怖い話

【世にも奇妙な物語】急患

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深夜の病院に佇むスーツ姿の男(ストーリーテラーのタモリ)。空のストレッチャーの前で語り出す。

「これは、病気や怪我を負った人を運ぶためのストレッチャーと呼ばれる移動式ベットです。
これで、手術室や治療室に運ばれる間、患者達は一体何を見ているのでしょう?」
(たくさんの叫び声のイメージが入る)
「深い海の底へ沈んでいくような、不安な風景が浮かびます。
これから皆さんにご覧戴くのは、このストレッチャーで運ばれてきた、ある救急患者のお話です。
その患者がある東京郊外のある病院に運び込まれたのは、
午後9時59分のことでした・・・。」

誰もいない深夜の公園の風景。それをバックに無線連絡が流れる。
「公園で倒れた中年らしい人を輸送中です。
全身の皮膚がただれて異常に変色してます。心臓は停止・・・瞳孔反応はなし
しかし・・・時々痙攣するように動いてます」
一報を聞き、受け入れの準備をする二人の看護師。

サイレンを鳴らし、病院へ向かう救急車のパトランプの回転に「急患」のタイトルが浮かぶ。

病院に到着した救急車。患者をストレッチャーに乗せながら、
ベテランの看護師・実相寺美枝(松本留美さん)が救命士に訊いた。
「センターからの無線が混乱していたようですけど、患者の様態は?」
「おかしいんです・・・我々が見たこともない様な症状なんです」

薄暗い夜の病院を、ストレッチャーで運ばれていく患者。
掛けられた布の下をそっと覗いた実相寺が、目を背けるほど惨い状態の様で、
どろっとした緑の液体が床に滴り落ちていく。

自室で手術用の本を見ていた医者、七沢(近藤正彦さん)。
そこへ、若い看護師・竹田あつみ(荒井乃梨子さん)が呼びかける。
「七沢先生・・・森先生がお呼びです」
「森先生が?急患?」
「急いできてくれと・・・」
顔色が優れない彼女の肩を、ぽんと叩く七沢。
「大丈夫?失神しそうな顔しているよ。早く慣れないと」

古い電灯が点滅する薄暗い階段から、廊下へ進む七沢。
途切れ途切れになって続いている緑色の液体を見つけ、思わずその後を辿る。
だんだんに床の液体の量は増え、最後は壁に叩きつけられた様に広がっていた。
その壁の奥の部屋を覗いたが、そこは誰もいない(机の上に花瓶とバランスボール?がある)。

「七沢君・・・。こっちだ」
背後から聞こえた声の方へ、液体を跨ぐように暗い廊下を進む七沢。
奥の部屋で森先生(佐野史郎さん)が実相寺と処置をしていた。
部屋の入口や薬品棚にはクモの巣が掛っている。
「なんですか・・・あの廊下の緑は」
「君にも患者を診て欲しい」
ベッド周囲のカーテンにも、緑の液体がべったり付いている。
カーテンを開けた七沢、思わず硬直してしまう。
「変形を続けています・・・」
呟く実相寺と共に目を背け、カーテンを閉めた。
彼女は吐きそうな勢いだ。森も困惑している様子。
「どう理解すればいいのか・・・内臓も溶け始めてる」
「・・・僕に笑いかけてきました」
「私にもだ」
心電図はフラット。吐き気に耐えきれず外に出る七沢。続いて出る森。
「何だか、あの目に吸い込まれるようだった・・・何かを奪い取られるような・・・」

「先生、病院長に連絡取りましょう」と訴える七沢だったが、
「電話したら自宅にいないんだ」
「だったら厚生省に連絡を!」
「七沢君・・・二人で調べてみないか?我々が最初の発見者になれるんだ」
森は、秘密裏に研究するつもりの様だ。
処置室に戻ると、実相寺が一人椅子に座り、急患の方を向いて泣いていた。
カーテンを開けると、緑の液体を残して患者がいない。
液体とクモの巣にまみれた通気口を見上げる医師二人。
「まさか・・・」
そのまま患者を探しに飛び出す医師達。
残された実相寺はすすり泣き続けたが、
目を見開いたと同時に、耳から緑の液体が流れ始めた・・・

