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53:本当にあった怖い名無し:2006/05/31(水) 21:15:33 ID:uI5l+xCb0
高橋葉介の短編
主人公の青年は戦争で片腕を失った。
将来を嘱望されていた演奏家である彼には死ぬよりも辛い事だった。
そんな彼の前に現れる美しい女。彼女は魔女と名乗る。
青年を愛するようになった魔女は、自らの片腕を青年に与えた。
肉体の一部を転移させるのは魔女の得意技なのだという。
ただし、青年が自分以外の女を愛するようになったら
片腕を返してもらうと魔女は言う。
青年はそんな事にはならないと言いながらも、
魔女に縛られるなんてまっぴらだとすぐに逃げ出した。
青年はすぐに演奏家として有名になった。
やがて、音楽関係の有力者の娘と結婚する事になった。
内気で猫が好きな可愛らしい娘だった。
幸せな日々を送る中、突然に魔女が現れ腕を返せと迫ってきた。
青年は魔女を殺し、妻のいる部屋へと向かった。
ドアを開けようとすると、妻が開けないでくれと叫んできた。
不審に思いながらもドアを開け、青年は愕然とする。
そこには猫の体から生やした顔に涙を浮かべる妻の姿が。
魔女の得意技は肉体の一部の転移。
最期の力で魔女は妻と猫の首をすげかえたのだった。
ラスト1ページで首の入れ替わった妻と猫の姿が出てきてたまげた
63:本当にあった怖い名無し:2006/05/31(水) 22:19:27 ID:pRL3Wczl0
>>53
ああ、懐かしくてつい本棚あさってしまったw
東京三世社刊『腸詰工場の少女』所収「魔女の右腕」ですね。
高橋葉介は何度もこのスレで出て来てるけど
初期の作品になればなるほど後味悪いっていうか、
いともアッサリと絶望的結末を見せ付けてサラっと話を終わらせちゃうタイプの話を描いてた気がする。
少し前にこのスレでも紹介されてた「夢幻紳士」なんて、どちらかというとさわやかな結末のが多いよね。
初期の短編に比べたら。
↑に挙げた『腸詰工場の少女』に載ってた後味の悪い話、もいっこ。
その名も「無題」で、掲載誌不明ってなってるから、デビュー前に描いた習作かも?
病弱で部屋で寝たきりで退屈しきっていた少年の部屋に
窓から小鳥が飛び込んでくる。
少年は思いついて、小鳥の脚に
「病気で寝てます、遊びに来てください。住所は…」と書いた手紙をくくりつけ、逃がしてやる。
数日後、手紙を見たという人物が尋ねてきて、少年は喜んで迎え入れるが、
その人は目ひとつ、指三本、ワニみたいな口、爬虫類っぽい皮膚・・・と、どう見ても普通の人間じゃない。
一瞬ビビりつつも、せっかく来てくれたお客だし、とベッドの傍らの椅子へ招く少年。
この後、「どうしておじさんの目はひとつしかないの?」「どうしておじさんの指は…」といった
赤ずきんのパロディ的会話があって、最終的には少年は「大きな口」をあけたおじさんに襲い掛かられてしまう。
最後の1ページは、少年の首だけが転がってる少年の部屋の俯瞰図。
あまりにも理不尽で強引で救いのない展開に初めて読んだ時はかなりビビった。