名作・神スレ

【名作SS】幼女「待ちくたびれたぞ勇者」

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 16:21:37.22 ID:qmfg9Uq7o

* * *

魔族「魔王様だ。今日うちで獲れた野菜もってきます?」

魔族「魔王様!おはようございます」

竜人「いい天気ですね。魔王様」

魔女「ねえねえ魔王様~ 今日人間の街に行ったときにね、ちょうおいしいお菓子買ってきたよ!一緒に食べよ」

魔王様!
 魔王様……
 
 
魔王(私の大切な、大切な宝物)

魔王(この島にあるもの、全部、消させはしない)

魔王(絶対……絶対に、守ってみせる)

魔王(私は魔王なんだから……)

150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 16:22:09.54 ID:qmfg9Uq7o

* * *

そして時が過ぎ、運命の日がやってきた。

時の女神「……」

時の女神「また、戦争がはじめるのですか。いや戦争と言うにはあまりにも……」

時の女神「……」

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 16:22:41.61 ID:qmfg9Uq7o

星の都

王子「……今日か。太陽の国の軍隊が魔族を制圧するというのは。
   さてどうなることやら……」

雪の国

女王「私の国の軍隊も貸せなどと厚かましくも文をよこしおって。だからあの国の王は嫌いなのじゃ。
   ふん、あいつの国も魔族も関係ない。せいぜい高みの見物でもさせてもらおうかの」
   
女王「結果が楽しみじゃ。あ奴の自慢の軍が負けるとも思えんがの……噂の魔王とやらはどうでるのか」

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 16:23:22.56 ID:qmfg9Uq7o

子エルフ「わーい魔王城だ魔王城だー!」

子ヴァンパイア「冒険しようぜ!」

エルフ「こら!だめ、今日は母さんと父さんの近くにいなさい!!」

魚人「人間が舟で攻めてくるって? この間みたいに魔王様と竜人様がズガーンとやっつけてくれんだろ?」

キマイラ「そうなればいいのですがね」

魚人「なーに 心配いらねえって。酒でも飲むかい!?」

キマイラ「あっ、海を見てください!あれが人間の乗った船ではないですか?」

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 16:25:03.62 ID:qmfg9Uq7o

魔王「……ついに、来たな」

魔女「ふはは、よく来たな愚かな人間たちよ!返り討ちにしてくれるわ!!」

竜人「なんですかソレ」

魔女「魔王様の代わりに魔王っぽいセリフを吐いてみた」

魔王「いらん。しかし……その心持でいった方がいいかもしれない。
   随分大きな船だ。それもあんなにたくさん、か。一か月前とは比べ物にならないな」
   
竜人「手加減なんてしてる余裕ありませんね」

魔王「とりあえず砲撃が一番厄介だ。射程距離に入られる前に追い返すことが目標だぞ」

竜人「ええ。そろそろ行きますか、魔女」バサッ

魔女「箒に乗って飛ぶのイヤなんだよねー だって下から見たらパンツ丸見えじゃん?」

竜人「馬鹿言ってないで、行きますよ」

魔女「はいはい」

魔王「二人とも、…………」

竜人「死にませんから大丈夫ですよ。必ずあなたの元に帰ってきます。では」バササッ

魔女「頑張ってくるね、魔王様!」ビュン

魔王「……頼りにしてる」

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 16:27:00.89 ID:qmfg9Uq7o

将軍「見えてきたぞ、魔王城だ。魔王軍は見えているか?」

兵士「ぐ……軍?なのか分かりませんが、幼子と細身の人物が二人……」

将軍「ふむ?軍を用意していないとは、まだこちらの来襲に気づいていないのか、はたまた慢心しておるのか……
   砲撃の射程範囲に島が入り次第、一斉に撃つぞ!!」
   
兵士「ハッ!」

兵士「……!将軍!!ドラゴンとあともう一人こちらに向かってきます!!」

兵士「マストに火がー!!」

兵士「くっ、なんて力だ!!」

魔女「こっちだって負けないよ!睡眠魔法!混乱魔法!麻痺!失神!魅了!!」

兵士「うわあああああっ 状態異常のオンパレードだぁぁぁぁ!!早く逃げろおおおお!!」

魔女「はい毒薬プレゼント!毎秒体力30%削る魔女ちゃんお手製ですよ!」ポイ

兵士「逃げろーーー!!もしくは撃ち落とせーーー!!!」

ワーワー
 バキャッ ニゲロー

155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 16:27:44.48 ID:qmfg9Uq7o

将軍「ひるむな!!ええい、弓兵!射撃兵!撃ち落としてしまえ!!!」

兵士「ハッ!!」チャキ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ズォオオオオオオオオッ

魔王「……クラーケンは生憎会ったことがないが。
   その姿、お借りしよう。最大水魔法」
   
   
クラーケン「ォォォォォォオォオォッッ」

兵士「ぐ、軍艦と同じくらいの大きさの……イカ!?!?」

魔術師「いえ、これは魔法で作られたまがい物です!」

ッバッシャァァァアン!バキボキボキッ!!

将軍「くそぉ!このままでは軍艦が破壊されるのも時間の問題か!!しかし、もうすぐで射程距離に……!」

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 16:28:15.82 ID:qmfg9Uq7o

将軍「勇者殿!!しばらく時間を稼いでくれませぬか!?」

勇者「やってるよ!」

戦士「fjりえsfじょrs」

神官「きゃーー!戦士さん!!混乱状態になってるー!!」

勇者「あーこのイカ斬っても斬っても意味ない(棒)」

勇者「しまった、イカ斬ろうとしたら大砲ぶった切っちまったぜ(棒)」ズバッ

戦士「jrふぃおえsじおdsr」バキボキ

将軍「ちょっ なにしてんだあんたら!!!」

157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:21:09.24 ID:qmfg9Uq7o

竜(く、なんて頑丈な船だ。全部燃やしつくしてやろうと思いましたが、難しいみたいだ)

魔女「チッ うざったい魔術師だなぁ!私がかけた状態異常魔法、かたっぱしから解かないでよっ!!」

竜(数が多すぎる!私たちが戦闘不能にしていってる人数は確実に増えているはずなのに…これでは)

魔王「3艦やったな。あと残り何艦だ…?数える暇も惜しい。早くしないと」

兵士「将軍!射程範囲に入りました!」

将軍「よし、やっとか。砲撃用意!!!」

将軍「今だ!撃てーーッ!」

158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:21:39.04 ID:qmfg9Uq7o

ドガァンッ!ドガン!

ひゅぅぅぅぅぅ…

魔王「!!」

魔王(持ちこたえてくれっ……!)

バチンッ!!!バチバチッ!!バキッ!!

魔王(……耐えたか…? いや、一か所ヒビが入っている。同じところに2回砲撃を食らうと流石に耐えきれないか)

魔王(今なら修復が手早く済ませられる!一回水魔法は解かねばならないのが痛いが。竜人、魔女、ひとまずまかせるぞ)

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159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:22:14.76 ID:qmfg9Uq7o

将軍「なんだ、結界かなにかが張ってあるのか!?弾かれたな」

魔術師「結界でしょうね。ですが一か所綻びができたようで……。さて、こちらも準備が整いました」

勇者(イカがいきなり消えた?まさか、結界が破られたのか!?)

