ホラー

【洒落怖】石じじいシリーズまとめ その4

「夜興引」という待ち伏せ猟

423 :名無し百物語:2023/11/09(木) 22:50:37.09 ID:vrfY2Ikd.net
石じじいの話です。

石探しのために東北地方を旅した時に聞いた話のようです。
昔の猟師は、山で「夜興引」という待ち伏せ猟を行っていました。
そのときには、犬を連れていきます。
冬の猟は、毛皮を取るのが目的で、クマ、ムササビ、テン、イタチ、カモシカなどを狩ったそうです。
彼らは、小屋掛けをして何日が山にこもって猟をして、手持ちの食料がなくなると帰ってきました。
山に入って出てくるまでを「一夜」といって、その間の獲物を「一夜の猟」といったのだそうです。

ある時、猟師が山にはいったのですが、食料が尽きたと思われても、なかなか帰ってこない。
犬も帰ってきません。
これは何かあったのだろうということで、みんなで山に探しに行きました。
小屋掛けしたあとを見つけましたが、そこに猟師はいませんでした。
あたりを探すと、その猟師の服だけが残っていたそうです。
帽子から足袋、脚絆、わらじまで残っていました。
衣服はきちんとたたまれて、そのそばに足袋などがそろえておいてありました。
猟銃や弾丸は残っていなかったそうです。
裸になって銃だけ持って、さらに山奥に猟にいったのか?
それは、ありえないでしょう。
さらに山奥や周辺を探したそうですが、見つかりませんでした。
その後、その猟師は完全に行方不明になったそうです。

四辻に食べ物

425 :名無し百物語:2023/11/11(土) 21:04:12.68 ID:d3Ug6B+B.net
石じじいの話です。

短い話を。
昔の村には、寒施行という行事がありました。
冬に老女たちが念仏を唱えて歩き、用意した食べ物を四辻に供えていきます。
すると、その後から子どもたちがついていって、それをとって食べるという行事だったそうです。
しかし、それを絶対にとってはならない、という場所がありました。それは四辻でした。
食べるとどうなるか?についてはメモにはありません。
四辻は異界との境界線であり、以前書いたミサキやドウロクジンの話にも、それらが憑く場所として四辻がでてきました。
もともとは、人通りの多い道の要所 つまり四辻に食べ物をおいて物乞いに施しをするのが目的だったということだそうです。
戦前でも、早い時代に廃れた行事です。

霊信仰に関連する呪いの呪文

427 :名無し百物語:2023/11/15(水) 20:42:29.20 ID:Cq0Lb8A8.net
石じじいの話です。

この話は、じじいの話の聞き取りの末期、私が中学生の時に記録したものです。

言霊信仰というものをご存知の方も多いでしょう。
この言霊信仰に関連する呪いの呪文があったそうです。これは、祝詞ともお経とも異なるものです。
病気やケガの予防や治療のために呪歌を唱えることによって、その実際的効果を期待します。
それによって病気やケガの原因とみられる悪い精霊を追い払うのです。
つまり、人間の発する言語に禍福を左右する超自然的な威力が内在する、という考えです。
漁師が海に出るときや海女が海に潜るときに、「ツイツイ」とか「ツヤツヤ」と唱える風習があったそうです。
仕事のために山に入るときにも、マムシよけのために、その天敵であるイノシシの別名である「山だち姫」とか「山王姫」と唱えるのです。
それを三回唱えると効果があると。1・2・3、つまりヒフミです。
このような呪文は、就寝前に唱える人も多かったようです。
じじいの教えてくれた呪文は:
「犬神は憑くとも憑かじ人神の・固より守る人の身なれば」
「まじなへばまじなはるべし何物も・神の御霊の分けし身なれば」
「物の気がもののあはれを知りたらば・早くさらひでものがたりせよ」
「やよ狐野辺こそおのがすみかなれ・人の宿りに何とまよふらん」何とまよふらん:は、「なとまよふらん」と読むそうです。
「ものごとに影も形も無くなれば・遺恨といふも何かあらめや」遺恨:は、「ねたむ」と読む。
「己が身を己が心で傷まする・心のまよひ今ぞしづむる」
私は、今でも寝る前に、このような呪文のいくつかを唱えることがあります。

タチウオのような魚は食べてはならない

428 :名無し百物語:2023/11/17(金) 22:52:38.64 ID:WkSe/Fnv.net
石じじいの話です。

これは、漁村で聞いた話だそうです。
漁の時、キビナゴに混じって大きなタチウオのような魚がとれることがあるが、それは食べてはならないとのこと。
それがとれたら、山に埋めろ。燃やしても良い。
なぜ、そうしなければならないのかは、よく分からなかったそうです。
詳しい由来を知っている古老はいなかったのですが、昔からの決まりごとだったと。
ある人が言うには、その大きな魚には海の神がやどっているからだ。
それを山にうめたり陸地で燃やしたりすることで、神が陸地に移動して土地の神になるのだろう、と。
また、ある人が言うには、それには人の霊魂:溺死した人のもの、の意味か?  が宿っているから、持ち帰って食べるとその霊魂に憑かれてしまう、と。
さらに、ある人が言うには、タチウオは「太刀魚」とも書き。刀のような姿をしている。この時に、これを食べると刀で斬られて死ぬ、と。
いやいや江戸時代じゃあるまいし。
もしかして、江戸時代からの言い伝えだったのでしょうか?

故郷が犬神憑きの本場

430 :名無し百物語:2023/11/22(水) 22:07:40.09 ID:g4RNDhzh.net
石じじいの話です。

犬神憑きの話がノートに見つかったので、まとめて書いてみましょう。
聞き取りノートのあちこちに散らばっている断片を集めて整理したものです。矛盾しているところもあるのですが修正しようがありませんでした。

じじいの故郷 私の故郷でもあるのですが は、犬神憑きの本場です。
以下に、それについての情報を列挙しましょう。
#犬神が憑くプロセス:
犬神は、ある人 犬神憑きと呼ばれるのですが に使役され、他人に憑いて災禍をもたらします。
犬神憑きの家には、そのような使役用の犬が7頭いるとも、家族の数だけいるとも言われていました。
この犬が、犬神憑きの指図によって相手の口や鼻、耳、目、尿道、肛門、陰門、毛穴などから体内に侵入します。
#症状:
犬神に憑かれると、癲癇のような症状を起こす;気が狂ったようになる;犬のまねをする;とりとめのないことを口走るようになります。
道を歩いている時に急に失神したり、おかしなことを口走ることもあります。しかし、これは短時間でおさまるのだそうです。
高熱を出したり大汗をかいたりすることもあると。
肉体的な苦痛も激しくて死ぬこともあります。特に、腕や脚の関節が痛むそうです。
#対策:
犬神を退散させるのは祈祷師による加持祈祷です。
それには、御嶽教の行者がよい、と言われている地域もありました。
盲目の巫女を連れてきて、ご託宣を聞くこともあったと。
犬神に憑かれやすい人は、ヒステリックな人、嫉妬心が強い人、内向的な性格の人、だそうです。
#犬神の形:
犬神に憑かれた人の証言によると、犬神の形態は白犬の仔のようなものであったと。これが鴨居の上を行き来するのだそうです。
#別の解釈:
このような「犬神憑き症状」の原因には別の解釈もあり、それは、人の生霊が憑くことによって起こるのだ、ということでした。
また、この犬神憑きを行う「術法」は、修験者が行う加持祈祷の一つである「護法種」というものが一般の人に広まったのだ、という話もあったそうです。

