88: 本当にあった怖い名無し 2015/04/11(土) 13:01:10.16 ID:SL8hpTT89
清水玲子作「秘密」より。
この作品は近未来SFサスペンス。
ある特殊な技能により死者の脳の記憶を機械で再生することにより、
犯罪捜査の一助とするもの。
捜査難航な事件を飛躍的に解決できる方法として受け入れる世論も
あれば、死者の「秘密」を暴く冒涜として批判する世論もある。
そんな世界背景の下、この捜査方法により様々な犯罪に取り組む
「第九」と呼ばれる警察の一機関で働く主人公、青木。
ある日、青木の父が亡くなる。事件性はまったくない。以前からの
病気による、青木を含む家族全員が予期していた父の死。
しかし葬儀場で青木の母がポツリとつぶやく。「ねえ、あんた、
お父さんの脳みそ、見たりしないよね。」
青木は、母親が自分の仕事に嫌悪感を抱いていたことに気が付く。
しかし、同時に、生前、父親が「お前がやっているのは立派な仕事
だよ。」と笑顔で語りかけてくれていたことを思い出し、新たに
発生した事件に取り組む。
・・・事件終了後。父親の初七日を終えた母親が、青木に数冊の
ノートを渡す。
「お父さんの日記。私には読めない。あんたに託すから。読んでも
処分してもいいから。」
そして母親がつぶやく。「・・・お父さん、本当は、あんたの仕事、
好かんかったと。」
場面が変わって、一人涙を流しながら父親の日記帳を読まずに焼却
する青木。
「お前がやっているのは立派な仕事だよ。」とかつて笑った父親の
顔がフラッシュバックし、日記からは「第九の前で、就職が決まった
一行(青木の名前)と一緒に。」と笑顔で青木と写る父親の写真の
燃えかけがこぼれ落ちた。
何が真実なのか。それは本当は脳を暴いてまで知ることじゃない。
・・・そんな感じの青木のモノローグでそのエピソードは終わる。