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【ほぼ魔法】天才的な心理療法士の治療ケースをたくさん読んでみよう【ミルトン・エリクソン】

皆さんは「ミルトン・エリクソン」という人物をご存知でしょうか? エリクソンは1901年にアメリカで生まれた天才的な心理療法士です。ここでは彼の心理療法をご紹介します。


ミルトン・エリクソンの心理療法例

エリクソンの凄さとは?

フロイトやユング、アドラーに比べると知名度ではいまいちなエリクソン。

その療法はまったくの型破りで、誰もマネできないという意味でよく「魔法使い」に例えられます。イメージでは指輪物語のガンダルフ系の白魔法使いです(笑)

彼の天才っぷりは、不死の伝説があったサンジェルマン伯爵や、常人を超える能力があったとされる謎の人物カスパー・ハウザーに並ぶ存在と言えるのではないでしょうか。

その治療方法は非常に型破りで読むだけで面白いです。一種のおとぎ話か、O・ヘンリーの小説を読んだような感覚があります。また患者一人一人にまったく違うアプローチを取り、一つも同じ手法を使わなかったことで有名です。

というわけでここではエリクソンの症例をご紹介します。

ミルトン・エリクソンの心理療法の事例

胃潰瘍とミルク

さて最初に紹介するのは胃潰瘍を利用して胃潰瘍を治したケースです。

ある女性の家に、婚威縁者がいつもやってきては長く居座るため、彼女はそのストレスで胃潰瘍になってしまった。エリクソンは彼女に言った。

「その人たちのせいで”お腹にきている a pain in the belly”のは本当だし、だからあなたは今、職場でも社会関係でも、家族の中でもうまくやれていないのです。
お腹の痛みは必要なものであり、それを役立つような場面でうまく使う方法を学んだ方がいい。そうすればなにか良い事があるかもしれません」

彼女はこのアイディアが気に入った。その後、彼女はその人達がやってくると、急いでコップ1杯の牛乳を飲み干し、彼らの到着数分後にはそれを嘔吐するということを何度かやり始めた。

彼女は具合が悪いのだから、その後始末など期待できるはずもなく、したがって彼らが床掃除をしなければならなかった。彼らはそうしげしげとは来なくなり、また来る前には電話をかけてよこすようになった。

来てもらいたいときでも、彼らの長いが過ぎてくると、彼女は痛むようにお腹をさすり始めた。そうすると彼らはそそくさと帰っていくのだった。しばらくして潰瘍は治癒した。

なやみの胃潰瘍を逆手に取って、胃潰瘍を治してしまうとはなんとも奇抜な話。しかしこれで全快したのですから文句のつけようはありません。

自分をイエス・キリストだと思いこんでいる男の話

患者の妄想を利用して、治療を進めたケース。

エリクソンは州立病院で、自分をイエス・キリストだと主張する患者に近づき「君は大工の経験があるんだってね」と話しかけた。イエスの父、ヨゼフが大工であり、イエスは当然父を手伝った経験があるのだから、患者は「はい」と答えるしかなかった。

またエリクソンは「君は仲間だちの役に立ちたいと思ってるんだってね」とも言った。患者はこれにも、「もちろん」と答えた。

そう聞いておいて、エリクソンは「病院には本棚が足りなくってね。作らなくちゃならないんだが、君は手伝ってくれるかい」と訪ねた。

こうして患者はその考えに同意。頑固な妄想を続ける代わりに建設的な活動に参加し始めるようになった。

統合失調症患者の「言葉のサラダ」

意思疎通が取れず9年間も放置されていた患者を退院まで持っていったケース。

エリクソンが患者の言葉を利用した例で最もよく知られているのは、州立病院でエリクソンが担当することになった”統合失調症言語”または”言葉のサラダ Word salad” しか話さなかった男性の例だろう。
その患者は英語は話すのだが「・・・バケツ一杯の砂、バケツ一杯のラード、、脂が火の中・・・タイヤが溶けちゃって・・・」など、(他の人にとっては)意味のない言葉しか発しなかった。
彼は他の人とコミュニケーションしようとはしていたが、入院以来9年以上経っているのに、未だに彼の言語を理解できるものはないかった。
入院時、彼はなんの身分証明書も持っておらず、病歴を聞き出すことも出来ないまま、なんの治療も行われずに来ていた。

