775:本当にあった怖い名無し:2013/12/09(月) 22:39:00.05 ID:Wn2YotEG0
星新一「あすは休日」
エヌ氏はベッドで気持ちよく眠っていた。
朝7時になると目覚まし装置があの手この手でエヌ氏を起こしにかかる。
エヌ氏はどうにかして二度寝しようとするが、揮発性が高く
熱を奪う液体をかけられて渋々起き上がった。
これで起きないと次は電気ショックが与えられるのだ。
朝食のボタンを押し、壁から出てきた簡単な食事をとり
皿の端にのっている錠剤をジュースで流し込む。
そして身支度を整え会社に向かった。
途中同僚と会い、あくせく働くばかりで昇給しないと愚痴をこぼし
課長にドッサリ仕事を押し付けられ、部長にはくだらないことを
ネチネチ注意され、重役には相手の勘違いで散々怒られる。
グッタリして帰宅し、外着を着替えベッドに横たわる。
エヌ氏は我にかえった。
朝食時に飲んだ錠剤の効果が切れたのだ。
出勤から帰宅までのことは、その薬品がもたらした幻覚だった。
この時代、全ての仕事がオートメーション化し、人間の働く部分がまるでなくなってしまったのだ。
人間は何かをせずにはいられないものだ。
長い長い時間を絶え間なく遊び続けられるものではない。
勤労感を味わうのは生きてる責務を果たしたような気分になる。
そして最大の効果は休日が楽しくなる点だ。
そのためには薬を飲んで勤労感を味わわなければならないのだ。
明日は休日。
エヌ氏はどう過ごそうかとあれこれ考え、嬉しそうな表情になった。
今の時代に読むと後味悪いというか
羨ましいというか
モヤモヤする。