後味の悪い話

【後味の悪い話】井口かのんの短編

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607: 本当にあった怖い名無し 2019/08/22(木) 12:57:40.59ID:k3enWjxd0
井口かのんの短編

仲良しの女子中学生三人組(以下、A・B・C)。
同じクラスの地味な女生徒Dを毎日いじめ、「いじめられる方が悪い」と明るく言ってのけつつ過ごしている。
ある日、全校集会が開かれる。
そこで発表されたのは「協議の結果、いじめは撲滅できないという結論に達した。だからといって、恐喝や傷害、性的暴力
といった犯罪は許されない。よって、いじめを授業化し、正しい方法を教える」という衝撃の事実。
早速「いじめ」担当の教師が発表され、「どこまでやったら犯罪になるか」というレクチャーが行われる。
A・B・Cは「楽しかった」と大はしゃぎし、教室で堂々とDをいじめ始める。
Dが大事に持っている手帳を取り上げ、破り捨てるA。
と、そこでDが笑い出した。
「Aさん、何を破ったの?」
よく見ると、Aが破った手帳はA自身の物だった。
Dがこっそりと手帳の表紙をすり替えておいたのだ。
ここでいじめ教諭がにこやかに登場。
「物を破壊するというのは本来違法なわけだし、これはやり返されても文句は言えないね。Dさん、お見事だよ」
思いがけないDの反撃に、怒りで震えるA。

この日からDは変わった。
いじめが公に許されるようになった今、Dは水を得た魚のようだった。
どれだけ頑張ってやり返そうとしてもA達は敵わず、ひたすらストレスを溜める日々。
当たり前の話だが、いじめだろうと何だろうと「授業」になってしまえば勉強のできる者が勝つのだ。
所詮遊び半分でしかないA達は落ちこぼれであり、いじめ教諭から称賛されるDを見て歯噛みする。
「Dは調子乗りすぎ」
「やっぱりこそこそやるのがいじめの醍醐味でしょ」
A達は校外でDを待ち伏せし、吊し上げる。
「あんたなんて本当は嫌われ者なんだからね!」
罵るA達を、Dは鼻で笑った。
「授業で習ったこと覚えてる?自分に自信がない負け犬ほど、大人数でつるもうとするのよね。ここは学校外だっていうのに
わざわざ三人がかりなんて、一対一じゃ私に勝てないって分かってるんでしょ?安心して。この程度のことで仕返し
して点数稼ごうなんて思ってないから。せいぜい負け犬同士で仲良くしてなさいよ」
A達は反論できなかった。

608: 本当にあった怖い名無し2019/08/22(木) 13:02:01.20ID:k3enWjxd0
後日、いじめの授業で実技発表が行われることになった。
教師から当てられたBはグループでの発表を望み、AとCを指名する。
だが、Aは断った。
最近ストレスが溜まっていたせいもあり、気が弱く依存心の強いBにイラついてしまったのだ。
「B、いつも人の後ろに隠れてばっかりじゃん!」
そこですかさずCが尻馬に乗る。
「先生、私もパス。Bさんはいつも私やAさん任せで楽してきたんだから、たまには一人でやればいいと思います」
立ち尽くすBに追い打ちをかけるように、Dやその他のクラスメイト達もBを罵り出す。
「今まで楽しそうにいじめをやっていたくせに、今さら一人じゃ嫌だなんてムシが良すぎ」
「早くやれって。甘えてんじゃねーよ!」
クラス中からヤジを飛ばされたBは、泣きながら教室を走り去る。
と、いじめ教諭が拍手をし始めた。
「はい、お見事。今まで仲間だった奴でも弱ってきたら切り捨てる。この狡さは絶対必要だよ。Aさんは今まで不振だったけど、これで
一気に挽回だな。仲間割れが始まったら速やかに強い方につくCさんも素晴らしい。みんなの乗り方も良かったし、このクラスはいじめが
分かっているようだね。楽しかった?」
教師の言葉に笑顔で「はーい!」と返事するクラスメイト達。
だが、Aは吐き気を感じるようになる。

Aは一人で街をぶらついていた。
テレビではいじめが堂々とバラエティ番組として企画され、雑誌でも面白おかしくいじめ特集が組まれる。
それらを横目で見ながら吐き気がやまないA。
ふと、大荷物を持ち、よろよろ歩く老女が目に止まる。
あのばあさんを痛めつけたら、私もみんなのようにスカッとした気分になれるんだろうか。
Aは老女に近づき、荷物をひったくる。
「何するの!」
「バカ。こんなでかい荷物取るわけないじゃん。家どこ?手伝うから」
Aは老女の家まで荷物を運んでいく。
老女は涙ながらに礼を言い、「こんな嬉しいことは何年ぶりだろう」と微笑む。
そんな老女を見るAの目からも涙が零れ落ち、いつしか吐き気も止まっていた。

・・・・・と、なんだかいい話っぽいラストだけど、世の中でいじめが堂々と認められたままだし、これからどうなるんだろうとモヤモヤした。

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