後味の悪い話

【後味の悪い話】夢に出てくる女性に似てるんです

479: 本当にあった怖い名無し 2022/07/27(水) 00:11:47.08ID:7YQa+rl60

吉田修一の短編集『女たちは二度遊ぶ』の中の一編 『夢の女』

大学生の主人公は男友達と一緒に駅にいたところ、
あまりにも美人な女性を見かける。
男友達と悪ふざけのつもりで、その女性を尾行することを決める。

「どんな家に住んでるんだろう?」
「きっと高層マンションか、高級住宅街だな」
みたいな会話をしながら女性が家に帰るまでつけていく。

しかし結局女性は、銭湯の近くの築何十年のボロアパートへと帰っていった。
その日はそれで終わる。
しかし、主人公はどうしても彼女のことが頭から離れなかった。
後日、偶然駅でまたその女性を見かける。

いてもたってもいられなくなった主人公は女性に声をかけてしまい、
声をかけた理由として咄嗟に「夢に出てくる女性に似てるんです」と
嘘をついた。

そうして、どうにか繋がりを作ろうと、
自分がアルバイトをしている飲食店のチラシを渡して来てくださいと誘う。
主人公はあわよくば、その女性がバイト先に来てくれることを期待した。
しかし来る気配は一向にない。
徐々に、来て欲しいという思いが「どうして来ないんだ?」という疑問に変わっていく。

そんなある日、いつものように石鹸やらタオルやらをもって銭湯へ行こうとすると、ふと女性の家を通ってみようと思い立つ。
ボロアパートの前を通り掛かると、女性の部屋は電気が点いており、
微かに女性の笑い声と彼氏と思われる男の笑い声が聞こえてきた。

それを聞いた途端、主人公は自分のしたことが
何だか馬鹿らしくなってきて気持ちが昂った。
桶に入れていた石鹸を女性の部屋にめがけて投げつけて走り去った。
背後から女性が窓を開けて「なに?」と言っている声が聞こえた。

勝手に期待して勝手に幻滅した主人公の無様な感じが、
凄く後味が悪いなと思った。

長くなってすまん。

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