エリクソンがこのケースを引き継いだときにまずしたことは、速記者を呼んで患者のそばに座らせ、その言葉を密かに書き取らせることであった。その記録をエリクソンは密かに検討してみたが、そこに何らかの意味を見出すことはやはりできなかった。

そこで彼は決心した。患者の言葉を使ってコミュニケーションしよう。自分も”言葉のサラダ”を話そう。エリクソンは患者に自己紹介した、患者はそれに言葉のサラダで答えた。エリクソンも言葉のサラダを返した。心のこもった言い方で返した。

最初、患者は疑り深そうにしていたが、すぐに彼は言葉のサラダを使ってエリクソンと長く話し込むようになった。そのうち言葉のサラダの中に、意味のある文句が混じり始めるようにさえなり、時とともに意味の通じるコミュニケーションの割合が増していったのである。

エリクソンは少しずつ病歴を入手し、治療を施し、その患者を退院にまで持っていった。

強迫症への介入

次にいわゆる強迫症への介入の例をいくつかご紹介します。

17歳の遅滞児。最近、家から離れたところにある学校に入れられ、右腕を身体の前で1分間に135回の速度でふるという症状を現すようになった(エリクソンはこれを数えさせた)。エリクソンはこの少年に対して、一分間に145回腕を振らせた。そしてしばらくは、エリクソンの指導のもと、その回数は再び135回に減らされ、145回に増やされ、そして次に一分間に5回増やし、10回減らすというふうに増減が繰り返し行われ、症状がなくなるまで続けられた。

体外離脱妄想があるエリクソンの患者は、短い時間のうちで旅行に行って帰って来るということを学習した。例えば海底にあるお城への三ヶ月にわたる幻覚の旅を、3分間で楽しむという具合である・これによって、当然仕事の時間を失うこともなくなり、彼女はより”正常に”見えるようになった。

脅迫的な汚言を発する女性(トゥレット症候群)は、一人で車を運転し、ラジオをボリュームいっぱいにしているときだけ、汚言を大声であげるようになった。

6歳の指しゃぶりの男の子。彼は左の親指だけをしゃぶっていた。エリクソンは言った。それじゃあ不公平だよ。他の指もおなじくらい時間をかけてあげなきゃ。右の親指もしゃぶるよう、最終的には他の指も全部しゃぶるようにと少年は告げられた。指しゃぶりを左の指と右の親指に分散させるだけで、指しゃぶりの習慣がすぐに50%に減少した、とエリクソンはカッ経っている。

これは何をしているのでしょうか? 管理人の意見としては「無意識でやっている行為」を「意識的な行為」に置き換えているのではないかと思います。

例えば、「145から135回にしなさい」や「他の指も均等にしゃぶりなさい」と言われ、頻度や回数を気にするようになると、無意識でやっていた行為を意識に置かざるを得ません。

強迫症というのは無意識の行為ですが、それを意識させることで「意識的な行為」に置き換えているのではないでしょうか。無意識の行動というのはコントロール不可能ですが、意識の行動というのはコントロールできます。こうして「意識的な行動」に変わることで強迫症が改善するのだと思います。

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夫婦の経営問題

恐怖に対面させて治したケース

ある夫婦が、夫婦間の問題でエリクソンのところに相談にやってきた。二人は一緒に小さなレストランを経営していたが、どんな経営方法が一番良いのかをめぐって口論が絶えなかった。
妻は夫が店を責任もって切り盛りするべきであり、自分はむしろ家庭にいたいと主張しながら、自分が監督しないと夫が店を潰してしまうという恐れを抱いていた。

というわけで、妻は夫のそばで働き続け、そして二人は口論を続けていた。エリクソンはそんな二人に次のように指示した。毎朝、ご主人は奥さんより30分早くレストランに行きなさい。

妻が到着してみると、すでに夫は”彼女にしかできない”多くの仕事を見事に片付け終わっていた。妻はだんだんともっと遅く出勤するようになり始め、閉店前には帰宅するようになり始めた。そしてついには、まれにしか店には顔を出さなくなった。口論は止んだ。

