師匠シリーズ

【ゴスハンシリーズ】魔除け

スポンサーリンク

新 鼻 袋 ~第四夜目~

652 :ゴーストハンター:04/07/18 13:30 ID:u1m/3Oru
「魔除け」

実家にいたころ私の部屋は、ひどい家鳴りがあった。
パシッ、ピシッというラップ音がほとんどだが、もっと強烈なものもあった。
中学のころ読んだ本にポルターガイスト現象というものが紹介されていて、「これだ」と思った。
今にして思うと、動物を飼っている家や小さな子供のいる家に多い、という注釈があったはずだが、
当時の私はおどろおどろしい挿絵の雰囲気に「幽霊の仕業に違いない」と思い込んでいた。
はじめのころはお経を唱えてみたり、十字架を自作してみたり、
テレビで流行っていたキョンシーのお札を部屋に貼り付けてみたりしていた。
私にとっては心外なことに、それらはまったく効果がなく、
それどころか、家具が揺れたりおもちゃの配置がかわったりと、だんだん酷くなり始めていた。
そんな時、私は部屋の押入れに仕舞いっ放しのナイフのことを思い出した。

653 :ゴーストハンター:04/07/18 13:31 ID:u1m/3Oru
かつて船医として南方の戦地まで従軍していた祖父が、現地でめずらしい骨董品などを渉猟するのを趣味としていて、
その一つである不思議な細工のされたナイフを「魔除けだよ」といって昔私にくれたのである。
刃は丸められていたが、柄には奇妙な模様と神様なのか精霊なのか、ともかく意匠化された顔が彫られていた。
祖父はくれるときに、「これは悪魔を殺すナイフなんだ」と私にいった。
私はそのことを思い出して、ガラスがカタカタ揺れる夜にそのナイフを引っ張り出してきた。
今までのお経だの十字架だのは半ば冗談だったが、こんどは私は興奮していた。
手に構えて、何もない空間を切るまねをした。
たかだか家でおこるポルターガイストなんて、このナイフの敵じゃない。
そう思っていた。

654 :ゴーストハンター:04/07/18 13:32 ID:u1m/3Oru
しかし騒々しさは収まらなかった。
むしろ強くなったようだった。
私は「抵抗しているな」と思い、らちが明かないのでナイフを手にしたままベッドで眠った。

そんなことが何度あっただろうか。
大学へ上がった私は、そのナイフのことを思い出だして、実家に帰省したついでに下宿先まで持ってきた。
最近友達になったUという男に見せたかったのだ。
彼はオカルティストを自称する変なやつで、私がポルターガイスト現象体験の話をすると俄然興味を示したのである。
しかし私が件のナイフを包みから出したとたんに、不愉快そうな表情をした。
そして一言こういったのである。
「お前。バカか」

655 :ゴーストハンター:04/07/18 13:33 ID:u1m/3Oru
釈明を求めた私にUは、鼻を鳴らしながら答えた。
「これは確かに悪魔祓いのナイフだよ。悪魔を殺せるってのもほんとうだ。実際悪魔を殺してるよ、これ」
なにを言っているのだろう。
「刃の淵に小さく文字が彫ってある。俺はスペイン語をちっと齧ったけど、たぶんこれはポルトガル語だ。
 このナイフ、骨董品として手に入れたんだろ。たぶん古いものだよ。17世紀か、18世紀くらいか。
 当時、東南アジアを支配していたのはオランダ人やポルトガル人だ。
 カトリックの布教の名の下に植民地化政策を進めていた彼らにとって、悪魔ってなんだ」
Uは真顔で私をにらんだ。
ようやく、私は私の思い違いに気がついた。
「これは強引な推理だよ。
 お前のお祖父さんがどういう経緯でこれを手に入れたのか、どういう意図でお前にこれをやったのか、わからないんだから。
 ただ俺は見ただけだ。とてつもない怨念を秘めた<騒々しいもの>がこの中に・・」

遠隔透視」に続く

スポンサーリンク

-師匠シリーズ