431 :名無し百物語:2023/11/22(水) 22:08:14.33 ID:g4RNDhzh.net
>>430
石じじいの話です。

犬神憑きについての話をもう少し。
#犬神憑きにかかわる「修験者」について:
修験者は、一部の地域では神官も兼ねていて、その土地の雨乞いや風祭、庚申講などの行事を司っていたそうです。
さらに、病気治療のための祈祷もおこなっていました。
そのような加持祈祷の種類は300種類以上もあったそうです。
#加持祈祷の例:
汗垂符;抜霊治病事;疫病退治;難産治療;石女の懐妊;男子の出産;腫物治療;やけど治療;夜泣き治療;ウマの加持;鼻血を止める;喉に魚の骨が刺さったときの治療;疱瘡符;生霊の除去;野狐が憑いたときの対策;などなど。
上記、漢字や解釈の間違いがあるかもしれません。中学生の私が聞き取った内容ですから。

病人治癒のための念仏踊り

432 :名無し百物語:2023/11/22(水) 22:12:05.05 ID:g4RNDhzh.net
石じじいの話です。

病人治癒のために、憑き物を落とす方法として、修験者や祈祷師をやとわないで自分たちで対処する方法もあったそうです。
法外な金を要求されることもなく経済的です。
そのためには、念仏講による念仏踊りを行います。
念仏のための「道場」を設置します。
六斎念仏の道場だったそうです。
道場には、二八宿や二五菩薩をかたどった、しめ縄や御幣をかざりました。
念仏踊りの中心となる人は法眼と呼ばれていたそうです。
道場に、阿弥陀如来、不動明王、十六善神の掛け軸をかけて、お灯明や供物を捧げます。
そうしておいて、太鼓や鉦を叩きながら三人一組で踊ります。
道場に病人をフトンに寝かして、そのまわりで念仏衆が刀を持って踊るのだと。
最後に、たんぽをつけた槍で病人の掛け布団をはねのけると、憑いていた魔物が病人の体を抜けだして退散するのだそうです。
田舎には、江戸時代の本物の槍があちこちに残っていたそうですが、それは使えない。本当の刃のついた槍を使うと危ないですからね。

433 :名無し百物語:2023/11/26(日) 21:23:42.74 ID:4ZO3UMKO.net
石じじいの話です。

ミサキ関連の話です。
以前、ミサキの話をまとめて書いたことがありました。
また、じじいが山を歩いていて不思議な風にふかれて気分が悪くなった、という話をしました。
同じような話があります。
ミサキとは成仏できずに迷っている霊なのだそうです。
小さな白い蛇の姿をして人に憑くこともある。
物理的な大気の流れである風が発生しなくても、「カゼ」がくることがありました。
不慮の死をとげた人の骨が埋まっている場所へ入ったり;神聖な場所へ入り込んだり;神の樹木を伐採したりすると
「カゼ」が来るのだそうです。
その「カゼ」にあたると、そのあたった身体の場所の皮膚に紫色の斑点ができました。
さらに、熱病のような悪寒を感じて、ふるえが止まらなくなる。
「カゼ」は目に見えないので防ぎようがないのが厄介です。
「ミサキカゼ」や「水神カゼ」というものもありました。
いずれも、水辺や水死に関係がありそうです。
「ミサキカゼ」にあたると死ぬことがありました。その死体は真っ黒になったそうです。
また、「カゼ」にあたると事故死したり脳溢血で死んだり自殺したりするのだと。
死に至らなくても、激しい頭痛に襲われて失神することがあったそうです。
橋のたもとなどに祀られている水神様の祠に触れたりすると「水神カゼ」にあたってしまいます。
そうすると、寒気がして熱が出て半狂乱になります。
人間の怨霊や悪霊・魔物などが「カゼ」として「風」に乗って飛来して人に憑依するのだそうです。
「悪さするいろんなもんがおるけん、石探しで山ぁ歩くんも命がけよ」

入らずの間がある家

434 :名無し百物語:2023/12/01(金) 22:33:53.03 ID:GwGJvcB4.net
石じじいの話です。

不思議な家の話がありました。以前も、そのような話をまとめたことがありました。
これは別の話です。

入らずの間がある家があったそうです。
古い豪農の家でした。
その部屋は北の庭に面した八畳の間でした。
隣の部屋との間のふすまは、和紙で何重にも目張りされていて開けられないようになっている。
庭の濡れ縁に面した雨戸はカスガイと釘がいくつも打ちつけれていて開けられない。
大人でも容易には入れない状態でした。
絶対に入ってはいけない間だったのです。
しかし、その理由は不明でした。
それについての言い伝えはなかったのです。
その部屋のなかに何があるかも誰も知りませんでした。
古文書などもありませんでした。
昔はあったのだが、大昔の家人が廃棄したのでは?
あるいは、寺におさめたのではないか?
墓などに埋めたのでは?
なんの情報もない。
ふすまも張り替えないので、ぼろぼろになっているのを上から上張りしている状態でした。
御札などの呪術的なものは、どこにも貼られていなかったそうです。
ただ、封印されたふすまの上の長押に、非常に古いものと思われる、半紙に墨書きで「不入間」と書いたものが貼ってありました。
部屋の中から何かおかしな音がするわけでもないし、化け物などもでない。
その家に住んでいる人への害もなかったそうです。
その後、その家がどうなったかはわかりません。