旅行恐怖症

恐怖に対面させて治したケース その2

旅行恐怖症の青年がエリクソンを訪ねてきた。街の境界線までしか車を運転して行けず、そこを超えると嘔吐し、そして気を失ってしまうとのことだった。
エリクソンは提案した。街のはずれまで朝の3時に一番良い服を着て、運転して行きなさい。街の境界線に着いたら車を止めて、道路脇にある溝まで走っていきなさい。そこで、吐き気と失神がおさまるまで、横になっていなさい。さまったら起き上がって、次の電信柱まで車を走らせ、そして同じことを繰り返しなさい。
男性は従ったが、その課題をやりながらエリクソンとその手順のバカバカしさにあまりにも腹がたち、車に乗り込んでドライブを楽しもうと心に決めた。13年後、症状は治ったままであった。

ノーセット

反抗を利用してトランスに入れてしまうケース

うるさい男が一人、聴衆のなかに混じっていて、たびたびにわらって大声で口をはさみ、エリクソンの講義を妨害していた。エリクソンはその男に挑むように言った。「・・・君は静かにしていなくてはならない。二度と口を開くことはできない。立ち上がろうなんてことはしない。二度と詐欺師呼ばわりできない・・・」

その全てのことを男は拒否した。続けてエリクソンは言った。君はステージに上ってくるのが怖いんだ。デモストレーションの被験者を見るのが怖いんだ。静かにしていようとしないんだ。私の話を聞こうとしないんだ。被験者用の椅子まで歩いてこようとしないんだ。君は座らないだろう、両手を膝の上にゆったりと置かずに、君は両手を頭の上で組むだろう、などなど。

うるさい男(むしろ、うるさかった男というべきか。というのもエリクソンは彼を静かにしてしまったのだから)は、エリクソンの予想や挑戦にすぐさま全部反抗し、結果的にエリクソンのトランス誘導に完全に協力しちえる形となってしまった。彼はついに深いトランスに入った。

エリクソンは”ノー・セット”を作り出し、そのなかにおいてクライアントは言われたことにことごとく反抗した。その後は、エリクソンはただ単に、彼(エリクソン)が望むことと反対のことおを男に命令していただけである。

6歳の指しゃぶり

ゆびしゃぶりの例は先ほども載せましたが、これはまた違うアプローチを使ったケース。

エリクソンは親指しゃぶりがあり、爪をひどく噛む6歳の男の子の治療のなかで、男の子に向かって言った。「君は好きなだけ指をしゃぶったり、爪を噛んだりしたらいいよ。”小さな6歳の坊や”にはそれが大事なことなんだよ。もちろん、”大きな7歳の少年”ともなると”大きすぎる”からそういうことはしないけどね。

7歳の誕生日を2ヶ月後にひかえたある日、少年は指しゃぶりと爪噛みをやめた【分離=小さな6歳の坊や/大きな7歳の少年】

スプリッティング(分離)の例です。6差ならするけど、7歳はしないよ、という分離のメッセージを送ったケースです。

幻覚の封筒

症状を封筒に詰めたケース。

ヌード男性が頭上に浮かんでいるという幻覚を持っている女性が、エリクソンの面接室にやってきた。エリクソンは男たちを面接室のクローゼットに置いていきなさい、と彼女を説得した。次にまた彼女の精神病エピソードが出現したとき、エリクソンはそれらをひとつずつマニラ封筒の中に詰めて、彼の面接室まで持ってくるようにさせた。

このことによって、彼女は仕事においても人間関係においても、適切に振る舞うことができるようになった。女性はときおり、精神病エピソードの詰まった封筒を置きに、あるいはそれを見るためにエリクソンの面接室を訪れた。エリクソンは彼女が他の街に引っ越した後も、ずっとその封筒を保管していた。
彼女はたまに、彼の面接室まではるばるやってきては、彼女の症状が繋ぎ止められている封筒を点検したものであった。

これにいたっては何をしているのかさっぱりわかりません(笑)

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シナモンフェイス

とても可愛らしい話。

以前、エリクソンの患者であった女性が、8歳の娘を連れてやってきた。少女は自分のことも人のこともみんな嫌いだと思い込んでいた。というのも、彼女にはソバカスがあり、そのせいで学校の子供たちからひどくいじめられていたからである。

