後味の悪い話

【後味の悪い話】チキタ

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157: 本当にあった怖い名無し:2010/06/27(日) 16:34:02 ID:lbqnq32q0
チキタあらすじ

ある国の王様は善人で、いつも民のことを考え粉骨砕身して働いていた。
望めばなんでも手に入る立場なのに、一日に数時間しか眠らず、食事も最低限しかとらず、
より良い国をつくることだけを考え、臣下たちに愛されていた。

しかし、王様は老いており、死期はすぐそばにあった。
国には果てなく問題があり、そうした問題を解決するには自身も果てのないものにならなければ、
王様はそう思い始める。治世のために自分の中に積み重ねてきた様々な知識や経験、
それが死とともに消えていくことが惜しく感じられた。

王様は呪術師を集めて、不老不死のための方策を練るようになった。
模索されるその方法の中には、何十人もの人間の命を犠牲にするような方法もあった。
王様は、大勢の民を助けるために、何十人もの民の命を奪うようになった。
儀式に使うために男の心臓70人分やら赤子の爪を壺いっぱいに集めたりなど、常軌を逸したものだった。

その段階で、実は王様はウイルス状の妖怪に乗っ取られていた。
ウイルス妖怪は意思を持たないが、本能的に人を殺すことを好んでいた。
そのため、王様の行動は人を殺す方へと傾いてしまっていたのだった。

しかし、元々王様が持っていた国をどうにかしたいという真っ当な王としての思い、
通常の人間としての感情などは完全には失われておらず、王様は民を犠牲にするたびに泣いた。
ウイルスは王様を媒介にして臣下たちにも感染し、
感染者は王様の理想のシンパと化しつつ、王様を延命させる方法を探して人殺しになっていった。

ウイルスは、王様のそばにいて、王様の考えに共鳴したり、心に隙があったりすると感染する。
一度感染したらもう治ることはない。
王様の異常さに気付いた者たちは、王様を倒そうと試み、城に入り込んでまずは王様の臣下たちを殺した。

臣下たちは王様と同じく、殺人に関しての感覚は壊れていたが、
感情面は普通の人間のようで、すっきりとしない戦いだった。
王様は、心の清い者しか入れないシールドの中に立てこもってしまう。

王様はウイルスに侵されながらも、
あくまでも「全ては民に尽くすため」という思想に基づき行動していたので、
心の清さは失われていなかったらしい。
そのシールドの中には、俗人たちが入ることは叶わなかった。

158: 本当にあった怖い名無し:2010/06/27(日) 16:35:13 ID:lbqnq32q0
2/2

何名かは、ならば口で説得しようとしたが、仲間の一人がそれを止める。
もし少しでも王様の理想に同じたり、哀れみを感じれば、同じようにウイルスに感染してしまうため、
口頭での問答などやるべきではなかったからだ。

みんなはその場から引き、王様の立てこもっている部屋を外から厳重に封じた。
部屋には食料などはない。剣で殺すことも説得もできないのなら、餓死させようという考えだった。

閉じ込められた王様の赤ん坊のような泣き声がしばらく聞こえ続けたが、
その日の晩に、王様はひっそりと生きることをやめた。
きっと数カ月は生き続けるだろうと思っていたので、皆はそのことに驚いた。

心も体も疲れ切っていた王様は、臣下に囲まれて国のことを思う事だけで生き続けていた。
王様に殺された人たちにとっても、王様自身にとっても、
王様の死は良いことだったのだろうとの会話が交わされた。

王様は可愛らしいじいちゃんとして描かれていたので、このくだりは衝撃的だった

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