スポンサーリンク
450: 本当にあった怖い名無し 2011/04/16(土) 15:52:07.81 ID:T2pxjFoR0
短編集のうちの一つの話
静かなお城に、一人の吟遊詩人がやってきた。
腺の細い体つきをした詩人は、病弱な少年であった。
旅の中で体調を崩した詩人は、城に泊めてもらう代わりに歌を聞かせた。
城の中にいる人々はわずかだった。王も大臣たちも、遠い街へ戦に出ていた。
優しい父王の不在を悲しむ姫君のため、詩人は毎日歌った。
彼の歌は様々な国の情景を伝え、城から出たことがなく外の世界に憧れる姫君を喜ばせた。
城にはいつも歌があふれるようになった。
詩人はよその国で生まれ、色んな国をまわりながら遥々と旅をしてきた。
「私が知っている歌をすべて教えてあげましょう 私がいなくなっても遠い国の事を思えるように」
詩人は体調のいい日は姫君に歌を教えるようになった。
本当なら、明らかに体が弱そうでで危険がないとはいえ、
素性の知れない者に姫君を近づけさせるのは良くない事だった。
でも厳しい教育係も、口うるさかった乳母も、なにも言わずにその様子をただ見守った。
城にいる人々は皆、戦場が少しずつ城へと近づいてくる事、王は勝てないであろう事を知っていた。
王は討たれ、迫る敵兵たちの声で城の周囲は騒がしくなっていった。
兵士たちが城の中に入ると、ほとんどの者が逃げ出した後で城の中は人気が少なかった。
最上階に辿りつくと、そこには姫君とその側近たちがいた。
彼女らは兵士の手にかかる前に、鳥のように高みから飛び降りて死んだ。
少し離れた場所で、一人の少女は、城から人が降る様を見ていた。
彼女こそが本物の姫君であり、城から落ちたのは姫君の服を着た詩人だった。
生まれついて体の弱い詩人はもう何年も生きられず、死ぬ場所を求めて旅をするようになった。
「あなたに出会えてやっとぼくは旅の終わりを見つけたんだ」
病で細い体をした詩人は姫君に成り代わって死に、姫君に自分の服と楽器を持たせたのだった。
姫君は城に背を向け、詩人に教えられた歌を歌いながら遠い国へと旅立った。
おわり
471: 1/2 2011/04/17(日) 12:10:30.78 ID:kgPe+1ua0
>>450
その漫画うちにもある!でも後味悪くないじゃない
で、私も同じ作者の後味悪い話をひとつ。
主人公は代々続くまじないしか祈祷師か退魔師かなんか(人喰い妖怪に一族全員喰い殺されているのでよくわからない)の生き残りで、両親を殺した妖怪に飼われている。
曰く「まずい人間は百年飼うと美味くなる」とのことで、妖怪にとっては猛毒の体を持つ主人公は強大な力を持つ妖怪に家畜として扱われている。
だが、せっかくのごちそうを死なせないように、と何かあれば助けてくれるし毎日の食事も用意してくれる。逃げるのは無理だと悟り、妖怪に養われる事にした主人公。
そんな主人公の元には、妖を退治して欲しい、若返りの秘薬が欲しい、など色々な依頼が舞い込んでくる。
その様な力があったのはご先祖様で、自分はなにも出来ないと断る主人公だが根がお人好しなのでつい依頼を受けてしまう。
ある日の依頼人は果樹園の地主。このところ従業員が行方不明になることが多く、困っていた。園内を探してみると桃の木の下に死体が埋まっており、いなくなったと思っていた従業員はみな変わり果てた姿でそこにいた。
そんな事件があって他の従業員も逃げ出してしまい、桃も売れず商売が立ち行かない、なんとかして欲しい。との事だった。
その話を、地主が持参した手土産の桃を食べながら聞いていた主人公は思わず吐いてしまう。「みんなそうして食べたがらないんです。何故ですか?!」とトンチンカンな事を言う地主。
「こんなもん食べられるわけないだろ!」と怒る主人公。すると地主の様子がおかしい。焦点の合わない目でブツブツと
「手塩にかけて育てた桃なのに。何故食えない。美味しいのに。俺の桃を食べられないだと!!!」などと言い主人公に襲いかかってくる。慌てる主人公だが、妖怪が手をかざすと地主は気を失った。
472: 2/2 2011/04/17(日) 12:12:31.41 ID:kgPe+1ua0
妖怪の案内で果樹園に着くと、そこは荒れ果てて誰もいない。だがそんな景色の中、どこかから視線を感じる主人公。
誰かに見られている?と辺りを見回すと、たわわに桃を実らせているひときわ大きな木が一本。
他の木はすべて枯れているのに、その木だけは元気なのは死体を食べているからだ。
妖怪はそう言うと主人公の体から血を一滴取り出し、木の根元に落す。
桃の大木は、樹齢を重ねるうちに偶然から人の味を知り、妖力によって人を取り込む人喰い妖怪と化していた。
逃げだしたと思われていた従業員もすべて桃の木の根元に埋まっており、残るは地主だけになったので地主を操って人間を捕獲しようとしていたのが事の顛末だったのだ。
気を失っている間に全てが解決したので、何も知らずに怪異がなくなった事を喜びお礼を持って主人公を訪ねる地主。
嫌な顔をしながら桃を受け取る主人公。地主に例の桃の大木の事を尋ねると、すっかり枯れてしまったとのこと。
それを聞いた二人は「この体は本当に妖怪にとっては猛毒なんだなぁ…」とゾッとする。
後味が悪いのは、妖怪が「幼木の根元にあった死体はぜーんぶ一ミリくらいに砕いて他の木の肥料にした。大丈夫誰も気がつかないって!」と、犠牲になった罪 もない従業員の死体を隠匿(損壊)し、それを良い事でもしたかのように話すこと。(主人公は人でなし~って反応だけど)
人喰い妖怪を一体退治した事にはなるんだけど、犠牲が多すぎるし地主は何も知らずに人間桃を売るんだろうと思わせる描写がなんとも…
475: 本当にあった怖い名無し 2011/04/17(日) 12:58:47.36 ID:Yuz1lX+60
>>471
既出の話といい面白そう。
良ければ作者名とタイトル教えてください。
478: 本当にあった怖い名無し 2011/04/17(日) 17:10:35.59 ID:AioUuiLyO
>>475
471じゃないけど、TONOの「チキタ☆GUGU」かと。
トラウマスレでも大人気w
479: 本当にあった怖い名無し 2011/04/17(日) 19:16:17.02 ID:kgPe+1ua0
>>478
そうですそれです。TONOさんのお話はずーんと心に重く残る物が多いんだけど、チキタは特にエグい話が多いですよね。
絵柄は可愛いのに、ストーリーとのギャップがすごいw
果樹園の話は、最初読んだ時はうわー妖怪人でなしだな~wくらいの感想で、サラッと読んでたんだけど、後で人間の死体で甘くなった桃をそれと知らずに食べさせられてしまうお客さんたち可哀想だな…と。
あと本当はみんな死んでるのに、地主は逃げたと思ってるからその辺事件になったりしても証拠はない(1mmだし…)し、残された家族はどうするんだろう?とか色々考えてしまってモヤモヤ…
480: 本当にあった怖い名無し 2011/04/17(日) 21:42:28.62 ID:Yuz1lX+60
>>478
おおお有り難う御座います!
早速ググったら想定外の可愛い絵柄でフイタwwwww
妖怪を「うしおととら」のとらみたいな感じ?と勝手に想像してたので尚更w
早速単行本をGETしようと思います