スポンサーリンク

名月の晩にはよその畑の作物をとってもいい

435 :名無し百物語:2023/12/05(火) 17:26:49.13 ID:ZDe1V1dD.net
石じじいの話です。

じじいが、彼の子供の頃 あるいは、さらに昔 の風習を話してくれました。

皆さんは、お月見をしますか?
子供の頃には、中秋の名月の晩に、お月見をしました。田舎の、のんびりした月見です。
名月の晩には、よその畑の作物 主に果物 をとって食っても良いという風習があったそうです。
なぜ、そのような行為が許されたかというと:
最初にこの土地(村)をひらいた人々が皆でともに行った激しい労働の記憶や収穫物を分け合う気持ちは、土地がある限り、そこに残っているのだ。
そのため、一年に一度だけ昔に時を戻して、だれがどこの作物をとってもよい日をつくったのだ。
そうすることを、ご先祖様は喜びなさる、ということでした。
畑のものでなくても、お月さまに供えてあるものを子どもたちがとって歩く風習がある村もあったそうです。
神に供えたものは、もう自分のものではなかったので、それをとって食べるのが悪いということではなかったのです。
墓に供えたものを鳥がたべてもよい。神前にそなえたものを皆で分けてたべたりするのも同じことだと。
神に供えた あとの ものまで自分のものだ:ということになると、みんなで楽しもうとするのではなく、自分たちだけで楽しむものとなり、共同体の行事の持つ楽しみも消えていったのです。

お月見をしていると、満月の暗がりから、人の声がよびかけてくることがあったそうです。
「おかあさん」とか「XXよ」とか  XXは人の名前
その声は、先に死んだ親族の声のように聞こえたそうです。
その暗がりをさぐるのですが、だれもいない。
それを気味悪がる人もいましたが、かえって喜んで、楽しみにする人たちもいました。
月夜に、南向きの部屋で障子だけを閉めて寝ていると、障子に、人の影が映ることもありました。
その影も、声をかけてきます。
「おかあさん」
『おお、SSよっ!かえってきたんか?』 SSは、話しかけてくる死んだ人の名前
「はい」
そこで、障子を開けてしまうと、そこにはだれもおらず、その後、声はしなくなる。
だから、そのような影が来ると、我慢して障子越しに話をしなければなりませんでした。
ただし、その影は細かい内容の話はせず、「はい、いいえ、そうです、ありがとうございます、すみません」などと受け答えをするだけだったそうです。
しかし、声は、その人物のものに間違いなかったのです。
魔物だったのかもしれませんが、何も悪さはせず、たたりもせず、残された者の心をなぐさめてくれたといいます。

流暢な朝鮮語を話す黒人

436 :名無し百物語:2023/12/09(土) 21:19:39.00 ID:yKDDMY89.net
石じじいの話です。

じじいが朝鮮に住んでいたときに、山奥の集落で「クロンボ」(ママ) に会ったそうです。
つまり黒人です。
その黒人の男性は、かなり高齢でしたが、朝鮮語がペラペラでした。
彼によると、朝鮮に長く住んでいるとのこと。
地元の人たちとも仲がよく、親しんでいて、朝鮮の社会に溶け込んでいました。
朝鮮人の奥さんがいて、子供も三人いて、孫もいました。
そのときには、奥さんは、すでに亡くなっていて子供の家族と一緒にすんでいました。
いつ、どこから、どういうわけで朝鮮に来たのか?と、じじいは尋ねましたが、彼ははっきりとは答えなかったそうです。
彼の話のなかの断片的な情報からすると、どうも米国から、大韓帝国のはじめのころに来たらしいことは推察されました。
彼と彼の家族は、かなり立派な屋敷に住んでいたそうです。
じじいは招かれて、そこで一晩を過ごしました。
その男性の部屋には、たくさんの書物があり、インテリのようでした。彼のしゃべる朝鮮語からも知性が感じられました。
彼が書いた上手な朝鮮語の文書もあり、また、英語(ローマ字なのでそう思ったそうです)で書かれた文書もあったそうです。
彼の人柄や外国人としての境遇に感じ入ったじじいは、親切にしてもらった礼として、持っていた予備の万年筆を1本贈りました。
その老人は、「おお!『マンネンヒツ』ですね。これはありがたい。このようなものはなかなか手に入らないので助かります。ありがたくいただきます」と言ってだいじそうに受けとったそうです。
そのとき、彼は『マンネンヒツ』と流暢な日本語で言ってにこりと笑ったのです。

「不思議な、そやけどええ人やったわいね。あの人の子孫は今もどこかで生きておんなはるんかのう。アメリカにも家族はあったろうにのう。」

人狼の話

437 :名無し百物語:2023/12/10(日) 16:39:46.86 ID:SedTic3x.net
石じじいの話です。

じじいが朝鮮に住んでいたとき、ロシア人の商人の知り合いがいました。
友人といってもよいでしょう。
彼は、ロシアの各地を放浪して、蒙古・満州から朝鮮に流れ着き、その時は、他のロシア人やタタール人を使って商売をしていたそうです。
じじいが彼から聞いた話がいくつかメモにあります。

人狼の話です。
そのロシア人がペテルブルグにいたときの話だとか。
人狼とはオオカミ男ですね。
以下は、自分が人狼であると言うリトアニア人女性の話してくれたことです。
彼女は、人狼のことを「狼型=ボルクモルフ」と呼んでいたそうです。

彼女によると:
人狼は、女性も男性もいる。
変身前は、普通の人間である。
子供(数歳)の人狼もいるらしい。彼女は会ったことはないが。
そのような子供人狼は、親によって早くに殺される事が多いようだ。
人狼にはいろいろな種類があり、自分でいつでも自由に狼型に変身できる者たちもいる。
狼型に変身すると凶暴になる。中には、知性が残っており会話が可能な者もいる。
しかし、変身前の人格は存在せず、その記憶はなく、もとの人間に戻ると、変身している間のことはほとんど憶えていない。
ただ、ぼんやりと部分的に記憶が残っている者はいた。
自分(リトアニア人女性)がそうだ。
人狼の種類?によっては、犬やシカ、魚、植物、大気現象(霧、雲)、非生物の物(棒、干し草の山、石)にも外見を変えることができる。
自分(彼女)以外にも、このような人間がいるのだが、自分は見ただけでは、それを見分けることはできない。
人狼であることが知られると、当然、殺される。
変身すると、人間の時の記憶をなくすので、非常に危険な状況になる。
だから、住む場所や職業を注意深く選ばなければならないし、頻繁に変える必要がある。
人狼の中には、他人に危害を加えないように、正教の隠遁者として生活している者もいる。
自分(彼女)は、自分の意志で変身できるのだが、まれに自分の意志とは関係なく変身してしまうことがある。これが問題だ。
どうすれば人狼になるのか?
人狼は、洗礼を受けないで死んだ子供か背信者がなるという話がある。
女性が妊娠中に、狼に殺された動物の肉を食べると、人狼の子供を生むという話がある。
人狼の属性 能力 は遺伝する。
噛まれたら人狼になるというわけではない。
反対に、狼が人間の能力を得た、という存在もいるようだ。
書き込み者の註:猫又のようなものものでしょうか。
人狼は、一般に長命である。

こう話したリトアニア人女性は、「私も、いつ狼型に変身するかも知れないから、注意しろ。もう会わないほうが良い。」と言い、近いうちにフィンランドに移住するつもりだと言っていたそうです。
以前紹介した、蒙古の「マハチン」も、この一種かも知れません。