神官「ゆ、勇者様!」

勇者「!?」

竜「くそっ 魔王様!!」

魔女「竜人!あそこの船の魔術師たち、なんか大がかりな魔法発動させようとしてる!!」

竜「!! させるか!!!」

魔術師「……」ニヤ

160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:24:32.28 ID:qmfg9Uq7o

魔術師「彼の者たちを捕えよ!捕縛魔法!」

バチバチバチッ

竜「!? か、体が……」

魔女「ぎゃーっ! なにすんのよー!!」

将軍「捕えたな。全く手こずらせてくれたものだ……!!
   よし、再装填……といきたいところだが、先ほどのイカの化け物のせいで予備の砲弾が使い物になるかどうか」
   
兵士「少し時間がかかるかもしれません!」

召喚師「それならば我ら召喚術使いにおまかせを。時間稼ぎくらいならできますよ」

将軍「頼んだ。よし、大砲班以外の兵士たちは上陸の準備を済ませておけ!!」

将軍「これは……王から仰せつかったことだが。適当に何匹かの魔族は殺さず捕えておけとのことだ」

兵士「何故ですか?」

将軍「見世物にでもするのだろう。もしくは学者たちに譲渡されるか……私には理解できぬ趣向だがな。
   しかし王の命令ならば従うほかない」
   

161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:25:02.55 ID:qmfg9Uq7o

召喚師1「召喚魔法!いでよ大鳥!」

召喚師2「さ、行きますか!」

召喚師3「結界の綻びを狙うぞ!!」

勇者「あっ おい!!」

兵士「将軍!捕えたドラゴンと魔女はどうなさいますか?」

将軍「捕縛魔法にも限界があるからな、今のうちに撃ち殺せ」

兵士「ハッ」

竜「うぐッ……!この……!!」

魔女「ちょっと、竜人……なんとかしてよ……!!」

兵士「構えろ。一斉に撃つぞ」

兵士「はい」チャキ

勇者「……!!」

162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:25:35.66 ID:qmfg9Uq7o

魔王「!! 竜人!魔女! くっ……!
   焦っちゃだめだ、結界を早く修復しないと……ええと」
   
魔王「…? なんだ あれは? ……人か!?」

召喚師1「見つけた、ここが結界の綻びだ!」

召喚師2「俺がやる」

魔王「な……っ やめろ!」

ガキィィン!!!
―――パリンッ……

魔王「……!!」

召喚師2「成功だ!結界が破れたぞ」

召喚師3「こうなりゃこっちのもんだな。将軍に知らせよう。上陸できますとな」

召喚師1「ん? ウオォ!!?」ヒュッ

ゴォッ

魔王「お前ら!よくも!」

召喚師3「げっ!?なんだこの火炎魔法!! もしかして、これが魔王!?」

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:28:53.53 ID:qmfg9Uq7o

召喚師1「こんな子どもが? なんにせよここからすぐに去るぞ!戻れ!」

召喚師2「ああ。……ほらよ、置き土産だ!!出でよ幻獣!奴を噛み殺してやれ!」

幻獣5匹「グルルルル…」

魔王「小賢しい真似を。しかし上陸される前に結界を一から張りなおさなければ……」

魔王(魔力の残りも結界を張るので精いっぱいだ。こいつら相手に使っていられる余裕もない。
   剣は得意じゃないんだが、早くこいつらを片付けて結界張って竜人と魔女を助けないと)
   
幻獣「ガァッ!!」

魔王「っうぐ…!」ガキン

魔王「……こ、こんなことならもっと剣の訓練をしとくんだったな」

魔王「ちょっと厳しいかもしれないな、これは……」ハァハァ

164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:29:54.86 ID:qmfg9Uq7o

竜「魔王様!」

魔女「魔王様ぁー!」

兵士「…よし、撃」

勇者(くそ!!! なんとか……なんとかする方法はないのか!?)

勇者(………ハッ!!)

勇者「ウワァー!!急に体が勝手にウゴクー!!
   魔王に操られてしまったみたいだ最大雷魔法(レベル99)!!!!」
   
   
カッッ!   
バリバリバリバリバリバリッッ!!!!

兵士「ガッ」

将軍「グッ!?」

魔術師「ギッッ」

165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:30:23.96 ID:qmfg9Uq7o

神官「ええええええ!?」

戦士「神官、伏せろ!」

パチパチ……バリッ……

将軍「」
全兵士「」
魔術師「」

勇者「やっちまった……大丈夫か、竜人!?魔女!?」

竜人「え、ええ。少し体がしびれますが」

魔女「勇者って……ちゃんと勇者だったんだね」

勇者「どういう意味だよ。って違う!それより魔王が!!」

166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:30:59.89 ID:qmfg9Uq7o

  
カッッ!   
バリバリバリバリバリバリッッ!!!!

魔王「!? うわっ… なんだあの魔法は?」

幻獣「ガゥ!」バッ

魔王「! ……いっ……」

幻獣「ガァァァァ!!」

魔王「ッ!(間に合わない…!)」

ガキン!!

魔王「え?」

魚人「無事ですかい魔王様! おらっ獣は消毒だぁー!」ブンッ

幻獣「キャウンッ」

キマイラ「魔王様下がっててくださいね」

グリフォン「やれやれ、もう戦えるような年じゃないんだけど」

キマイラ「なに言ってんですかまだまだ若いでしょう」

167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:35:05.97 ID:qmfg9Uq7o

魔王「なんで……危険だ!城に避難していてくれって伝えただろう!」

魚人「そりゃあ俺たち魔法も何も使えませんがねっ こちとら毎日酔いつぶれた客相手にしてんだ!
   それに比べりゃこんな獣、相手になりませんよ!」
   
ボカッ!ザシュッ!

キマイラ「そういうことですね」ガブッ

幻獣「ギャッ!」シュゥゥゥ…

グリフォン「生命をもたぬ獣か。人間もなかなかおもしろい術を考える」

魚人「おいっ くっちゃべってねぇであんたも戦ってくださいよ」

キマイラ「魔王様は早く結界を!」

魔王「っあ、ああ!」

168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:35:56.94 ID:qmfg9Uq7o

ヒュンッ

勇者「魔王!無事か!?」

魔王「えっ!?勇者くん?」

竜人「お怪我されてるじゃないですか!なにしてくれとんじゃこのクソ幻獣がッ!!」バキッ

魔女「結界が破られてるね」

勇者「あれ?さっきこっちに来た召喚師どもは?」

魔王「船に戻ったが……勇者くんこっちに来て大丈夫なのか?」

魔女「船の人間全部、勇者が気絶させたよ」

魔王「え」

竜人「どうやらその召喚師とやらで最後みたいですね。3人くらいならば私一人で十分です、食いちぎってきます」

魔女「いや殺しちゃだめでしょ?」

竜人「フ○ック!魔王様に怪我させた奴ら生かしといていいんですか!?嫁入り前の娘になんてこと!」

魔王「……竜人、私はいいからとりあえずその召喚師を気絶させてきてくれ。気絶な、き・ぜ・つ」

竜人「承知しました!!ぶっ殺す!!」バサッ

勇者「話聞いてたかお前!?」

魔女「ハァ、あたしもついてくよ……」

169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:36:28.37 ID:qmfg9Uq7o

魔王「……」

魔王「……ん」パチ

魔王「……いつから寝てたのだろう」

竜人「あ、お目覚めですか。よかった」

魔王「今日は何日だ?」

竜人「人間が軍艦でやってきてから1週間です。
   魔王様は結界を張りなおしたことによって魔力を使い果たして、あのあと倒れてしまったんですよ」
   
竜人「獣にうけた傷も塞がってますね。痕が残らないで本当によかった」

魔王「そうだ……勇者くんは?人間たちを気絶させるために魔法を使ったのだろう。
   無事なのか?今どこに?」
   
竜人「そこらへんはうまくごまかしたみたいですよ。今彼は王国にいます。
   一度、魔王様が眠っている間彼らが話をしにやってきました」
   
魔王「……どんな?」

170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:37:15.68 ID:qmfg9Uq7o

バタン

魔女「半年後。さらに兵士も魔術師も増やして、これで最後の最後、本気で仕留めるって覚悟で
   もう一度魔族討伐作戦を決行するってさ」
   
竜人「魔女、」

魔女「やっぱ今回の軍艦破損が痛かったのかな。大分時間が空いたよね。助かるよ」

竜人「どうでした?見つかりましたか?」

魔女「全然。そんな簡単に見つかるわけないしね」

魔王「……なんの話だ?」

魔女「魔王様」

魔女「この島から逃げましょう」

魔王「え…?」

171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:38:28.39 ID:qmfg9Uq7o

竜人「いま魔女と私で、まだ人に見つかっていないような土地を探しています。魔族が全員住める、この島のような、土地を」

魔女「もうここはだめだよ。2度目の襲撃で陥落しそうになったのに、3度目で耐えられるわけない。
   私たちがいくら頑張っても、所詮3人じゃ無理があるよ。しょうがないよ」
   
竜人「幸い時間は半年間も残されています。その間に私たちで新たな魔族の地を探しだしてみせます。
   魔王様は何も心配されなくて大丈夫ですよ。ご療養に専念してください」
   
魔王「待ってくれ。逃げるって……新たな魔族の地なんて、まだこの世界にあるのか?
   この島だってようやく見付けだしたものなのに…」
   
魔女「大丈夫ですよ。なんとかなる!また、逃げましょう。昔みたいに。逃げて逃げて逃げまくろう。この世の果てまで」

竜人「せっかく10年かけて作り上げたこの街や畑を手放すのは惜しいですが。また作ればいいんです。ね」

魔王「…………うん…そう、だな。仕方のない……ことだ」

魔王「……頼む」

勇者「待ってくれ!!」バタン

172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:39:11.03 ID:qmfg9Uq7o

勇者「勝手に上がらせてもらってるぞ」

神官「こんにちは皆さん。魔王さん目が覚めたんですね」

戦士「久方ぶりだな」

竜人「勇者様たち。どうされたんですか?」

勇者「話があってきたんだ。俺は……」

勇者「俺は、6か月以内にクーデターを起こすことにした!国王を王の座から引き下ろす!!」

魔王「え?」

魔女「?」

竜人「えええ!?」

173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:40:53.21 ID:qmfg9Uq7o

勇者「といっても暴力的な手段に訴えるわけじゃない。無血クーデターだ。俺の国の法律には特例があってだな……」

魔王「ちょ、ちょっと待ってほしい。勇者くん。なにを言ってるんだ?」

勇者「なにって?クーデターを起こすんだよ。魔族を救うにはそれしかない。何度説得してみようと思っても無駄だった。
   魔族に強い嫌悪感をもってるあの王が国王のままじゃ、いつか魔族は滅ぼされるぞ。もしまた半年後に軍隊を撃退できてもな」
   