人の気配がない暗い病棟。懐中電灯を手に一つ一つ病室を回り、患者を探す七沢と森。
誰もいない病室が目立つ。その一室に入っていく森。
その頃、竹田が急患の消えた処置室に来ていた。
医師達はもちろん、実相寺の姿もない。
部屋の中を見回すと、実相寺のナースキャップが落ちていた。
拾う竹田の後ろ、急患がいたベッドの上にふらりと立っている実相寺・・・。

先程実相寺が座っていた椅子にどかりと座り、煙草を吹かし出す竹田。
七沢が処置室に戻ると、カーテンの下から見える看護師の足と、床に広がる緑の液体。
急いでカーテンを開けると、竹田は口から緑の液体を流しながら死んでいた。
その背後、廊下の天井を逆さで歩いて行く実相寺?の姿。

怯えて森を呼びつつ、自室へ崩れ落ちる様に戻る七沢。
「いったい何が起きたっていうんだ・・・どうなっちゃってるんだ」
先程の竹田の死体のだらんとした足と、緑の血が流れる口・・・
頭を抱えると、竹田が呼びに来た時の事が思い出された。
そして、廊下の緑の液体・・・。
その時、森先生の声が何処かからかすかに聞こえた。
「許してくれ・・・頼む・・・」

それは、七沢の自室の向かいにある暗い病室からで、
一人ベッドに向かって、申し訳なさそうに呟く森の姿があった。
「あの時は夜勤が続いて私は・・・疲れきっていて・・・どうかしていました」
森の目前には、患者らしい正座した老人の姿。
「すいません・・・薬を確認するべきでした・・・私のミスです」
「苦しかったですよ・・・心臓が止まった時は・・・先生を信じていたのに」
だんだんに泣き崩れる森。

七沢は恐る恐る部屋に入り電気を点けるが、老人の姿は見えない。
どうやら、森が昔医療ミスで死なせてしまった患者に謝っている様だった。
「何度も謝っているじゃないですか・・・あやま・・・あや・・・」
森はしゃくりあげる様に泣き続けていたが、いつしかそれが痙攣へと変わり始めた。
「あ・・・あいつが・・・入って・・・く・・・来る・・・・」
森は七沢の目前で痙攣しながら崩れ落ち、白目を剥き、口から緑の泡を吐いて動かなくなった。

飛び退く様に部屋を出て、ストレッチャーで入り口を塞ぐ七沢。
自分の身が心配になり、自室からメスを取り出して震える手で自分の左人差し指を軽く切った。
赤い血が滴り落ちた。ほっとして座り込む七沢。
「どうなっちゃってるんだ・・・」
そして再び思い出してきた。廊下の緑の液体を辿った時、
誰もいなかったあの病室の窓に、誰かが映っていた気がする・・・。
竹田が、隣にいた記憶にすり変わろうとしていた。
「まさか・・・あつみちゃんが・・・いや、いるわけない・・・記憶が・・・狂ってる・・・」
涙が流れ始め、脳裏に映像が浮かぶ。

竹田に暗い廊下を導かれ、開いた先の処置室には光があふれ、森が出迎える。
ベッドのカーテンの傍らには実相寺の姿。
そこのカーテンを開くと、自分自身が急患に・・・
「やめろ・・・」必死にそれを否定する七沢。今までの事がフラッシュバックする。

七沢がふと気が付くと、周囲は明るくなっていた。
どうやら机で朝まで眠っていたらしい。
「先生、急患です」
竹田が、低い声で呼びに来た。
廊下に液体が落ちていない事を確認しながら、処置室へ向かう七沢。
あれは夢だったのか・・・?
「先生。心臓が弱ってます」と患者をストレッチャーで運ぶ実相寺。
それを後ろから手伝うと、緑の液体は流れていない。ホッとする七沢だったが・・・
突然、患者が起き上がった。
その顔は、先程動かなくなった白目を剥いた緑の泡塗れの森の顔!
「あああああああああ!!!!」

夜が明けたのではなく、七沢が指を切った直後から幻影を見ていたのだった。
勢いよく傷口から流れ出る緑色の血・・・痙攣が止まらなくなる七沢――暗転。

全てを語り終え、ストレッチャーを残して立ち去るストーリーテラー。

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