438 :名無し百物語:2023/12/10(日) 16:40:38.49 ID:SedTic3x.net
人狼に関連した話をもう一つ。これも朝鮮のロシア人が語ったものです。
以前に、肉食の獰猛な子供兵士を育成する施設が帝政ロシアにあったという話をしました。
それと関連しそうな話です。
人狼のような存在は、ウラル山脈周辺やバイカル湖周辺でも知られていたようです。
そこでは、人が狼に変身するのではなく、「吸血鬼」と呼んでよいものだったらしいのです。
それは、すべて女性で、魅力的なので男性は惑わされて喰われてしまう。
まあ、魔物伝承の定番の設定です。
血を吸われて同族になるというのではなく、肉を喰われ血を吸われる。骨も砕かれ、中の骨髄を喰われてしまう。
あとは食い荒らされた無残な死体が残るだけ。
ある種の「食人癖」ではないか、と考える人々もいたそうです。
さて、ここからが本題:
ロシア帝国の時代には、軍に「人間生物兵器」研究機関があったそうです。
そこでは、オオカミ型の凶暴な食肉類を「兵士」にする、という研究が行われていました。
トラのようなネコ科の動物ではなく、集団行動の習性を持っていたそうです。
あるいは、子供をオオカミ型の食肉類に改造したものだったのかも知れない、と。
それらは、「アントロヒシニク」と呼ばれていました。
「ソレ」はコドモであり、オス(少年)もメス(少女)もいる。
それに関係していた生物学者によると、少女(メス)のほうが知能が高くより凶暴なので殺傷能力は高いのだが、上官の命令に服従せず集団的な反乱を起こす可能性が高いので、兵器としては使いづらい:ということだったそうです。。
その研究所・訓練施設は、クラスノヤルスク付近にあったとか。
ロシア革命後、それがどうなったのか?そのデータはどうなったのかはまったく不明です。

遺体が腐らない棺

439 :名無し百物語:2023/12/14(木) 21:42:27.17 ID:ADReIjVp.net
石じじいの話です。

遺体が腐らない棺を作る職人がいたそうです。
夫婦で、棺を作る商売をしている人たちがいました。
この人たちは、棺以外にも木工でいろいろなものを作っていて、棺の製作は副業程度だったとか。
ある時、彼らの作った棺に遺体を入れておくと遺体が腐らない、という噂がたったそうです。
その夫婦は、普通の方法で棺を作っていたので、そのような現象が起きるのは不思議でした。
特別な木材を使ったり特殊な薬剤を塗布するというようなことはしない。
最初に、そのような現象がどうして発見されたのかはメモにはありません。
遺体はすぐに火葬したので、それが腐らないということはわからないと思うのですが。
そのような噂が広まると、わざわざその棺を買い求めて、遺体を火葬せずに、家に長らく置いておく人もでてきました。
これは良くない。下手をすると、遺体遺棄罪に問われる恐れもある。
遺体を焼くのが惜しく、その棺にいれて土葬した人もいました。
しかし、土葬は深く掘って埋葬するので、後で掘りかえして遺体を見ることができないし、木製の棺が腐ってしまえば、その効力も失せて遺体も腐るでしょう。
いや、棺が腐ると本当に遺体保存の効力は失われるのか?
いまだにその墓は暴かれていないそうです。
結局、その棺の製作方法や誰がその方法を発明したのか?ということが知られることはありませんでした。
少なくとも、私のメモにはありません。

のヒナ

442 :名無し百物語:2023/12/28(木) 17:56:26.44 ID:ltADd5su.net
石じじいの話です。

短い話を。

じじいが石探しに行くために町中の道を歩いていると、ある家の庭先で子供たちが鳥のヒナを捕まえて、いじめていたそうです。
子どもたちは笑っていました。
その子どもたちの親も笑っていました。
近くの木の枝に一羽の鳥がとまって、じっとそれを見ていました。
その木の下で、女の子が泣きながら子供たちを見ていたそうです。

漁村で聞いた不思議な話

451 :名無し百物語:2024/01/01(月) 15:41:17.98 ID:RLbsd+IU.net
石じじいの話です。

じじいには漁師の友人、知り合いが何人もいました。
石探しのために海岸をよく歩いたので、自然と知り合いも多くなったようです。
また、子供の頃からの友人もいました。
漁村で聞いた不思議な話です。

> 漁火としか見えない怪しい数千の火が海面に見えることがある。
夜10〜11時ごろに海岸に立って遠くの沖合を見渡すと見えるのだそうです。
悪天候で風浪が激しく、漁に出られない日の夜に出現しました。
もともとは1つの大きな火の玉だが、それが数千に散って海上に浮かんで、漁火のように波間にただようのだそうです。
この怪しい火は、海で溺死した人の霊魂だということでした。

> 闇夜に漁船が沖合を航海していると前方から大きな島が出現する。
よけようとすると左右に大きな船が現れて行く手をふさぐ。
そうしている間に、後ろにも大きな船が出現する。
いつの間にか、前方の島は消えて、そのかわりに大きな船がいる。
それで前後左右を船に取り囲まれて動けなくなるのだそうです。

> 月夜の海上が、にわかに真っ暗となって一寸先も見えなくなることがあったということです。
陸地も見えない。仕方がないのでそこで停泊して一夜を明かすことになるのです。
タコがいたずらをするのだ、ということでした。

つづく

452 :名無し百物語:2024/01/01(月) 15:41:56.04 ID:RLbsd+IU.net
>>451
つづき

> 船幽霊のせいと考えられていた海上の怪事がありました。
たとえば、こいでもこいでも舟が動かなくなる。
それでも漕ぐと、船が右に回り続けたり左に回り続けたりする。
やがて、船は急速にぐるぐると回るようになって転覆する。
舟が曲がり始めたら、漕ぐのをやめて静かにしておくのが良いそうです。
そうすると、まともにこげるようになると。

> 真夜中に舟を漕いでいると、正面から火を焚いて船がやって来る。それを避けようとすると、こちらが避ける方向にその船もよける。
あわや衝突しそうになると、その船が急に消え失せて真っ暗になる。
これも船幽霊と呼ばれていました。

> まわりには人家が無い海岸がありました。そこは景色がいいので浜辺に船でいって上陸して遊ぶことがあったそうです。
その海岸までの陸路がなかったのです。
その海岸には、綺麗な石がたくさんあるが、その石を持って帰ってはいけない。
これはよくある話です。
その石を持って帰ってしまうと、何者かが返礼を求めてくるのだそうです。
深夜になると寝ている耳元で「返せ、返せ」という声が聞こえる。
恐れて、次の日に石をもとの海岸に返すと、その声はやんだそうです。
「おいてけ堀」のような話です。

