193: 1 2010/10/15(金) 23:59:23 ID:PpBq77JM0
布団に入って寝ようとしてたけどふと目が覚めて医者で思い出したから書く
短編小説『怖い目』
主人公(女性)の恋人の民俗学者(男)は、ある時から目を患ってしまう
民俗学者としての将来を悲観した恋人は荒れ、やがて完全に失明してしまう
いくつもの病院をめぐったが「もう治らない」と言われ、神頼みとしていくつもの神社を巡ったが効果は無かった
そんな恋人を不憫に思った主人公は、支えになりたいと思い、恋人と婚約をした
しかし、結婚式を間近に控えているにも関わらず、婚約者は行方不明になってしまう
身内達は婚約者は自殺したのだろうと思ったが、主人公だけは婚約者が生きていることを信じていた
婚約者の部屋から手ががりを探し、やがて婚約者のノートパソコンから、ある島に関する資料を見付けた
その島には「百目様」という神を祭った神社があり、百目様は腐肉の塊に何百もの目が付いた妖怪変化のような姿をしているのだという
百目様には眼病を治す力があるとされ、目を患っている者達がその島を訪れ、そこで盲目の者同士だけで一種のコミュニティーを作って排他的な生活をおくっているらしかった
主人公は婚約者がいると信じてその島へと向かった
島へ向かう船に乗っていた主人公は、島へと物資を届けに行く漁師から「百目様は実在する。皆が見たと言っている。俺も見た」と言われた
漁師は百目様を恐れているらしく、青ざめながら「あんな化け物を崇めるのは、目が見えない者だけだ」と言った
島に着いた主人公は、そこで自分を盲目だと偽ることで島へ入ることを許可された
島民達によると、百目様は目が見える人間が嫌いで、そういう人間が島に入れば百目様に殺されてしまうのだと言う
島民たちは百目様のご利益を妄信しており、その証拠として時折島民が行方不明になるのだと言った。島民が行方不明になるのは目が見えるようになったからで、百目様の祟りを恐れて島から逃げ出すのだと言った
つづく
195: 自治スレでローカルルール他を議論中 2010/10/16(土) 00:07:39 ID:djZ3mCrN0
つづき
島民たちは、神社の周辺で採れる食べ物を「百目様のおこぼれ」として丁重に扱い、週に一度そのおこぼれを皆で食べる儀式をしていた
主人公は島で暮らす通過儀礼として強制的に儀式に参加させられてしまう。深夜、明かりも無い真っ暗闇の中で、島民たちは集まって儀式を始めた
主人公は、これまでに見聞きしてきた島民達の発言や雰囲気から「食べねば殺される」ということを察し、しかたなく真っ暗闇で何なのか判別もできない物体を食べることにした
主人公が気持ち悪さを我慢しながら食べていると、雲の隙間からこぼれた月明かりによってそれが生きたミミズやナメクジや虫や何なのか判別もつかない肉片であることを知った
主人公は「婚約者がいるかもしれないのに、帰れない」と思い、殺されたくないという気持ちもあって全てを食べきった
その後、島民の一人が主人公に「よくやった。正直、食べきれなかった新入りは島の墓地に埋められるんだ」と言った
主人公は一部の島民に婚約者のことを尋ねたが、情報は得られなかった
それから日にちが過ぎたある夜、眠れないので出歩いていた主人公は、藪の中に何かが居るのを見付ける
主人公は「女の勘」でそれが婚約者であることを悟った
藪の中に居た何かは走って逃げた。主人公はそれを追いかけながら「一緒に帰ろう。私が貴方の目になる。もう一度やり直そう」と叫び続けた
そこで何かは立ち止まると、「来なければ良かった」と言った。たしかに婚約者の声だった
婚約者は「俺はもう駄目だ、帰れない」と言い、さらに「君ももう駄目だ」と言うとまた走って逃げて行った
主人公は婚約者を追いかけようとしたが、そこで誰かが主人公の腕を掴んで言った「やっぱりあんたは目が見えていたのか」
