スポンサーリンク
ジュリー・ドービニーの生涯
@blackflagcrz
17世紀のフランスに有名オペラ歌手と男装の剣豪という二つの顔を持つ高位の女性がいたんだけど、修道院に入れられた新しい彼女の為に潜入して彼女のベッドに掘り起こした尼僧の死体を置いて放火して二人で脱出
死刑判決を受けるも逃亡
設定すごいのに逸話がどれも無茶苦茶すぎて悪人列伝の方に名が残る
彼女の名はジュリー・ドービニー
父ガストンはアルマニャック伯ルイ・ド・ロレーヌに仕え、ルイ14世の王室厩舎を任されていた人物だった
彼は娘を他の男性の家臣たちと同じように厳しく育て、乗馬、馬の管理、フェンシング、拳闘にはじまりギャンブルや過度の飲酒まで10代の彼女は嗜むようになる
そんなジュリーは剣の腕と美しさが際立つようになり、14、5歳頃に主君のアルマニャック伯の愛人に
ほぼ同じ年に伯爵の計らいで父は昇進し彼女はモーパン卿という男性と結婚
以降ラ モーパンとして知られる事になるが、地方行政に携わる夫とは別に伯爵は彼女をパリの手元に置き続けた
が、伯爵や夫に飽きたのかジュリーはセランヌという剣術師範と付き合い始める
だが違法な決闘でこの新彼氏が相手を殺害し逮捕状が出たため二人でマルセイユに逃亡
逃亡先で剣も教わったそうでさらに彼女の剣術の腕は上昇
いや、上昇しすぎて彼氏より強くなっちゃってセランヌを捨てることになる
それからジュリーがマルセイユで何をしたか?
性別は隠さないものの男装して路地で剣を抜き1,2曲歌う
集まった聴衆に誰か私に勝てる人はいないのか?と決闘を呼びかけるんですよ
面白れぇと出てきた男性を侮辱する歌を歌い怒らせ、なおかつ剣をわざと持ちなれないように下手に見せて「おら、来いよ」
ンナロー!と怒り冷静さを失ってる相手をこの狡猾な剣の達人はやすやす叩き伏せ続けた
ジュリーのあまりの強さに相手や群衆が「お前ほんとは男だろ!」と詰め寄ることもあったが彼女は自ら服を破って身体を見せ「男かどうか確かめてみなよ!」と哄笑し金を集め立ち去って行ったという
そんな命懸けのデュエリストとしての暮らしを続けていた彼女だが突然思いもよらない転機が訪れる
決闘前の彼女の歌声を聴いた者のうち一人がすげぇ歌手がいた!と剣術ではなく歌に感銘を受けなんと彼女をパリ・オペラ座に紹介
全く訓練を受けていない彼女は数か月後にはオペラ座のスターになっていた
だからといって気性や素行は全く変わらず、共演する男性と次々浮名を流し女優とは揉めまくっている
また闘争心も以前のままで、男がらみでとある女優を口汚くののしった後むしゃくしゃしていたのか、そのまま通りに立ち、通りすがりの男性に決闘を申し込んでいる
男性が拒否すると剣は収めたものの、
持ってた木の杖で男性を叩きのめして懐中時計を奪い悠々と立ち去った
有名歌手兼武装強盗の誕生である
ステージでのジュリーは若い女性達を虜にし、ガンガンファンの女の子に手を出すタイプの大スターな彼女はファンの子を巡って男性と決闘することもしばしばあったという
とある商人の娘のファンの子をジュリーはいたく気に入り付き合いだすんだけど、それを知ったファンの両親は娘をヴィジタンティーヌというカトリックの修道会(訪問修道会)に入れて隠してしまう
だったら燃やしてくれるわとそこからツリー1個目の修道院潜入放火事件につながるんですよ
そこまでして(いろんな意味で)燃え上がった恋も一か月ぐらいで別れてしまうんだから何なんだよこれはと思わざるを得ない
男性として起訴され不在のまま死刑判決の出たジュリーは一度も法廷に立たずパリへ逃亡し再び歌手として生計を立てる
パリ・オペラ座に戻った彼女はまた大概な逸話を残していて、
ある時居酒屋で機嫌よく歌ってたジュリー
その場にいた3人組がジュリーの歌にぐちぐち言ったかなんかしたらしい
「よぉーしお前ら表に出な!」
中庭で決闘が行われ悠々と居酒屋に戻ったジュリーを見て他の客達が外の様子に見に行くと、全身刺し傷だらけの3人が転がっててウンウン唸っていた
逃げようとしたのか一人はおしりを貫かれてた
おしりを刺すなんて悪かったかな?とジュリーもなんかよくわからない反省をして男が治療する部屋を見に行ったらしい
そこでどういうスイッチが入ったのか不明だがそこから3週間熱烈に付き合いだしたそうだ
何この話
またある時、ルイ14世主催の宮廷舞踏会に王弟オルレアン公フィリップ1世のゲストとしてお呼ばれしたジュリー(呼ぶなよ)
こんな晴れの場でも当然おとなしくしてるはずもなく、緋色のチュニックを着た男装の彼女は次々と貴族の娘たちとダンス
