世にも奇妙な物語

【世にも奇妙な物語】冷える

スーパーのレジ打ちのパートをしている主婦・志倉頼子(若村麻由美)は、スーパーの店長や同僚、夫や子供からも、
自分はあまり必要とされていないのではないかと感じる日々を過ごしている。

ある日、頼子は大型冷蔵庫の中で、冷凍食品の在庫確認の残業を押し付けられる。
在庫点検をしていた際、彼女の存在に気付かなかった従業員に鍵を閉められ、
冷蔵庫に閉じ込められてしまう。

内線で警備員に連絡をとるものの、他の同業者と雑談に盛り上がり、こちらのSOSに気づく気配がない。
仕方なく、即席で作った段ボールのコートで身を包み、救助が来るのを待つことにした。

このまま自分は凍死してしまうのだろうか?
小さなライターの火で辛うじて暖まっていたが、常に空間を氷点下に保とうとする冷凍庫の中では、焼け石に水である。
薄れていく意識のなか、愛しい息子のことが気がかりで……

気づくと、病院のベッドで目覚める。
間一髪、あの冷凍庫から救助されたようだ。
ところが、頼子はその日から自分の身体に違和感を覚える。

炎天下の中、夫に頼んで温かい飲み物を口にし、
一緒に遊ぼうと手を引っ張る息子のテを冷たく感じてしまう。
さらには、店舗で試食販売を担当していたとき、誤って肉を焼いていた鉄板の上に掌を乗せてしまっても熱くなかった。

自分の体が異常だと医者に診察してもらうが何も異常はなく、
冷凍庫に閉じ込められたトラウマが心の中に残っているんでしょうと片付けられる。

ある日、家族ぐるみで熱々料理を食べきるチャレンジコースに挑戦すると、
軽く平らげてしまい店の主人の驚かせる。
もはや、彼女の舌は火傷どころか「熱い」という感覚すら忘れてしまっていた。

それ以降も彼女の異質な「冷え症」は留まることを知らず、
陽炎が揺らぐ真夏日に何重にも厚着をして周囲の人から変な目で見られたり、
試食のレトルトを温めるためにグツグツ煮えたぎっている熱湯の中に手を入れたり、
仕事の休憩中に仲間から熱いお茶を出されても「寒い」「凍ったお茶なんか出すな」と言いがかりをつけたり、
遂には部屋中に暖房器具を並べてミノムシのように毛布にくるまり、外出することすら困難になってしまう。

自分を心配してくれる息子をハグするも、余りの冷たさに咄嗟に突き飛ばす。
自分を気遣って「ボクは大丈夫」と息子は優しく語るが、夫の方は彼女の変貌ぶりにとうとう激昂してしまう。

息子を抱き締めることもできず、夫から愛されなくなったことに絶望する主人公。
とうとう、どこかのビルの屋上で投身自殺しようと考える。
すると町の方からサイレンが聞こえてくる。
駆けつけると、マンションで火災が発生し、その家の子どもが取り残されていた。
どうせ死ぬなら、と自己犠牲で火中に飛び込むが、
「熱さ」を感じなくなった身体はいとも容易く少年を救出し、
その子の母親や消防隊から感謝される。

そこで、自分の「生き甲斐」を見出だした頼子。
元々「頼子」とは、「誰かに頼られる子になってほしい」と、両親が願ってつけた大切な名だった。
それを自覚した頼子は、その名に恥じぬよう一生懸命に猛勉強し、正式な消防隊に就職した。

今日もどこかで火災が発生し、現場に急行。
「おーい!中に人がいるぞ!」
他の隊員らしき声を聞き、救助に向かう。
野次馬に紛れて彼女の勇姿にエールを送る夫と息子に手を降り、業火の中へと飛び込んでいき…………

場面は変わり、頼子が閉じ込められた冷凍庫の中。

「おーい!中に人がいるぞ!」

救助隊が駆けつけると、霜で髪や肌を白く染め、
事切れた頼子の姿がそこにあった。

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