魔王「クーデターって、そんなことを勇者たる君が率先して行っていいのか?大体ばれたらどうする」

勇者「ばれたらまずい。そりゃあな。しかしばれなければまずくない」

戦士「当然だな」

魔王「…危険だ」

勇者「大丈夫だ。俺は正しいことを行いたいだけだ。道を踏み外したくはない。俺が見た限りでは、
   国王のやろうとしていることは悪で、お前らの主張が正しいように思えるんだよ。善悪なんて二元論じゃ語れないかもしれないが」

勇者「とにかく、まあ聞け」

174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:58:00.13 ID:qmfg9Uq7o

~~~~

勇者「半年後に……また、ですか」

王「これで最後だ。そのつもりで惜しみなく軍力を注ぐ」

勇者「…………」グッ

王「雪の女王はまた素気無く断るだろうが、星の王子は捕えた魔族を被験体として差し出すと申せば、
  もしかしたら軍をよこしてくれるかもしれんな」
  
王「今度こそ必ず魔族をこの地から根絶やしにする。分かっておるな、勇者」

勇者「……何故ですか?」

王「何故と申すか?おかしなことを聞く。この世界は我ら人の支配する地だ。危険因子となる野蛮な種族は……
  浄化してやらねばならん。神の仰せのままに」
  
勇者「……………………」

175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 19:59:51.37 ID:qmfg9Uq7o

バタン!

姫「お父様!今のお話は本当なんですか!?」

勇者「!」

王「やれやれ。盗み聞きとは感心しないぞ、娘よ」

姫「それより、今のお話。また半年後に軍隊を出動させるですって?軍費は無限じゃないんですよ。
  そんな害をなすか分からない魔族に資金を費やすより、もっとやることがあると思います」
  
姫「福祉施設や学問施設の設立。今ある数多の孤児院や病院だって、お金を必要としているところはたくさんあります。
  難民の問題だって残っているじゃありませんか」
  
王「娘よ。王たる者は長い目で物事を見通さなければならん。ここで魔族を取り逃がしたら将来苦労するのはお前たちの代だぞ」

姫「ですが……」

王「もうよい、さがれ。勇者も下がってよいぞ」

176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:02:26.09 ID:qmfg9Uq7o

姫「なによ!お父様の分からず屋。勇者もそう思うでしょ?」

勇者「あー……ははは。相変わらずですね姫様」

姫「お父様は私の話なんてちっとも聞いてくれないの。どうせ娘は王位継承者じゃないからって、軽んじてるんだわ!んもう」

勇者「そんなことありませんよ……多分」

姫「気をつかわなくて結構ですわ。私、お父様が時々風車を巨人だと思って突進するドン・キホーテに思えます」

勇者「なまじ力があるだけに厄介だよな。……あっ!も、申し訳ありません!」

姫「ふふふ、そのように気さくに喋って頂いて結構ですのに。何度も申し上げていますけれど。
  ではまた会いましょう、勇者」
  
勇者「ええ。また」

勇者「……ドン・キホーテね……原作なら突進して大けがするけれど、王が騎士なら風車は全壊だ」

勇者「……なんのために、この剣を振るうべきなのか。俺はもう分かっているはずだ」

177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:04:39.95 ID:qmfg9Uq7o

宿

神官「半年後って、どうしましょう、勇者様」

戦士「これはかなりまずい事態だな……なんとかならんのか」

勇者「……国王を裏切ろう」

神官「はい、そうですよね……って、はいいぃぃ!?」

戦士「ブゴッ!」ビチャ

勇者「国王を!裏切る!!俺は決めた!!」

神官「ちょっと!!声が大きいですって!!処刑されかねない発言はせめてもうちょっと小さな声でお願いしますよ!」

勇者「俺はもう王のもとで剣を振るうことができない。神の仰せのままにとか言ってるけど
   要するに戦争になったらまずいから今のうちに反乱因子を排除しようってのと、元魔族の住んでいた大陸北部の土地がほしいだけだろ!」
   
勇者「完全に小心者が私利私欲に目がくらんだ結果じゃないか。魔王たちは戦争なんて起こすつもりなんかない。
   なのにこのままだとあいつら本当に絶滅させられちまう。クーデターしかねえよ」
   
戦士「しかし……クーデターとは。具体的にどのように起こすか考えているのか?」

勇者「う…それはまだ。できれば穏便に済ませたいんだが」

神官「それならあるかもしれません」

勇者「ほんとか!?」

178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:08:50.06 ID:qmfg9Uq7o

神官「た、ただですね。かなり成功率は低いと思いますよ……事実歴史上いまだ誰も達成できていない方法です」

勇者「それでもいい。どんな方法なんだ?」

神官「この国は、国王が治める君主制の国です。太陽の国だけじゃなく、雪の国も星の国も。それは知ってますよね?」

戦士「うむ」

神官「でも絶対君主制ではないんです。制限君主制なんですよ、大陸にある3国とも」

勇者「おい、話が難しいぞ。よく分からない」

神官「ええとだから、国王が好き放題できるかと思ったらそうではないんです。一つだけ、国王の定める法より上位の法が存在しているんですよ」

神官「それが神法です。一条だけ神によって定められたという、神法」

神官「その一条とは、『一人の国王が王らしからぬと判断された場合、他の二国の王がそれを認めれば、その王を王座から追放することができる』
   というものです」
   
戦士「……??」

勇者「……??」

神官「えーと!ええっと!」

179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:14:10.45 ID:qmfg9Uq7o

神官「神法が制定されたのは、大昔に三国のうちどこか一国で悪質な独裁者が生まれてしまったことが発端だったんですよ。
   その国の国民だけじゃなくて、大規模な人間同士の戦争も起こっちゃってかなり被害が大きかったそうです。その年は一気に人口が減って……」
   
神官「で、そういうことがまた起きたらまずいってことで、国王以外の者が条件を満たせば国王を追放できるっていうこの法が生まれたんですよ」

勇者「へえ。つまり、俺たちも雪の女王と星の王子から認定をもらえば、無血で革命が起こせるってわけか!!」

戦士「なるほどな、幸い俺らはその二人とも面識がある。便利な法があったものだ」

神官「あ……でもですね!これには続きがあって。革命によって国王がいなくなったら、そのあとだれでも王になっていいってわけじゃないんです
   その国が法律で定める王位継承者。正式な継承者と、二国の認定書があって初めて行えるものなんですよ」
   
勇者「この国の王位継承者って王子だよな。姫様の兄の」

戦士「いま他国に留学中だと聞いたが」

勇者「つうか俺会ったことないな。いつから留学中なんだ?」

戦士「さあ。俺も見たことがない」

神官「私もです。これは噂なんですけど、留学とは言えど行方が分からないそうですよ……」

勇者「は!?」

180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:15:53.64 ID:qmfg9Uq7o

勇者「一国の王子がそれで大丈夫なのか!?オイオイ」

神官「たまに王宮に手紙が届くそうなので、生きてはいらっしゃるんでしょうけど……」

戦士「その王子を連れ戻さなければ、無血クーデターも始まらんというわけか」

勇者「まあ、どうせ世間知らずのボンボンなんだろ?行方不明とは言っても多分大都市を見て回ればすぐ見つかるんじゃないか」

神官「だといいですけど。ああ、それにかなりの美男みたいですよ。結構目立つと思います」

勇者「羨ましい限りだ。よし、とりあえずクーデターの方向性は決まったな。あとは動くのみだ!
   ……勝手に話進めたけど、お前らは別に危険を冒す必要はないぞ。俺が勝手に決めたことだしな」
   
戦士「といっても、計画のほとんどを今話してしまったではないか。これで俺が今すぐ王にこの件を伝えたらどうするつもりだ?」

勇者「うっ……」

戦士「ハハ、冗談だ。水臭いことを言うな。協力するに決まっているだろう」

神官「わ、私も……やってやりますよ!勇者様、協力します!共に魔王さんたちを救うために頑張りましょう!」

勇者「ありがとう、神官、戦士。そう言ってもらえると心強いぜ」

勇者「よし……!打倒国王だ!!」

神官「おーー!」

~~~~

181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:18:46.04 ID:qmfg9Uq7o

勇者「というわけだ」

魔王「勇者くんは馬鹿だったのかな?」

勇者「ええー!!?なんだこの言われよう。お前らのためにと思ってだな!」

魔王「危険すぎるだろう。そんなのマーメイドの目前で魚料理食べるレベルの危険度だ」

神官「例えがよくわかりませんけど魔族ジョークかなにかですか?」

魔王「その神法が勇者くんや戦士殿が知らないくらい公にされていなかった理由はなんだ。それが歴代国王にとって都合の悪いものだからだ。
   あの王がこの神法を利用しようとする者を畏れないはずがない。その危険性がわずかでもあれば躍起になって探すはずだ」
   
