853: 本当にあった怖い名無し2020/05/27(水) 23:26:33.24ID:QMzC/y360
40年ほど前、小学校の頃の話。
通学路に「さよなら爺っこ(読みはズッコ。津軽弁でお爺さんの意味)と呼ばれた爺さんがいた。
椅子くらいの大きさの石に腰掛け、通りかかる小学生に「来いへ、来いへ(おいで、おいで)と声をかけて、
近寄ると、握手して手を上下させてそのリズムに合わせ、「さーよーなーらー、さーよーなーらー、さーよーなーらー」
と言って、それが終わればニコニコと笑って手を離し、俺達を見送ってくれた。ちょっとした有名人だった。
俺も、ちょうど家までの道にそのさよなら爺っこがいたので、何回も握手した。
ある日、学校で噂が流れた。
「あのさよなら爺っこ、クソして紙でねぐ(紙じゃなくて)手で拭いでら(拭いてる)って」
今考えると、そんなこと分かるわけがない。個室の爺っこの行動が分かるわけがないじゃないか。
でも、「ウンコ」ネタには敏感な小学生、握手してるところを見られたら、翌日笑いものにされるのは
目に見えていた。その噂が流れた日の帰路、当然さよなら爺っこはいた。いつものように、
「来いへ、来いへ」と右手に杖、左手で手招きをして俺を呼ぶ。しかし、折悪しく、俺の後ろには
クラスでもおしゃべりな同級生がいた。爺っこは「来いへ、来いへ」とニコニコ笑って言う。
葛藤の末、俺は笑いものにならない道を選んだ。ちらっと振り向いたときの爺っこは少し驚いていたようだった。
854: 本当にあった怖い名無し2020/05/27(水) 23:28:02.77ID:QMzC/y360>>856
その後もその道を本当は通りたくなかった。しかし、道はそこしかなかった。爺っこは常に、いつもそこにいた。
「来いへ、来いへ」とニコニコ笑いながら。しかし、臆病な俺は爺っこのそばへは寄れなかった。
何回通って何回無視しても、爺っこはいつものように「来いへ、来いへ」とニコニコ笑って言う。
しかし、俺も、同級生も、他のクラスのやつも、他の学年のやつも爺っこと握手するものはもういなかった。
1ヵ月くらいしたら、爺っこは姿を消した。次の日も、その次の日も。俺は内心諦めたのかと少しほっとしていた。
ある日の夕食、母が父に「〇〇さんの爺様(じさま)、死んだってな」と話しかけた。そう、〇〇さんとは
その爺っこが座っていた石が門前にある家のことである。聞いた瞬間、飯が喉を通らなくなった。
子供でも、「自分たちが無視したから、落胆して死期を早めたのか」ってことは感じた。
今でも実家に帰ると、家の周囲を懐かしく思い散歩している。しかし、さよなら爺っこの座っていたあの石を
見ると、だいぶ歳をくった今でも爺っこへの申し訳なさと当時の弱い自分への怒りがもやもやと湧いてくる。
856: 本当にあった怖い名無し2020/05/28(木) 00:04:54.81ID:b+aXoVfU0
>>854
乙
そういう過ちとか後悔ってあるよな、俺もあるからなんとなく分かる
思い出す度に罪悪感が心を掻きむしる
そしてどれだけ嘆いても、購う相手はもういない
やっぱ辛れえわ