後味の悪い話

【後味の悪い話】ドラマ「刑事追う」

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821:本当にあった怖い名無し:2006/06/29(木) 18:28:21 ID:TVhOJA9l0
「刑事追う」というドラマで見た話。
昔に一度見たきりで、細部うろ覚えなのでだいぶ脚色しています。
名前は全部仮名。

あるラーメン屋でバイトをする男、山田がいた。
山田は些細なミスで店長にこっぴどく叱られる。
最初は大人しく叱られていた山田だが、我慢できなくなったのか突然キレて暴れだした。
店を飛び出した山田は、近くにいた女性を捕まえ人質にしアパートの一室に閉じこもる。
騒ぎは大きくなり、立て篭もり事件として警察が乗り出してくる。
刑事がラーメン屋店主に詳しく話を聞くと、きっかけは本当に些細な事だった。
「あの程度でキレるなんて、こらえ性のないどうしようもない奴だ」と店主は語る。
山田は何の要求もせずただ立て篭もっているだけ
人質がいるため強硬手段には出れず、まずは山田の素性を洗うことになった。
調べてみると山田は以前の職場では佐藤と名乗っていた。
さらに調べるとその前は鈴木、田中、川田、と職場を変えるごとに名前を変えていた。
こんなに頻繁に名を変え、偽名を名乗り続けるとは何か凶悪事件の容疑者なのでは?
との疑惑から、事件はさらに大きく報道されることになる。
人質になった女性が大物政治家の娘だったのも拍車をかけた。
刑事は山田が勤めてきた職場の人間に話を聞いていく。
すると「アイツは悪い奴じゃない」と、みな口を揃えて言った。
「アイツが悪いんじゃない、ただ運が悪いんだ」

824:821:2006/06/29(木) 18:34:56 ID:TVhOJA9l0
>>821続き

山田は数々の職場を渡り歩いていたが
その殆どの職場で些細な事から仕事を続けられなくなり、辞めていったのだ
刑事は山田が名前を変え続ける理由が分かった気がした。
何をやってもうまくいかない。
次こそは、次こそは新しい自分としてうまくやるんだ。
そんな事を何度も、何度も、何度も繰り返す。
山田の経歴をたどる度に、その不器用な気持ちが伝わってくる。
しかし、今度のラーメン屋ではついに限界がきてしまった。
またここでも駄目なのか、そんな自棄になった思いが山田を凶行に走らせた。
立て篭もってもう何時間になるか、
山田は自分がどうすればいいのか分からなくなっていた。

そんな時、報道を聞いて駆けつけた男がいた。
「アイツの本当の名前は佐々木と言うんです」
刑事が話を聞くと、男はかつての山田の雇い主であった。
何でも山田はその小さな会社ではよく働き、社長も山田を良く思っていた。
しかし会社が傾き、山田を解雇せざるをえなくなり
そこで彼の消息が分からなくなったと。
山田は小さな村の出身で、その村もダム工事の為に水没し
身寄りもなく故郷すらなくしてしまっていた。
社長は連絡も取れなくなった山田の事をずっと気にかけていて
そして今回の事件の報道を知り駆けつけたのだ。

825:821:2006/06/29(木) 18:36:27 ID:TVhOJA9l0
立て篭もっている山田に社長が説得する。
「刑事さんから話は聞いた、お前がどれだけ苦労してきたか良く分かる。
うちの会社も持ち直した、働きに来い。だから、早くそこからでてくるんだ」
社長の一生懸命な説得を聞き山田は涙した。
そして自分はなんて愚かな事をしてしまったんだ、と気付く。
「ごめんな、ごめんな」
何度も謝り顔をくしゃくしゃにして泣きながら、人質の女性を縛っていた縄を解く。
そしてアパートの鍵を開け、ドアを開けようとした瞬間
後ろから包丁で刺された。

「よくも私にこんなマネしてくれたわね」そう言って人質だった女性は包丁を投げ捨てる。
事切れる山田。事件は終わった。
押し寄せ騒ぎ立てる報道陣、女性の過剰防衛ではないかとの声も。
彼女に付き添う弁護士は、そんなことにはさせませんよ。と事務的に対応する。

「これからだってやり直せたはずじゃないか」山田に泣きすがる社長。
そんな喧騒の中、新たに若い男が現場に来て刑事に言った。
「あの、TVで報道されていた山田って男、×年前に友人だった坂井だと思うんです」
×年前、それは社長が山田を雇うより以前の話だ。

刑事「彼は…一体誰だったんだ?」

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