後味の悪い話

【後味の悪い話】伊藤潤二「記憶」

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282:1/32021/02/11(木) 12:24:06.50ID:l2yRRfUq0
伊藤潤二の短編「記憶」
主人公のA子は20歳で自他ともに認める美人だが、自分が一時期ひどく醜い容貌だったという奇妙な記憶に悩まされていた
7歳から14歳までの間の記憶が抜け落ちており、鏡台の前に醜い自分が座っていて、母親から慰められているイメージがしきりに浮かぶのだ
アルバムには、その頃も美しい少女であったA子の写真があるのだが、なぜかその前後に比べると写真の枚数が少ない
A子が両親に「私が醜い顔をしていた時期があったのではないか」と尋ねると、両親は不自然に強い口調で否定した
両親は何か隠していると感じたA子が彼らの会話を盗み聞きすると、
「A子はあのことをすっかり忘れてしまっているようだな、写真は全部処分したのか?」「寝室のタンスの引き出しに1枚だけ残っています」などと言っている
すかさずタンスの引き出しを調べると、いつも浮かぶイメージどおりの、醜い少女の写真が出てきた
A子は記憶に間違いは無かったと確信し、「あの顔は私のハイドなのだ、いつかまたあの顔に戻ってしまうかもしれない」と怯える

283:2/32021/02/11(木) 12:25:25.64ID:l2yRRfUq0
両親が寝室で「A子が最近おかしいんです、またあの時のようなことになるのでは」
「バカな、今度は誰を殺すというんだ」と話しているところに、鏡を持ったA子がやってきた
A子は「お父さん、お母さん、見て、私ハイドよ!ほら、なんて醜いの!こんな顔に誰が生んだの⁈」と叫び、包丁を振りかざして母親に襲いかかる
A子には、鏡に映った自分の顔があの写真の醜い容貌に見えていたのだ
錯乱して両親ともに殺そうとするA子を父親は殴りつけ「また同じ間違いを繰り返すのか、よく見ろ、お前は醜くなんかないし醜かったこともない!」と鏡を突きつけた
我に帰るも「でも私はまた醜くなってしまうのよ、写真も見たわ」と食い下がるA子に、父親は「思い出せ、あれは14歳で死んだ、お前の妹のB子だ」と言う
B子の名前を聞き、抜け落ちていたA子の記憶が蘇った

284:3/32021/02/11(木) 12:27:46.02ID:l2yRRfUq0
A子とB子は二卵性の双子で、ある事情からB子の方は生まれて間もなく里子に出されていた
7歳の時にB子の里親が亡くなったため、両親が引き取って一緒に暮らし始めたのだった
B子は性格も暗く、思春期になると鏡台の前に悲しげに座っていることが多くなり、そんなB子を母親が慰めている姿をA子はよく目にしていた
A子は、B子の暗い雰囲気が自分にも伝染してくるような気がして、さらには容貌もB子のように醜くなる不安に取り憑かれ、ある日、発作的にB子の首を絞めて殺してしまった
両親はそれをB子の自殺として届け、疑われることは無かった
全てを思い出したA子に、父親は「美しいとか醜いとか言っている場合ではない。お前はB子に懺悔して生きていかなければならないのだ」と諭す
独りになったA子は鏡の前に座り、涙を流しながら反省した
「許してB子、私の妙な不安のためにあなたを殺してしまった…悩むことなんかなかった、私のこの顔は本物で醜くなることなんかない、私はこんなに美しいのよ」
反省からいつしか自賛に変わり、ウフフと笑いながら鏡の前でポーズをとるA子を、父親は物陰から複雑な面持ちで眺めるのだった

B子かわいそ過ぎ

303本当にあった怖い名無し2021/02/17(水) 23:20:30.48ID:FtujFCQt0
>>284
可愛くないから里子に出されたん?

309本当にあった怖い名無し2021/02/18(木) 13:27:23.78ID:DvegCl0A0
>>303
里子に出された理由は書かれてない
しかし可愛くないからという理由で出される子をわざわざ受け入れる里親もないだろうから
別の理由で双子の一方を里子に出すことになり、可愛い方を手元に残したんだろうな

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