> 四国と九州との間の豊後海峡の南海域にある島での現象です。
島の海岸に立って沖合を眺めている、海中に多くの人が現れてくるのです。
これは、春に多い現象でした。
幾百、幾千という数の人たちです。
その服装や性別、年齢はわからないが、人間ということはわかるのだそうです。
彼らは、腰から下は海面に没していて、だんだん陸地に近づいて来ます。
そして、陸地に近づくにつれて消失してしまったそうです。
蜃気楼かも知れないということでした。

スポンサーリンク

不死の薬

453 :名無し百物語:2024/01/03(水) 20:32:14.18 ID:f9Y7azI7.net
石じじいの話です。

不死の薬が作られていたそうです。
それは、233年に一度作られる薬で、ある場所で、ある人によって作られるのだということでした。
その作り方は知られていないが、その時、それを作る人にだけ、教えられるのだそうです。
だれから?
それはわからない。
薬は少量しか作ることができず、一人か二人分しか作れなかったそうです。
それを、作った人が飲むのではなく、他の人が飲むのだということでした。
どんな人が飲むのか?
なにか条件があるのか?
それはわからない。
人々を救おうとする人か?
技芸に優れている人か?
研究・学問を極めている人か?
それはわからない。

「えらい薬よのう。ぼく(わたしのこと)は飲む勇気があるかな?わしはよう飲まんな。」
「今でも、それを飲んだ人らがどこかで生きちょるんやろうかね。」

脱皮する人間

454 :名無し百物語:2024/01/03(水) 21:00:26.92 ID:f9Y7azI7.net
石じじいの話です。

じじいが朝鮮にいた時に、知り合いのロシア人から聞いたロシアの話です。
脱皮する人間がいたそうです。
姿は普通の人間なのですが、成長するに従って脱皮する。
成長期には頻繁に脱皮し、体の成長が止まった後は数年に一度、脱皮したそうです。
脱皮は一晩で行われまた。
脱皮する時が近づくと、皮膚が硬くなって体がうまく動かなくなり、視力や聴力などの五感が鈍くなる
そうなると、家に閉じこもって、人の目に触れないようにして脱皮の時を待つのです。
そのため、家族の協力が不可欠でした。
脱皮するときには、体の一部が、ほんの少し「サナギ」のような形に変わったそうです。
具体的な形は不明です。
脱皮時に死亡することもあったようです。
脱皮する直前の状態(サナギの状態か?)や脱皮途中で死んでしまうため、葬儀のときが大変でした。
だから、死体を加工して普通の死に方のように死因も偽装することもありました。
この特徴は遺伝したので、その家系の人々は、これを必死に隠していました。
しかし、この話のように、外部に漏れることもあったのですね。
サナギの状態から、どのような順番で脱皮するかの記述はありません。
脱皮すると、脱皮前と比べて、すこし若返ったそうです。
そのため、脱皮人間は、高齢になっても、ほかの同年齢の人たちと比べて若々しかったということです。
脱皮した後の「抜け殻」は、証拠隠滅のために焼却されるのが常でした。
ある種の薬になるという話もあったようですが、ほとんどが燃やされたと。
胎盤が薬になる:というのと同じ考えなのかもしれません。

世界の終末を知らせる石

455 :名無し百物語:2024/01/12(金) 21:05:16.74 ID:al2Kfsur.net
石じじいの話です。

これは、じじいが朝鮮にいた時の話です。

正月に、「じじい箱」を探っていると石が出てきました。まあ、石じじいの箱ですからね。
この石にまつわる話がどこかにあるかもしれないと思い、聞き取りノートを探しましたが、おそらくこれだろうというのを見つけました。

これは、世界の終末を知らせる石らしいのです。
じじいが朝鮮にいたとき、一人の巫師の男性と知り合いになりました。

この石を見せて彼が言うには、

この石は世界の終末を知らせる石なのだ。
何百年もの間、あるいは千年以上もの間、巫師や魔術師、呪禁師などによって受け継がれてきたものだ。
由来はわからない。支那の遺跡から古文書とともに発見されたのだ、という話もあるが確かではない。
もともとは真っ白な石だったらしいが、時代を経るにつれて色が黒ずんできた。
黒い斑点が浮き出て、それが広がっていくのだ。
この石とともに受けつがれてきた説明によると、この石が真っ黒になったときにこの世が終わるのだ。
どのくらいの速さで、この石が黒くなっているのかはわからない。
何百年?前に描かれたとされる、この石の絵(スケッチ)があったが、それを見ると、たしかに現在の状態よりも白い部分が多かったようだった。
そのスケッチが失われてしまったのだが。
私は、命を賭けた、ある重要な仕事をするために沿海州に行かねばならない。
もう朝鮮には戻ってこれないだろう。
ロシアは、現在は共産主義の国だから、このような呪いの品は破壊されてしまうだろう。
だから、いっそのこと、日本人のあなたに譲ろう。あなたは石に興味があるようだから。
この話を信じなくてもよいし、この石を捨ててしまってもよいが、できれば後代に伝えてほしい。
いままで、大事に伝えられてきたのだから。

ということでした。
じじいは、その石を譲り受けて日本に持ち帰りました。
日本に帰ってから、この石の写真を撮影したらしいのですが、その写真は残っていません。
さて、この石、どうしたものやら。

(この石のサイズは、長径が3センチ程度です)

白い位牌 他3篇

456 :名無し百物語:2024/01/14(日) 21:08:07.44 ID:vg5xP+fc.net
石じじいの話です。

短い話をいくつか。

ある家の仏壇から、家人にはまったく覚えのない白い位牌が数本見つかりました。
戒名などなにも書かれていないのです。
その後、その家では、見つかった位牌の本数だけ人が死んだそうです。

じじいが山で野宿していたときに、山犬の遠吠えが聞こえてきました。
じじいは、襲われるのではないかと緊張しました。
吠えているのは2頭でしたが、それらの声がきれいにシンクロしていました。
美しいハーモニーだったのです。
じじいは、警戒するのも忘れて聞き惚れたそうです。

狐の襟巻きをしていた女性が歩いていたのですが、その襟巻きには狐の実物の頭がついていました。
それが口を大きく開いてキャーンと鳴いたそうです。
それをつけていた女性は失神しました。
註:昔はそのような狐の襟巻きがありました。一体分まるまるの毛皮です。私も子供の頃持っていました。

じじいが友人の理科の教師に会うために学校を訪れたとき、ひとりで廊下を歩いていると、音楽室で少女がピアノを弾いているのを見かけました。
じじいは少しピアノが弾けたので、彼女の演奏を聞いていました。
彼女が教室から出ていったあと、そのピアノをちょっと見てみると、鍵盤にはうっすらとホコリが積もっていたそうです。

