師匠シリーズ

【ゴスハンシリーズ】合わせ鏡

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新 鼻 袋 ~第四夜目~

321 :ゴーストハンター:04/03/31 13:18
ある意味私をこの道に引き込んだUという男がいる。
学生時代彼の下宿でささやかな酒宴を開いた時のこと、
彼が「合わせ鏡って知ってるか」というのである。
なんとなく聞いたことがあった。
「じゃあ、鏡を二枚向かい合わせに置いておくと霊が集まりやすいって知ってるか」
そうだったかな。
私は首を振った。
「いいものを見せてやる」
そういって彼は押入れをゴソゴソと探り始めた。
「これだ」
出してきたのは10センチ立方くらいの箱だった。
黒くてザラザラした表面に、端の方をすべてテープで止めてある、一見何なのか分からない箱だ。
「これはな、市販の四角い鏡6枚を剥がして、鏡面側を内側にして箱を作ったものだ」
なるほど、ザラザラした表面は鏡の裏側なのか。

322 :ゴーストハンター:04/03/31 13:19
「どうだ。完璧な合わせ鏡だろう。
 この箱を閉じる前に乱反射していた光は、密閉された今は出口を失って箱の中を光速で飛び交い続けている。
 俺が開けない限り永遠に」
なぜか寒気がした。
「さて、この箱の中の6枚の鏡には何が映っているだろうか。
 これは哲学的な問いだ。しかしお前のレベルに合わせてもっと低俗な話をしよう。
 合わせ鏡の間に挟まれた霊体は自らの視線によって動けなくなる。これはわかるか?
 ではこの箱は完璧な監獄と言える。
 そこで俺はこう言う。
 『決めた。これは永遠に開けない』と」
その瞬間、耳をつんざく音を聞いた。
しかしそれは音ではなかった、とすぐ気づいた。
側にテレビがついている時の、あの聞こえない音のようなもの。
彼は薄ら笑って、箱を押入れに仕舞った。

あれから箱はまだ開けられていない。たぶん。

未来予知」に続く

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