286 :名無しさん@涙目です。:2017/08/15(火) 00:45:36.67 ID:JKM1zI8s0.net
16年前の事実を話す。
俺の実体験。
大学の登山部仲間と北岳(標高日本第2位)に登りに行った。
8月も末に近く、夜は気温もグッと下がり寒くなる。
白根御池→肩の小屋でそれぞれ泊まり、登頂後は一気に下る2泊3日のコースだ。
その1泊目、白根御池でテントを貼った夜の事。
別のテント前では、全身オレンジ色で統一した登山着の方達が。
ヘルメットまでオレンジ色で、登山はまだまだ初心者の俺にはとてもカッコ良く見えた。
俺がじっと見ていると、その1人がマグカップ片手に近寄って来た。
『今晩は、山の夜は星が綺麗だねぇ』
『はい、登山まだまだ初心者なので何もかも驚いたりしてます。あ、星本当に綺麗です』
『そうかぁ、初心者かぁ。北岳はね、何度でも登りくなる山だよ』
『は、はい!』
『そうだ、初心者か。じゃあこれをあげよう。
俺のお守り。安全祈願と魔除かな』
お守りと言っても、木霊といって気を削り出して玉にしたような不思議なお守りを貰った。
木製の玉には縁に穴があり、木綿の様な紐が通してあり、首にかけられる。
『兄ちゃん、その木霊お守りはね、俺の事何度も助けてくれたんだよ』
『ありがとう御座います。大切にします!』
明くる日、俺達登山グループが肩の小屋に着くと、ヘリが飛び、無線の音が飛び交っている。
・・・オレンジ色の人達、バットレスで滑落・・・
その夜、肩の小屋に設営したテントの中で夢を見た。
『お兄ちゃん、その木霊お守り、大切にしてくれよ。お兄ちゃんにバトンタッチだ、さようなら』
今でも木霊お守りは仏壇に上げている。
もしあの方がお守りを持ち続けてたら、バットレスから落ちなかったのかもしれない。
そして僕は木霊お守りを貰ったから無事に下山出来たのかもしれない。
16年経っても、お盆の今頃になると、御先祖様に手を合わせながら、同時にあの方のご冥福をお祈りしている。