彼女は憤慨しながらエリクソンのオフィスにやってきた。そんな彼女にエリクソンが言った言葉は「君は泥棒だね! 盗んだね!」であった。彼女は怒ってそれを否定したが、彼はそのことを証明できるぞ、と答えた。じゃあ証明してみてよ、と彼女は言いった。

エリクソンは盗みをやったとき、君がどこにいたかを知っている、君は台所にいいてシナモンクッキーやシナモンパンやシナモンロールが入っている瓶に手を出そうとして瓶をひっくり返し、顔中にぶっかぶったんだ。(エリクソンは、彼女が最近唯一好きなものがシナモンであるということを、母親から聞いてしっていた)

エリクソンは彼女のことをシナモン・フェイスと名づけた。二人はこのジョークに一緒になって笑い、二人の関係が出来上がり、そして彼女のソバカスに対する態度が変わっていった。彼女は今や、シナモン・フェイスというニックネームを誇らしく思うようになった。
[リフレーミング(新しい価値づけとリンキング):ユーモラスで嬉しいものとしてのソバカス:リフレーミング(新しい名称):シナモン・フェイス]

これは嫌いなものと好きなものをリンキングしたケースです。

誇り高いドイツ男性の話

とんでもない治療方法の例。今ならSNSで炎上しかねません(笑)

別の州からやってきたある女性が、夫を連れて治療を受けに来た。夫は非常に誇り高い人であるのだが、発作が起こって以来、まったく何も出来ない人になってしまっていた。発作前は会社を経営するなど、自分で何でもする人だったが、発作後は身体を動かすことも難しく、話もまったくできなくなっていた。

また治療費がかさみ、そのために会社や財産を手放していた。彼は1年以上、大学病院に入院していたが、そこで”治る見込みのない症例” の教材として扱われ、屈辱感に苛まれていた。ある医師がリハビリテーションとして催眠がいいかもしれないということで、二人にエリクソンを紹介したのである。

エリクソンはまず妻と面会した。妻は夫が自尊心が強くて人の命令に従いたがらない人だ、と語った。エリクソンは彼を招き入れ、あなたは施しもののベッドに寝て喜んでいるナチのブタ野郎だ(男性はドイツ系だった)と喋り始めた。そしてもっと侮辱してあげるから、毎日奥さんにここに連れてきてもらいなさい、と言った。

男は怒り心頭に達して「嫌だ!」と叫び、一人で部屋からもがきながら出ていってしまった。困惑しながらも妻は、毎日夫をエリクソンのオフィスまで連れてきて、そこでエリクソンは侮辱的な言葉を浴びせかけ、反応を引き出し、その結果、彼の会話や運動能力が回復の方向に向かっていった。

治療の終わりに夫がエリクソンに「あなたのことを拾の兄弟のように愛しています」と語るのを聞いて、妻は飛び上がるほど驚いたとのことである。

治療に使えるものなら何でも利用するエリクソンの例です。

ここまで紹介した例はすべて「ミルトン・エリクソン入門」に掲載されています。名前の通り短いエピソードがたくさん詰まっており入門編としてオススメです。

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歯の隙間から水を飛ばす話

ここからの話は書籍「アンコモンセラピー」からになります。「ミルトン・エリクソン入門」よりも、分厚く、エピソードも長く、専門的になります。入門を読み終わった後の二冊目として「アンコモンセラピー」はオススメです。

加えてエピソードが長い案件が多いので、ここでは多くを載せられません(笑)ぜひ買うか図書館で借りるかをして読んでみてください。

さて、この話はケースの中でもかなり人気のあるエピソードです。

21歳の女性がエリクソンに援助を求めた。その女性は結婚して家庭をもち、子供もほしかった。しかし、これまで一人のボーイフレンドも出来なかったのでその希望もなく、老いて死んでしまうのではないかと思っていた。

彼女は言った。「私はこれ以上、生きていてはだめな女だと思います。一人の友だちもなくひとり住まいで、器量もよくないので結婚もできません。でも自殺する前に精神科の先生にお会いしようと思ったのです。三ヶ月の期間、先生におまかせします。これで状況が変わらなければもう終わりです」