魔王「死ぬぞ」

勇者「死なないよ。これしか方法はないだろ?だったらやるしかないじゃないか」

勇者「行方不明の王子を見つけ出す!雪と星の国から認定書をもらってくる!そしてお前らを救ってみせる」

魔王「……なんで、そこまで。勇者くんは人間なのに…」

勇者「あーもう、人間とか魔族とかもうこの際関係ねえだろ!俺は守りたいもんを守るために力を使いたいんだ、ただそれだけだ!」

魔王「……。………馬鹿か」

182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:19:39.29 ID:qmfg9Uq7o

竜人「皆さん……ありがとうございます。そこまで力になって頂けるなんて」

魔女「ほんと助かるなー!私たちも勿論クーデターに参加するよ!ていうかクーデターってなに?」

竜人「あなたはちょっと黙ってて下さい」

勇者「で、だな。まず王子の居所を突き止めるのと、2国への遠征をするのも勿論なんだが、
   俺たちの支持者を集めることも大事だと思うんだ」
  
戦士「いきなり王位が変わっても理由が分からなければ国民にとってはなんの意味もないからな。
   俺たちの行動意義を世間に広めなくては」
   
神官「どうせ水面下で活動するなら、輪を広げてやった方がいいですからね」

魔王「なるほど。でもどうやって?」

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183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:21:13.06 ID:qmfg9Uq7o

勇者「まず姫様みたいに度重なる侵攻を軍費の無駄遣いと考えてる人。
   それからきっとこれから税も重くなるだろうし、それを不満に感じる人もでてくるだろう」
   
勇者「まあそこらへんの王への不満を逆手にとって、こっちの仲間にしようかと思う。
   王都だと魔族にほとんど無関心……つまりいい感情も悪い感情ももってない人がいるしな。姫様みたく」
   
神官「できれば影響力と経済力のある人を早々に味方にいれたいですけど、難しいですかね」

戦士「やってみなければわからんぞ」

勇者「まず俺と神官と戦士で支持者集めをするから、魔女と竜人は王子を探してほしい
   その王子っていうのがどこにいるのか分からないんだが……とにかく美男らしいぞ。今のところ手がかりはそれだけだ」
   
魔女「美男!?イケメン!?よっしガンバろーね竜人!」

竜人「えええ手がかりそれだけですか!?さすがに難しいですよ!?」

勇者「一応王子だから身なりは小奇麗だと思うし、オーラもあるんじゃないか?」

竜人「だから曖昧すぎますって。そんな人物世界で何人いると思ってるんですか」

魔女「要するにキング・オブ・ザ・イケメンを探せばいいんでしょ?大丈夫、あたしにまかせてよ」

竜人「こら安請け合いしない!後で後悔しますよ!」

184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:22:40.16 ID:qmfg9Uq7o

魔王「地盤から固めていくのだな。よし勇者くん!私も精いっぱい頑張るぞ。なにをすればいい?」

勇者「あー……」

魔王「なんでもやるぞ。遠慮せずに言ってほしい」

勇者「えっとな。遠慮とかじゃなくてな。お前は何もしなくていい」

魔王「なっ 何故だ。私だけ何もせずにいるなど、魔王の名が廃る」

勇者「お前この城から出れないしな……ぶっちゃけ今の段階じゃあ役立たず!」ビシ

魔王「や…役立たず」ガーン

勇者「つーわけでしばらく俺たちに任せろよ。魔王はこの島の自治とかいろいろあるだろ?あと城の草むしりとかさ」

魔王「勇者くんたちがクーデターのために尽力している間に、魔王の私が草むしりだと?
   やだ」

勇者「やだってお前」

185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:24:01.04 ID:qmfg9Uq7o

魔王「私も何かしたいんだ」

竜人「魔王様はゆっくり休んでてくださいよ」

魔王「やだ。やだやだやだ。何かできることはないのか」

勇者「残念ながらねえな。とりあえず当分俺らにまかせろって。駄々こねんな」

魔王「……」

勇者「睨んでも無駄だ」

魔王「…………っ竜人、魔女。何か…」

魔女「じゃああたしの部屋片付けといてー」

竜人「自分で片付けなさい!!全くちょっと目を離すとすぐに自室散らかして!散らかしの天才ですかあなたは!!」

魔女「ぶー」

魔王「違う、そういう日常的なものじゃなくて、もっと重大な役割を……」

戦士「……」ポン

神官「……」ポン

勇者「諦めろ、魔王」ポン

魔王「やだ!」

186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/09(金) 20:27:11.58 ID:qmfg9Uq7o

今日はここで区切ります
ファンタジーっぽくない展開だけどファンタジーと言い張る

>>184 草むしり現場

193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:11:21.02 ID:cbnp4tI4o

* * *

王都

神官「いよいよ今日から活動開始ですね。で、誰から声をかけますか?勇者様」

勇者「いろいろ考えたんだけど、姫様がいいんじゃないか」

戦士「い、いきなりか」

神官「勇者様……ちゃんと考えてますか?裏切ろうとしてる王に最も近い人物じゃないですかっ
   いいですか、私たちの支持者集めは、声をかけたら99%承諾してくれる人を選ばなくちゃならないんですよ!」
   
神官「だってクーデターのことを話すってことは、当然私たちがクーデター策謀者だってこと正直に明かすってことなんですよ」

勇者「分かってるさ。でも姫様なら、絶対いい返事をくれそうな気がするんだよ。彼女は国民のことを真摯に考えてる」

戦士「リスクが高すぎる気がするが……まあ、旅の中でお前のそういう直感が外れたことはなかったな。俺はお前に着いていこう」

勇者「悪いな、いつも無茶つき合わせて」

神官「ええー…本当にいきなり姫様にいくんですか!?私だって姫様を疑うわけじゃないですけどぉ…もうちょっと考えた方が……」

勇者「問題ない!俺にまかせろ!!」

神官「えええええー…」

194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:12:37.04 ID:cbnp4tI4o

宮殿

門番「これは、勇者様。いかがいたしましたか。陛下には今謁見できないのですが…」

勇者「いや、陛下じゃなくて、姫様は……」

姫「? 勇者、私になにか用なの?」

勇者「姫様!ちょうどよかった。少しばかりお話が」

姫の部屋

神官(うわーうわー!姫様のお部屋、すごい豪華……)

戦士(こらキョロキョロするな)

姫「珍しいですわね、私個人にお話なんて。一体どうしたの?」

勇者「ええと、昨日、王との謁見の後にしたお話を覚えてらっしゃいますか」

姫「? ええ。それが何か?」

勇者「……えっと、なんて言ったらいいのか…。俺たちクーデター起こそうと思ってるんですけど」

姫「!?!?」

神官「」ズコー

戦士「」ズコー

姫「くっクーデターですって…?」ガタガタ

神官「勇者様ぁーーーー!!いくらなんでも言葉選ばなすぎです!!!」

勇者「ぐえぇッ 苦しい…!」

195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:13:45.90 ID:cbnp4tI4o

神官「違うんです姫様!あの衛兵呼ぼうとしないで下さいごめんなさい!ちょっとうちの勇者様アホの子で!!」

戦士「まことにすまん!とりあえず話を聞いてくれ!!勇者が馬鹿で本当に申し訳ない!」

勇者「誰が馬鹿だオイっ 申し訳ありませんでした姫様!ちょっとだけ話聞いてください!!」

姫「……で、どこが誤解ですの……勇者、まさか本気でクーデターを起こそうとしてませんよね?聞き間違いですよね?」

勇者「姫様は国王様が魔族相手に軍を派遣することに否定的でしたよね?」

姫「ええ。もっと使い道はたくさんありますもの……」

勇者「俺たちも姫様と同じように考えてるんです。軍隊なんて派遣するべきじゃない。
   なんとか国王様にそのことを訴えたんですけど、どうにも……」
   
神官「姫様は神法のこと、ご存じですか?」

姫「神の法……勿論ですわ。まさか、あなたたちはそれを実行に移そうとしていらっしゃいますの?」

勇者「……はい。半年後の一方的な戦争を起こすのを阻止するためには、国王に王座から退いて頂くほかないと判断しました。
   姫様。どうかあなたの力を貸していただきたいのです」
   
姫「……」

196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:15:27.66 ID:cbnp4tI4o

戦士・神官「……」ゴクリ

勇者「お願いします。俺たちに力を貸してください。よりよい国の未来のために」

姫「……二つ、質問させて下さい。神の法をもし仮に本当に執行させたとして。……その後お父様をどうなさるおつもりなの?」

勇者「俺たちはあくまで戦争を止めたいだけです。処刑をするつもりはありません。国の最高権力を譲り渡して頂くだけです」

姫「そう……。では二つ目の質問です。先ほど『半年後の一方的な戦争』と言いましたが、どういうこと?
  魔族側の戦力を知っていないと出ない言葉だわ。あなたは魔族にも魔王にも接触してないと報告では聞きましたが?」
  
