後味の悪い話

【後味の悪い話】高橋葉介「夢幻外伝・水妖」

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875:1/4:2013/11/13(水) 10:31:05.65 ID:kbytdM/3O
高橋葉介「夢幻外伝」から「水妖」

主人公の夢幻魔美也はオカルト的能力を持つ美青年。
ある日魔実也は旧友Aに頼まれて、喫茶店で婚約者A子に会った。
A子も、旧友の夢幻君と一度会うようにAに頼まれていた。

A子が言うには、Aは川面をじっと、思い詰めたような顔で見つめていたそうだ。
入水でもするんじゃないかと心配になったA子がお節介を承知で
「あのゥ…川の中に、何か見えるんですか」
と訊ねると、Aはぎょっとしたような顔でA子を見て、名前を聞いた。
そこから交際が始まったそうだ。

それを聞いた魔美也は、笑みを浮かべて語った。
…Aは夢の中で美しい女の顔を見た。

877:2/4:2013/11/13(水) 10:33:13.75 ID:kbytdM/3O
毎晩夢に現れたその顔は、ある朝起き抜けに汲んだコップの水の上にも現れた。
Aはなんとなくそれを飲み干し、それから女の顔の幻覚は風呂だろうと水溜まりだろうと構わず現れるようになった。
その顔は、A子さん…貴女と同じ顔をしていたのですよ。

「まあ…道理であの時、あたしの顔を見てぎょっとしたわけだ」
どうです、それでも貴女はAと結婚しますか。確かに資産家だが幻覚を見るような男ですよ。
「ええ。だってあの人が結婚を申し込んでくれたんですもの。断る理由なんてありゃしませんからね」

面会を終えた魔実也はAに忠告した。
彼女は確かに生身の人間、妖怪変化の類いではない。

878:3/4:2013/11/13(水) 10:40:40.21 ID:kbytdM/3O
ただし、彼女と二人で水場に行ってはいけない。
例えば新婚旅行。彼女は高原の保養地を選ぶだろう。
そして君を湖でのボート遊びに誘うだろう。
彼女の夢は資産家の未亡人だ。
君が見た幻覚は、泳げない君が湖底に沈むのを見下ろす顔だ。
それでも君は、彼女と結婚するのかね。
「構わんさ、彼女は僕の運命の女だ」

一ヶ月後、逃亡生活を送っていたAは魔実也を呼び出した。

新婚旅行はA子の望みで高原の保養地に決まった。
A子がボート遊びをしたがるので、Aはコーヒーに睡眠薬を盛って飲ませた。
湖の真ん中まで漕いだ所でA子は眠った。
Aは眠るA子を湖に沈めた。

879:4/4:2013/11/13(水) 10:43:10.70 ID:kbytdM/3O
沈みゆくA子の顔は、幻覚と同じく美しかった。

…外国に逃げるのなら手を貸すが。
「いや結構。自首するから付き添ってくれたまえ」
A子が君を殺そうとした証拠はない。君は新妻殺しの凶悪犯として死刑になる。
「構わんさ、彼女は僕の運命の女だ」

A子がオールを振り上げてAの後頭部を狙うシーンや睡眠薬が効いてオールを握ったまま倒れるシーンがあるけど、Aの説明を絵にしただけだから真相は不明。湖の真ん中だから目撃者もいないし。
第一、魔実也だって完璧超人ではないから予言が正解とも限らない、という後味の悪さ。

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