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644: 本当にあった怖い名無し 2012/05/25(金) 02:53:13.66 ID:i/0vywI60
絵本『しばてん』 1
その地方には"しばてん"という怪物が出る。夜道に現れては「おっちゃん相撲とろう」と相撲を挑んできては相手を投げ飛ばす。投げ飛ばされた相手は何ヶ月も腰が立たなくなる。
困った村の人たちは村一番の暴れ馬を夜道に放つことにする。案の定しばてんは馬を人だと思って、夜道に飛び出し、
「おっちゃん、相撲とろう」
と言ったところを暴れ馬にケツを強かに蹴り飛ばされ、遠くに吹っ飛んでしまった。
以来、しばてんは出なくなるのだがその直後、山で捨て子が拾われる。
太郎と名付けられた捨て子は村全体で育てられるんだけど、感情は乏しく滅多に笑わず、ケツには馬の蹄の様な痣がある。そして滅法相撲が強く、太郎に負けた人間は何ヶ月も腰が立たなくなる。
これは太郎はしばてんの生まれ変わりなんじゃないかとなり、村中の人達から憎まれクワやスキなどで追い回され村から追放される。
それから太郎は一人山中で木の根を齧る様な生活をする。
645: 本当にあった怖い名無し 2012/05/25(金) 02:55:03.13 ID:i/0vywI60
『しばてん』2
しばらくして村には大飢饉が訪れる。みんな食うや食わずの生活なのに、庄屋の米倉には山ほど米がある。
このままでは村中が飢え死にだ、庄屋の米倉を打ち壊しするべえとなって、村中の人間が手に農機具などを持って一揆をするが、
空腹のあまり米倉にたどり着く前に途中で力尽きそうになり、そこに庄屋の用心棒達が一斉に襲い掛かる。村人達が絶対絶滅となった時に、山を駆け下りてきた一つの影が大声で叫ぶ!
「しばてんが来たぞ! しばてんが助けに来たぞ」
それは村人達が追放したはずの太郎だった。太郎は大声で「しばてんが助けに来たぞ」と叫びながら用心棒達をちぎっては投げる。
太郎の加勢に勢いづく村人達は用心棒達を圧倒し始め、最後には庄屋も太郎がぶん投げて米倉を打ち壊し、村人達は運び出した腹一杯米を食べて皆ニコニコ。
もう誰も騒動の立役者の太郎を山に追放しようとするものはいなく、村に残ってくれと歓迎し、太郎は再び村で暮らすことになる。
だが庄屋の米倉を打ち壊ししてそのままで済むはずもなく、しばらくして村に大勢の侍を引き連れた代官がやってくる。
「庄屋の米倉を襲ったのは誰だ!」
「米倉の米を食べたのは誰だ!」
村人達は代官の詰問に震え上がり、そして示し合わせたかの様に全員が指をさしてこういった。
「しばてんがやりました」
「しばてんが米を食いました」
太郎は抗う事も、異を唱える事もなく代官に縛られ連行されていく。
村人達は代官に連行されていく太郎をみてまるで自分達の罪を誤魔化すかの様に、こう思った。
「太郎なら化け物だから大丈夫さ」
「あの縄をくぐり抜けて逃げるはずだ」
「首を斬り落とされても、ニッと笑うはずだ」
ーだって、太郎はしばてんの生まれ変わりなんだからー
しかし、その後太郎は二度と戻ってくる事はありませんでした。