二百三高地の戦闘

457 :名無し百物語:2024/01/18(木) 14:44:35.89 ID:UhnqyRtW.net
石じじいの話です。

これは、日露戦争に出征した老人から、じじいが子供の頃に聞いた話だそうです。

その老人は、二百三高地の戦闘に参加しました。ある突撃の際に、負傷した戦友を助けました。機関銃で撃たれた彼を引きずって後退したとか。
その戦友は、かなりの重傷であり、老人が見ても助からないと思われたそうです。
彼は、東北の田舎出身で、すこしのんびりした性格(ここは、じじいの話では差別的な表現でした)でしたが、頑強な体をもち勇敢でした。
老人とは非常に仲が良かったのですが、もう死んでしまう。
息をひきとる間際に、その戦友は言いました。
「おまえは、兵隊勤務で田舎者の俺に良くしてくれた。今度も、自分の危険も顧みず俺を助けてくれた。ありがとう。俺はもうダメだが、死んだらきっとお前を守る。危ういときには、かならず助けに来るからな。」
と。
この話をしてくれた老人は、その戦友とはちがい体も小さく臆病な人物でした。
この後の戦闘で、老人の部隊が全滅しそうになり、もうだめかという状況になりました。
もうだめか!と思った時、老人の心に急に勇気が出て、負傷して疲れ切った体に力がみなぎったそうです。
老人は勇敢に戦い、敵の拠点の一部を占拠することに貢献しました。そして、その戦闘から生還したのです。
しかし、彼も重傷を負い戦線離脱となりました。
さて、「かならず助けに来る」と言って死んだ戦友は助けに来てくれたのか?

「その戦友は、目の前に『出現』するのではなく、自分の心身の中に現れて助けてくれたのだろう」と老人は言い、涙を流したそうです。

日本の短編3篇

458 :名無し百物語:2024/01/18(木) 14:55:56.24 ID:UhnqyRtW.net
石じじいの話です。

短い話を3つ。いずれも日本での話でしょう。

1. ある町で、目玉だけをくり抜かれた魚が売られていた魚屋があったそうです。その魚屋では、魚やイカ・タコなどすべてが目玉が取り去られていた、と。

2. じじいが山を歩いていた時、遠くの山の斜面をたくさんの真っ白な傘が登っていくのを見たことがあるそうです。真っ白な日傘?が一列になって登っていくのは壮観だった、と。

3. 春の雨気た夜、小さな提灯が暗闇のなかを移動しているを見たそうです。ものすごく速く動いていて、じじいの距離感からすれば、小さな提灯が地面から低いところを走っているようだった、と。だれだ?

ロシア人から聞いた話 3篇

462 :名無し百物語:2024/01/21(日) 16:28:53.60 ID:fLaUcYZg.net
石じじいの話です。

これらは、朝鮮にいた時に知りあったロシア人から聞いた話だそうです。すべてロシアでの話でしょう。
いずれも短い話です。

1. 天上からラッパが鳴り響いて、雷鳴のしない稲妻が輝き、そこを死者たちが空に登っていくことがあったそうです。

2. ロシアのある村では、人が臨終の時、その人が寝ている部屋の窓を開けたままにしていました。その人が死んだら、その窓を閉じたそうです。
 
3. 森の中で、向こう側から人がやって来る。手をあげて挨拶しながら来るのは生きた人間。手をあげずにやってくるのは死人だそうです。

4. ある山で水色の霧がでることがありました。霧が出たときには、その山に登ってはいけない。
いい伝えによると、そのような時には、霧の中に、死んだ人が戻ってきているのだということでした。
死んだ人に会いたいと思う人が、その霧の山に登ることがしばしばあったのですが、その人たちは帰ってこなかったそうです。
まれに、死人に会いにいっても帰ってきた人もいたのですが、そのような人には本当に会いたい人がいなかったのだろう、と噂されたそうです。

スポンサーリンク

不思議な話3篇

463 :名無し百物語:2024/01/21(日) 16:56:12.27 ID:fLaUcYZg.net
石じじいの話です。

断片的な話を三つ。

寺で僧侶が過去帳を広げて読んでいると、蚊が額に飛んできました。
思わず手で払ったひょうしに蚊を潰してしまいました。
すると、大量の血がどっと過去帳に落ちたそうです。
たとえ血を吸っていたとしても、小さな蚊からそれほど大量の血がでるわけがない。
自分の顔には傷などない。
天井から落ちてきたわけでもない。
蚊といえども殺生はよくないと、その僧侶は悔いたそうです。

非常に冷たい布団があったそうです。
その布団の中は、ものすごく寒い。
しかも、いつまでたっても、まったく温まらないので体が冷えて気分が悪くなる。
湯たんぽを入れてもいっこうに温まらず、湯たんぽがすぐに冷える。
これは魔性のものだということで、寺に持っていって供養して燃やしてもらいました。
布団は、非常に芳しい香りを立て燃え、その香りは、数日どころか数週間も、そのあたりに漂っていたそうです。
燃やしてから1年以上もたった頃に、そのような出来事を知らない人が、その場所を通りがかったとき、なにか良い匂いがすると言ったそうです。

ツクツクボウシが鳴くと、熱がでる子供がいたそうです。
毎年、それを聞くと必ず熱をだす。
家人は、その子にツクツクボウシの鳴き声を聞かせまいとして、暑いのに雨戸を閉め切って耳栓をさせました。
そうすると、多少はましなのだが、やはり熱はでたそうです。
その後、この事態はどうなったのか?はノートにはありませんでした。

不思議なアイテムの話

465 :名無し百物語:2024/01/30(火) 16:18:56.98 ID:2ovaMs72.net
石じじいの話です。

不思議なアイテムについての話を抜き出してみました。

1. 片目しかない雛人形があったそうです。
それは、親王と三人官女のセットでしたが、すべての人形が片目だったのです。
欠けている目は左目だったり右目だったりとまちまちでした。
完全な人形の片目が欠け落ちているのではなく、もともと片目が描かれていなかったそうです。
ずいぶん古いもののようでしたが、その由来はまったく不明でした。
誰が作ったのか?流通したのか?なんの情報もない。
そのような縁起が悪そうな人形は他に見たこともない。
古い箱には箱書きもありませんでした。
人々が考えるには:
- 未完成のものだったのではないか?それが流出したのでは?
しかし、そのような不完全なものを手に入れて保管する人がいるだろうか?
- もともと、すべての目がなかったのだが、入手した人が目を描いたのではないか?
なぜ、すべての人形について片目だけを描いたのか?
それに、人形の目を見ると非常にきれいで、素人が描いたようには見えない。
他にもいろいろな推察がされたそうです。

