後味の悪い話

【後味の悪い話】短編小説「蝉しぐれの夜に」

スポンサーリンク

45:本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/05/18(日) 19:08:55.58 ID:CjTAuR7g0.net
春口裕子の短編小説「蝉しぐれの夜に」

主人公、小夜子のもとに旧友からのハガキが届く。
胎児のエコー写真に「○○年夏、優大 7か月」と印字され、
手書きで「子供はいいよ、小夜子も早く産みな」とメッセージが添えられている。
不妊治療中の小夜子は、ハガキを破り捨てたい衝動に駆られる。
先月も「優大6か月」という同じようなメールが届いたのだった。

小夜子は去年の夏の出来事を思い出す……

昨夏のある日、小夜子は旧友の子供のピアノの発表会に招かれた。
集まるメンバーは
A子(既婚・男女の双子の子持ち)、B子(既婚・女児一人の子持ち)、C子(未婚)。
A子の双子の子供たちの出番の時、突然ベルの音が鳴り響いた。
ベルはいつまでも鳴りやまず、子供たちは泣きだし、ピアノの演奏は中断されてしまった。

後日A子は小夜子とB子を家に呼び出した。二つの重大発表があるという。
一つ目は
発表会の日のベルは目覚まし時計のものであり、双子の出番を狙って会場内にセットされていたこと。
近頃A子宅には頻繁に無言電話があり、それも同一人物の犯行で、
身近にいる、A子に恨みを持った人間によるものではないか、という推理を披露される。
未婚で子供もいないC子を疑い
「私は恵まれすぎたのかしら」
とどこかうっとりと言うA子に不快感を抱く小夜子。

46:本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/05/18(日) 19:09:50.95 ID:CjTAuR7g0.net
二つ目の発表はA子が3人目を妊娠している事だった。
「産み控える人って経済的な事情でしょ?これからは子供の数がステイタスになるかもね」
「兄弟はいた方がいいわよ、B子娘ちゃんも一人っ子じゃかわいそう」
「女の子もいいけど男の子がかわいくておすすめよ」
小夜子が不妊治療中とは知らず、A子は明るく言いはなつ。
小夜子は自分の中にマイナスの感情が溜まるのを押さえられず苦しむ。

ある日の夜、B子の娘から電話が来る「ママがいなくなっちゃったの」。
B子の家に飛んで行って話を聞くと、A子の双子がお泊りに来たが、
夜中目覚めると、B子とともに双子のうち男の子がいなくなっていたという。

あちこち探し回り、安産祈願の神社にたたずむB子と男の子を見つける。
A子への嫌がらせはB子の仕業だった。
B子は二人目不妊で治療をしており、男児を切望していた。
姑からの男を産めプレッシャー、夫の浮気、
「男の子が生まれた時の練習よ」とB子に子供の世話をさせ、あっさり妊娠するA子、
「一人いるんだからいいじゃない」と簡単に言う周囲の人間、
B子は傷ついていた。
男の子の寝顔を見ていたら、たまらない気持ちになって、衝動的に連れ出してしまったという。

B子を抱きしめ、自分も不妊治療をしている事を告白してともに泣いた
ありがとう、今日の事は一生忘れない、
ずっと一緒に頑張ろう、この苦しみがわかるのは経験者だけだから、と語るB子。

B子はもし男児ができたらつけたい名前があるという。
名前は「優大」。
優しい、大きな心を持つ子になるように…。

スポンサーリンク

-後味の悪い話