その若い女性は建設会社の秘書をしていたが、彼女には社会生活がなかった。デートをしたこともなかった。ところが彼女が水飲み場のところに来ると、いつも会社のある男性が姿を現した。彼女はその男性に魅力を感じており、男性も交際を申し込んだが、彼女は無視し、一言も口を利かなかった。彼女は一人暮らしをしており、両親は亡くなっていた。

彼女は可愛らしかったのだが、髪はほつれて乱れ、不似合いなブラウスとほころびたスカートを身につけ、靴も汚くて磨かれておらず、自分を魅力的でないようにしようとしていた。彼女の身体的な欠点は、彼女によれば前歯の隙間であった。話をするときにそれを手で隠していたが隙間は3mmあまりあってよく見えた。

彼女はこのように転落の道をたどって自殺まで考え、自分ではどうするすべもなく、といって結婚して子供をうむという目標への援助には全て抵抗する女性だったのである。エリクソンはこの問題に2つの主な介入方法で対処した。その女性に「あなたはどうせ転落しつつあるのだから、最後の飛躍をしてみるといいかもしれないですね」

この最後の飛躍には、銀行預金を自分で全て使うことが含まれていた。そして趣味の良い服を選ぶのを手伝ってくれる特別な店へ行き、髪をきちんとしてくれる特別な美容院へ行くことになっていた。彼女はそれが自分を向上させることではなく、破滅への最後の飛躍なのだと考えて、この提案を快く受け入れた。

それからエリクソンは彼女にある課題を与えた。それは家に帰って浴室で前歯の隙間から水を吹き出し、30cm先まで正確に飛ばせるように練習することであった。彼女は「バカバカしい」と思ったが、これも最後の転落をするまえの些細な事だと考え、帰宅してから本気で水を吹き出す練習をした。

彼女が服装を整え、魅力的になり、前歯の隙間からうまく水を拭き出せるようになると、エリクソンは次の月曜日、仕事に行ったときに悪戯をするという指示を与えた。それは例の男性が水飲み場にあらわれたとき、口いっぱいに含んだ水を前歯から彼に向けて吹き出し、振り向いて走ることであった。しかし、単に走るのではなく。まずその男性に向かって走り、そして向きを変えて「廊下を一目散に」走らなければならなかった。

彼女はそんなことはできませんと断った。しかしエリクソンは「そんなことでは破滅できませんよ」とハッパをかけた。彼女は次には少し面白いけど下品なことだと思い、ついにはそれをすることに決めた。彼女はとにかく最後の飛躍をしようという気になっていた。

月曜日に彼女は新しい服を着て、髪をセットして仕事に行った。彼女が水飲み場のところに来て、男性が近づいてきたとき、口に水をためて、彼めがけて吹き出した男性は「ちくしょう!」というようなことを言った。こう言われて彼女は、走り去るときに笑った。男性は彼女を追いかけて捕まえ、驚いたことに彼女をつかんでキスしたのである。

次の日、彼女がこわごわ水飲み場のところへ来ると、男性が電話ボックスの後ろから飛び出してきて、水鉄砲で彼女に水をかけた。その次の日に、二人は一緒に夕食にでかけた。

彼女はエリクソンに一部始終を報告した。彼女は、これからは自分に対する考えを改めるので、エリクソンに自分を厳しく批判してほしいと言った。彼は批判するなかで指摘した。あなたは私によく協力してくれました。以前は服装はよくなかったが、今は素敵に着こなしています。以前は歯の隙間を利点ではなく欠点として考えていました、と。2、3ヶ月して彼女は、エリクソンに自分が例の男性と結婚したことを載せた新聞の切り抜きを送ってきた。さらに1年後には、赤ちゃんの写真を送ってきた

なんというビフォアアフター。この話はエリクソンが「そんなことでは最後の飛躍をできせんよ!」と患者の抵抗を逆手にとり、大胆なことを実行させたケースだといえます。

しかしここまでの展開を初めのうちから見抜けていたのか・・・魔法使いらしいエピソードです。

アンコモンセラピーにはこのように長く詳しい話が載っているのでオススメです。

この他にも、ボロ小屋に住んでいるハロルドが救われるという「ハロルドの話」も乗っています。この話も非常に人気のある泣ける話です。ですが長いのでここでは割愛します(笑)