2. ガラス窓がついている仏壇があったそうです。
その仏壇は古いもので黒檀でできていました。
ガラス窓は、はめ込みで開くことのできるようなものではありませんでした。
その仏壇がある家では、そのガラス窓は絶対に覗くな:と言われていたそうです。
覗くと「怖いもの」が見えるのだと。
それなら、紙などを貼って覗けなくしたらいいと思うのですが、そうはされなかったようです。
実は、そのようなものは見えないのだ:という噂もあったようです。

3. ススキ野原に京人形が落ちていました。
その人形は、壊されてうち捨てられたようで、頭部が割れて胴体の部分がナタのようなもので断ち切られていました。
その断面には、たくさんの歯車や銅線のようなものがギッシリと見られたそうです。
機械式の京人形など見たことがなりません。
しかも、手足や首には可動性はなかったのです。

地底王国の地図

466 :名無し百物語:2024/02/02(金) 22:10:06.47 ID:b6RfZQIR.net
石じじいの話です。

これは、ちょっと怪しい話です。

じじいは、「地底王国の地図」を見せてもらったことがあったそうです。
ち・て・い・お・う・こ・く?
その地図は、満州を旅した時に満州国軍の朝鮮人将校が見せてくれたのだとか。
夜、その将校は、自分の部屋に鍵をかけて、窓を全部閉めて、部屋の明かりを消して机のスタンドだけをつけて、金庫から革製の地図ケースを取り出しました。
ケースから、取り出したのは、9つのシートに別れた大きな地図でした。
その地図には等高線が描かれていて、町の位置や市街地の形、道路、土地利用区分などが描きこまれていたそうです。
かなり詳細な地図でした。地形や町の大きさの表現からすると100万分の1程度の縮尺のようだったと。
「地底王国」には、自然の川は流れておらず、また湖のような大きな陸水もなかったそうです。当然、海もありません。
じじいは、その王国について色々とたずねたところ、極秘事項も多いようでしたが(当たり前でしょう)、教えてもらえた情報もあったそうです。
・そこの住民は、青色人種である(?)
・王は世襲だが、その血統が絶えると地上から候補者を何人か連れてきて、ある方法で選ぶのだ(??)
・産業は、農業と鉱産資源の採掘と地上世界との交易である。また、科学技術も発展している(???):確かに地図には農耕地が広がり、整然とした道路や運河網が描かれていたそうです。
・太陽は存在しないが、国の天井(?)が輝くので、その光で生活ができるし農耕も可能だ(????)
・王国への出入り口は、世界に3ヶ所ある。1つは南極だ。これは常識的ですね。もう1つはアフリカ南部。ほうほう。そして3つめはシベリアだ(?????)

まだ、いくつか情報が、私のノートに書き残されているのですが、ここまで書き写してきてアホらしくなってきたのでやめます。

じじいは、その地図をどうやって入手したのかをたずねましたが、将校は薄ら笑いを浮かべて、「それを知ったら地底に行くことになるぞ。」と低い声で言ったそうです。
じじいは、戦後、日本に帰ってきて石探しをはじめた時に、その地図のことを思い出して、あの時に「地底に行く」ことができたのなら、行ったらよかったかもしれん:と思ったそうです。
まあ、「地底」といっても「王国」に連れて行ってもらったかどうかはわかりませんが。帰ってこれなかったでしょうしね。

なぜ、このような話を書いたかというと、じじい箱を漁っていたら、こんなことが印刷してある地図が出てきたからです。
地図の画像は、ちょっと怖くてあげることができません。

短編5篇

467 :名無し百物語:2024/02/07(水) 19:15:53.10 ID:6zLHD53Q.net
石じじいの話です。

短い話を。

1. ある地方では、風が吹いてくると、急に発熱しうわ言を発することがあったそうです。
「誰それが死んだのは、なになにの祟だ!」というようなうわ言です。
これは、狐憑きのようなものだと理解されていました。
以前、これに似たような話を書いたことがありますね。

2. 「天狗憑き」というのがあったそうです。
それは、士族(もともと武士の身分だった家)の人にだけ憑くのだと。
平民は犬神に苦しめられ、士族は天狗に悩まされるのだと言われていたそうです。
士族って・・・いつの時代でしょうか?
調べてみると、「天狗憑き」というのは各地にあるようです。

3. 大分県には、外道(ゲドウ)という存在があったそうです。犬神の一種だとか。
以前の話に、おなじ「ゲドウ」という名前のものが出てきました。同じものかどうかは不明です。
大分県はじじいの故郷の近くです。

4. 「テテ」と呼ばれる家系があったそうです。飛騨地方での話のようです。
その家系の人たちは、その人達の魂が獣から来たのであるとして排斥されたそうです。
犬神筋と同じような差別ですね。
そういえば、じじいが飛騨地方に石探しに行ったときに、山中で少年に会う話がありました。

5. ある寺での霊験です。
手や腕に痛みが起きたときには、観音様に奉納してある木綿製の手甲を借りてきて、それを痛いところにあてておきます。
すると治るのだそうです。
全快したら、その手甲を倍にして奉納します。
皆さんは、「手甲」の実物を見たことがありますか?使ったことがありますか?
私は、今でも庭いじりをする時に使います。
子供の頃には、母が子供用のものを縫ってくれました。
母や父が使っていたものを今でも使っています。

腐らない死体を作る技術

473 :名無し百物語:2024/03/01(金) 19:23:08.58 ID:W1+Z/MQQ.net
石じじいの話です。

腐らない死体を作る技術があったそうです。
これは日本の話です。
現在では、そのような技術もあると思うのですが、戦後すぐの話です。
その死体防腐処理は、ある農家で行われていたそうです。
つまり、私的な活動ですね。
農家の納屋のような建物が作業所でしたが、窓がまったくありませんでした。
水道と電気は来ていてプロパンガス(?)が建物の外部に備えられていたそうです。
死んですぐの死体を運び込んで処理していました。
この処理は頻繁に行われることはなかったそうです。
なぜなら、死体の防腐処理を頼む人は非常に少なかったのです。
それはそうでしょう。
そのような行為は、死体損壊の罪になるのではないか?
処理後に埋葬もされないのであれば、それも埋葬に関する法律にふれるでしょう。
それでも、処理をすることはあったそうですから、それに司直の手は伸びなかったのでしょうか?
この処理技術を持つ人物、女性だったそうですが、によると:
この処理のためには特殊な薬剤が必要であり、それは、ある研究室●でしか作れない。
 ●それは、国の機関なのか私設のものなのか?私のメモには書かれていませんでした。
しかし、その研究室は空襲で研究者とともに消失したので、もう生産できないのだ。
だから、この薬剤を使い切るとこの処理はできなくなる。
日本ではできなくなるが、その生産技術と施設が残っている国●があるので、そこでは可能だろう。
私の技術も、誰にも伝えられないで絶えてしまうだろう。
 ●どこの国でしょうね?