その後みんなが注目する中、某侯爵とディープキス
それを見た3人の貴族がはしたない!とか、き、きみぃ!女性らしくしたまえ!とかジュリーに注意
この発言でどうなったかというと、もう想像通りですよ
決闘よ決闘
当然3人の貴族は通りに転がり、さすがにスキャンダルになったので彼女はほとぼりが冷めるまで当時南ネーデルラントブリュッセルに逃亡
まあそこでも王子と付き合ってたそうですが
パリに戻った後はちょっと落ち着き始めて、もうみんな忘れてる本来の夫のモーパン卿と暮らし始め、オペラ座の舞台にも立ち続けた
歌は本当に才能があったそうで、当時の作家で軍人のマルキ・ド・ダンゴーは世界で最も美しい歌声だと回想録で述べている
当時の錚々たる作曲家達の新作オペラで彼女は歌い、アンドレ・カンプラに至っては彼女の為に特別に作曲したほど
落ち着いたと書いたがやはり新しい恋人もできてて、1705年に彼女が完璧といえるほどの愛情を抱いていたという彼氏が亡くなってしまい悲嘆にくれる
おそらくその2年後の1707年にジュリー・ドービニーは33歳で歌と剣と愛に激しすぎるほどの情熱を注いだ生涯を閉じた
行跡はともかくフランス最高の剣士のうちの一人と言えよう
https://supercurioso.com/julie-daubigny-espadachina-seductora/
フランスの劇作家で詩人、画家、評論家のテオフィル・ゴーティエが1835年に彼女の物語を19世紀に舞台を替え発表してる
全ては愛の為にというロマンチックな物語に仕上がったものの、当時としてはやはり無理があったのかアメリカなどで発禁処分になっている
ここからは余談ね
映画化希望みたいなレス頂くこと多かったので調べてみました
初出は1966年の映画マドモアゼル ドゥ モーパン(原題Madamigella di Maupin)
監督/マウロ・ボロニーニ
主演/カトリーヌ・スパーク
前述のゴーティエの原作をおおまかに基に作られてるほぼオリジナルの冒険ロマンスもの
ハンガリー人の女性主人公が戦争を逃れ国外の修道院に潜り込む
だけど男性と間違われて徴兵されるわけ
で勇敢な大尉の副官になるんだけど、なぜか彼はこの新しい副官に心を乱されて、、
そして副官の性別を疑い始める貴族が現れ、みたいな感じだって
イタリア・スペイン・フランス・ユーゴ合作
まあ全然違うよな
舞台やミュージカル、TVドラマには複数なってるんだけど、ドンピシャなのがあった
ニューカメラータオペラ(https://newcamerataopera.org)が2020年に制作した短編オペラ映画「ジュリー」
写真はジュリー・ドービニーを演じた主演でソプラノ歌手のダニエル・ブオナイト
動画28分。映画化は他にされてなかったです
参照元:https://twitter.com/blackflagcrz/status/1655942305386479616
皆のコメント
@c283b6993b2445c
とんでもない人がいたもんですね...( ゚д゚)
@daizutounyu
ファンの娘に手を出して、修道院を燃やして駆け落ちする程の恋に、1ヶ月で飽きる件がめちゃくちゃ面白いwww すごく逸話としては面白い人だけど、知り合いにこの通行人に喧嘩売る性格が居たら、秒速で逃げなければ😅
@blackflagcrz
墓を掘り返して入念な偽装工作までしたのに、、修道院のくだり何だったん?ってなりました。
決闘拒否が許されないあたり最悪ですよね😵💫
@BP500x_kagero
この頃の貴族ってしょっちゅう決闘してたみたいですからね。
かの有名なシーボルトも決闘しまくって実は身体中傷痕だらけだったとか。
@blackflagcrz
後世のフィクションでおフランスの貴族ってボンボンのイメージですけど毎日剣の稽古するし戦争だと率先して志願して最前線行くもんだから、死傷率が一般兵の倍ほどになって跡継ぎに困ったって話は驚きました。勇猛ですよね
@IlyaCulmets
大音楽家のバッハやヘンデルも決闘してたそうです。
@nsamasan
最初フランスだし剣豪で男装だから、シュヴァリエ・デオンと思いましたが色々勘違い間違いでした。
この人もですが、この時代ポリコレコンプラが卒倒する破天荒な人達多い。
デオンは藤田先生の黒博物館シリーズで知りました。
@wUAO3srOUXe00cL
こういう話、大好物w
@f8kebillionaire
実生活で絶対関わりたく無いタイプだけど逸話として楽しむには最高の人物