行った。

ご老人は80歳くらいのおじいさんで、古い県営の住宅の4階に一人で暮らしていた。(表記は501号室)
田中さんの話では、もう県営マンションができた時からここで暮らしているらしい。
県営マンションのほとんどは空き家。
正面に同じくらいの大きさのキレイなマンションが建っているとこを見ると、
順番に取り壊して新しいのを建てる計画があるのだろうと、なにも知らない俺でも想像できた。

938 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/08(木) 16:30:40 ID:6d6EaP690
エレベーターで4階に移動して501号室にむかうと、奥の部屋の半開きのドアがバタンと閉まった。
空き家だらけだと思っていたが、割と人が住んでいるんだなと思ったが、田中さんはそのドアの閉まった部屋の前で止まった。
そして書類ケースから鍵を取り出し、チャイムも鳴らさず鍵を開けて、「おじいちゃーん」と元気良く部屋に入っていった。
部屋の中にはおじいさんが一人で寝ていた。
昼間なのにカーテンを閉め切って、真っ暗な部屋の中は正直汚物の匂いで充満していた。
田中さんは慣れた手つきで窓を全開にして、換気扇を回すように僕に指示した。
「おじいちゃーん」と大きな声を出しながら布団を捲り上げると、中から蠅数匹飛び出した。
おじいさんは「あうあう」と言った声を出して、田中さんに応えている。 

940 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/08(木) 16:32:02 ID:6d6EaP690
田中さんはおじいさんの下の世話を手際よく片付けると、うまく寝返りさせてシーツをスルリ抜き出した。
まとめて大きなビニール袋に入れると、
「代えのパジャマとシーツを車に取りに行ってくるよ」と言って、部屋を出て行った。
俺はおじいさんに話しかけることで、このなんとも言えないやりきれない思いをぬぐおうと、
おじいさんのそばに近づいて、「おじいちゃん!はじめまして!」と大きな声で話しかけた。
すると驚くことに、おじいちゃんははっきりとした口調で、「殺してくれないか!」と訴えてきた。
その声のトーンは「あうあう」と言っていたおじいさんの声ではなく、50才くらいの立派な男の人の低くて太い声だった。
俺はびっくりしてしまって、ただ立ち尽くしていた。
すると、田中さんが走って息を切らせて帰ってきた。
汗びっしょりの田中さんに、「どうしましたか?」と聞くと、「なんでもない。なんでもない」と答えるだけだった。

その後は、新しいシーツを敷き、パジャマを着替えさせて、ご飯を食べさせて、帰る事になった。
帰り際に、体を拭くタオルや雑巾といった小物類を台所で洗って、ベランダに干して帰った。
「さようなら!」と大きな声で挨拶すると、おじいさんは「あうあう」と答えた。

941 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/08(木) 16:34:05 ID:6d6EaP690
ガストでステーキをご馳走になりながら、田中さんと話をした。
少し迷ったが、田中さんが口を開くきっかけになればと、おじいさんが『殺してくれないか』と言ったことを話してみた。
すると堰を切ったように、あの部屋でいろんな不思議なことが起こると話し始めた。
やはりキリストの教えを疑うようで、俺に話していいか迷っていたらしい。 
ホントは親父に相談したかったが、とりあえず俺に体験させることでワンクッション入れようと考えたようだ。
田中さんが見る現象でもっとも頻繁なのが、おじいさんがマンションから飛び降りているところが見えることらしい。
マンションの外からおじいさんの部屋を見ると、おじいさんが飛び降り自殺をしているのだ!
駆けつけると下に死体はなく、部屋に入るとおじいさんは寝ているらしい。
この現象は、田中さんの前任者、その前の前任者、ホームヘルパーの主任さんと、たくさんの人が見ているらしい。
そして目撃者はご近所にもわたり、今やこの県営マンションがほとんど空き家状態。
近所でも噂になっているという。

942 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs:2007/11/08(木) 16:37:23 ID:6d6EaP690
教会に帰ってこの話を親父にすると、「死にたがっている生霊というわけだな・・・」と答えた。
「どうしたらいいと思う?」と親父に尋ねてみた。
「どうしようもないだろう。願いを叶えてあげるわけにはいかないのだから」

俺はなんとも言えないせつなさと怖さを感じていた。
もしおじいさんが老衰で亡くなっても、生霊はホントの霊となって消えないのではないだろうか?
時間にプライドと羞恥心は破壊され、なにもできなくなって、なおも孤独に生き続けることを常識に強要されている。
悲しい人間のぶつける場所すらない怒りと怨みは、どんな『負』を作り出していくのだろう・・・
そして今は高齢化社会。我々の未来は、『負』を避ける術を持たない。

評価

-洒落怖・怖い話