勇者「正直に申し上げますと、それ嘘です。俺たちは魔王にも魔族にも会いました。
   魔王は人間に敵意なんて持ってません。復讐なんて起こそうとしてません!」
   
姫「……確か、お父様にそのような旨の手紙が届いたそうですわね」

勇者「全て真実です。ですが国王様の意志は変えられなかった。このままでは確実に魔族は滅びます。
   俺はそれをなんとかしたい。救いたいんです。人間と魔族の共存だって絶対できるって思ってます」
   
姫「…………全く。この宮殿で、国王の娘たる私に、父を裏切れと申すのですか。私が一声上げればすぐに騎士も衛兵も駈けつけるのに。
  実直を通り越して愚直な行為ですよ、勇者」
  
勇者「…………姫様を信頼しての行動です」ダラダラ

姫「すごい汗よ。…………でも。誠意は伝わりました。とりあえず、詳しいお話聞かせてくださいますか?」

勇者「は、はい!」

197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:16:38.20 ID:cbnp4tI4o

姫「……なるほど。あなた方のお話を真実とするなら、魔王はハンバーグがお好き、と……」

神官「いや、そこですか。もっといろいろ話したじゃないですか」

姫「冗談です。魔族側の事情、意志。しかと聞きました。本当に今のお話は全て真実なのね?」

勇者「はい」

姫「そう……なら、やはりお父様を止めなくてはなりませんね……」

姫「私もあなた方に協力しますわ」

戦士「おお…」

神官「姫様…!」

勇者「有難うございます、姫様!」

姫「それで、私は何をすればいいの?」

勇者「まず反戦同盟のメンバーをできるだけ多く集めたいんです。
   姫様の人脈を使って、俺たちの考えに一致する……もしくは開戦に反対する人に声をかけて頂けませんか?」
   
姫「思い浮かぶ人は結構います。私の周りでも、お父様の急進的な考えに戸惑いを隠せない人は少なくありませんし……
  分かりました、出来る限りやってみるわ」
  
戦士「有り難い。宮殿や貴族のことは姫様に一任できるな」

姫「あ、あと、お兄様の居場所は見当はついてますの?神法執行にはお兄様の存在が不可欠ですよね?まさかもう見つかって…?」

神官「あう……」

198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:17:48.13 ID:cbnp4tI4o

勇者「いや全然、全く。見当すらついてません」

姫「そ、そう。まあ……難しいかもしれませんね……私もお兄様が留学と銘打って宮殿を出てから会ってませんもの」

戦士「王子の特徴や、行きそうな場所など心当たりはないだろうか?我々も今探している途中なのだが」

姫「特徴……うーん。私と似てる、くらいでしょうか。特に目の色なんかはよく瓜二つだなんて言われます。
  ええと、あとは女性によくもてますね。舞踏会なんかはすごかったわ。本人はうんざりしてたけれど」
  
勇者「姫様もお綺麗ですもんね」

姫「そっそんなこと言われても嬉しくなんかないんですからねっ! と言っておけばいいですか?」ハァ

勇者「雑!」

姫「あとは行きそうな場所ですか?うーん……そういえば星の国には興味を持ってましたよ。一度あの天文台に上ってみたいって言ってたわ」

神官「本当ですか!すぐに竜人さんと魔女さんに伝えないとっ!」

戦士「初めて手がかりらしい手がかりを入手できたな」

勇者「ああ!よかった。ありがとうございます姫様!」

199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:18:45.56 ID:cbnp4tI4o

姫「……さて、ごめんなさい、そろそろ私は稽古の時間ですので……」

勇者「じゃあ失礼しますね。姫様、本当に……有難うございます。俺たちに力を貸してくれて」

姫「力を貸す、という表現は不適切ですわ。私もあなた方の理念に賛同したから、行動するだけよ。
  力を合わせましょう。よりよい人の……いえ、人と魔族の未来のために」
  
勇者「…ええ、そうですね。頑張りましょう!では、失礼します」

城下町

勇者「やったな!」

神官「もう勇者様ったら、最初いきなりクーデターって言いだした時にはどうなることかと思いましたよ……」

戦士「姫様もドアに駆け寄ろうとしていたぞ?頼むから今度からは言葉を選べよ」

勇者「悪い悪い。まあ結果オーライじゃないか。かなりいい出だしだ。姫様は人を見る目もあるし、強力な支持者が集まるぞ!」

神官「確かに」

200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:19:42.67 ID:cbnp4tI4o

神官「さて、それでは私はこれから神殿の何人かに声をかけてみようかと思います」

戦士「俺は傭兵部隊に所属していた頃の仲間を何人かあたってみよう」

勇者「ああ頼む。俺は……そうだな。冒険者のギルドとか行ってみるかな。
   じゃあ今日の午後は別行動にして、明後日あたりにまた集まって報告しよう」
   
神官「分かりました。………………ふふふ」

戦士「どうした神官」

神官「ごめんなさい。う、生まれて初めて、その……大声で言えないことをしてるのに、なんだか高揚してるんです」

戦士「ははは。神官は反抗期なんかはなさそうだしな。かく言う俺も、罪悪感より高揚感の方が高いぞ。
   ただ上に言われるままに敵を排除するのより、よっぽど今の方がやりがいがあるわ」
   
神官「ちょっと昨日はびくびくして眠れなかったんですけどね。……私、小心者なんです」

勇者「大丈夫、できるさ。俺たちなら。明後日の報告も期待してるぜ」

神官「は、はいっ」

戦士「俺たちもお前の報告に期待しておるぞ?勇者」ニヤ

勇者「はん、上等だ。あまりの成果に驚くんじゃねえぞ」

戦士「言ったな。じゃあ3人のうち誰が一番支持者を集められるか、勝負だな」

勇者「いいぜ」

神官「ええええっ!ちょっ勝手に!」

勇者「一番少なかった奴は罰ゲームだな」

神官「だから私抜きでやってくださいよ!!!」

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201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:20:23.16 ID:cbnp4tI4o

戦士「罰は何にするか」

勇者「一日語尾に『にゃん』をつけて話すのはどうだ?かなり恥ずかしいだろう。いい年した俺たちが『にゃん』とか」

神官「いやですよ!何言ってんですか!?」

戦士「フッ いいだろう。俺が負けたら娘と妻にそのまま会いにいって『パパ帰ってきたニャン』と開口一番告げてやろう」

神官「離婚嘆願されても知りませんよ!?」

勇者「じゃあ明後日、楽しみにしてるぜ!あばよ!!」ダッ

戦士「それはこちらの台詞だ!!」ダッ

神官「ああ~もう!こうなったら絶対負けられない!!」ダッ

202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:21:32.28 ID:cbnp4tI4o

2日後

神官「3人が集めてきたメンバーを合わせると、結構な数になりましたね!まだ一週間も経ってないのに、かなり順調ですよ!」

勇者「おい」

神官「…………かなり、順調ですニャン……」

戦士「うむ。これで冒険者ギルド、兵士、神殿、宮殿……それなりに反戦同盟の種をまけたな」

神官「ええ。それなりに実力も影響力もある人々が集まったので、
   私たちが動くと共にこれからその人たちが同盟の輪を広げていってくれれば、支持者集めも楽になりますね」
   
勇者「おい」

神官「とりあえず同盟の基盤はできたと思いますニャン!!幹部メンバーも集まりつつあると思いますニャン!!!これで満足ですか!?」

神官「なんで私が罰ゲームうけなくちゃいけないんですか!!完全にとばっちりじゃないですか!!
   ここは最年長で厳つくて妻子がいる戦士さんがニャンニャン言って周りにドン引きされる展開が一番おいしいじゃないですかニャン!!」
   
戦士「ふざけんな」

勇者「お前が一番集めてきたメンバーが少ないんだよ。なんだ8名って。俺24名、戦士19名だぞ。ひとけたってなめてんのか」

神官「だって神殿って宮殿と繋がり深いですしぃ……ていうか頭固い人多いですしぃ……
   勇者様が勧誘した冒険者みたく『魔族も国王もどうも思ってないけど、勇者に着いてくぜ!』みたいな人滅多にいないですよ……ニャン」
   
勇者「お前の人徳がなかったんだろ」

神官「割と心に刺さります!!やめて!!」

203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:22:04.46 ID:cbnp4tI4o

戦士「そういえばそろそろ昼時だな。話の続きはここの喫茶店でしないか」

勇者「ん?こんなところに店なんてあったのか。……結構いい雰囲気だな。入ろう」

神官「うう……なんで私だけいっつもこんな役割……」

カランカラン…

女主人「いらっしゃい。空いてる席に座りなよ」

勇者「おう」

204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:23:00.16 ID:cbnp4tI4o

勇者「そう言えば竜人と魔女は今どこにいるんだろうな。王子が星の国に興味を持ってたってこと、伝えないといけないのに」

神官「場所が分かれば一気に転移魔法で行けるのに、残念ですニャン」

戦士「少ししたら魔王城に行ってみてはどうだ?報告もかねてな」

勇者「だな。もうちょい落ち着いてからだけど」

神官「魔王さんも寂しがってるでしょうしねニャン」

戦士「おいだんだん雑になってきてるぞ神官」

勇者「ああ……最後まであいつ駄々こねてたなー。それにしてもこの店の飯うまいな」

ガタ

女主人「そりゃどーも。ちょいと話に参加させとくれよ」

勇者「お、おい?」ギク

神官(いつの間にそばに……さっきの話、聞かれてなかったですよね……)

