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182: 名無しさん@おーぷん:21/08/04(水)12:26:30 ID:dKkJ ×
お化け路地裏
近所にお化け路地裏と呼ばれる両隣を高い石塀に囲まれた狭い路地がある。
廃屋のある猫の額程しかない丸い土地を入り口の無い石塀が囲っている。
その周囲をまた同じ石塀が囲み丸い路地を形成している。
実はその路地にも入り口が無い。
それなのに時たま誰も入れない筈の路地裏で子供達の遊ぶ声が聞こえてくる。
たぶん石塀をよじ登って侵入してるんだろうなと漠然と思っていたが、どうやら噂話によれば違うらしい。
裏路地に通じる階段があったとか、
石塀に子供が横這いになりやっと通れる隙間があるとか、
マンホールから出入りしてるとか、
大人が気付いていないだけで入れるルートが幾つか存在するらしかった。
散歩がてらこの噂を思い出し俺はお化け路地裏を検証してみる事にした。
間近で見てみると石塀は予想以上に高かった。
周囲には梯子も見当たらなかったがこれは仮に梯子を持って来ても怖ろしい高さだ。
多分これは今の子供はやらないだろう。
自説は否定された。
石塀をくまなく調べ何周もしたが横這いになって入れる隙間はどこにも無かった。
この説も論外。
次に階段だが外側から見える部分には何も無かった。
おそらくこの説もデマの可能性が高い。
そして最後の可能性・・・そう、俺は石塀真横にあるマンホール内部を冒険する事に決めた。
人通りの少ない夕方を狙ってバールの様なモノで蓋をこじ開けた。
マンホールは容易に開く事が出来た。
つまり普段何者かがここから頻繁に出入りしているのだろう。
懐中電灯で内部を照らす。
183: ↓名無しさん@おーぷん:21/08/04(水)12:48:12 ID:dKkJ ×
下水道内部には子供のものと思われる石筆による落書きがびっしりと書き込まれていた。
錆びた梯子を伝い降りていく。
案の定マンホールはお化け路地裏にまで続いていた。
お化け路地裏と言うだけあって本当にドーナツ形の閉鎖道路が石塀に囲まれているだけだった。
数分散歩して満足した俺はマンホールの蓋を探す。
おかしい。
どこにもマンホールの蓋が見当たらない。
唐突な恐怖体験にチビりそうになる。
外側の石塀は表面がツルツルしてるし高過ぎて素手でクライミングして越えるのはまず無理だ。
内側の廃屋に目をやる。
だいたい3階建てだろうか?
見たのは初めてだが薄気味悪さは桁外れだ。
あそこに梯子があれば良いのだが。
内側の石塀も高いが越える事は外側程に困難では無い。
何とか内側に着地する。
ボーボーの雑草のお陰で怪我はしなかった
間近で見ると更に薄気味悪い。
184: ↓名無しさん@おーぷん:21/08/04(水)13:02:20 ID:dKkJ ×
玄関は容易に開いた。
どうやら施錠はされていない様だった。
廃屋内部は外観とは裏腹に気持ち悪い程に小綺麗だ。
しかし不思議と薄気味悪さはより増した。
こんな場所で返事が返って来たら嫌なので挨拶もしなかった。
廃屋中を散策し梯子やロープなどを探す。
1階から3階までくまなく調べたが使えそうなものは何一つ見当たらなかった。
憔悴して1階にまで戻ると足下に何か違和感を感じた。
最初は気付かなかったが床にタイルの色が違う部分がある事を発見する。
これが違和感の正体か?
まさかと思ってその床のタイルを全て引っぺがしてみると血の様に赤い錆びに覆われた階段が地下にまで続いていた。
185: ↓名無しさん@おーぷん:21/08/04(水)13:28:10 ID:dKkJ ×
懐中電灯を点けて階段を降りていくと石筆の落書きが目に飛び込んで来た。
さっきの下水道に辿り着いた様だ。
自分の通って来たルートを思い出しながら下水道を進んでいく。
あっさりとさっきの錆びた梯子のある入り口に辿り着いた。
その日は疲れていたのでそのまま家に帰った。
次の日俺は食料やら縄梯子やらの重装備に身を包み再びマンホールに挑んでいた。
どんなに下水道内部を調べても昨日の赤錆びた階段は見つからなかった。
反対にお化け路地裏へのルートは通じている。
俺は命綱として入り口から垂らして来たロープをお化け路地裏のマンホールの穴に通してきつく結束した。
お化け路地裏から石塀に縄梯子を掛け再び廃屋へと入っていく。
錆びた階段を降りていくとまた下水道へと続いている。
命綱を階段の手摺にぐるぐる巻きに結束して下水道に戻る・・・
懐中電灯を点けると自分の目を疑った。
その地下には数十個もの階段と扉があった。
その中の1つを開けてみる。
やはり同じ廃屋のあるお化け路地裏に通じていた。
が、縄梯子や命綱は見当たらない。
証拠写真を撮ろうとしたがスマホは何故か故障していた。
訳が分からない。
命綱を辿って家に帰ったがこの家は本当に俺が居た世界なんだろうか?
これ以降俺がお化け路地裏に関わる事は無くなった。
おわり