主人公が振り向くとそこには島民達がおり、皆手に武器を持って恐ろしい顔で主人公を睨んでいた
主人公は逃げ出し、島民達は「あいつを殺さないと、百目様の祟りが我々にも及ぶ」と追いかけてきた
つづく
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199: 自治スレでローカルルール他を議論中 2010/10/16(土) 00:39:20 ID:djZ3mCrN0
つづき
主人公は何日も原生林のような森の中を逃げ回り、島民達は毎日主人公を探した
主人公は小動物や虫やナメクジを捕まえて食べ、夜は穴を掘って寝た
主人公は半ば正気を失いかけたが、婚約者を連れて帰りたいという想いで正気を保っていた
ある日、主人公が森の中をさ迷っていると、島民達が仕掛けた罠にかかってしまう
島民達は主人公を殺そうとするが、そこへ何者かが現れ、島民達はいっせいにひれ伏した
主人公が目を向けると、そこには「百目様」が居た。腐肉の塊のようなドロドロとした姿をしており、異臭を放ち、全身を何百という眼球が蠢いていた
そして、主人公はその眼球が本物の眼球ではないことに気が付く
眼球のような物の正体は眼球によく似た頭部を持つ「虫」であり、それが体に空いた穴から頭を出し入れして蠢いていた
百目様の体内には虫が数千匹はいるのだろうと主人公は思った
百目様は主人公のに向けて左腕を動かし、まるで「逃げろ」と伝えようとしているようであった
主人公は罠から逃げ出すが、去り際に百目様の左腕にかつて主人公が婚約者にプレゼントした腕時計がはめられているのを見た
主人公は海岸まで逃げ、そこで物資を届けに来た漁師と再開し、「百目様が出た」と漁師を脅かすことで島から逃げることに成功した
故郷へと帰った主人公はそこで悲しみも恐怖も忘れようとした
やがて悪夢にうなされることが少なくなってきた頃、主人公は身体に異変を感じた
全身が痒くなり、それが毎日続いた。やがて出来物が体中に出来た
ある日、下腹部に出来た出来物を我慢できずにかきむしっていると、出来物が破れ、陥没し、膿のような液が流れ、そこからあの「虫」が頭を覗かせ、すぐに引っ込んだ
主人公は入院し、医師からこう告げられた
「この虫は寄生した生物の肉を腐敗させて食べます。この虫は常に産卵し、今あなたの体内には4百匹以上の虫がいます。
この虫には薬は効かないから、一匹一匹ピンセットで取り除いていくしかありません。辛いでしょうが、頑張って一緒に直して生きましょう」
そして医師は最後に「この虫に寄生されるのは日本では大変珍しい。ナメクジを食べることで感染するのですが、心当たりは?」と言った
その夜、主人公は病院を抜け出し、あの島へと向かって終わり
201: 自治スレでローカルルール他を議論中 2010/10/16(土) 00:40:49 ID:djZ3mCrN0
>>193>>195>>199
要領オーバーして削ってたら時間かかった
203: 自治スレでローカルルール他を議論中 2010/10/16(土) 00:48:09 ID:Oq2kV7PiO
>>201
面白かった。
異種族が胎内で産卵し続けるっていう厭らしさは、ニドヘグを思い出させる。
こういうの好きだ。
205: 自治スレでローカルルール他を議論中 2010/10/16(土) 01:15:10 ID:Hpi1O13dO
>>201
乙です
一見おどろおどろしいオカルトにみえて、ちゃんとそれぞれの事象に
はっきりした根拠(人が消えるのは目が治ったからではなく殺された
とか、百目は神や化け物ではなく寄生虫が原因の病気)があるのが
後味悪さに拍車をかけていますね
207: 自治スレでローカルルール他を議論中 2010/10/16(土) 01:26:06 ID:fwXZtJWq0
>>201
乙。要するに、最初のおこぼれ食べる儀式受けた時点で破滅が決まってたのか…