じじいは、その防腐処理施設の中を見たそうですが、それについては私には話してくれませんでした。
忘れてしまったのか?設備を見ても理解できなかったのか?内容を話すことがためらわれたのか?
もちろん、その所在地も教えてくれませんでした。
その女性が、どのような経緯で、どこでその技術を習得したのか:もメモにはありません。
と、ここまで書いてきて、メモをもう一度探ってみると、べつのところに:
「その女性は、戦前に移民として米国に居住しており、そこで習った」ということが書かれていました。
「もともとは、アフリカかインドで行われていた技術だ」とも。
やっぱり秘術と言えばアフリカやインドなのでしょうか?

「死んだもんを腐らんようにしても役にたたんやろうがのう。生きとる間に性根が腐っとるもんもおるけん、そがいなひとらを防腐処理したほうがええんやないかのう。」
じじい、うまいこと言ったつもりだったのでしょうか。

トーテムポール

476 :名無し百物語:2024/03/11(月) 18:17:04.55 ID:SepcE87S.net
石じじいの話です。

朝鮮で知り合ったロシア人から聞いたという話を紹介しましょう。

皆さんはトーテムポールを知っていますか?アメリカ先住民のものが有名ですね。
これを立てる風習は、シベリアに住む、さまざまな少数民族にも広く見られるのだそうです。
ある場所では、木で作られた柱状のトーテムが草原に列をなしてたてられていました。
木柱の一番上の部分には、人の顔がレリーフとして彫られています。
それは、男性の顔であり、女性の顔を彫るのはタブーでした。
女性の顔を彫ると、そこに魔物がやどると言われていたそうです。

ある集落で、夜に、歌声が流れてくることがありました。
その歌の意味は聞き取れないが、しっかりとした旋律はあるので歌だと思ったそうです。
夜に、その声のもとを探してみると、どうも、そのトーテムの顔が歌っているらしい。
歌は独唱だったので、たくさん並んでいるトーテムのどれかひとつが歌っているのだろうと思われました。
しかし、トーテムの近くまで行って確認する勇気のある者はいませんでした。
そのようなことをすると呪われるかもしれない。
シャーマンに尋ねると、「トーテムが歌うなどということはない、気のせいだ」と。
いや、呪術師に気のせいだと言われても・・・。
ある夜、その歌を聞いていた女性が、急に家を飛び出し、行方不明になりました。
トーテムの歌と行方不明事件との関連性は、はっきりしませんでしたが、人々は、トーテムのしわざだと考えました。
恐れた村人はトーテムを全部取り払ってしまいました。
取り払った夜、また、歌が聞こえてきたのです。
これはたいへんだ!というので、村人が勇気を出して歌の聞こえてくる場所をさぐったところ、先に行方不明になった女性が歌っていたそうです。

スポンサーリンク

小学生のAちゃん

479 :名無し百物語:2024/04/07(日) 22:05:00.56 ID:DDgqIugw.net
石じじいの話です。

この話には、似たようなものが多くあります。
そのため、じじいのオリジナルではないのかもしれません。

小学生のAちゃんが家族と夕食をとっていると、同じ集落の人がやってきて「Bちゃん」がいなくなった。家に戻ってこないと言います。
Bちゃんは、Aちゃんと同い年の同じ集落に住む女の子でした。
Aちゃんが言うには、その日、彼女はBちゃんと二人で遊び、夕方になったので別れて家に帰ったということでした。
つまり、Bちゃんは、Aちゃんと別れた後に行方不明になったと思われたのです。
その夜は、Bちゃんの家の近くを何人かで探しましたが、見つかりませんでした。
そのため、次の日に多くの人数で探がそうということになったのです。
翌日、Aちゃんのおとうさんは早朝から、村の人たちといっしょにBちゃんを探しにでかけました。
村人が集まって話をしても、Bちゃんを前日の夕方に見かけた人もいなかったし、誘拐するような不審者を目撃した人もいなかったのです。。
Bちゃんはすぐに見つかりました。集落近くの山の雑木林で縊り殺されていました。
これは、殺人だ!ということで、田舎の村は大騒ぎになりました。
警察は、Bちゃんの最後の目撃者であるAちゃんに話を聴くために学校に連絡をしましたが、Aちゃんは学校に来ていなかったのです。
母親に尋ねると、Aちゃんは、朝早くに登校したと。
Aちゃんは、おとうさんと一緒に起きて早い朝食をとって、学校に行こうとしました。
始業時間にはまだ早いから、もうすこしゆっくりしたら?と母親が言ったのですが、Aちゃんは、Bちゃんが心配だから、と言って家を出ていったそうです。
その日、Bちゃんは死体として発見され、Aちゃんは行方不明、という事態になりました。
今度は、Aちゃんの捜索が行われましたが見つからない。
彼女を見かけたという人もいない。
狭い村だし、それほど人通りがないというわけではないので、目撃者がいないのが不思議でした。
山狩りまでしたのですが、彼女の痕跡はまったく無かったのです。
結局、Bちゃんを殺害した犯人もつかまりませんでした。

Bちゃんを殺害した犯人が、Aちゃんを連れ去ったのか?
しかし、不審者や不審な車両の目撃情報はありません。
村の人たちもすべて聴取されましたが、不審な点はなくアリバイもありました。
そもそも、Bちゃんの死とAちゃんの行方不明とに関連性はあったのか?
まったくわからなかったそうです。
Aちゃんが・・・。

盲目の人は魔物を退治

480 :名無し百物語:2024/04/08(月) 19:33:47.66 ID:Zc7yYy5E.net
石じじいの話です。

朝鮮で知り合ったロシア人から聞いたという話です。

ロシアのウラル地方では、盲目の人は魔物を退治できる、という言い伝えがあったそうです。
目が見えないから、視覚で惑わされないからだと。
聴覚だけで魔物に対峙した時には、魔物には騙されることはないです。
しかし、目が見える人が目をつむっている状態では魔物に対処できないのだそうです。
つまり、盲人であることが、ハンターのための重要な資質なのです。
しかも、そのような魔物退治ができる人は、生まれつきの盲目、または幼い頃に視力を失った人の場合に、ほぼ限られたそうです。
しかし、そのような盲目のハンターをだし抜く魔物もいたそうです。
その魔物は、ハンターに直接触ることによって、ハンターを騙すということでした。

最後の文章の内容。どういうことなのか、よくわかりません。
書き込み者の注釈:「盲目」「盲人」という言葉の使用に差別の意図はありません。
当時の私の聞き取りメモには「めXX」という差別語が使われていましたが、これの使用は避けました。

※新作が追加され次第、随時更新します。

スポンサーリンク

-ホラー
-