後味の悪い話

【後味の悪い話】スティーブン・キング「悪魔の嵐」

228: 悪魔の嵐1/3:2010/09/14(火) 17:23:37 ID:Woyr4ODs0
スティーブン・キングのドラマ「Storm of Century(邦題:悪魔の嵐)」

100年に1度の雪嵐が近づくアメリカのある小さな島で
島民の老婆が突如現れた男に撲殺される。
主人公である治安官は「リノージュ」と名乗るその男を逮捕する。
尋問すると「望みのものをくれたら立ち去る」と言う。

リノージュはなぜか島民それぞれの事情、特に後ろ暗い秘密に詳しかった。
留置所へ連行される道々で、
麻薬密売、死の床にある親への不義理、中絶、浮気、カンニングなどの
大小も質も様々な「秘密の罪」を
ある時は周囲の人間にも聞かせるように、ある時は本人にだけ囁いて

島民たちの精神面と人間関係に通り魔のようにダメージを与えていく。
不気味な男は、しかし特に抵抗もせず牢に入れられ
嵐が去った後本土の警察に引き渡そう、という事になった。

本格的に嵐が到来し、
外部との連絡が断絶された島で、相次いで島民が変死する。
いずれの現場にも「望みのものをくれたら立ち去る」というメッセージが残されていた。

リノージュは悪魔だった。
彼が人間ではない事、
不思議な力で人を操り、自殺させたり殺させたりしていた事が
誰の目にも明らかになっていく。

230: 悪魔の嵐2/3:2010/09/14(火) 17:38:20 ID:Woyr4ODs0
割り込みすまん・・・

抗いがたい力で様々な怪異を起こし、
いつでも島民を皆殺しにできると存分に示した後、リノージュは自分の欲しいものを告げた。
彼が望むのは「子供1人」。

長寿ではあるが不死身ではないリノージュは、
自身の持つ膨大な知識や知恵を受け継ぐ子供が欲しくなったのだ。
選ばれた子供は長い時間を生き、多くを経験し多くを学ぶ事になる。
強引に連れて行くのは不可能で、住民から差し出す必要がある、
島にいる8人の子供のうち一人をくれ、
もし断るなら子供も大人も全員嵐の海に沈める、と言う。

8人の子供たちはリノージュの力で昏睡状態にされ、念じれば即殺せる状態に置かれていた。
自分自身父親である主人公は、
「あいつは何人もの島民を殺した、そんな奴に子供を渡せるものか」と
必死にリノージュへの抵抗を訴えるが
強大な力を持つ悪魔に対する具体的な手立てはなく
子を持つ親たちも、他の島民も、彼の妻も、彼に賛同はしてくれず
辛いけど仕方ない的ムードでリノージュの要求を呑む事が決定された。

白い石が7つ、黒い石が1つのクジが用意される。
わが子との別れの恐怖に震えながら、引き渡す子供を決めるためのクジを引いていく親たち。
主人公はなおも抵抗をするが、
「自分たちだけ逃れるわけにはいかない」と彼の妻がクジを引く。
果たして、黒い石を引いたのは彼の妻であった。
絶叫の中、彼の子供は悪魔に連れ去られていった。

231: 悪魔の嵐3/3:2010/09/14(火) 17:45:57 ID:Woyr4ODs0
夏、主人公は妻と別れ、島を去った。
あの嵐の日の出来事は、島民にとって抜きがたい棘となり
口に出せない秘密となった。
精神を病むもの、自殺するものもいたが
時を経るにつれ、表面的にはかつての平穏さを取り戻しているようであった。

主人公は島から遠く離れた街で、新しい生活を始め、
眠れぬ夜はあるものの、忙しく日々を送る事で紛らわせていた。
そんなある日、親しげに連れ歩く少年と老紳士とすれ違う。

少年は彼の息子、老紳士はリノージュであった。
名を呼ばれて振り向いた息子は、幼い頃の特徴もそのままに、
しかしリノージュそっくりの邪悪な笑顔を残して、
雑踏へ消えていった。

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