女主人「あんた、勇者だろ?王都に戻ってきてたんだ」

勇者「ああ、そうだけど」

205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:23:46.61 ID:cbnp4tI4o

女主人「噂の勇者が、随分きな臭い話をしてるもんだね」

勇者「……きな臭い?……なんのことだ?」

戦士・神官「」ギクッ

女主人「私は耳はいいんだ。客で賑わった店内でも、おもしろそうな会話が聞き取れるくらいにはね」

勇者「おもしろそうな会話か。確かに神官が語尾にニャンとつけて話してる姿はかなり滑稽だろうが……」

神官「誰のせいだと思ってるんですか」

女主人「すっとぼけんじゃないよ。……魔王とかなんだとか聞こえたけどね?」

「「「!」」」ギクギクッ

女主人「詳しい話、聞かせておくれよ。今日の夜12時、また店で待ってる。
    勇者が魔王と手を組んでるって言いふらされたくなきゃあ ちゃんと店に来るんだね」
    
勇者「なっ……なんのつもりだ?」

客「おーい!オーダー頼む!」

女主人「はいはい。 じゃあ、夜にね」ガタン

勇者「お、おい。…行っちまった……」

206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/15(木) 01:26:05.75 ID:cbnp4tI4o

今日はここまで 投下したら意外と短かった
次からはもっとまとまってから投下しますね すんません

喫茶店

211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 22:51:59.26 ID:yj+guR+Jo

神官「どどっどどどうするんですか勇者様。さっそく処刑の危機じゃないですか」

勇者「あ、慌てるな。まだ焦るような時間じゃない!あの女主人が国王にチクるとはまだ決まってない!」

戦士「二人とも落ち着いてくれ。とりあえず部屋をうろうろするのをやめてくれ」

神官「もう夜ですし……約束の12時まであともう少しですよ」

勇者「女主人、なにを考えてるんだ?俺たちを店に呼び出してなんのつもりなんだ」

戦士「俺たちの弱みを握ってることをちらつかせて取引に持ち込もうとしてるのだろうか」

勇者「くそ。なんだってんだ。とりあえず行くしか…ないか。よし、行くぞ!!」

神官「はいぃ……うう なんでこんなことに」

ギィッ カランカラン…

勇者「……」

女主人「ああ、来たか。待ってて、ちょっと後片付けあるからさ。この店、夜はバーをやってるんだ。さっき閉店したばっか」

勇者「……おう」

212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 22:53:15.04 ID:yj+guR+Jo

勇者「で、なんだ?話って。……金か?それとも別のものか?」

女主人「は?何のことだい?」

勇者「何のことって、昼間の続きだ。あんたの目的はなんなんだ?俺たちが……魔族と関わりがあることを知ったんだろ?」

女主人「……ああ!別に私はあんたらを告発するつもりなんかないよ。
    ただ魔族の話をちょっと聞きたかっただけ。銀髪の女の魔族にあんたらは会ったことある?」
    
戦士「銀髪?」

神官「もしかして村にいた方じゃないですか?ほら、定食屋で働いてた」

勇者「ああ……確かケット・シーの血が入ってるとかの。会ったことあるが、それがなんだ?」

女主人「そうか。生きてたのか。よかった……」

勇者「あんた、魔族に会ったことがあったのか」

女主人「ああ、私は地方の田舎生まれでね。昔、その魔族の女の子に命を助けられたことがあったんだ」

神官「え?」

女主人「小さい頃、山に山菜を取りにいった帰りさ。うっかり道に迷っちまってね。
    陽も暮れ始めて、真っ暗な森の中でうろうろしてたら腹をすかせた狼に遭遇しちまった」
    
女主人「もうこりゃだめだって思ったね。そしたら茂みから女の子がでてきてさ、私を助けてくれたんだ」

戦士「ほう」

女主人「その子は傷だらけになりながらも狼を撃退した。私はびっくりしたんだ。
    狼に勝てるその強さもだけど、よく見たら明らかにその女の子の姿は人間のものじゃなかった。
    村では魔族に出会ったら食い殺される前に逃げろって言われてたんだけど……魔族に会ったのは初めてだった」
    
女主人「その子の体さ、狼にやられた傷より、もっとたくさんの傷跡があったんだ。古傷が大きいのも小さいのもたくさんあった」

女主人「……その後。真っ暗な森の中、その子が森の出口まで案内してくれたんだ。おかげで私は自分の家に帰れたんだけどさ」

213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 22:55:18.69 ID:yj+guR+Jo

女主人「その子は家がないって言ってた。別の村を追い出されて、逃げてる途中だって言ってたんだ」

女主人「それなら私の家に来なよって誘ったら、すごい悲しい顔して笑ってた。その顔が今でも忘れられないんだ」

女主人「いつか生きてたらまた会おうって約束して別れたんだけど。そっか……生きてたか。よかった……」

勇者「いっつもにこにこして明るい娘だったよ。幸せそうだった」

女主人「そうか……フッ 安心したよ。
    で、あんたら何企んでるんだい?協力させてくれないか?魔族のために動いてんだろ?」

女主人「私はあの時の魔族の女の子に、恩返しをしたいんだ」

勇者「勿論、大歓迎だ」

214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 22:59:31.70 ID:yj+guR+Jo

女主人「ふーん、なるほどね。おもしろいじゃん。その反戦同盟とやらに入れとくれよ」

勇者「魔族に会ったことがある奴に初めて会った。さらに魔族に友好的な人間って、かなりレアだ」

女主人「はん、大体私以外のみんながおかしいんだ。会ったこともない魔族をそんなに憎むかフツー?」

神官「やっぱり先入観とか、嘘か本当か分からない噂とか、大きいですよね」

戦士「国王自身がそういう噂を流して魔族のマイナスイメージを作ってる、という線もなくはないな」

勇者「そういう噂とか風潮を逆に俺たちも利用できたらもっと大多数の市民を味方にできるんだがな。
   何か効果的な方法ないかな……」

女主人「ま、小難しいことは分かんないから何もできないけどさ。ここの店の地下、結構なスペースあるんだよ
    そこを同盟の集会場所に貸してやらないこともないよ」

勇者「えっ 本当か!?」

女主人「聞いたところ結構人数も集まってるみたいだし。ひとところに集まって話する場って必要だろ?」

勇者「そりゃ有り難い話だ。さっそく会合の日を決めよう」

神官「うわーうわー!なんか本格的に秘密結社って感じですね!」

戦士「一気に状況が好転したな。首が飛ばなくてよかった」

女主人「店に入ってきたときはあんたら青ざめた顔してたね。勇者パーティの名折れさ、ハッハッハ!」

215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:00:40.26 ID:yj+guR+Jo

数日後 深夜 街

姫「……」コソコソ

姫「今なら人がいないわね。よしっ!城を抜け出すわよ、騎士!」

騎士「ちょっと……本気でやめてくださいよ姫様……夜中に街にでるとか正気じゃないですよ…」

姫「なに言ってるの?今日は勇者たちとの第一回会合ですよ。私が参加しなくてどうするの。
  それに私に何かあったらあなたが守ってくれるから大丈夫でしょ。弱気なこと言わないで」
  
騎士「そんなこと言ったって……ああもうこの我がまま姫め」ボソ

姫「何か言った?」ギロ

騎士「いえ何も。ほらもっとフード深くかぶってください。そろそろ例の店が見えてきます」

姫「そうね。ここのお店かしら……?」ギィ

カランカラン…

女主人「ああいらっしゃい。うちはもう閉店の時間だよ」

姫「あの…その」

女主人「ああ……『フラッシュ』」

姫「! 『サンダー』」

女主人「入りな。地下の扉そっち」

姫「ありがとう」

216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:01:33.56 ID:yj+guR+Jo

ギィ……

ガヤガヤ ガヤガヤ

騎士「わ。すごい人ですね」

姫「あら本当。これだけもう人が集まったのね。さすが勇者パーティ」

勇者「姫様!本当にお城抜けだしてきたんですか……まじすか、大丈夫なんですか」

姫「大丈夫よ」

騎士「大丈夫じゃないですよ…」

宮殿司書「私は前々からなんとなくおかしいと思ってたんですよ……」

歴史研究家「ええ、誠にそうです。第一100年前の人魔戦争についても普及してる説に私は違和感がありましてですな……」

傭兵長「些か強引すぎると思っておりました……あのときも……」

冒険者「つーか冒険でてもモンスター全然でねーのなwwwwwwwwレベル上げしんどかったwwww」

ザワザワ ザワザワ

女主人「やーっと仕事終わった。随分賑やかだね」

勇者「これでみんな揃ったかな」

217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:02:29.74 ID:yj+guR+Jo

勇者「みんな、今日は集まってくれて有難う。知ってるもいるだろうけど……てか大体知ってると思うけど、俺が勇者だ。
   今日は第一回目の集会ってことで、顔合わせの意味合いが強いからさ、気楽にやってくれよな」
   