よければ拙作ですがゆっくり動画にしていますので見てみてください。まあ本で読むのが一番オススメです。

▼ハロルドの話
https://www.youtube.com/watch?v=mP7MqBmql7E

▼ミルトン・エリクソン関連の再生リスト
https://www.youtube.com/watch?v=e9Cl6LWWC5c&list=PL4F4LUcJBkdkyCQfCbpURmxzyr2RbygbM&pp=gAQB

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エリクソンの治療方針

いかがでしたでしょうか。ここまでのケースを見てかなりの天才的な心理療法士だとわかっていただけたのではないでしょうか。

エリクソンは心理療法の中で人々を教育しようとすることに強く反対していたそうです。

「今日、神経症・精神病・人格障害の人に対する再教育についてあまりに多くのことが書かれ、言われ、そしてなされ過ぎている。まるである状況のなかで、一人の人間がどう考え、どう感じ、どう反応すべきであるかを指示できる人間がいるかのようである。人は誰もが、それぞれの個人のバックグラウンドに従って、違った反応をするのである(Ericson 1966)」

つまり人間は千差万別なので「こうすればこうなる」という定型文はない、ということですね。
こうも言っています。

「それぞれ、人はみな独特である。それゆえ心理療法はその人の独自性にあわせてしつらえられるべきであり、人間行動に関する仮説理論というプロクルステスの寝台※に合わせて、人の身長を伸ばしたり切り取ったりしてはいけない(Ericson 1979)」

※プロクルステスの寝台・・・捕らえた旅人を自分の寝台に寝かせて,その身長が短すぎると槌でたたくか重しをつけるかして引き延ばし,長すぎると,はみ出た分を切り落とした。現在でも杓子定規,容赦ない強制の意で使われる〈プロクルステスの寝台Procrustean bed〉はこれに由来する。
https://kotobank.jp/word/プロクルステスの寝台

弟子のオハンロンも「外から何も加えられる必要はない。なぜなら答えはすべて内にあるからである」と言っています。

治療方法のたとえ「迷った馬の話」

では人を教育せずにどうやって治療するのでしょうか? エリクソンはこう言っています。

私が高校生の時の話です。学校からの帰宅途中、1頭の馬が手綱をつけたまま逃げ出してきたらしく、すごいスピードでわれわれの目の前を駆け抜けて行ったかと思うと、農家の裏庭に駆け込んでいって・・・どうも水が飲みたかったらしいんです。すごく汗をかいてしました。農家の人は気づかないらしく、それで私達が馬を追い込んでいったわけです。

私は馬の背中に飛び乗って・・・手綱はついていましたので、それを握って「どうどう」とね・・・大通りの方に向かわせたわけです。それからどっちに向かえばいいのか、馬が知っているだろうと思いました。私は知らなかったんですけどね。

馬はどんどん早足で駆けて行きました。でもときどき馬は道を走っているんだということを忘れちゃって、畑の中に入ってしまいそうになる。だから、私はちょっと手綱を引っ張って道を走っているんだよ、ということを馬に気づかせてやらなきゃならない。

で、馬を拾った場所から4マイルほど行ったところで、ようやく馬はある農家の庭に入っていきました。農夫が「おお、帰ってきたかい。どこでやつを見つけんだい?」と聞いてきました。

私は言いました。「ここから4マイルほど離れたところです」
「なぜここだってわかったんだい?」
私は言いました。「僕は知りません・・・馬が知ってたんです。僕は道の上を走らせてただけです」

・・・これが心理療法のやり方だと、私は思います。

ミルトン・エリクソン入門」より

なるほど。よくわかるような、わからないような話ですね(笑)

ここまでの話を聞くとあまりにすごいので、「この療法を受けてみたい」または「自分でもやってみたい」という人がいるのではないでしょうか。しかしそれは無理です。

簡単にいうとほぼニコラテスラやアインシュタインに近い天才が行ったアプローチですので、だれもマネできないのです(笑)

※「NLP」がエリクソンの治療法の一部を元にしたものとして有名ですが、個人的にはエリクソンの有機的な治療に比べるとかなり窮屈な内容になっていると思います。

というわけで、天才療法士・ミルトン・エリクソンの心理療法でした。興味のある方はぜひ本も買って読んでみてください。

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