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687:本当にあった怖い名無し:2005/12/05(月) 18:05:22 ID:81ygRD9Q0
>>680
鳩グルポゥで思い出した。
フランスのショメって監督の作った、「老婦人とハト」って短編アニメが
後味悪かった。あちこちで賞を取って認められてるんだけど、暗い。
全編セリフはなく、アンニュイなBGMのみが流れる。
アートチックに丁寧に描き込まれてて、最初から不気味な雰囲気いっぱいだった。
時代は、今より少し前だと思う。
エッフェル塔を臨む公園は、今日も金の余った観光客でいっぱい。
主人公は、そこの公園番。
貧富の差が激しいご時世で、目ばかりぎょろぎょろしたやせっぽち。
給料は少なく、毎日の食事もマトモに採れない様子。落ちてるゴミなど食っている。
さてこの公園には沢山のハトがいるのだが、毎日エサをやり来る老婦人がいる。
小柄でポッテリして、上品な身なりできれいな白髪、いつも笑顔。
イヤミではなく裕福っぽい。
婦人は、いつも高価そうなお菓子や料理をハトにやってる。
人間の公園番にも、めったに食べられないようなご馳走ばかり。
おかげで、公園のハトはみなコロコロに太っている。
ある日、思い立った公園番は、ハトの羽をむしり、お手製の着ぐるみを作る。
潜水服の頭部みたいなでかい球体のハリボテに羽を張り付け、
ハトのような顔を描き、全身をハトのように見せた服も作った。見るからに
お粗末なデキだが、老婦人の洒落たアパートを突き止めた彼は、その姿で訪問する。
つづく
688:687:2005/12/05(月) 18:06:15 ID:81ygRD9Q0
老婦人の部屋は、4階とか5階とか、とにかく少し高い階。
「ばあさんボケてるから大丈夫だろう」てのが見え見えの態度で、彼は食事を要求。
老婦人は、大きなハトの来訪を喜び、手の掛かった料理をたくさん出してやる。
それから、公園番は老婦人の家に通っては、食事をたかるようになった。
見るからにカロリー高めのこってりした料理ばかり、それも大量に。
老婦人の部屋の壁には、若い頃の写真。その頃からハトを可愛がり、
ごちそうをやって太らせていた様子。満足する公園番。
彼は見る見る太り出し、歩行も困難になってくる……。
そしてある日。いつものように食卓についた彼に、婦人は「ちょっと待ってて」
という仕草で、奥にひっこむ。すわっていた彼は、ふと奥の壁に、
今まで気づかなかった写真を見つける。
それは、太ったネコを、ハトよりも愛おしそうに抱いている婦人であった。
いやな予感がして、奥の部屋に向かう公園番。何故か目にはいる鳥料理のレシピ。
ドアを開けると、そこにはもう一つ食卓が。
老婦人は、豪華な肉料理を別の客に給仕している最中だった。
そう、見るからに手製のネコの着ぐるみを着て、がつがつ食事をしている太った男に。
「次はあれを料理してあげるからね」と言う仕草の老婦人が、
刃物を持って公園番に近づいて来る。それはいつものにこやかな笑顔ではなく、
食材をさばく無表情な顔だった。何だか目もすわっていて動作も荒っぽい。
もう一回だけつづく
689:687:2005/12/05(月) 18:07:00 ID:81ygRD9Q0
公園番は逃げようとするが、太りすぎてうまく走れない。
着ぐるみを脱いで人間だと証明しようとするが、あせってうまく脱げない。
靴を脱いで人間の足を見せるが、その足を老婦人は切り落とそうとする。
その顔は、ボケてるというより、すでに完全に狂人のものだった。
ついに窓に追いつめられた彼は、絶望の中で一瞬「飛べるのでは…」と思い、
高い窓からコスプレの羽を広げてはばたく……。
やや後、ドシャグシャ、みたいなイヤな音。
階下には、球体の頭部が半分にヒシャげ、身体が変に曲がった公園番の身体があった。
老婦人はあきらめたのか、もう追ってこない。
公園番はふらふらと立ち上がると、ヒシャゲた頭と上手く歩けない足で、
どこへかと去っていった。
それからしばらくして、公園を訪れる観光客は、妙なものを見るようになった。
鳥のような目つきの、あきらかに精神状態のおかしい薄着の男だ。
それは再び、ガリガリにやせた公園番だった。だがもう仕事はできないようだ。
彼は両手をハトのように羽ばたかせ、ハトのような声で鳴きながら、
食べ物をもとめて、ぎくしゃくと公園をさまようのであった。
この監督、この後で長篇アニメ作って、
それはエンターテイメントだから、そこそこ爽快だったけど、
こっちの方が本質って感じがする。フランス人のダークな感覚って、救いがなくて怖い。