ざわざわ
 ざわざわ
 

戦士「ふむ。意外と……教養人が多いようだな、見た限り」

神官「ですね、国の政治方針や教育方針に疑問を感じてた人も少なくなかったってことでしょうか。私たちがいい発破になったのかも」

勇者「……」

姫「勇者?何か考え事を?」

勇者「……ん、ああ。この間話してたことについてちょっと考えてまして……」

『やっぱり先入観とか、嘘か本当か分からない噂とか、大きいですよね』

『国王自身がそういう噂を流して魔族のマイナスイメージを作ってる、という線もなくはないな』

『そういう噂とか風潮を逆に俺たちも利用できたらもっと大多数の市民を味方にできるんだがな。
 何か効果的な方法ないかな……』

勇者「なんかうまい方法……か」

司書「そういうことなら、勇者様。私に考えがあるのですが」

勇者「え?」

218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:02:59.18 ID:yj+guR+Jo

~~~~~~

勇者「……なるほど。いいな、それ」

司書「ただの思いつきなのですが……やってみる価値はあるのではないかと」

勇者「うん、俺もそう思うよ。協力してくれそうな奴の心当たりもある。
   そうと決まれば俺は明日にでも魔王城に行ってみよう。色々報告したいこともあるし」
   

勇者「そういやぁ、魔王の奴元気かな?」

勇者「しばらく会ってないけど……」

219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:07:46.93 ID:yj+guR+Jo

* * *

魔王「……くしゅっ」

魔王「……なんだ……誰か噂でもしてるのだろうか」ブチブチ

魔王「……」ブチブチ

魔王「ふう。ここら一帯の草は刈れたか。一仕事した後は気持ちがいいな」

魔王「ガーデニングなんで今までしたことなかったけど、これを機に始めるのも悪くない」

魔王「……ん? 裾に葉でも入ったかな。なんかもぞもぞする」

蜘蛛「」モゾモゾ

魔王「」

魔王「わーーーーーーーーーっ!!」ブンブン

220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:09:57.27 ID:yj+guR+Jo

庭師「うおっ なんじゃあ!?今の叫び声は……!?」

魔王「叫び声?叫び声なんて聞こえたか? はぁはぁ…」

庭師「ま、魔王様!?お庭にいらしてたんですかい!?……ちゅーか草むしり!?え!?」

魔王「ああ、暇で」

庭師「そんなこと魔王様がしなくていいんですよ!私めにお任せ下さいって!ほら、お洋服もこんなに汚れちゃって。もうお城に戻ってください」

魔王「別に私は…… うう、追い出された……」

魔王「もう夕暮れか。今日も一日が終わってしまった」

魔王「……戻るか」

221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:10:33.58 ID:yj+guR+Jo

魔王「竜人と魔女はいまどこにいるんだろう。あれからずっと会ってない。勇者くんたちも」

魔王「……」

魔王「誰かと一緒に見る夕日は素直にきれいだって思えるのに、一人で見る夕日はなんでこんなに寂しいのだろう……」

魔王「みんな頑張ってるのに、私だけこう……暇なのは申し訳ないな…」

魔王「何かできることはないのだろうか。せめてみんなが帰ってきたときに、疲れをいやせるようなことは……」

魔王「……料理だ!」ピコーン

222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:11:53.09 ID:yj+guR+Jo

翌日

ハーピー「まずお料理する前に手を洗って下さいね」

魔王「うん」

ハーピー「で、今日はアップルパイを作るんですよね」

魔王「ああ。アップルパイはすごいんだ、あれこそ天上の神々が食しているものに違いない。
   それに甘いものは疲労を癒す効果があると聞くし、リンゴはこの島でたくさんとれるし」
   
ハーピー「いい考えだと思いますよ。さて材料も揃えてきましたし……さっそく作りますか!じゃあ最初はリンゴをカットしましょう!」

魔王「そうだな……で、包丁はどうやって持ったらいいんだ?」

ハーピー「そっ、そっからですか?ええとですね……」

ガランガラン

「おーい、魔王いるか?俺だけど」

魔王「!? この声、勇者くん?」ダッ

ハーピー「あっ……魔王様!包丁もったまま走ったら危ないですって!」

223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:14:11.38 ID:yj+guR+Jo

魔王「勇者くん?」タッタッタ

勇者「おう、久しぶりだな。魔王」

魔王「勇者くん!」タッタッタ

コケッ

魔王「あっ」

ヒュンッ!

勇者「うあああああああぁっ!あぶねーー!!包丁投げ飛ばすなよオイ!!」パシッ

魔王「いてて。流石勇者くんだな、見事な包丁キャッチだ」

勇者「流石、じゃねーよ、冷や汗すげぇ出たぞ。つーか何もないところでコケんなよ」

魔王「ドレスにつんのめってしまったのだ。私じゃなくてドレスが悪い」

勇者「無機物に責任押し付けようとするな。それより包丁なんて持って、なにしようとしてたんだ?」

魔王「あ、ああ。料理を始めようとしていたところだったんだ。まだできてないから、ちょっと時間をつぶしてきてくれ」

勇者「RYOURI……?COOKING……?お前が?」

224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:15:05.41 ID:yj+guR+Jo

魔王「そんなあからさまな反応されると傷つくのだが」

勇者「いやだって魔王って、魔法以外の才能まったくないように見えるから」

魔王「勇者くんって意外とデリカシーがないな?それにそんなことはないぞ。
   今日は草むしりを極めたのだ。褒めてもいいぞ」
   
勇者(草むしりほんとにやったのか)

勇者「……ま、じゃあ期待しとくな。俺はちょっとグリフォンの家に寄ってくる」

魔王「せいぜい期待しておくがよい。頬が腐り落ちても知らないぞ、ふふん」

勇者「こえーよ!腐り落ちるとか初めて聞いたよ!」

225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:19:24.57 ID:yj+guR+Jo

勇者「まともな料理ができあがってることを願うぜ。
   おーいグリフォン、いるかー」
   
グリフォン「んー? なんだ勇者か。なんか用?」

勇者「あのさ、前、本書いてるって言ってたよな?あれもう完成した?」

グリフォン「ああ……ちょうど昨日完成したんだ。読んでみるかい」

勇者「サンキュ。……」パラパラ

勇者「うん、やっぱいいなこれ。これをな、王国で出版しようと思ってるんだけど、どうかな」

グリフォン「は?出版?なに言ってんの?」

勇者「勿論匿名でな。人々の間にある、魔族のイメージを改めるキッカケにならないかと思って。
   話題性も作れたらなおよし!」
   
勇者「あんたのこの本、おもしろいよ。
   魔王が悪で勇者が善っていう勧善懲悪物語に慣れ親しんでる俺みたいな人間からすれば
   かなり意外性があってうけると思うんだよな」
   
グリフォン「ふーん……そううまくいけばいいけどね。まあ、その本は好きにしてくれていいよ。
      もともと君か魔王様にあげようと思ってたものだから」
      
勇者「ありがとな」

226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:21:07.37 ID:yj+guR+Jo

勇者「…………………で」ドキドキ

魔王「アップルパイだ。切り分けよう……うっ、テーブルが高いな……」

ハーピー「あ、私やりますよ」ザクザク

勇者「おお なんか意外といい感じじゃないか。うまそうな匂いしてる」

魔王「そりゃあ、ほとんどハーピーが手伝ってくれたからな」

ハーピー「あははは……あ、私そろそろ仕事に戻らないと。ごめんなさい、失礼しますね」

魔王「もう? そうか……有難う、助かった」

ハーピー「いえいえどういたしまして。ごゆっくりどうぞ」ニコ

……パク

魔王「……おいしい」

勇者「ん、うまいな」

227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:24:42.95 ID:yj+guR+Jo

魔王「そうか。それはよかった」モグモグ

勇者「ありがとな」モグモグ

魔王「……順調に進んでいるのか?そちらは」

勇者「おい、口の端にパイの欠片を大量につけながら真面目な話に突入するのやめてくれ」

魔王「ん?うわ、本当だ。失礼。テイク2だ」

魔王「……順調に進んでいるのか?そちらは」

勇者「ええと、まあ、順調だな。ほら、これ。今のところ集まったメンバーのリスト」ペラ

魔王「……! こ、こんなに……?」

魔王「本当に……人間が……これ、みんな……私たちの……味方に?」

勇者「そうだ。人間も一枚岩じゃないってことだな。魔族と一緒でさ。少しずつこうしてメンバーを増やしてけば……
   クーデターも成功するし、いつかこの城の結界も必要なくなる世界になるかもな」
   
魔王「…………なんだか……笑いたいような泣きたいような、不思議な気持ちだ」

