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もう夏だし怖い話とか不思議な体験談、語ろうぜwwwww
90 :名も無き被検体774号+:2012/07/30(月) 14:42:33.22 ID:sI2uqhGa0
ちょっと長いけど、消防の頃にあった話を書く。
俺も含めて地元の子供たちがゴコクサンと呼ぶ、小さい山があった。
ゴコクサンの山頂は、ちょいちょい山火事があるせいで高い木が一本もなく、だだっ広い草原になっていた。
大人の目が届かない、とんでもなく広い場所だから、そこは子供たちの格好の遊び場だった。
草原の端っこの方には、ばかでかい岩があった。
岩のてっぺんには『五穀神社』と書かれた、小さい祠が建てられていて、
中にはサッカーボールより一回り小さいくらいの、しずく形の石が祭ってあった。
それは風化してボロボロだけど、丸いニコニコ顔で、稲穂のようなものを持った神様の像だった。
俺らはそれを「ゴコクさん」と呼んで、岩登りをして遊んだついでなどに、拝んだり五円玉を供えたりしていた。
その「ゴコクさん」が居る山だから、俺らは山そのものを「ゴコクサン」と呼んでいた。
もちろん、地図の上ではぜんぜん別の名前だけど。
91 :名も無き被検体774号+:2012/07/30(月) 14:44:52.69 ID:sI2uqhGa0
ゴコクサンで遊ぶ子供たちの間には、『登り下りの途中、山道から外れてはいけない』というルールがあった。
それは、親や先生に言われたからではなく、みんながみんな、なんとなく知っていることだった。
実際、山頂までの道の両脇は、大人でも余裕で迷子になるくらい雑木が茂っていたから、
うかつに入り込めばかなり危険なことは、子供でも常識的に理解できた。
それでも、子供は基本的にアホだから、テンションが上がると大事なことをすぽーんと忘れてしまうことがある。
俺と友達の合わせて四人で、いつものように山道を登っていたときが、まさにそれだった。
山道を登り始めて三十分。山の中腹くらいで道の脇の藪が、ガサガサっと音を立てた。
猿か、それともイノシシかと俺らが身構えると、藪から出てきたのは雉だった。
滅多に見ない生き物だから、俺らのテンションはマックス。
誰かが「捕まえようぜ!」と言ったとたん、俺らは雉を追いかけて雑木林に突入していた。
俺はあっと言う間に雉を見失ったけど、「いた、こっち!」とか「うわ、逃がした!」と言う声が方々から聞こえてくるから、
獲物を追い詰めていると言う妙な確信があった。しかも、声はどんどん近付いてくる。つまり雉も近くにいるはず。
そうやって声に振り回されて、かなりの時間を走り回ってから、俺はふと妙な感じを覚えた。
山に入ったのは俺も含めて四人。なのに、どうして四方八方から声がするんだ?
しかも、どれもこれも聞き覚えはあるのに、誰の声だかわからない。
少なくとも、一緒に山に入った友達の声じゃなかった。
何かがおかしいと思った途端、俺は急に怖くなってきて、大声で友達に呼びかけた。
92 :名も無き被検体774号+:2012/07/30(月) 14:47:28.30 ID:sI2uqhGa0
俺は「おーい、おーい!」と林の中に向かって叫ぶ。でも、友達からの返事はない。
その代わり、そこらじゅうから、あのよくわからない声がザワザワと聞こえてくる。
お祭りの時みたいに、かなりの数の人がいる雰囲気なんだけど、声の主は全く見えない。
これはもう、何か奇怪なことが起こっているに違いないから、
神様に頼るしかないと思った俺は、ゴコクさんへ向かうことにした。
今いる場所はてんで見当もつかないが、とりあえず登って行けば山頂の草原に出るはず。
返事は期待せずに、とりあえず林の中に向かって「ゴコクさんとこ行っとくぞー!」と叫ぶ。
途端、声がぴたっと止んだ。こっちのやることに反応があると、余計に怖い。
俺は急いで山を登った。
どうにか山頂にたどり着き、岩を登ってゴコクサンのところへ行くと、友達三人がすでにそこにいた。
三人とも、俺と同じように声に振り回されて迷子になり、最後はゴコクさんに頼ろうと思い至ったらしい。
とりあえず今日はもう帰ろうと言うことになったが、帰り道にまた何かあると怖いので、
ゴコクさんに供えてあった五円玉を、お守りとしてもらうことにした。
タダで持ってくのは申し訳ないから、と代わりにみんなで十円玉を供えた。
お守りが効いたのか、そもそも怪奇現象など最初からなくて、あれは俺らの気の迷いだったのか。
帰りは拍子抜けするくらい何事もなかった。
「なあ、最初に『捕まえようぜ』って言ったの、誰?」
友達の一人がぽつりと言った。
俺らは顔を見合わせて、「俺じゃない」「俺も違う」と言い合った。
よくよく思い出してみると、あの声は誰の声でもなかった。
ひょっとして、はなから俺らを道から外そうとしていた?
そして、別の友達が言った。
「捕まえようって、雉のことだったのかな?」