勇者「笑うのはいいけど泣くのはまだ早いぞ。 それからさ、竜人と魔女に会う機会ってあるか?」

228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:26:02.64 ID:yj+guR+Jo

魔王「いや……ない。二人とも、城を旅立ってからずっと帰ってきていない。いまどこにいるのかさえも分からない」

勇者「そっか。じゃあ次帰ってきたら、王国の王子が星の都に興味をもってたって伝えてもらっていいか?」

魔王「星の都だな。分かった。それにしても二人は今どこらへんにいるのだろう」

勇者「今頃くしゃみでもしてんじゃねーのかな」

魔王「古典的な表現だ。ところで、その本は?童話……?」

勇者「ん、ああ。これはグリフォン作の絵本だよ。勇者と魔王の物語。王都の人たちの世論操作に使えないかと思ってさ」

魔王「ふうん……?これは、もしかして私と勇者くんがモデルなのか?」

勇者「そう言ってた。俺は明日王都に戻るつもりだから、それまで読んでていいぞ。グリフォンもお前に読んでほしいだろうし」

魔王「いや、いい」

勇者「え?」

魔王「今日の夜、勇者くんに寝物語として読んでもらうから、いい」

勇者「お前……また勝手に決めやがって……」

229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:27:27.69 ID:yj+guR+Jo

魔王「早く早く」バフバフ

勇者「こら、枕叩くな。てかお前文字読めるだろ?なんで俺が」

魔王「読めない。難しい単語とか読めない」

勇者「うそこけ!!お前が訳分からん古代文字すらすら解読してたの見たぞ俺は!!」

魔王「ゆ……うしや……ま、ま……お」

勇者「今更わざとらしく文字読まなくていいよ!分かった分かった」

勇者「えーと……『その年、勇者は人々に見送られて魔王を倒す旅に出ました』」

魔王「ふむ」

230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:28:42.53 ID:yj+guR+Jo

『真ん丸な月を背負った荘厳な城の中で、勇者は魔王にとうとう出会いました。
 勇者は魔王に斬りかかろうと、背中の剣を抜きかけて、それからハッと息をのみました。
 月明かりに照らされて自分に微笑む魔王の姿が、あまりにも美しかったからです。』
 

魔王「なんだ、あのとき勇者くんはそんなことを思ってたのか。照れるなぁ」

勇者「あのときには、なんでこんな子どもが魔王城にいるのかと目を疑ってたよ。
   こんな劇的な出会いじゃなかったよな。竜人はエプロンつけてでてくるし、魔女はひとりで料理先に食ってたし」
   
魔王「でも物語らしくていいじゃないか。このくらいの演出過多の方が私は好きだ」

勇者「そうかよ」ペラ…

231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:29:53.20 ID:yj+guR+Jo

『すると、いつのまにか大勢の敵たちが二人を取り囲んでいました。逃げ道はどこにもありません。
 「勇者、狙われてるのは私一人だけです。私を置いてあなたは逃げてください」魔王が涙を目に湛えて言いました。
 
 しかし勇者は魔王の手を離そうとはしませんでした。
 むしろより強く握りしめて、こう言いました。』
 
 
勇者「『僕があなたを守ります。絶対に、傷一つつけさせません……』 おい、聞いてるのか?」

魔王「……~~」バフバフ

勇者「あのー」

魔王「この勇者くんは随分かっこいいな……はぁ」バフッ

勇者「このってなんだ、このって!?今朗読してる俺はかっこよくないってのか!?」

魔王「ふう なんだか顔が熱い。グリフォンはすごいものを書いてくれたな」パタパタ

勇者「さっきの聞き捨てならないんだけども」

232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:31:24.84 ID:yj+guR+Jo

パラ…

勇者「これで最後のページみたいだ」

魔王「笑いあり涙ありのいい物語だったな。こんなふうに現実もうまくいけばいいのだけど」

『こうして世界に平和が訪れました。
 魔族と人間は手を取り合って、ずっとこの平和な世界を保っていこうと誓い合いました。
 勇者と魔王はと言うと、その年の終わりに式をあげ、二人で末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし』
 
 
魔王「ん!?」

勇者「はい、終わり。……っと、もうこんな時間か。今日は自分の部屋に戻って寝ろよ?」

魔王「えっ?え?」

勇者「どうした?」

魔王「け……結婚とは」

勇者「お前結婚知らないのか?」

魔王「いや知ってるとも。知ってるけども。……その本、本当にそのままで王都の人々に配るのか?」

勇者「そうだけど、何か不都合があるのか?」

233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:32:21.94 ID:yj+guR+Jo

魔王「い、一応私たちが実在してる訳だから、色々とまずくはないのか?別に私は構わないけれど、勇者くんは……」

勇者「? 俺も別に構わないけど」

魔王「えっ……」

勇者「だって、魔王。お前、」

魔王「えっ えっ!?」

勇者「まだ子どもだろ?」

魔王「………………………」

勇者「お前がそれなりの年だったら、まあ、本の中でも結婚とか書かれたら恥ずかしいんだけどな。ハッハッハ」

魔王「………………………」

勇者「さ、そろそろ寝ようぜ。転移してきたから俺もう今日は疲れたよ。おやすみ」

バタン

234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/17(土) 23:34:18.87 ID:yj+guR+Jo

魔王の部屋

魔王「だから……私は……勇者くんと同じ年だと言うのに……!」

魔王「なんで私はこんなに成長が遅いんだ……っ
   生きてる年数で言えば、四捨五入したら20だぞ。ぎりぎり20なんだぞっ」
   
魔王「魔族の長寿がこんなに恨めしいなんて。別に勇者くんと結婚とかは全然考えてないけども。
   全然全くこれっぽっちも、一瞬も頭をかすめたことはないけども」
   
魔王「……」

『僕があなたを守ります。絶対に、傷一つつけさせません……』

魔王「~~……っ」ボフボフ

魔王「勇者くんかっこいいな!……はっ」

枕「」ボロボロ

魔王「……何やってるんだ私は」

244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/30(金) 03:05:46.45 ID:+SsGWOIOo

勇者「さて、そろそろ出発するかなー」

魔王「……ん?」

ヒュッ!

竜人「ただいま戻りました」

魔女「うぅぅぅぅ、寒かったぁぁ」

魔王「竜人、魔女……久しぶりだな」

勇者「なんだ、偶然だな。俺もちょうど魔王城に寄ってたところなんだ」

竜人「そうだったんですか。なら少し現状報告し合いません?」

勇者「だな、せっかくだし」

魔女「魔王様も勇者も久しぶり!雪の国付近まで行ったから超寒かったよー、先にお風呂入ってきていい?」

魔王「だめ。報告が先だ」

魔女「魔王様つれないっ!かわいくないっ!」

245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/30(金) 03:06:35.55 ID:+SsGWOIOo

竜人「なるほど。……ふむ」

勇者「だから王子探しは星の国優先でやってくれ。頼んだぞ」

竜人「そのことなんですが、王子探しの前に、勇者様が集めたその同盟メンバーに私を会わせて頂けませんか」

勇者「えっ?」

魔女「あー私も会いたいかも」

勇者「いやいや、お前らが王都に入国するなんて危険すぎるだろ」

魔王「……」

竜人「その点は大丈夫ですよ、よっぽどの魔術の使い手に遭遇しなければ私たちを魔族だとは見破れませんし」

竜人「目的は何にせよ、私たちの力になってくれる方々に顔も見せないなんて二天王の名が廃ります」

勇者「二天王ってマジだったんだ」

魔女「そうそう!組織っていうのは結束を固めて心を一つにしないと、いざという時にすーぐ崩壊するからね。仲良くしなくっちゃ」

246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/30(金) 03:07:05.75 ID:+SsGWOIOo

勇者「まあ、そういうことならいいけど」

魔王「私の分までよろしくな。気をつけて」

竜人「ええ、そりゃあ勿論」ニッコリ

魔女「魔王様の魅力ぶっ続け3時間語りとか人間相手にやらかすのやめてよねー」

勇者「やりそうで怖いな。じゃあ、直接俺がとっている宿にテレポートするから、掴まってくれ二人とも」

竜人「はい」ギュ

魔女「うん」ギュ

魔王「……」ギュ

勇者「……なあ、魔王、お前はテレポートしてきちゃだめだろ」

魔王「分かっている。冗談だ。……行ってらっしゃい、みんな」

竜人「魔王様!!またすぐ絶対帰ってきますから!!お菓子食べすぎないでくださいね!?歯もちゃんと磨くんですよ!?」

魔女「あーうるさいうるさい。さっさと行きましょ勇者」

勇者「お、おう」

シュンッ

魔王「……はぁ」ショボン

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